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サナキの森 [日本の作家 さ行]


サナキの森

サナキの森



<裏表紙側帯あらすじ>
昭和怪奇譚的テイスト×ラノベ的文体
平成生まれの25歳が放つ、新感覚ホラーミステリー
帯留めを探して欲しい――売れない小説家だった祖父が遺した手紙に従い、仕事を辞めてひきこもっていた私は、遠野を訪れる。この地の旧家で起こった80年前の不可解な殺人事件。それは祖父の怪奇小説『サナキの森』に描かれていた「呪いによる殺人」に酷似していた……。これは偶然の一致か? 祖父は何を知っていたのか? 時空を超えた謎解きが始まる。


単行本です。
新潮ミステリー大賞とかいう、新しい賞の第1回受賞作。
奥付は2015年1月です。

昭和怪奇譚的テイスト、ラノベ的文体、新感覚ホラーミステリーと惹句はいろいろと書かれていますが、読後の印象は、一所懸命ミステリを書こうとしたんだなぁ、というもの。なんたって密室事件ですから。

印象的な文体でスタートして、なかなかいいなと思って数ページ読んでいたら、
「おかーさん」
なんて記載が16ページにあって、せりふとはいえ、なんだかなぁ、と警戒モード。
あとは、「せんせー」というのが出てきますが、それ以外はそこまでひどくない。
この2つを除けば、文章にかなり自覚的な作家なのだと思います。

それが証拠に、作中作「サナキの森」は、旧仮名遣い(!)。
若い作者(1989年生まれ)の旧仮名遣いが正しいのかどうか、わかりませんが、雰囲気は出ています。
サナキというのは「逆袈裟に身体を千切られ、左腕と頭部、それより下の部分に分れた若い女性の妖怪」(116ページ)で、舞台となる佐代村が言い伝えの発祥という設定です。
「一人で山歩きしていると、どこからともなくゆっくり草履で歩く足音が聞こえて来て、その音が聞こえる方に行くとサナキい出会ってしまうから、聞こえたら反対方向に逃げなきゃいけない、けれど絶対に走ってはいけないって話。左腕とか左耳にアクセサリーと着けていると肉ごと持って行かれる……って」(67ページ)とも説明されます。
これをベースにした、旧仮名遣いの作中作「サナキの森」がポイントで、80年前の密室事件を解き明かす、というストーリー。

ただねぇ、この密室トリックがあまりにもいただけない。よくこれで長編を支えようとしましたねぇ。
新潮「ミステリー」大賞だし、なんとかミステリーっぽくしようとして、密室を採り上げたのはいいけれど、そんなにすごいトリックを思いつけるはずもなく、平々凡々なトリックでお茶を濁しちゃった、ということでしょうか。
これなら、密室だ、ということに焦点を当てないほうがよかったと思いますが、これがないとミステリーとしての趣向がほぼなにもないことになってしまうのがねぇ。
作中作の怪奇趣味すらミステリに奉仕する構成となっているので、一層ミステリとしての弱さが気になりますね。

とはいえ、新旧の文体を取り混ぜた構成とか、それぞれの時代に配置した人物像の軽やかさとか、いくつかポイントのある作品には仕上がっていると思いましたので、無理してミステリを志向せずに、自由に想像の羽根を拡げられるとよいのでは、と思いました。


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積読本は積読け!!






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十二月八日の幻影 [日本の作家 さ行]


十二月八日の幻影

十二月八日の幻影



<帯>
この男たち、スパイ殺し
奇襲作戦の秘密が漏れている! 裏切り者は誰だ?
太平洋戦争前夜の帝都・東京を舞台に、帝国海軍軍令部特別班と米英露の謀報員たちの知略と謀略が火花を散らす!
プロット、筆力、そして主人公たちの魅力を選考委員[あさのあつこ・笠井潔・今野敏・藤田宜永]が絶賛。


単行本です。
第18回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
奥付を見ますと、2015年2月20日。

好きなんですよ、こういう作品。
真珠湾攻撃前夜という時代背景に、日本を舞台とした諜報戦...
頭脳戦といったタイプのスパイもので、コンゲームに近いです。
わくわくします。なので、こういう作品が好きな方はぜひ。

なによりも、主人公である潮田と、その上官となる渡海少佐がいいです。
海軍省の食堂のシーンから、すっかり引き込まれてしまいました。カレーライスをめぐるやりとり、無茶苦茶おもしろいじゃないですか。
この後も、小出し小出しに、おやっと思えるシーンの連続で最後まで楽しく読めました。

「武士道など、三百年の太平でしか存在できなかった戯れ言です」(44ページ)
「そもそも、戦国時代に暗躍した忍者、あれは間諜、諜報員、そのものではありませんか。その忍者を使っていたのは、みな、名だたる名将たちですよ。彼らは武士ですよね」(44ページ)
おっしゃる通りですね。日本伝統の武士道って、ひょっとして概念として間違っている!?

「握手をしながら足で蹴り合っている。それが国と国との駆け引きというものです」(291ページ)
この蹴り合いを、垣間見せてくれるスパイものを、日本の軍部を舞台に楽しませてくれました。
第2作「幻影たちの哀哭」が、ようやく先月出たようですが、同じように大戦前夜の日本を舞台にした諜報戦のようです。楽しみです。





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第二級活字中毒者の遊読記




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しだれ桜恋心中 [日本の作家 ま行]


しだれ桜恋心中

しだれ桜恋心中



<表紙袖あらすじ>
若手文楽人形遣いの屋島達也は、師匠・吉村松濤のもとで充実した修業の日々をおくっていた。
そんなある日、達也は怪しげな魅力を持つ花魁の文楽人形「桔梗」を見つける。桔梗は『しだれ桜恋心中』という演目専用に作られた、特別な人形らしい。だが、約60年前に『しだれ桜恋心中』が上演された際、技芸員が次々と不審死を遂げていたことを知り、達也は桔梗に近づくことを恐れはじめる。
一方、補助金削減問題に揺れる日本文楽協会は、『しだれ桜恋心中』を呪いの演目として興行し、観客を呼びこもうとするが……。
一つの演目に込められた想いが引き起こす悲劇を描いた、第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。


単行本です。
第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。
奥付を見ると、2014年10月20日。うわぁ、2年も前の本だ...

アガサ・クリスティー賞は
第1回が森晶麿「黒猫の遊歩あるいは美学講義」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
第2回が中里友香「カンパニュラの銀翼」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
と非常に癖のある作品が続けて受賞したあと、
第3回が三沢陽一「致死量未満の殺人」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
で普通の本格ミステリがようやく受賞しました。
で、今回第4回のこの「しだれ桜恋心中」で、再びくせ者路線に戻りましたね。

ミステリ的な趣向もあり、ミステリ的な展開を見せても、この「しだれ桜恋心中」をミステリとして呼ぶのは少々無理がありそうです。
巻末につけられている選評を拝見しても、ミステリかどうか、疑念が呈されていますね。
鴻巣友季子さんの言うところの、「無謀とも言える語りのパワー」というのがポイントなのでしょうね。

文楽が題材で、修行中の若者を中心としたストーリーなんですが、文楽人形がしゃべるわ、動くは、もう、作者はやりたい放題です。
もともと人形というのはホラーでもよく使われますし、超常現象を起こす存在として、古今東西いろいろな物語で使われてきているのですが、ミステリーの場合は、もうちょっと抑制的というか、気を配った使い方をする必要があると思います。
文楽人形がしゃべることを前提として(特殊な)ミステリー世界構築、ということでもなく(文楽人形がしゃべるからこそのトリックとか、仕掛けとかがある、わけでもない)、単に文楽人形がしゃべる世界で普通の(ミステリーっぽい)ストーリーが展開するだけ、なので、ちょっと拍子抜け。

と、ミステリーとしては破格で、まあ正直落第といった出来栄えなんですが、面白く読んじゃったんですよねぇ。
人形を意識・意志を持つ一人の登場人部として配すとどうなるか、というのは、よくある安直な発想で、しかも文楽とか人形浄瑠璃とか人形が大きなウェイトを占める古典芸能を舞台に、となるとそれこそ安直の極みみたいな感じもするのですが、こちらに馴染みのない世界だからか、わりとすっと世界に入っていけたように思います。
北上次郎さんの選評「手垢のついた素材を人形を媒介にすることで新鮮な風景に一変する鮮やかさに注目したい」というのはこのあたりのことも関係しているかもしれませんね。(北上さんが文楽にお詳しかったらすみません)

ということで、アガサ・クリスティー賞という看板は無視して、ミステリを期待せずにお読みください。









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お言葉ですが…⑨ 芭蕉のガールフレンド [その他]




<裏表紙内容紹介>
手紙の作法にうるさい日本人。でも男が女に呼びかける手紙用の呼称は、夏目漱石の場合には「貴女」「貴方」など、「あなた」と読む言葉にほぼかぎられ、驚くほど少ない。芥川龍之介は恋文では愛称で「文ちゃん」と呼びかけているのに、結婚すると直に「お前」にかわっている。さて、江戸時代の松尾芭蕉の場合はどうだったのだろうか。


この本の著者、高島俊男の本は、きっかけは忘れましたが、「本が好き、悪口言うのはもっと好き」 (文春文庫)を読んだのが最初です。
すっかり気に入って、その後文春文庫から出ている、「お言葉ですが…」 (文春文庫)のシリーズをずっと買ってきています。
このシリーズ、
お言葉ですが… (文春文庫)
お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)
お言葉ですが…〈3〉明治タレント教授 (文春文庫)
お言葉ですが…〈4〉広辞苑の神話 (文春文庫)
お言葉ですが…〈5〉キライなことば勢揃い (文春文庫)
お言葉ですが…〈6〉イチレツランパン破裂して (文春文庫)
お言葉ですが…〈7〉漢字語源の筋ちがい (文春文庫)
お言葉ですが…〈8〉同期の桜 (文春文庫)
お言葉ですが…〈9〉芭蕉のガールフレンド― (文春文庫)
お言葉ですが…〈10〉ちょっとヘンだぞ四字熟語 (文春文庫)
お言葉ですが…〈11〉(連合出版)
と11冊出ているんですね。
最後の11巻だけ、文藝春秋ではありません。2006年に出た後、文庫化もされていませんね。
もともと週刊文春に連載されていたものが順次刊行されていったものなので、文藝春秋ではないのはちょっと???ですね。

さておき、言葉をめぐるエッセイです。
漢字だと、新字体ではなく旧字体を推しておられるので、新字体でしか知らない世代であるわれわれには、ちょっと古風に思えるところもありますが、言葉に関することなんて、古風な人に語ってもらう方がいいような気もします。
いろいろと、目からうろこ、というか、ああ、知らなかったなぁ、と思えることが出てきて、楽しいです。

たとえば、川端康成の「雪国」 (新潮文庫)を扱った「国境の長いトンネルを抜けると……」
金谷武洋先生の文章からの引用ではありますが、「雪国」 の冒頭のサイデンステッカーによる英訳が出てきます。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
「The train came out of the long tunnel into the snow country」
で、「原文では、読者の位置は当然、作者とともに、汽車の車中になる。
ところが英訳を読んだ英語話者は全員、上空から見おろした情景、ととるそうだ。」
うーん、鋭くて、おもしろいですよね。

そして、続けて、原文の冒頭の「国境」をどう読むか、と問います。
こっきょう? くにざかい?
個人的には、何も考えることなく、いままで「こっきょう」と読んでいました。
でも、確かに、意味から考えれば、「こっきょう」は変ですね。「くにざかい」に違いない。
けれどけれど、音のリズムから考えれば、「くにざかい」はちょっと分が悪い。「こっきょう」でないとしまらない。
ね、おもしろいでしょ?

中勘助の「銀の匙」 (岩波文庫)を扱った「『銀の匙』の擬声擬態語」では、「銀の匙」 が名文であることを、擬声擬態語の観点からするどく指摘しています。
「銀の匙」 をゆっくりと音読で再読してみたくなりますね。

漢字「十」の読み方を扱った「七時十分になりました」は、このテーマはこのシリーズで扱うのは初めてではないのですが、楽しく読めました。
「じゅっぷん」は誤りで、「じっぷん」が本来は正しい、というのは何度読んでも興味深いです。個人的には「じゅっぷん」と読んじゃっていますが...

物の数え方としての、「本」の謎? を扱った、「論文は何本?」も、おもしろい。
意識したことなかったですが。

「日本人にとっては、組織のなかでの役割がすなわち自分なのである。」ということを扱った「役割に生きる日本人」もいろいろと考えるところのある興味深い話。

当然ながら、次の「お言葉ですが…〈10〉 ちょっとヘンだぞ四字熟語」 (文春文庫)も買ってありますので、いずれ読みます。
こういう本をたまに読んで、言葉に関して思いを巡らせるというのもいいものです。楽しみです。



タグ:高島俊男
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秘密 トップ・シークレット (11) [コミック 清水玲子]





2012年10月に出たコミックです(奥付は2012年11月になっていますが)。
「秘密 12―トップ・シークレット」 (ジェッツコミックス)が同時発売でした。一気に完結したわけですね。
この第11巻は「秘密 トップ・シークレット 2010 END GAME」の続きが収録されています。
新装版が今年出ています。

衝撃的なオープニングです。
いわく、
「本日7月6日午前1時すぎ警備員一名に対する傷害及び『第九』のレベル5 『データ九〇二〇五四』 レベル4 『データ九〇二〇五九』の無許可持出し強奪の容疑で
同日午前6時 「第九」研究室 室長 薪剛警視正に対し本部内手配の決定が下った!」
しかも、
「拳銃を所持している被疑者に対し 拳銃の使用を認める決定が先程出た」
と。

薪、青木、岡部、山本その他の第九の面々と怪しい滝沢。そして三好雪子先生。
シリーズの主だった面々がそれぞれきちんと登場し、きちんと見せ場(?) があります。すごい。
怒涛のクライマックスへ向けて、ずんずん。
シリーズ全体を覆っていた“秘密”がいったいなんだったのかが明かされますが、そして薪にずっとまとわりついていた過去に秘められた秘密も明かされますが、最初からこういう構想でこの物語は書かれていたんでしょうか? すごーく大きな絵にしあがっています。
それにしても、青木、やっぱりかわいそうですよねぇ。

この11巻のラストは、薪と青木が対峙して終わりますが、さて最終巻ではどんな結末が待っているのでしょう??

余談ではありますが、薪が潜んでいる(?)、 いや、向かっている場所がポイントとなる部分があるのですが、読み返して気づきましたが、作者は非常にフェアに書いていらっしゃいますね。
読者は気づいていてしかるべし、というところです。ステキ。



タグ:清水玲子
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チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
しばらくの間ロンドンから離れ、妻ジョハナと用心棒ジョックとともにジャージー島に移り住むことになったモルデカイ。だが平和な島での暮らしが一変、連続レイプ魔事件が発生する。かつて島中を震撼させた〈ジャージー島の野獣〉事件を思わせる手口と、犯人が残していった手がかりから、悪魔崇拝が関係しているのではとにらんだモルデカイは、対抗手段をとるべく奮闘する。しかし事態は思わぬ展開を迎え、さらなるピンチに!?


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾なんですが、発表されたのは「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」より先のようです。物語の中の時系列として、この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 が後なんですね。

あいかわらずの怪作ぶりで、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、という構図を踏襲しているのですが、うーん、ちょっとこれは...
前作の感想で、「主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)」と書いたんですが、この作品ではそのレベルを超えて、ちょっと受け付け難いレベルの事態が起こります。
連続レイプ魔事件、という題材もよくなかったのかもしれません。
こういう不謹慎な笑いを楽しむには、まだまだ修行が足りないのでしょう。なんだか、生々しい感じがしてしまうんですよね。
いっそ殺人事件の方が、不謹慎にも楽しめたのかもしれません。

ミステリ的に見ると、犯人の隠し方は単純であっけないくらいですが、モルデカイのドタバタぶりにはこういう隠し方が似合っているのだと思いました。
残り1冊、「チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件」 (角川文庫)を読むのがちょっと怖いなぁ。いつになるのかわからないけれど。

それにしてもこの作品、以前「深き森は悪魔のにおい」 というタイトルサンリオSF文庫から出版されていたそうです。
サンリオSF文庫って、やっぱり、すごかったんですねぇ。
ピーター ディキンスンの「キングとジョーカー」 がサンリオSF文庫だったというのを知ったときも(現在は扶桑社ミステリーです)、SFじゃないなぁ、と思っていたものですが、それでもパラレル・ワールドのイギリスを舞台にしているのでぎりぎりSFと呼んでもいいのか、という余地はありました。
この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 には、SFの臭いはどこにもありません...



原題:Something Nasty in the Woodshed
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1976年
翻訳:三角和代








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放課後はミステリーとともに [日本の作家 東川篤哉]


放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)



<裏表紙あらすじ>
探偵部副部長の涼は、推理よりギャグの方が得意だった?
霧ケ峰涼が通う鯉ケ窪学園高校にはなぜか事件が多い。校舎から消えた泥棒、クラスメートと毒入り珈琲一族との関わり、校外学習のUFO騒動、密室状態の屋上から転落した女子…etc.それらの謎を解くはずの涼だが、ギャグが冴えるばかりで推理はなぜか発展途上。解決へ導くのは探偵部副部長なのか、それとも意外なあの人か? ユーモア学園推理の結末は?


もうこのシリーズの次作「探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに」 も文庫化されていますね。
この「放課後はミステリーとともに」 は、連作短編集で、8話収録です。
チラシがはさまっていまして、それから写しておくと、
「霧ヶ峰涼の屈辱」
鯉ヶ窪学園高等部のE館で発生した盗難事件。涼が先輩や警備員と犯人を追いかけたが、その姿が館内で消失してしまった。
「霧ヶ峰涼の逆襲」
学園芸能クラス出身の女優の部屋を張り込む芸能カメラマン。涼がカメラマンの愚行を止めようとした時、当の女優が現れたが……。
「霧ヶ峰涼と見えない毒」
涼は親友にしてクラス委員の高林奈緒子居宅を訪れた。奈緒子の居候先の祖父が、珈琲毒殺未遂事件に巻き込まれたというのだ。
「霧ヶ峰涼とエックスの悲劇」
流星雨観測の夜、国分寺上空にUFOらしき飛行体が出現。UFO愛好家・地学の池上先生と涼はその物体を追いかけることに。
「霧ヶ峰涼の放課後」
体育倉庫から煙草の煙が。涼と奈緒子は体育倉庫の掃除道具入れで不良の荒木田を捕まえたが、肝心の煙草はどこに?
「霧ヶ峰涼の屋上密室」
学園裏門近くで、女生徒が突如落下。運悪く教育実習生に当たってしまった。居合わせた涼が、女生徒がいたらしき屋上で見たものは。
「霧ヶ峰涼の絶叫」
陸上部の自称スーパースター、走り幅跳び選手の足立が砂場で倒れていた。だが、砂場には足立以外の足跡がなかったのだ。
「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」
またもE館で事件発生。涼が美術室で昏倒している荒木田を発見。逃げる犯人は学生服姿だから間違いようがないはずだが……。


冒頭の「霧ヶ峰涼の屈辱」はミステリとしてはかなり常識的な解決を見せますので、喰い足りないといえば喰い足りないのですが、作者と編集部が「第1話『霧ヶ峰涼の屈辱』からお読みいただくようお願いいたします」という由縁の仕掛けがあるので、つかみはOKですね。(まあ、その仕掛けも他愛ないといえば他愛ないですが)
で、第2話の「霧ヶ峰涼の逆襲」が、平凡そうな舞台装置でツイストを効かせてあって〇。これがこの作品集の中では個人的にベスト。第1話「霧ヶ峰涼の屈辱」のあとに、この「霧ヶ峰涼の逆襲」が置いてあるというのも、いいではないですか。
次の「霧ヶ峰涼と見えない毒」のトリックは、正直つまらない。一転して「霧ヶ峰涼とエックスの悲劇のトリックは、その絵面のばかばかしさに和みますが、UFOと絡ませてあるのは優れているなぁ、と。
「霧ヶ峰涼の放課後」がまたつまらないトリックでがっかりするところへ、「霧ヶ峰涼の屋上密室」のシチュエーションがトリックそのものというような設定に少し感心。
「霧ヶ峰涼の絶叫」は、ちょっと作品にしたことを後悔してほしいくらいの無理さ加減ですが(砂場でのこのトリック? はないなぁ)、ラストの「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」は、第1話「霧ヶ峰涼の屈辱」と同じ設定の謎を違う形で解決し、そのほかにも第1話と呼応するところをちりばめた趣向に満足できる。

というように、1冊の中でアップダウンの激しい作品集なわけですが、どことなく、なんとなく愛すべき短篇集のような気がしました。
シリーズ第2作も、きっと読みます。



<蛇足>
アルファベットのEの書き順、
「よっぽどのひねくれ者でないかぎり、横、縦、横、横、横の順に棒を引いたはずである」(13ページ)
と書かれているのですが、アレ? 僕、違う書き順で書いてますね....




タグ:東川篤哉
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茶坊主漫遊記 [日本の作家 田中啓文]


茶坊主漫遊記 (集英社文庫)

茶坊主漫遊記 (集英社文庫)



<裏表紙あらすじ>
関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首されたはずの石田三成であった。行く先々で起こる奇ッ怪な事件をズバッと解決、高笑いを響かせながらの諸国漫遊だが、どうやら秘めたる目的があるらしい。一方、三成存命を知った将軍家光は、一行の始末を隠密・柳生十兵衛に命じるが―。ミステリ仕立ての痛快時代小説


引用しておいていうのもなんですが、↑のあらすじ、少々フライング気味でして、この老僧が石田三成であることは、なかなか明かされない趣向になっているんです...

さておき、あらすじも見る前、タイトルだけを見て、
「茶坊主漫遊記」 か、なるほど、時代物ねぇ、と思っていたのですが、読む前に気づきました。
坊主となっていますが、要するに神職で、茶+坊主、すなわち、ブラウン+神父、ブラウン神父のもじりなんですね。
なるほどな、と思って目次をみてみると
第一話 茶坊主の知恵
第二話 茶坊主の童心
第三話 茶坊主の醜聞
第四話 茶坊主の不信
第五話 茶坊主の秘密
ですから、明確ですね。
(ただし、ブラウン神父は、童心→知恵→不信→秘密→醜聞の順ですが)
さらに第一話を読むと、茶坊主の相棒(?)が、腐乱坊。いや、恐れ入りました。
これ、でも、ミステリを読まない人が読むと、わけわかんないのでは? と余計な心配をしてしまいます。

第一話は、狭い洞窟の中で、奥から射殺されたように見える死体を扱ったちょっと小洒落たミステリ。
第二話は、仇討を題材にさらっと逆転して見せる小粋な感じ。
その後、次第次第に時代物としての色彩が強くなっていき、第三話は瀬戸内の小さい島菩提島に眠ると言われる逆し丸の財宝の行方を、第四話ではキリシタン弾圧激しい領主寺沢堅高を、そして最終話では最終目的地(?)である薩摩藩で豊臣の最期にまつわる謎を扱います。
いずれも、ブラウン神父をもじっただけあって(?)、逆説的な謎解きを見せてくれまして、満足。
とかく駄洒落に注目が集まりがちな田中啓文ですが、デビュー「本格推理〈2〉奇想の冒険者たち」 (光文社文庫)に投じた作品というだけあって、ちゃんとミステリとしての目配りもl効いています。
一方で、柳生十兵衛や宮本武蔵、猿飛佐助まで登場させて豪華ですね。

この作品はこれで完結なんだと思いますが、続きがあれば読んでみたいですね。
それくらい、この茶坊主=石田三成、気に入りました。




タグ:田中啓文
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眼球堂の殺人 ~The Book~ [日本の作家 さ行]


眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
神の書、"The Book"を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人(とわだただひと)がジャーナリスト・陸奥藍子(むつあいこ)と訪れたのは、狂気の天才建築学者・驫木煬(とどろきよう)の巨大にして奇怪な邸宅 "眼球堂" だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う。密室、館、メフィスト賞受賞作にして「堂」シリーズ第一作となった傑作本格ミステリ!


第47回メフィスト賞受賞作で、〇〇"堂の殺人"というパターンで、で、目次をみると、「眼球堂の殺人事件」と書いてあって...いかにもな作りで、いかにもな作品ですよね。
帯には、森博嗣が
「懐かしく思い出した。
本格ミステリィの潔さを。」
なんて書いている。
うーん、どうでしょうか。期待しすぎましたか。あるいは、こちらが若い頃に読んでいたらよかったのか...
最近、本格ミステリ、より厳密にいうといわゆる新本格ミステリテイストの作品を読むとこういう感想を抱くようになりました。

奇矯な登場人物に、奇矯な建物。
世界を代表する天才建築家驫木煬(とどろきよう)が建てた建物、眼球堂。集められたのは天才たち。
つまらないと思うわけではないのですが、なにか物足りなく感じてしまうんですよね。
館ミステリにつきものの図面。
38ページとか、42、43ページに掲げられている図、わくわくすんですよね。
でも、これこの数枚の図を見ただけで、
(ネタバレにつき伏字にします)アレ? この館回転するんじゃないの?  アレ? この立地、水が溜まるんじゃないの? (ここまで伏字)
と思ってしまうんですよね。

また、驫木煬の子どもが、善知鳥神(うとうかみ)という天才数学者である、という設定になっています。
でも、館に呼ばれたのは、探偵役をつとめる、放浪の天才数学者十和田只人で、善知鳥神はいない、と。
この設定だけで、
(ネタバレにつき伏字にします)呼ばれている登場人物の中に善知鳥神がいるんだろうな、とすると候補者少ないな。 ってことは、あれか、十和田とくっついているということで冒頭から登場する、陸奥藍子が怪しいよな。叙述トリックかぁ。タイトルと違う目次だったしねぇ。(ここまで伏字)
と思ってしまうんですよね。

で、真相はその通りだったんで、ちょっと残念。
メインとなる部分が、早々に見当ついちゃうと、ちょっとね。

それでも、この作品、おもしろかったかどうかというと、おもしろかったんです。
一昔前でいうところのペダンティックな部分(天才同士の会話とか、建築学があらゆる学問の最上位に来るものだ、とか)も、もっともっと淫してほしいと思ったりもしましたが、この作品には、ミステリが古来持っていた(大げさですが)、稚気、遊び心が溢れているからです。
いわゆる新本格が大切にしていたものを、この「眼球堂の殺人 ~The Book~」 (講談社文庫)はきちんと受け継いでいると確かに感じました。

続々とシリーズが文庫化されていくようなので、追いかけてみたいです。


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C.M.B.森羅博物館の事件目録(21) [コミック 加藤元浩]






この第21巻は、
「冬木さんの1日」
「湖底」
「エルフの扉」
「バレッタの燭台」
の4話収録です。

「冬木さんの1日」は、外資系の会社で働く冬木亜季の死んだ父親冬木一郎の一日を亜季が見つめなおすというストーリー。
ポイントは、「“驚異の部屋(ヴァンダー・カンマー)”をご案内します」といういつもの決め台詞を、森羅ではなく立樹が言うことでしょうか(笑)。森羅が横にいたのに。
この程度で“真実”に気づけるのなら、もっと早く気づいていたと思いましたが、灯台下暗しではないけれど、意外とそんなものかもしれませんね。

「湖底」は日本有数の巨大グループを率いる一族の姉妹が出てきて、妹の恋人が溺れて死んだという話。
水中遺跡が出てきて楽しいのですが、溺れたときに船が突然消えたと目撃されている、というのが非常に美しく解かれるのが更に楽しい。
これ、大好きです。

「エルフの扉」は、マウがメインキャストですね。
マウの少女時代のエピソードが出てきます。なるほどね。
でも、やっぱり、騙す方も悪いけど騙される方も悪いように思えました、このストーリーでは...

「バレッタの燭台」は、マルタ島が舞台で、聖ヨハネ騎士団が出てきます。
聖ヨハネ騎士団のバレッタ騎士団長が礼拝で使っていた燭台をめぐる話で、ドイツ、スペインフランスイギリスの4ヶ国が所有権があるとして名乗りをあげます。
この裁定を森羅がする、というわけですが、まあ、この決着はどうでもよくて(失礼、でも、こんなのどうとでも、と言えそうな...)、七瀬の活躍の仕方がポイントですね。

この21巻、ヒヒ丸が出てこなかった...
タグ:加藤元浩 CMB
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