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見えない復讐 [日本の作家 石持浅海]


見えない復讐 (角川文庫)

見えない復讐 (角川文庫)

  • 作者: 石持 浅海
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2013/09/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
エンジェル投資家・小池規彦の前に、同じ大学の後輩にあたる田島祐也が現れた。立ち上げたばかりのベンチャー企業への出資を求めに来たという院生の田島は、熱意と才能に満ち溢れた若者のように見えた。しかし彼の謎めいた行動から、小池は田島が母校の大学に烈しい復讐心を持っていることを見抜く。そして実は小池自身も、同じ復讐心を胸に抱いていたのだった……。「実行者(テロリスト)」と「支援者(スポンサー)」、ふたりの天才が繰り広げる極限の推理劇!


今年読んだ3冊目の本です。
とても石持浅海らしい作品でした。
極めて石持浅海作品らしい登場人物が登場します。
目次をみると第一話から第七話とありますが、序章、最終章で挟んでありますので、長編として読めばよいのだと思われます。

まず、法人への復讐を考える大学院生、というのがおもしろい。
そしてそのためには大きな金額の金が必要で、その金がないから、稼げばよい、とベンチャー企業を設立する、というのが、これまたおもしろい。
こんなこと、普通考えませんよね。
この大学院生田島と、彼に出資することになる投資家の小池が主要人物です。

田島の復讐の対象に対して、小池も恨みを抱いていて、田島の意図を見抜いて小池は出資を決断する...
いやぁ、無茶苦茶です。
でも、無茶苦茶だからいいんです。石持浅海らしい。

小池が田島に会社経営のアドバイスをした、というくだりを読んだところで、ひょっとするとベンチャー経営を扱った新しい小説になるんじゃないかな、という別の期待を抱きました。
事業がうまくいく、ということには、財務面、資金面もうまくいくということが兼ね備わる必要があります。企業が倒産するのは、金が回らなくなるから、です。
ですが、企業小説で事業の苦労そのものを描いたものはあっても、資金面、財務面を扱った小説はあまりないような気がしていて、この「見えない復讐」 (角川文庫)における小池のアドバイスが財務面であったことから、そこを重点的に扱った小説になるんじゃないかな、と期待したわけです。
この期待は裏切られましたが(そりゃあ、まあ、こちらの勝手な期待ですから)、肝心の復讐をめぐる、ロジック遊びは十分楽しめました。

法人に対する復讐の資金獲得のため法人(ベンチャー企業)を設立する、ということから、一つ予想していた展開があったのですが、違った展開を見せてくれました。
石持浅海、周到です。予想をはるかに超えるひねりを見せてくれました。
うーん、そちらへ話を転がしていきますか...なるほどねー。
エンディングはかなり衝撃的です。
異論もあろうかと思いますが、この作品のラストはこれがふさわしいようにも思えました。

ただ、作品全体として、後味が悪いんですよね。
物語の初めから「結果によっては多数の死者が出る」という前提に立っていることが明かされてはいますが(なにしろ、あらすじによれば、テロリスト、ですから)、復讐は、やはり無関係な第三者を巻き込まないようにしないと、(ことエンターテイメントをめざすミステリとしては)まずいですね。
そしてこの点は、この作品において、100パーセント回避とはいかなくても、緩和することはできただろうと思われるだけに、残念なポイントかと思います。
というのも、田島たち、会社がうまくいくにつれて、揺れるんですね。人間だから、状況が、立場が変われば考えも変わりますよね。そして、揺れることはこの作品では大きな意味を持っています(これは上で触れたひねりに関連するので詳しくは書きません)。だから、その揺れを利用して、復讐の後味の悪さを少しでも緩和させることが可能だったんじゃないかなぁ、と思えてなりません。
そうしても、エンディングの衝撃は薄れることは全くないと思われますし。
ちょっともったいない。

とはいえ、石持浅海らしい凝った作品を楽しめました。

<蛇足>
ところで、ストーリー展開でかなり重要な役割を担う弦巻がどうなったのか、書いておいてほしかったです。



タグ:石持浅海
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愚者たちの棺 [海外の作家 わ行]


愚者たちの棺 (創元推理文庫)

愚者たちの棺 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
港町フラックスボローの顔役だったキャロブリート氏のつましい葬儀から七ヶ月後。今度は参列者のひとり、新聞社社主のグウィルが感電死する。真冬に送電鉄塔の下で発見された遺体には不可解な点がいくつもあり、現場近くでは“幽霊”の目撃証言まで飛び出す始末。相次ぐ町の名士の死には関連があるのか。奇妙な謎と伏線の妙…英国本格ミステリの粋が凝縮された巧手の第一長編


この「愚者たちの棺」 (創元推理文庫)が今年最初に読んだ本です。
帯に
「奇妙な謎、伏線の妙と意表をつく結末」
と、まるで本格ミステリに期待する三要素、みたいなことが書いてあって、原書の発表年が1958年ですから、名作発掘という感じ?

奇妙な謎、というのは死体の様子ですね。
創元推理文庫名物(?)、表紙扉のあらすじだと「真冬に送電用鉄塔の下で発見された遺体はスリッパ履きで、マシュマロを口に入れたままという不可解な状態だった」とされています。
うん、いい感じですね。

ミステリとしては、伏線の妙、というほどのこともないかな、と感じましたが、要所要所にちりばめてあって、いい感じ。また、意表をつく結末、はそれなりの効果を挙げているのではなかろうかと。定番といえば、定番のトリックなのですが、うまく使っているな、と思えます。

と、田舎町を舞台とした手堅いミステリに仕上がっていますが、全体として、探偵役のバーブライト警部が地味ながら、よさげな感じで、ユーモアもそこはかとなく漂うのがポイントかな、と思いました。
同時に、作者の意地悪な視点が味わえるのも特色かと思います。(蛇足、ですが、原題「Coffin Scarcely Used」も皮肉が効いていると思います)
この意地悪さが、シリーズを通してどう展開していくのか、注目していきたいです。



原題:Coffin Scarcely Used
著者:Colin Watson
刊行:1958年
訳者:直良和美





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バジャーズ・エンドの奇妙な死体 [海外の作家 か行]


バジャーズ・エンドの奇妙な死体 (創元推理文庫)

バジャーズ・エンドの奇妙な死体 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
ここはペニーフット・ホテル。田舎町バジャーズ・エンドにひっそりと建つ、紳士淑女御用達の隠れ家だ。ところがその静かな町で不審死が続発。ただでさえホテルにとって痛手なのに、そのうえ関係者がふたりも疑われているとあっては放っておけない。ホテルの女主人セシリーは、堅物の支配人バクスターの心配をよそに調査をはじめる。古き良き英国の香り漂う人気シリーズ第二弾。


舞台が1906年のイギリス南西部バジャーズ・エンドにあるペニーフット・ホテルのシリーズ第2弾です。
あらすじを読んでびっくり、第1作「ペニーフット・ホテル受難の日」 (創元推理文庫)を読んだときは意識していなかったのですが、このホテル、「紳士淑女御用達の隠れ家」ってことは、そういう用途のホテルだった!?
でも、この「バジャーズ・エンドの奇妙な死体」 (創元推理文庫)を読んでもそんな印象は受けませんでした。
「それによってさらにホテルの格が上がるわ。」(230ページ)
というセシリーのセリフも、そういう用途のホテルではないことを裏付けているように思います。
こちらの勝手な思い込みだったのでしょう。ちょっとあらすじの書き方、ミスリーディングですけどね...
時代(背景)のせいで、そう思えなかっただけ??? 後続巻では気を付けて読むことにします。

今回もセシリーがどたばたと謎を解いていきます。
バクスターが嫌々ながら、巻き込まれていってしまう段取りも、セシリーの危機一髪を、バクスターが救うという段取りも、予定通り(笑)。
登場人物のにぎやかなことも、第1作と同じく健在。
謎の宿泊客ミセス・パルマンティエとか、メイド、ガーティの妊娠騒ぎとか、わさわさと楽しいですね。
(しかし、ガーティの言葉遣い、ちょっとひどいというか、ホテルの雰囲気に合わないですね。)

事件の方は、他愛ないといえば他愛ないし(日本題の「奇妙な死体」のゆえんである殺害方法の古典的なlことにはびっくりできますよ、いまさら感があって)、(ミステリーでは)ありふれた動機ではありますが、おもしろい使い方をしているなぁ、と思いました。怒る人もいるでしょうけれどねぇ。ミッシリング・リンクの解としては、反則ですもんねぇ。

と、作品としてよかったのか、悪かったのか、今一つ難しいところですが、楽しんで読むことは読みました。
シリーズ続刊も、読んでいきます。



原題:Do not Disturb
著者:Kate Kingsbury
刊行:1994年
訳者:務台夏子





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今出川ルヴォワール [日本の作家 ま行]


今出川ルヴォワール (講談社文庫)

今出川ルヴォワール (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
京都・大怨寺(だいおんじ)の僧侶が転落死した。殺人容疑をかけられたのはその場に居合わせた御堂達也。嫌疑を晴らすため、彼の母校、越天(えてん)学園に向かった瓶賀流(みかがみつる)。そこで出会ったのは達也の死んだ母親と瓜二つの女性だった。三十年前に起きた悲劇と私的裁判・双龍会が繋がるとき、過去の呪縛から解放されるのは、誰だ。


今年最初に読んだ本です。
「丸太町ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「烏丸ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾です。
前作「烏丸ルヴォワール」の感想を書いたのが、2015年9月ですから、ほぼ1年半ぶりですか...
「河原町ルヴォワール」 (講談社文庫)もとっくに文庫化されているというのに、読むのはいつのことになるのやら。今年の目標の一つにしようっと。

さて、今回は冒頭部分は御堂達也を被告とした法廷(双龍会)で、これはこれで楽しかったのですが、いやあ、本作の重点はそこにはなくて、権々会、というお寺主催の(!) ばくち大会が見せ場ですね。
競われる種目は、「鳳」という独自ゲーム
京都発祥のゲームとかで、「元々は占いやってんけど、いつしかそこに競技性が生まれ、ゲームになったってわけや」(184ページ)ということで、ルールも説明されています。
実はこのルール、ぴんとこなかったんですが、試合シーン(?) は迫力ありましたね。
達也の出生の秘密(?) とかいろいろと明かされるのですが、それもこれも試合シーンを盛り上げるため、だったのかも。

落花の仕掛ける技(?) も、いやあ無理でしょ、という中身ですが、絵になるし、恰好いいし、京都ならではというほどのことはなくても京都は感じさせるし、いいじゃないですか。
こういうケレン、大好き。

人間関係も、非常に狭い範囲で錯綜させているので、ちょっとやり過ぎ感も漂うのですが、舞台が京都なら、まあいいか、と思えてしまうところも、またよし、です。

次の「河原町ルヴォワール」 でシリーズ完結のようですので、今年中に読みたいです。
とても楽しみです。


<蛇足>
しかし、帯に書かれている
「彼の決意、彼女の親愛。
いくら心がすれ違っても、この手だけは絶対に離さない。」
というの、確かにそういう側面もこの物語は持っていますが、そこは前面に押し出されるべきものではないように思います。



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秘密 トップ・シークレット (12) [コミック 清水玲子]






あけましておめでとうございます。
昨年は、仕事の環境が激変し、ちっとも読めず、感想もかけず、という状態でしたが、今年はもっと本が読めるといいなぁ。

さておき、今年最初の感想は、コミックです。
2012年10月に出たコミックで(奥付は2012年11月になっていますが)、シリーズ最終巻です。
最終巻であるこの第12巻には「秘密 トップ・シークレット 2010 END GAME」の続きと「秘密 トップ・シークレット エピローグ・一期一会」が収録されています。

事件のおおよそはすでに11巻までで描かれているので、全体としては後日談に近くなっていますね。
あれだけの事件となったので、牧の処遇が問題となります。
昇格させるわけでにもいかず、だけど、あからさまに左遷するわけにもいかず... 上層部も悩んだことでしょう。
非常に収まりのよいポストが用意されています。
薪、青木、岡部、山本その他の第九の面々と三好雪子先生がちゃんと出てきますが、やはり青木ですね。
命令ではなく、「願い」だ、という牧の言葉、牧らしくないですが、そこが一層ポイントということなのでしょう。

エピローグで描かれる牧の活躍は、いやあ、まあ、すごいの一言。

それにしてもねぇ、最後のページの絵、なんなんでしょうか。
雪子先生のウエディングドレス姿はいいんですが、青木~。

なにはともあれ、シリーズ完結、めでたいです。


タグ:清水玲子
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レプリカたちの夜 [日本の作家 あ行]


レプリカたちの夜

レプリカたちの夜



<裏表紙作品紹介>
「わかりませんよ。なにがあってもおかしくはない世の中ですから」--登場人物が呟くこのセリフこそ、はてしなく奇妙で、だが最高に魅力的な本作の世界観を代弁している。
 動物のレプリカ製造工場に勤める往本は、残業中の深夜、動くシロクマを目撃する。だが、この世界において、野生のシロクマはとういn絶滅したはずだった。往本は工場長に呼び出され、動くシロクマの正体を内密に探るよう頼まれる。
 はたしてシロクマは本物なのか? それとも工場で作ったレプリカに人が入っているのか? 入っているとしたら、それは一体誰なのか?--往本と共にシロクマを追ううちに、読み手はいつのまにか、ぐにゃりと歪んだ世界に足を踏み入れている。
 気づけば、ものごとはかなりの混乱をきたしている。あったはずのものがなかったり、なかったはずのものが現れたり。そして、その混沌の中で交わされる、妙な登場人物たちのヘンテコな会話に愛着を覚えるようになった頃には、あなたはその世界からすっかり抜け出せなくなっている。


単行本です。
第2回新潮ミステリー大賞受賞作です。
上で引用した内容紹介文、あれで1/3程度なんです。長いので、全部引用するのはやめました。

帯に、選考委員をつとめた伊坂幸太郎のことばが載っています。
いわく
とにかくこの小説を世に出すべきだと思いました。
ミステリーかどうか、そんなことはどうでもいいなあ、と感じるほど僕はこの作品を気に入っています。」
作品の評価は別にして、ミステリーの賞を授賞するのなら、その作品はミステリーでないと困ると思うのですが...

正直この作品をミステリーとして評価するのは難しいと思います。
ミステリー的な展開もあることはありますが、明らかに力点はそこにはない。
次々と出てくる謎は、ほとんど解かれません。
この作品は、大賞ではなく、せめて審査員特別賞とかいう枠組みで出版すべきではなかったか、と。
あるいは、いっそ伊坂幸太郎賞?

とはいえ、この小説をつまらないと思った、ということではありません。
ちゃんと理解できたか、という質問にもまったく自信がないという回答しかできませんが、不思議なおもしろさを感じました。
レプリカと本物、という分け方は、畢竟、人間とは、人とは、自分とは、という問いに重なっていくわけで、そりゃ難しい。

普通じゃない登場人物たちの奇妙な会話は、確かにクセになります。
おそらくはミステリではないのでしょうが、次はどんな作品を出してくるのか、気になる作家です。






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海街diary 7 あの日の青空 [コミック 吉田秋生]


海街diary 7 あの日の青空 (フラワーコミックス)

海街diary 7 あの日の青空 (フラワーコミックス)



<裏表紙あらすじ>
中学最後の年を迎えたすずに、静岡の高校からサッカー特待生の話が舞い込む。なかなか決められず、悩む彼女に寄り添う風太だが……。一方、すずの姉たち3人もそれぞれ恋の悩みを抱え!?
鎌倉の街に初夏の風が吹く、シリーズ第7巻。


このシリーズ「海街diary 7 あの日の青空」 (フラワーコミックス)には、
「同じ月を見ている」
「パンと女子と海日和」
「あの日の青空」
「遠い雷鳴」
の4話 収録。

「同じ月を見ている」では、いよいよすずが進学についての決断をします。
「同じ月を見ている」というのは「いろんな人がいろんな気持ちでおんなじ月を見てるんだろうね」という意味であるわけですが、「月はずっと同じように闇を照らしてくれていた」という含みも月はもっているわけですね。
紹介されている、満月の夜月が海に映って道みたいに見える「月の道」、観てみたいです。
久しぶりに藤井朋章の消息が触れられているのがGOODですね。

「パンと女子と海日和」では、幸ねえとヤスがついに恋人宣言。
一方で、浜田店長は千佳を置いてネパールに(2週間だけど)行ってしまうし、佳乃は坂下課長との間の壁にいらいらしています。

「あの日の青空」は、これまで何度も出てきたネパールの青空のことですが、なかなか意味深ですね。
すずは奈良京都へ修学旅行。こちらはお笑いパートですね(笑)。
一方で、ついについに、佳乃と坂下課長の仲が大きく進展します。山猫亭の福田のおやじが大きな役割を果たします。福田のおやじのする話も、坂下課長のする話も、重い内容ですが、重要ですね。
「話聞いてくれるいう相手がいつまでもおる思とんのか!? そんな相手が明日もまたおんなしように笑てくれるいう保証がどこにあんねん!」

「遠い雷鳴」は、うまくいきはじめた幸ねえと佳乃、そして決断を仕切ったすずの後日談的な雰囲気を漂わせながら、残ったチカの試練(?)が出てきます。
「あの日の青空はね たぶん あの場所に行かないと見えないんだよ」というチカのセリフが象徴的ですよね。
浜田店長がネパールに行ってしまったというだけではなくて、妊娠検査薬ですか...続きが気になりますね。吉田さん、あんまり厳しい運命をチカにつきつけないでくださいね。





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うそつき、うそつき [日本の作家 さ行]


うそつき、うそつき

うそつき、うそつき



<表紙袖あらすじ>
国民管理のために首輪型嘘発見器の着用が義務付けられた世界。非合法の首輪除去技術を持つ少年フラノは、強盗犯、痣のある少女、詐欺師、不倫妻、非情な医者、優しすぎる継母など、様々な事情を抱えた人々の依頼を請けて日銭を稼いでいた。だが彼には密かな目的があった。ある人のために特殊な首輪を探しだして、外すこと。首輪には複数のタイプがあり、中でも、フラノに技術を仕込んだ師匠ですら除去法を教えられず、存在自体ほとんど確認されていない難攻不落の型こそ、フラノが探す首輪・レンゾレンゾだった。レンゾレンゾを求めることがやがてフラノを窮地へ追いやり、さらには首輪に隠された秘密へと導いてゆく。人はなぜ嘘をつき、また真実を求めるのか。フラノが辿り着いた衝撃の結末とは?
近未来の管理社会を生きる少年の苦悩と成長を瑞々しい筆致で描く、ディストピア青春ミステリ。小説推理新人賞とダブル受賞でデビューした超大型新人による、第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。


単行本です。
第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。
ディストピアという語も上↑のあらすじには出てきますが、SF的設定を用いています。
正直、この設定、かなり疑問だらけ。
でも、まあ、この種の作品はそういうものだ、として読むのがよいのでしょう。
むしろ、その設定が効果的に使われているか、という方を気にしないといけないのでしょうね。
嘘発見器が常につけていて、他人がこちらの嘘を見抜いてしまうという状況で生まれ育つと、だいぶ人間の行動も変わってくると思うのですが、そういうような部分は読み取れませんでした...

この作品は、「首輪外し」を繰り返していくわけで、連作短編のようなテイストになっています。
後半はフラノ自身の物語としてまとまっていきます。
主人公フラノの現在と過去を交互に重ねて描いていくので、この構成はおもしろかったですね。

「首輪外し」は人助けでありながら、同時にその人を殺してしまう可能性を強く持っている設定が、フラノに与える影響が読みどころですね。
もともと少年少女の成長物語的なストーリーが好きなので、この作品には点が甘くなりますが、フラノのラストは予定調和でありながら、衝撃的で気に入っています。
しかし、このディストピア、何を目指したんでしょうか。

ただ、アガサ・クリスティー賞はどこに行ってしまうのでしょうか? 気になりますね。
アガサ・クリスティー自体、本格ミステリだけではなく、さまざまな作品を書いていましたので、本格ミステリでなければならない、とは思いませんが、これまでの5年間で、本格ミステリー「致死量未満の殺人」 (ハヤカワ文庫JA)1作だけ、残りの4作はいずれも癖球ばかり、というのはミステリ好きとしては寂しいです。
普通のミステリーでも、十分おもしろい、というのがアガサ・クリスティの王道だと思いますから、彼女の名を冠した賞もそうだといいのになぁ、と思います。




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インフェルノ [映画]

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いつものシネマ・トゥデイから引用します。

チェック:人気作家ダン・ブラウンのベストセラー小説を映画化した『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズの第3弾。主演のトム・ハンクス、監督のロン・ハワードが続投し、これまで数々の歴史や名画の謎を解明してきた宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授が、詩人ダンテの「神曲」の「地獄篇」に絡んだ世界を揺るがす陰謀に挑む。ラングドンと共に謎を追う医師を『博士と彼女のセオリー』などのフェリシティ・ジョーンズが演じるほか、『ジュラシック・ワールド』のオマール・シーとイルファン・カーンらが共演。

ストーリー:記憶喪失状態でフィレンツェ病院で目覚めたロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)は何者かに命を狙われるも、医師のシエナ・ブルックス(フェリシティ・ジョーンズ)の手引きで事なきを得る。やがて二人は、人口増加を危惧する生化学者バートランド・ゾブリスト(ベン・フォスター)が人類の半数を滅ぼすウイルス拡散をたくらんでいることを知る。彼らは邪悪な陰謀を阻止すべく、ゾブリストがダンテの叙事詩「神曲」の「地獄篇」に隠した謎の解明に挑むが……。


『ダ・ヴィンチ・コード』も『天使と悪魔』に続く、映画版ロバート・ラングドン教授シリーズ第3弾。
原作であるダン・ブラウンの小説の方は
「天使と悪魔」 (上) (下) (角川文庫)
「ダ・ヴィンチ・コード」 (上) (中) (下) (角川文庫)
「ロスト・シンボル」 (上) (中) (下) (角川文庫)
「インフェルノ」 (上) (中) (下) (角川文庫)
と出ています。
「ロスト・シンボル」は映画化飛ばされていますね。
この「インフェルノ」、原作を読む前に映画を観ました。「ロスト・シンボル」も積読です...

おもしろかったですが、どうでしょうね、ロバート・ラングドン教授シリーズとして捉えるとあまり...といったところではないかと思いました。
というのも、専門知識があまり活躍しないから。
活劇シーンが多いのも、この映画の見どころなのだと思いましたが、それとラングドン教授とがあまりうまく一致していないような気がします。

ラングドンの幻覚シーンが、ダンテの「神曲 地獄篇」 (講談社学術文庫)をなぞらえているのはすごくて、一瞬しかないシーンだけど印象的でしたが、全体としてみると、普通のサスペンス映画として出来上がっているようです。

ミステリ的には、ウイルス探索がいきあたりばったりなのはご愛嬌ですが、記憶喪失からスタートするだけに、誰が味方で誰が敵かわからない、というサスペンスは十分楽しめました。
タイムリミット・サスペンスとなっている部分は、ちょっと時間の設定に無理があるように思いましたが、定石的でもおもしろかったです。



原題:INFERNO
製作年:2016年
製作国:アメリカ



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サナキの森 [日本の作家 さ行]


サナキの森

サナキの森



<裏表紙側帯あらすじ>
昭和怪奇譚的テイスト×ラノベ的文体
平成生まれの25歳が放つ、新感覚ホラーミステリー
帯留めを探して欲しい――売れない小説家だった祖父が遺した手紙に従い、仕事を辞めてひきこもっていた私は、遠野を訪れる。この地の旧家で起こった80年前の不可解な殺人事件。それは祖父の怪奇小説『サナキの森』に描かれていた「呪いによる殺人」に酷似していた……。これは偶然の一致か? 祖父は何を知っていたのか? 時空を超えた謎解きが始まる。


単行本です。
新潮ミステリー大賞とかいう、新しい賞の第1回受賞作。
奥付は2015年1月です。

昭和怪奇譚的テイスト、ラノベ的文体、新感覚ホラーミステリーと惹句はいろいろと書かれていますが、読後の印象は、一所懸命ミステリを書こうとしたんだなぁ、というもの。なんたって密室事件ですから。

印象的な文体でスタートして、なかなかいいなと思って数ページ読んでいたら、
「おかーさん」
なんて記載が16ページにあって、せりふとはいえ、なんだかなぁ、と警戒モード。
あとは、「せんせー」というのが出てきますが、それ以外はそこまでひどくない。
この2つを除けば、文章にかなり自覚的な作家なのだと思います。

それが証拠に、作中作「サナキの森」は、旧仮名遣い(!)。
若い作者(1989年生まれ)の旧仮名遣いが正しいのかどうか、わかりませんが、雰囲気は出ています。
サナキというのは「逆袈裟に身体を千切られ、左腕と頭部、それより下の部分に分れた若い女性の妖怪」(116ページ)で、舞台となる佐代村が言い伝えの発祥という設定です。
「一人で山歩きしていると、どこからともなくゆっくり草履で歩く足音が聞こえて来て、その音が聞こえる方に行くとサナキい出会ってしまうから、聞こえたら反対方向に逃げなきゃいけない、けれど絶対に走ってはいけないって話。左腕とか左耳にアクセサリーと着けていると肉ごと持って行かれる……って」(67ページ)とも説明されます。
これをベースにした、旧仮名遣いの作中作「サナキの森」がポイントで、80年前の密室事件を解き明かす、というストーリー。

ただねぇ、この密室トリックがあまりにもいただけない。よくこれで長編を支えようとしましたねぇ。
新潮「ミステリー」大賞だし、なんとかミステリーっぽくしようとして、密室を採り上げたのはいいけれど、そんなにすごいトリックを思いつけるはずもなく、平々凡々なトリックでお茶を濁しちゃった、ということでしょうか。
これなら、密室だ、ということに焦点を当てないほうがよかったと思いますが、これがないとミステリーとしての趣向がほぼなにもないことになってしまうのがねぇ。
作中作の怪奇趣味すらミステリに奉仕する構成となっているので、一層ミステリとしての弱さが気になりますね。

とはいえ、新旧の文体を取り混ぜた構成とか、それぞれの時代に配置した人物像の軽やかさとか、いくつかポイントのある作品には仕上がっていると思いましたので、無理してミステリを志向せずに、自由に想像の羽根を拡げられるとよいのでは、と思いました。


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積読本は積読け!!






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