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殺さずにはいられない [日本の作家 か行]


殺さずにはいられない - 小泉喜美子傑作短篇集 (中公文庫)

殺さずにはいられない - 小泉喜美子傑作短篇集 (中公文庫)

  • 作者: 小泉 喜美子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/08/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
推理作家が親友に古今東西の「殺し方」を話したその晩、人が殺された。驚きの方法で……(「冷たいのがお好き」)。昔の恋人を消す計画を練っていた男が落ちた陥穽(「殺さずにはいられない」)。幻のショートショートを含む傑作短篇集第二弾。著者選「ミステリーひねくれベスト10」も収録する。


イギリス読書第2弾は、「殺さずにはいられない」 (中公文庫)です。
「痛みかたみ妬み」 (中公文庫)に続く、小泉喜美子傑作短篇集の第2弾です。「痛みかたみ妬み」は買ってあるんですが未読で、ゆっくり船便でイギリスにやってくるはずです(笑)。
シャーロック・ホームズの次が、小泉喜美子かい、と言われそうですが...このところ復刊著しい作者ですから、気になっていまして。
収録作品は
「尾行報告書」
「冷たいのがお好き」
「血筋」
「犯人のお気に入り」
「子供の情景」
「突然、氷のごとく」
「殺人者と踊れば」
「髪ーーかみーー」
「被告は無罪」
「殺さずにはいられない」
「客にはやさしく」
「投書」
「ボーナスを倍にする方法」
「御案内しましょう」
「ありのまま」
「プロの心得教えます」
で、これに加えてエッセイ「ミステリーひねくれベスト10」が収められています。
「客にはやさしく」以降の6作は、ボーナストラックともいうべきショートショートとのことです。

まず率直に言って、いかんせん古いですね。今の感覚で読むと、古めかしい。冒頭の「尾行報告書」をちょっと読むだけでそのことがわかります。
なので、時代色を楽しむ感じで読むのが吉だと思います。逆に、古めかしいところが味わい深かったりして。
閉店に「かんばん」とルビがふってある(20ページ)とか「小型の早撮りカメラ」(30ページ)なんてものが出てきたりとか(いったい、どんなカメラのことを言うんでしょうか?)...
「呼ばわる」(30ページ)や「飾り窓」(32ページ)、「けぶりにも見せず」(271ページ)というのも最近はあまり目にしない表現ですね。
エッセイ「ミステリーひねくれベスト10」にも「彫心鏤骨」(348ページ)なんて素敵な表現が出てきます。
このあたりも楽しみどころといえるのではないでしょうか?

古めかしいことを別にしますと、いずれの作品でも、ツイスト(ひねり)が効かせてあることが特徴だと思います。
それぞれのツイスト自体は他愛もないというか、よくあるパターンのものなのですが、よくあるパターンといっても、そこは編者解説にも書かれているように
「洗練されていなくては、ミステリーとは言えないわ」
「メイン・ディッシュはミステリー」 (新潮文庫)で言い、
『「何を」より「いかに」書くかに重きをおくタイプの作家』
とされていた小泉喜美子ですから、細かな配慮が行き届いているように見受けられましたので、さらっと読んでしまってはもったいない作品集なのかもしれません。

気になった作品について触れておきます。ってほとんどの作品ですが。
「冷たいのがお好き」はあらすじにも触れられていますが特異な殺人方法が取り上げられています。ただしそれは実際には実現不可能な方法なんです(この方法では人は死なない)。その意味ではあらすじが殺人方法に焦点を当てているのは間違いだと思います。とはいえ、だからダメな作品ということはなく、わたしと司まゆみの関係や振る舞いに焦点を当ててみると、(たとえ作中で殺人が起こらなくても。つまり例のトリックで被害者が死ななくても)ツイストはきちんと成立しているんですよね。殺人を中心に奥行きがあるというか、広がりがあるというか、おもしろい狙いの作品だと思いました。
「血筋」は、うーん、わかりやすすぎ? ただ、ラストははっきりと書かずに思わせぶりなところが〇だな、と感じました。
「犯人のお気に入り」は、かなりツイストがうまく効いていると思いましたね。読んでいてなんかおかしいな、と思っていたんですけど...同じ趣向を西澤保彦が長編でやっていますね。(← amazon にリンクを貼っておいたのでネタバレが気になる方はクリックなさいませんよう)西澤保彦の作品も好きな作品です。
「子供の情景」は、タイトルからしてオチが読めてしまうという方がいらっしゃってもおかしくない話であまり高くは評価できない気がしますが、きっかけが皮肉な感じに出来上がっているのがポイントでしょうか(そうでなければお話しにならないかも、ですが)。
「突然、氷のごとく」は、倦怠期の有閑夫人(!)が陥る罠、という話で、これまた予想通りの展開といえるかもしれませんが、ラストの有閑夫人の行く末が個人的にはパンチが効いているというか、小泉さん意地悪だなぁ、というところ。
「殺人者と踊れば」も、うっかりすると気づかずに作者の罠にはまるかも、ですね。さらっとさらっと書かれています。丘(山)の上の館といういかにもな舞台をこういう風に使うんですね。導入部というラストといい、雰囲気のある作品です。
「髪ーーかみーー」は、個人的には割とあっさりオチが読めたんですが、主人公の思惑をひっくり返すところのキーポイントは気づきませんでした。
「被告は無罪」は、むかーし、図書館で借りた日本推理作家協会の年鑑(今でいうと、「ザ・ベストミステリーズ」ですね)で読んだことがあるはずだと記憶しており、実はストーリーもかなり覚えているつもりだったんですが、今回読んだら、あれっ? となりました。ラストが記憶と違う。そして、記憶よりもずっとずっと気の効いたエンディングでした。小泉さん、失礼いたしました。これこそツイストをうまく利用している作品の例ですよね。
「殺さずにいられない」は、出世に役立ちそうな縁談がある若い男が、昔の恋人が邪魔になって、というストーリーで大方の予想通りといった方向に話が進むんですが、ラストの急展開はかなり皮肉が効いています。あらすじには、男が落ちた陥穽、とありますが、そこから先の「殺さずにいられない」というのが急所ですよね。
最後の「プロの心得教えます」には作者の分身みたいな作家が出てきて興味深かったです。
そしてエッセイの「ミステリーひねくれベスト10」ですが、いやあひねくれにもほどがあるというか、すごいラインナップですね。ミステリーかどうか疑わしそうなのも混じっているようですが、それでも小泉喜美子が推すんなら読んでみたいと強く思いますね。ほとんど絶版やらで手に入らないみたいですが...


<蛇足>
「エスパアハンの園の薔薇茶」(13ページ)とありましたが、今風にいうとイスパハンでしょうね。薔薇の名前というよりは、どちらかというとお菓子も名前として知られているような気がしますが。



タグ:小泉喜美子
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シャーロック・ホームズ 絹の家 [海外の作家 は行]

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

  • 作者: アンソニー・ホロヴィッツ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/10/24
  • メディア: ペーパーバック

<裏表紙あらすじ>
ホームズの下を相談に訪れた美術商の男。アメリカである事件に巻きこれまて以来、不審な男の影に怯えていると言う。ホームズは、ベイカー街別働隊の少年達に捜査を手伝わせるが、その中の1人が惨殺死体となって発見される。手がかりは、死体の手首に巻き付けられた絹のリボンと、捜査のうちに浮上する「絹の家」という言葉……。ワトスンが残した新たなホームズの活躍と、戦慄の事件の真相とは?


ロンドン暮らしとなって、最初に読んで本が、これ。
日本を出るときに、道中(電車の中や飛行機の中)に読もうと思って買った4冊の中の1冊です。
結局、電車や飛行機では読まずに、4冊ともそのままイギリスに持ち込むことになってしまいました。

ロンドンといったらやっぱりシャーロック・ホームズですよねぇ、ということで選びました。
正典じゃないですけどね、でも、このシリーズはパスティーシュといっても続編としてコナン・ドイル財団の許諾を得たものなので、準正典とでもいうものでしょうか。
訳者付記によれば、正典の精神を尊重するため、作者のホロヴィッツは十箇条のルールを自らに課したそうです。

日本語訳で読んでいますので、訳者の功績も大きいのだと思いますが、しっかりと懐かしのホームズの雰囲気は味わえました。
だから、めでたしめでたし、といえればいいのですが、うーん、どうでしょうこの作品は。
「活字にするにはあまりにおぞましい、身の毛もよだつような事柄が含まれている」
「いま読んでも戦慄を禁じ得ないだろう」(14ページ)
とワトソンが振り返って書いているのですが、こちらの勝手な思い込みかもしれませんが、正典の品位を損なっていないでしょうか? だからこそ「当時は公表するのがはばかられた」ということなんでしょうけど。
あとやはり、ベーカー街別動隊(不正規隊と呼ぶときもある、と書かれています。ベーカーストリートイレギュラーズですね)やその関係者を真の意味で危険な目に合わせる、というのも気になりますね。
いい意味での、おとなのおとぎ話、といった雰囲気を保っていてほしいというのは、わがままでしょうか。

ただし、この点を除くと、すこぶる快調です。
アメリカから復讐を誓って追いかけてくるギャング、とか、謎に満ちたアヘン窟、ロンドンから馬車で1時間ほどのところにある男子学校にグロースターシャーのマナーハウスとか雰囲気を楽しめますし、レストレイド警部に、マイクロフト、さらにはあの人物まで出てきて話を盛り上げてくれます。ホームズもホームズらしく(肝心の推理の部分が、ホームズらしくなくどたばたしますけど)、ワトソンもワトソンらしく、動きます。
事件のほうも、毒を盛られている形跡がないのに衰弱していく老婆の謎、とか小粒ながら意外とトリッキーでいいですよね。
なによりも、美術商の話が、いつのまにか絹の家の話へと展開していって、そのまま一方通行的話の流れなのかな、と思いきや、きちんと美術商の話も続いていく構成が素晴らしいと思いました。
続編のタイトルが、「モリアーティ」 (角川文庫)
このシリーズ、気になるところもあるんですが、楽しみです。



<蛇足>
「辻馬車をつかまえてサザーク橋を渡った。チープサイドからテムズ川をまたぐ、三つの大きな鋳鉄のアーチが支える橋だ」(137ページ)
チープサイドは知っていたのですが、サザーク橋は知らなかった(意識していなかった)ので、せっかくロンドンにいることだし、今泊っているサービスアパートメントからもほど近くなので、見に行ってきました。チープサイドとつながっている感じはしませんが...
DSC_0186_.jpg
ぼろい携帯で撮ったので、画像は悪いですが、雰囲気をつかんでいただければ。
ミレニアムブリッジから撮りました。遠くにタワーブリッジが見えます。余談ですが、あのタワーブリッジを、「ロンドンブリッジ」だと勘違いしている人が多いですよね。
近寄ってみるとこうなります。
DSC_0190_.jpg
ちなみに
DSC_0192_.jpg
ですので、知らずに見ると「サウスウォーク」と読んでしまいそうですね(5月23日追記:サウスウォークよりはサウスワークと読みそうですね、このスペルだと)。ちょっとイギリス人の発音を確かめてみたいところ。

蛇足ついでに、時間的には18:30くらいだったのですが、まだまだ明るくセントポール寺院の敷地(?)にある広場っぽいところは、こんな感じでした。
DSC_0196_.jpg
ちなみにセントポール寺院も藤(ですよね?)といっしょに撮ってみました。
DSC_0200_.jpg

あと、ホームズの兄マイクロフトが通っている<ディオゲネス・クラブ>があるというペルメル街。
スペルは、Paul Mall なんですよね。これ、ポールモールって読みますよね、普通。早く読んでもポルモル。これもイギリス人に発音を確かめてみたい。(5月23日追記:Mall はモルと読むかもしれません)
トラファルガー広場、ピカデリーサーカスに近いわりと大きな通りです。
DSC_0206_.jpg
写真右側の建物の左のほう、高さで言うと画面真ん中くらいの高さのところに、通りの名前が掲示してあります。拡大すると見えるでしょうか??

原題:The House of Silk
作者:Anthony Horowitz
刊行:2011年
訳者:駒月雅子




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すっかりご無沙汰しております [折々の報告]

前回ブログを更新したのが3月10日でしたので、2ヶ月以上間が空いてしまいました。
決算期末ということで3月が忙しかった、というのが3月更新できなかった言い訳で、その後実は転勤を命じられ、その対応にあたふた、ドタバタしておりました。
転勤先が、ロンドン...こういうのって、急に命じるもんじゃないでしょ...と思いつつ準備を進めておりました。
東京での仕事の引継ぎ、VISA取得に、家を引き払う手配、いろいろとやることが山積み。また、ありがたいことにいろんな形で送別会・壮行会も開いていただき、とても忙しい、充実した日々を過ごしました。
このブログは仕事関係者は見ていないと思いますが(見ていたとしてもぼくのブログだとはわからないでしょう)、みなさま、ありがとうございました。
5月のゴールデンウィーク明けに無事(?)ロンドンに到着しました。

ということで本も読めていませんが、未読だった本はある程度船便で送っているので、そのうちロンドンに到着するのですが、まだまだ先だし、読み終わって感想をまだ書いていない本もみーんな日本に置いてきたので、このブログどうしようかなぁ、と考えています。完全に記憶ベースで感想を書くのもなんだかなぁ、ですし、書くことがない...

ロンドン暮らしのスタートをつれづれ書いてみるのもいいかも、と思いましたが、するとブログのテーマがねぇ...
新しいブログでも作っちゃうかな...

ちなみに、ロンドンはまだ寒い日が多いです。
日本から到着した日は暑かったんですけどね。
とりあえずの近況報告です。

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映画:ガーディアンズ [映画]

ガーディアンズ T0022631p.jpg

さらにさらに続いてみたのがこちら。
ロシア映画です。ロシアの映画観たの、初めてじゃないかと思います。
上に掲げたポスター、ご覧ください。
日本よ、これが露映画だ。
 まさにロシア版『X-MEN』! これは、マーベルへの挑戦状だ!」
勇ましいですね。
映画のHPから引用します。

全露初登場No.1! 総製作費3億ルーブルの超大作!
2016年8月、ある映画の予告編が動画投稿サイトにアップされ、世界中で大きな話題を呼んだ。
ハリウッド超大作と見まがう巨大なスケールで描かれたそのSF映画人々を驚愕させたのは、それが純正のロシア産スーパーヒーロー映画だという点だった。登場するヒーローは、熊に変身する人間、岩石を操る男、透明化する恐ろしく美しい女など、いずれもアメリカのマーベルやDCとは異質で、ロシア的ミステリアスさを漂わすキャラクターたち。本国ロシアで興行収入初登場No.1を飾った、謎多き大国が放つSF超大作が、2018年、遂に日本に上陸する!

ソヴィエト時代の“闇”が国家を滅ぼそうとしたとき、4つの力に全ての希望が託されたーーー。
冷戦下のソヴィエト。違法な遺伝子操作により特殊能力を持つ兵士を生み出す“パトリオット計画”が進行し、超人部隊が生み出されようとしていた。だが、名声を我がものとしようとする組織の科学者クラトフの裏切りにより、研究所は爆破され、超人たちも姿を消してしまう。50年後、自らも強大な力を持つ超人となったクラトフがロシアを崩壊させようとした時、パトリオットは世を捨てて生きるかつての超人たちを見つけ出し、国家の危機を防ごうとする。
集められたのはアルスス、レア、ハン、クセニアら4人の超人達。彼らは、失ったアイデンティティを取り戻すため、クラトフを倒すことを決意する。結成されたチームの名は“ガーディアンズ”。彼らこそ、最後の希望ーー。

1ルーブルは、1.87299893 円みたいなので、ざっくり2円として製作費6億円。
あらすじを観ていただいただけでお分かりいただけると思いますが、「X-MEN」や「アベンジャーズ」などのハリウッド映画そのまんまのストーリー。
「マーベルへの挑戦状」とポスターに記載されていますが、それをいうなら「マーベルのパクリ」でしょうねぇ、ここまで似ていると...
SFX(VFX?)はそれなりに頑張っていますが、全体的にはかなり質の悪いパクリで、こういう映画はまじめに観るのではなく、あちこち突っ込みまくりながら、笑って観るのが正解なのでしょうねぇ。

4人の超人の設定をご紹介しておくと
獣のパワーを持つ天才科学者 アルスス
念動力で鉱物を操る賢者 レア
超音速を誇る剣の達人 ハン
擬態能力で忍び寄る美女 クセニア
です。為念、付け加えておくと、獣のパワーというのは、オオカミではなくて、クマです。ロシアらしい! ポスターもそうですね。

敵役のクラトフがこれまた異常なくらい強くて笑えます。
最初、4人のガーディアンズはあっさり負けちゃって(撃退されちゃって)、戻って訓練して再び立ち向かう、って、なんじゃそりゃ(笑)。
で、4人のパワーを合わせれば勝てるって、もう、どういったらいんでしょう、このゆるさ。

なによりすごいのが、いやあ、ロシア映画ってこのレベルなの?と心配するくらいなのに、ラストで続編作る気が満々なこと。
でも、作られて、日本にやってきたら、観てみたいな、と思います。どうなっちゃうのか、見届けたい。


英題:THE GUARDIANS
製作年:2017年
製作国:ロシア
日本公開:2018年1月20日


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映画:ジオストーム [映画]

ジオストーム T0022339p.jpg

さらに続いてみたのがこちら。
大好きなディザスターものです。

シネマ・トゥデイから引用します。

見どころ:天候をコントロールする気象宇宙ステーションが暴走するさまを描いたディザスターアクション。未曾有の災害が同時多発的に起きる地球壊滅災害“ジオストーム”の発生を防ぐために奔走する主人公を、『300 <スリーハンドレッド>』などのジェラルド・バトラーが熱演する。その弟に『ハイネケン誘拐の代償』などのジム・スタージェスがふんするほか、エド・ハリス、アンディ・ガルシアらが共演。『インデペンデンス・デイ』シリーズなど携わったディーン・デヴリンが監督を務めた。

あらすじ:天候を意のままにできる宇宙ステーションが開発された近未来、地球は未曾有の自然災害に襲われることがなくなる。ところが運用開始から2年後、宇宙ステーションがウイルス感染して暴走し各地で異常気象を引き起こしてしまう。巨大災害が同時多発的に起きる地球壊滅災害“ジオストーム”の発生を防ぐため、宇宙ステーションの開発者ジェイク(ジェラルド・バトラー)と彼の弟マックス(ジム・スタージェス)が立ち上がる。


いや、もう既視感ありありなストーリーでなんだかなぁ、と思う方も(多数)いらっしゃると思いますが、いいんです、こういう映画はこれで、と開き直れます。
気象をコントロールできるシステム、というのがまずすごいですが、そのせいで引き起こされる現象が、ド派手ですから。
アフガニスタンの砂漠に雪が降る、とか、クレムリンあたりの雪が一瞬で溶ける、とか卵焼きが作れるくらい香港の地面が熱くなる、くらいならまだしも、ブラジルの海が一瞬で凍るか? そして、逃げ惑う人が一瞬で凍るか? とか ドバイだかあたりに超巨大津波を起こせるか、とか、東京を襲う巨大雹って作れるか? とか、あれ? ムンバイ(インド)では何が起こるんでしたか? (映画のHPで確認したら竜巻ですね) 突っ込みどころは満載ですが、いいんです、いいんです。ド派手な破壊シーンがあれば、それで十分。
楽しみましたよ。

えっと、どうでもいい(失礼)ストーリーの方は、例によって(?) かなりいい加減ですが、ディザスターもの、であると同時に陰謀ものでもあるという贅沢さになっています。
ジオストームとは、地球規模の同時多発災害のこと、だそうで、それが起こる前に、陰謀を止めなければならない、と定番のタイムリミットサスペンス的展開に。
このあたりの面倒な部分(まったく失礼)はすっとばして、破壊シーンだけじっくり見せてくれても個人的にはいいんですが、それだと映画にならないですね。
あ、でも、シークレット・サービス(女性です)役のアビー・コーニッシュがかっこよかったです。彼女の活躍シーンは見ていて楽しいですね。ジェラルド・バトラーはどっちでもいいですが(本当に失礼)。
あと、システム回りの手助けをするデイナ役のザジ・ビーツ(Zazie Beetz)という女優は今後に注目かなぁ、と思いました。

ということで、頭を使わず、すげーなー、と思いながらぼーっと観るのがよい映画です!


原題:GEOSTORM
製作年:2017年
製作国:アメリカ
日本公開:2018年1月19日


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映画:キングスマン ゴールデン・サークル [映画]

キングスマン ゴールデンサークル T0022055p1.jpg

続いてみたのがこちら。
「キングスマン」(感想のページへのリンクはこちら)の続編です。
映画のHPから引用します。
全世界71カ国でNo.1大ヒット!キレッキレの超過激スパイ・アクションがパワーアップして帰ってくる!
英国紳士が再び世界をブッ飛ばす

人類抹殺計画から世界を救って1年後、世界最強のスパイ機関、キングスマンのエグジーは一流エージェントに成長していた。だがある日、謎の組織ゴールデン・サークルからの突然の攻撃により、キングスマンの拠点は壊滅。生き残ったエグジーとメカニック担当のマーリンは、同盟機関に協力を得るためアメリカへ向かう。表向きはバーボン・ウイスキーの蒸留所を経営するコテコテにアメリカンなスパイ機関、ステイツマンと合流した2人は、彼らのNo.1エージェントと共に組織の行方を追い始める。一方、ゴールデン・サークルは、世界中の麻薬使用者を人質にした驚愕の陰謀を始動させていた…。果たして、エグジーたちはその陰謀を阻止することができるのか!?

死んだはずのハリーが生きていた、ということでコリン・ファースが再び画面に登場してくれるのがうれしいポイントですが、今回はちょっと控え目? (シナリオの都合上やむなし、という感じもありますが)
それ以外にも、すごい豪華キャストですよ。
ハル・ベリー、チャニング・テイタム、ジェフ・ブリッジス、ジュリアン・ムーア、そしてエルトン・ジョンまで!
みんなすごーく楽しそうなんですよね。
ジュリアン・ムーアの切れっぷりが堂々たるものなのですが(ジュリアン・ムーアが作ったハンバーガー、食べるの嫌だなぁ)、彼女のペットみたいな役どころのエルトン・ジョン(本人役で出演です)の切れっぷりがそれ以上にすごい! このエルトン・ジョンを観るためだけでも映画代惜しくないです。

ストーリーも展開もアクションも、小道具も、みーんな破格のめちゃめちゃぶりでとても楽しめました。古き良き英国調というか、典雅な趣っぽい部分はすっかり消し飛んじゃったのが残念といえば残念なのですが、こういう馬鹿馬鹿しい映画、いい!
ラストで主人公エグジーは引退しそうなので、別の若者をリクルートして、また続編作ってくれないかな。(正直、エグジー役のタロン・エガートン、あんまり好きじゃなくなってきたんですよね...)
チャニング・テイタム、ジェフ・ブリッジスの活躍場面少なかったし、ハル・ベリーだってもっと活躍しそうな風向きになってきていますし。続編作る気、満々でしょう!!

<蛇足1>
ところで、アメリカ大統領がとった措置。裏に秘められた真意は到底褒められたものではないとは思いますが、あのような状況下での行動ということなので、ラストのように罷免・弾劾されてしまうような事だったのでしょうか? ちょっと疑問に思いました。結構、世論は割れそうな気がしますよ、このテーマ。

<蛇足2>
前作ではスルーしていまいましたが、タイトル。
「キングマン」ではないでしょうか?

原題:KINGSMAN: THE GOLDEN CIRCLE
製作年:2017年
製作国:イギリス
日本公開:2018年1月5日


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映画:切り裂き魔ゴーレム [映画]

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しばらくぶりの更新となりました。
今年は未読本を消化せねばと、読む方に力を入れようと年頭に思っていたのですが、2月出足が悪かったので、後半せっせと読んでいて、感想を書くのがおろそかになりました。
あと、その間、読書には敵なんですが、映画を結構観たんですよね。
その1つ目がこの「切り裂き魔ゴーレム」。原作はピーター・アクロイドで、2003年に単行本で読んでいます。が、内容をまったく覚えていない。
まるで原作を読んでいないかのように楽しめました。

切り裂き魔ゴーレム

切り裂き魔ゴーレム

  • 作者: ピーター アクロイド
  • 出版社/メーカー: 白水社
  • 発売日: 2001/09
  • メディア: 単行本

いつも引用するシネマ・トゥデイから。

見どころ:『ラブ・アクチュアリー』などのビル・ナイらが出演した、ピーター・アクロイドの小説が原作のミステリー。産業革命で発展した19世紀のロンドンを舞台に、殺人鬼ゴーレムによる事件の真相に迫る。『ペインレス』などのフアン・カルロス・メディナが監督を務め、『ぼくとアールと彼女のさよなら』などのオリヴィア・クック、『ライオット・クラブ』などのダグラス・ブース、『バスルーム 裸の2日間』などのマリア・バルベルデらが共演。

あらすじ:霧深いロンドン市街で殺人事件が発生し、4名の容疑者が挙がるが、そのうち1名はほかの殺人事件で死んでいた。事件を担当する刑事のキルデアは、死亡した人物が犯人なら解決が早いと考え、容疑者を殺害した女性の裁判を見に行く。すると、脚本家の夫に女優の妻が毒薬を盛ったとメイドが証言しており……。


引用したあらすじがあまりにも雑なことに驚いてしまいますが...
切り裂きジャックのようにロンドンを恐怖に陥れる連続殺人鬼ゴーレムの捜査を押し付けられたギルデア(ピーター・ナイ)。彼が一人目の主人公。ゲイという設定で出世できずに、難しい捜査を押し付けられるという役どころ。
浮かび上がった容疑者は4人。カール・マルクス(!)、ジョージ・ギッシング(!)、喜劇役者ダン・リーの、そして脚本家(志望の?)クリ―。
一方クリ―は殺されており、その犯人として妻のリジーが裁判にかけられている。リジー(オリヴィア・クック)が二人目の主人公。
ギルデアはクリ―が連続殺人犯だといいなぁ、と思いつつリジーの裁判を見に行き、リジーに会い、リジーの無実を信じるようになる。
リジーの生い立ちから、ミュージックホールで働き、一定の成功を収めるようになって、クリーと結婚するようになるといったリジーの人生の振り返りと、ギルデアの捜査活動が描かれていきます。

切り裂き魔だけあって、かなり残虐なシーンが登場します。
印象的なのは、ギルデアが想像しているシーンということなのだと思いますが、4人の容疑者がそれぞれ殺人を犯すシーンが挿入されていること。なかなか強烈なインパクトです。マルクスやギッシングが殺人を犯す!
実在の人物と虚構の人物が入れ交っているところもポイントですね。
ミュージックホールといい、当時のロンドンの状況がよくわか(った気にな)ります。

ちょっといろいろな要素を盛り込みすぎなところもありますが(ユダヤ人差別問題とか)、シリアル・キラー探求とタイムリミット・サスペンスの要素が絡み合って、時代色豊かに展開するいい映画でたっぷりと雰囲気に浸って楽しめました。(残虐なシーンもあったけどね) 犯人の狂いっぷりも見事。

ひっそりと上映されていたのがもったいない映画だと思います。

原題:THE LIMEHOUSE GOLEM
製作年:2016年
製作国:イギリス
日本公開:2018年2月6日


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團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉 [日本の作家 た行]


團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉 (創元推理文庫)

團十郎切腹事件―中村雅楽探偵全集〈1〉 (創元推理文庫)

  • 作者: 戸板 康二
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2007/02/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
江戸川乱歩に見いだされた「車引殺人事件」にはじまる、老歌舞伎俳優・中村雅楽の推理譚。美しい立女形の行方を突きとめる「立女形失踪事件」、八代目市川團十郎自刃の謎を読み解く、第42回直木賞受賞作「團十郎切腹事件」など全18編。旧「宝石」掲載時の各編解説をはじめ豊富な資料も併録。ミステリ史に燦然と輝く名推理の数々を完全収録。


歌舞伎役者を探偵役に据えた中村雅楽シリーズです。
講談社版文庫版の「団十郎切腹事件」もその次の「グリーン車の子供」も読んだことがあるのですが、2007年から全集というかたちで創元推理文庫から全5巻で刊行されだしたので、うれしくなって老後の楽しみにとっておこうと思いながら買い込みました。老後の楽しみのはずが、つい気になって2017年10月に引っ張り出して読んでしまいました。
堪能しました!
歌舞伎役者を探偵役にしているだけあって歌舞伎界が舞台になっていることが多いですが、それだからというだけではなく、全体のトーンが典雅というか「大人のミステリ」といった風格になっています。日下三蔵による編者解題では「滋味あふれる老優の名推理」と書かれています。
とはいえ、歌舞伎を知らなくても大丈夫、ちゃんとしっかり楽しめます。

「車引殺人事件」
「尊像紛失事件」
「立女形失踪事件」
「等々力座殺人事件」
「松王丸変死事件」
「盲女殺人事件」
「ノラ失踪事件」
「團十郎切腹事件」
「六スタ殺人事件」
「不当な解雇」
「奈落殺人事件」
「八重歯の女」
「死んでもCM」
「ほくろの男」
「ある絵解き」
「滝に誘う女」
「加納座実説」
「文士劇と蠅の話」
と18編も収録されています。

ミステリデビュー作でもある「車引殺人事件」は、手堅い古典的トリックで(決して陳腐とは言いません!)「菅原伝授手習鑑」の「車引(くるまびき)」の最中舞台上で起きた変死事件を扱っています。
歌舞伎界を舞台にしているだけではなく、「車引殺人事件」同様、舞台上の事件や開演中の事件を扱っている作品が多いのはとても特徴的です。
続く「尊像紛失事件」もそうですし、「盲女殺人事件」、「六スタ殺人事件」、「奈落殺人事件」もそうです。舞台って、いろいろ危険なんですね(笑)。
個人的には「等々力座殺人事件」にびっくりしました。ここで「〇〇〇〇」(ネタバレにつき伏字)をやりますかぁ... 短い中にも割と忠実に「〇〇〇〇」を模したかのような仕掛けが入っていて楽しみました。

あとオリジナルの発表年(1958年~1960年)のおかげもあって時代色豊かなところも読みどころですよね。
「尊像紛失事件」で紙芝居を犯行時刻をつきとめる仕掛けにつかっているのにもニヤリ(ほかにも劇の進行度合いで時刻を特定する話もあちこちにあります)。
時代色とは言えないかも、ですが、「不当な解雇」にはルパシカ(346ページ)が出てきます。ルパシカ? 
ロシアの民族服の一つ。詰め襟,長袖,左前開きで腰丈の男性用上衣。襟や袖口や縁辺には刺繍が施されており,腰帯を締めて着用する。本来,厚地の白麻製で,ウエストを絞らずゆるやかでしかも暖かいのが特色であるが,近年はさまざまな生地が使われる。」らしいです。
「八重歯の女」には「やなあさって(明々後日)」(419ページ)という語が出てきます。こういうんですね。今だと、使っても通じないかも。
それぞれの物語は短いものなので、そんなに細かく詳細には書かれていないですが、数々の小道具(と言ってはいけないのかもしれませんが)で、臨場感たっぷりに時代色も、舞台も伝わってきます。
表題作である「團十郎切腹事件」では直木賞も受賞しています。
昔読んでいたのに、もうすっかり忘れていましたが、「團十郎切腹事件」はタイトル通りの團十郎の切腹の謎を解くだけではなく、ちょっとしゃれたエピソードが加えられていたんですね。こういう小粋なところがポイントかもしれません。
ミステリとして派手さはありませんが、いずれも小技は効いていますし、なによりも世界観がしっかり伝わってくるのが強みだと思いました。
シリーズ全巻買い揃えていますが、老後の楽しみといわず、ときどき取り出して読んでいきたいと思います。



<蛇足1>
「五二七九、二八二三九百、七九三三四、九九六三三四八、八七十三千四百」(410ページ)
というのが「八重歯の女」に出てきます。
「いつになく 庭に咲く桃 なくさみし 心さみしや 花と満ちしを」という歌で、四代目坂東三津五郎の戯作らしいです。すごい。

<蛇足2>
「ほくろの男」に
「都築という珍しい姓を書いた名札が貼ってある」(463ページ)
とありますが、都築ってそこまで珍しい名前ではないような気もします...
ミステリ作家に都筑道夫がいるからかもしれませんが...

<蛇足3>
「吉野君は、一生懸命、やってますがね」(439ページ)と「死んでもCM」に出てきますが、一生懸命...
この作品、初出は1960年なんですが、このころからこういう言い間違いが定着していたんでしょうか...
歌舞伎に詳しく、古典に精通していそうな戸板康二さんをもってして...うーむ、複雑です。




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マルタの鷹 [海外の作家 は行]


マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ダシール ハメット
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/09/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
サム・スペードの事務所を若い女が訪れた。悪い男にひっかかり、駆け落ちした妹を連れ戻して欲しいとの依頼だった。スペードの相棒が相手の男を尾行するが、相棒も男も何者かに射殺されてしまう。女の依頼には何か裏があったのか……。やがて、スペードは黄金の鷹像をめぐる金と欲にまみれた醜い争いに巻き込まれていく――ハンフリー・ボガート主演映画で知られる、ハードボイルド小説の不朽の名作。改訳決定版。


言わずとしれたハードボイルドの名作中の名作の2012年に出た新訳です。2017年7月に読みました。
小鷹信光さんの改訳決定版ということで、これは読まねば! と思って即買ったものの、長い間積読にしてしまっていました。
はじめての出会いは、小学校の図書室に置いてあった、子ども向けに訳されたものでした。そのころはまったくぴんときませんでしたね。というか、あっけないラストに(ミステリを楽しむのとは違う意味で)びっくりしたことを覚えています。
大人になってから、普通の(大人向けの)訳書も読んだはずですが、印象が薄いですね。

今回ちゃんと読んでみて、気づいたことを書いておきたいと思います。
まず、子供のころびっくりした事件の構造。
これは、今読んでも同じような感覚を持つ人がいてもしょうがないかなぁ、と思いましたね。あっけない、と言ってもよい。
タイトルにもなっている「マルタの鷹」をめぐる顛末は、他愛もない。
これは、鷹をめぐる物語ではあっても、そして二転三転する展開ではあっても、そのプロットを楽しませる物語ではない、ということですね。

今回印象に残ったのは、そんなの当然と言われそうですが、やはりサム・スペード。
序文で作者ダシール・ハメットが
「ここに登場する私立探偵は、シャーロック・ホームズ風の謎々を博識ぶって解こうとはしたがらない。彼は、いかなる状況も身をもってくぐりぬけ、犯罪者であろうと罪のない傍観者であろうと、はたまた依頼人であろうと、かかわりをもった相手に打ち勝つことのできるハードな策士であろうと望んでいる男なのである。」(7ページ)
と記していますが、正直、謎、です。
この物語、サム・スペードを探るためのストーリーなのではないだろうか、と思った次第。ミステリとしてプロットを追う、とか、謎がどうしたとかに力点を置いて読んでしまうと、つまらない。 
サム・スペードのための物語だと思うと、非常に興味深く、読みどころの多い作品だと強く感じます。
最も象徴的なシーンは、ラストでサム・スペードが依頼人であるブリジッド・オショーネシーに対してとった態度ではないでしょうか。
有名なシーンなので、今となってはさっと当たり前のように受け取ってしまうかもしれませんが、ここ結構意外に感じるところではないかと思うのです。当時の読者はかなり驚いたのではないでしょうか。
死んでしまったパートナー、マイルズ・アーチャーに関するやりとりやエピソードもかなり複雑です。
ブリジッド・オショーネシーもかなり謎深い人物ですが、なによりも、サム・スペードって、いったいどんな人間なんだろう。
そういう興味の方が、事件の興味よりも強いように思います。
それに拍車をかけるのが、内面に踏み込まない、ハードボイルドならではの文体。
一層読者には謎が深まります。
最後に本人の口から
「こけにされるつもりはないんだ」(347ページ)
と語らせていますが、それだけで終わらせてよいものかどうか、いろいろと考えてしまいます。
最終ページ(356ページ)で、秘書のエフィ・ペリンから拒絶されたサム・スペードの顔が、蒼白になるところも印象深いです。


<蛇足>
「灰色の紙をとりのぞき、卵形の青白い木毛のかたまりをとりだした。」(259ページ)
とあります。恥ずかしながら、木毛という語を知りませんでした。
あれ、木毛っていうんですね...


原題:The Maltenese Falcon
作者:Dashiell Hammett
刊行:1930年
訳者:小鷹信光




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GOSICK VII -ゴシック・薔薇色の人生- [日本の作家 桜庭一樹]


GOSICK VII ゴシック・薔薇色の人生 (角川文庫)

GOSICK VII ゴシック・薔薇色の人生 (角川文庫)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/03/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
クリスマス直前の気分に華やぐ聖マルグリット学園。だが、外の世界では「2度目の嵐」が迫りつつあった。父ブロワ侯爵によって首都ソヴレムに召喚されたヴィクトリカ、心配で後を追う一弥。ソヴュール王国最大のスキャンダルにして謎、王妃ココ=ローズの首なし死体事件に挑むふたりに侯爵の謀略が……。豪華劇場に過去と現在が交錯し、大いなる罪が暴かれたとき、世界はその様相を変える。ヴィクトリカと一弥の運命は!?

GOSICK ―ゴシック―
GOSICK II ―ゴシック・その罪は名もなき―
GOSICK III ―ゴシック・青い薔薇の下で―
GOSICK IV ―ゴシック・愚者を代弁せよ―
GOSICK V -ゴシック・ベルゼブブの頭蓋-
GOSICK VI ―ゴシック・仮面舞踏会の夜―
GOSICK VII ―ゴシック・薔薇色の人生―
GOSICK VIII 上 ―ゴシック・神々の黄昏―
GOSICK VIII 下 ―ゴシック・神々の黄昏― (いずれも角川文庫)
と、(番外編を除いて) 8作で完結しているシリーズの7作目。あと少し!
前作「GOSICK VI ―ゴシック・仮面舞踏会の夜―」 (感想ページへのリンクはこちら)を読んでからずいぶん間が開いてしまいました。2017年10月に読んでいます。「GOSICK VI ―ゴシック・仮面舞踏会の夜― 」を読んだのが、2013年7月ですから4年3ヶ月ぶり。

今回は劇場が舞台です。
回想の殺人、といった趣。
ミステリとしてとらえると、おとなしくて内気であると同時に、夜遊びをして奔放という多面性を持った王妃ココ=ローズの首なし死体といったら、そりゃあもう読者が簡単に想定する筋立てがあるわけで、そこをどう処理するかがミステリ作家としての腕の見せ処、となるのですが、この作品はどうかというと、そんなにミステリとして気合を入れておられるわけではないので、あっさりした仕掛けになっているのだろうな...と思いきや、ははぁ、ミステリ作家だとあまり使わないギミックを抛りこんでなかなか楽しい舞台裏を構築されているではないですか。
さらにさらに、王宮で起こった首なし死体事件の、首だけを消し去った方法。こちらは、堂々たるミステリとしての解決ですね。比較的さらっと扱われていますが、なかなか鋭いトリック(?) で、無理はあってもミステリってこういうのがいいんですよ。
犯人の設定にも、物語の雰囲気にもぴったり合っていて、なかなかよいではありませんか。

いよいよ次巻でシリーズ完結。楽しみです(実はもう読んじゃっていますが)。
それにしても
「そりゃあ、退屈だとも! 毎日、死にそうだ!」
「君を危険な目にあわせるよりは、ずっといいのだ。退屈とはすなわち、安全でもあるのだな。いままでは夢にも思いもしなかったことだが」(280ページ)
なんてストレートなセリフをヴィクトリカが一弥に言うようになるとは...

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