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捜査官X [映画]
読書日記と銘打っておきながら、今日は映画です...

<ストーリー>--「シネマトゥデイ」HPから引用します
平穏を絵に描いたような山奥の村で、指名手配中の凶悪犯が強盗殺人を犯し、その場に居合わせた製紙職人リウ(ドニー・イェン)と争った末に命を落とす事件が起きる。凶悪犯を退治したリウを住民たちが英雄だと称賛する中、村を訪れた捜査官シュウ(金城武)は精緻(せいち)を極めた現場検証や検死を開始。その結果、リウが正当防衛を装って、故意に凶悪犯たちを殺害したのではないかという疑念を抱くようになる。研ぎ澄まされた推理力と直感、常人の域を超えた博覧強記ぶりを発揮し、徐々に事件の核心に近づいていくシュウは、リウの驚くべき過去を知ってしまう。
映画「捜査官X」です。
面白く観ましたが、公式HPにある「天才捜査官が難事件解明に挑む、奇想に満ちたミステリー・アクション巨編!」という惹句は、あまりにもとんちんかんですね。推理なんてなく(なにしろ証拠がありません)、ほぼあてずっぽう(というより勝手な決めつけ)ですから。それで真相を射抜いているあたり、天才には違いありませんが...
また、原題は「武侠」ですから、「捜査官X」というのは日本でつけたタイトルなわけですが、これもひどい。
映画の狙いどころがまったく伝わっていないように思います。
「武侠」といえば、武術・任侠をテーマにした中国の娯楽のジャンルのことで、その名称をタイトルに冠した製作者側の意図はどこに行ってしまったのでしょうか?
まあ、日本では、金城武を中心に据えて売らないといけなかったのでしょうから、やむを得ないのでしょうが...
武侠らしくないオープニングと武侠らしくない進行をする映画に、あえて「武侠」と名をつけ、転調してみせる。ラストもそれにふさわしい形になっていると思います。
タイトル(邦題)と宣伝文句にはケチをつけましたが、映画はよかったです。
まず、舞台の風景が、単なる農村、だと思うのですが、とてもきれいで、浸れます。こういう美しい農村を舞台に、カンフー・アクションを展開して見せてくれたことに感謝。
都会を舞台にしなくても、寒村を舞台にしても、粋、ですよね。牛が二階にいる家って、なんだか素敵に見えました (住むとなったら不便でしょうけどね)。
アクションは、さすがドニー・イェン、見ごたえあると思いました。わりと冒頭に近い再現シーンの、経絡をつかった解説つき(?)のスローなパートも楽しいし、最後のほうの対決シーンの戦闘もすさまじかったです。
金城武にはいつもどことなく「遊離した」印象を受けるのですが、この作品ではそこがうまく活かされていると思いました。はまり役だと思います。
ドニー・イェンも剛柔両方をしっかり見せてくれて、かっこよかったです。
タン・ウェイ (ドニー・イェンの奥さん役です)もかわいかった。
タイトル(邦題)と宣伝文句につられて観た部分もあるのですが、裏切られてもこの映画だったら、問題なし。とっても楽しい時間でした。

<ストーリー>--「シネマトゥデイ」HPから引用します
平穏を絵に描いたような山奥の村で、指名手配中の凶悪犯が強盗殺人を犯し、その場に居合わせた製紙職人リウ(ドニー・イェン)と争った末に命を落とす事件が起きる。凶悪犯を退治したリウを住民たちが英雄だと称賛する中、村を訪れた捜査官シュウ(金城武)は精緻(せいち)を極めた現場検証や検死を開始。その結果、リウが正当防衛を装って、故意に凶悪犯たちを殺害したのではないかという疑念を抱くようになる。研ぎ澄まされた推理力と直感、常人の域を超えた博覧強記ぶりを発揮し、徐々に事件の核心に近づいていくシュウは、リウの驚くべき過去を知ってしまう。
映画「捜査官X」です。
面白く観ましたが、公式HPにある「天才捜査官が難事件解明に挑む、奇想に満ちたミステリー・アクション巨編!」という惹句は、あまりにもとんちんかんですね。推理なんてなく(なにしろ証拠がありません)、ほぼあてずっぽう(というより勝手な決めつけ)ですから。それで真相を射抜いているあたり、天才には違いありませんが...
また、原題は「武侠」ですから、「捜査官X」というのは日本でつけたタイトルなわけですが、これもひどい。
映画の狙いどころがまったく伝わっていないように思います。
「武侠」といえば、武術・任侠をテーマにした中国の娯楽のジャンルのことで、その名称をタイトルに冠した製作者側の意図はどこに行ってしまったのでしょうか?
まあ、日本では、金城武を中心に据えて売らないといけなかったのでしょうから、やむを得ないのでしょうが...
武侠らしくないオープニングと武侠らしくない進行をする映画に、あえて「武侠」と名をつけ、転調してみせる。ラストもそれにふさわしい形になっていると思います。
タイトル(邦題)と宣伝文句にはケチをつけましたが、映画はよかったです。
まず、舞台の風景が、単なる農村、だと思うのですが、とてもきれいで、浸れます。こういう美しい農村を舞台に、カンフー・アクションを展開して見せてくれたことに感謝。
都会を舞台にしなくても、寒村を舞台にしても、粋、ですよね。牛が二階にいる家って、なんだか素敵に見えました (住むとなったら不便でしょうけどね)。
アクションは、さすがドニー・イェン、見ごたえあると思いました。わりと冒頭に近い再現シーンの、経絡をつかった解説つき(?)のスローなパートも楽しいし、最後のほうの対決シーンの戦闘もすさまじかったです。
金城武にはいつもどことなく「遊離した」印象を受けるのですが、この作品ではそこがうまく活かされていると思いました。はまり役だと思います。
ドニー・イェンも剛柔両方をしっかり見せてくれて、かっこよかったです。
タン・ウェイ (ドニー・イェンの奥さん役です)もかわいかった。
タイトル(邦題)と宣伝文句につられて観た部分もあるのですが、裏切られてもこの映画だったら、問題なし。とっても楽しい時間でした。
タグ:武侠
シュークリームは覗いている [海外の作家 は行]
<裏表紙あらすじ>
母ドロレスの出版記念パーティに着るドレスが入らなくなり、ダイエットのためにしかたなくジム通い始めたハンナ。そこでインストラクターとして働くロニはウィネトカ郡一の浮気娘。未婚既婚問わず男性をつぎつぎ誘惑する彼女に町の女性たちは気が気じゃない様子。彼女がマイクと同じアパートを借りたときいてハンナも心穏やかではいられない。が、そのロニが何者かに殺された! 死体の第一発見者はまたしてもハンナ。さらに、こともあろうか義弟に末妹の恋人、マイクまでもが容疑者に……。捜査から外された彼らはハンナに捜査代行を依頼、家族とノーマンの助けを借りて犯人捜しを始めるが――大好評お菓子探偵シリーズ第11弾!
快調にシリーズが続いていますが、今回は設定がすごいですよ。
この被害者、コージーにはあまり向いていない被害者ですね。郡一の浮気娘、とあらすじには書いてありますが、うーん、手当たり次第?
そのせいで、保安官事務所の刑事マイクも、保安官のビルも、保安官助手のロニーまで、捜査から外れないといけない(!)という事態に。かならずしも被害者と"できていた"わけではないにせよ、すごいことですよねー。
なので、いつもなら事件にかかわるな! といわれるハンナに、マイクたちが捜査を依頼するという始末。この設定を思いついたときに、作者はにやりとしたんじゃないでしょうか?
そのせいで、あれこれと捜査の指図を3人から受ける羽目になったハンナは、自分のやり方でやる! と息巻いたりもするのですが、ここで笑ってしまいました。だって、ハンナって、確かにいつも犯人はつきとめていますけれど、「推理」や「捜査」でつきとめたことはほとんどなかったように思うからです。いつもいきあたりばったりの印象。出たとこ勝負というか、目をつぶって手を振り回していたら犯人にぶち当たったというか... 自分のやり方、なんて...(笑) 今回も犯人との対決シーンになって初めてハンナは犯人に気づいたという状態。いやあ、よくできています。
ミステリとしてみると、動機に難あり、でしょうか? この動機は、ありえない、とまでは言えないかもしれませんが、説得力はまるでなし。そりゃ、ハンナにも犯人わかりませんよ、と一転ハンナを弁護しちゃいます。。
シリーズとしては、今回もハンナの飼い猫モシェをめぐる謎が楽しかったですね。食べているようには思えないのに、確実に毎日すごい量がなくなっていくエサの謎です。こちらはすっきり解決します--もっとも、どうして? と考える前に真相に思い当たるような気がするんですけどね。ま、推理力のないハンナのことですから...
ハンナをめぐるマイクとノーマンの恋(?)の行方も、なんだか進展があったように思えてしまいました。どうなるんだろ?
というわけで、期待しながら次の「プラムプディングが慌てている」(ヴィレッジブックス)は読みます!
蒼林堂古書店へようこそ [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
書評家の林雅賀が店長の蒼林堂古書店は、ミステリファンのパラダイス。バツイチの大村龍雄、高校生の柴田五葉、小学校教師の茅原しのぶ――いつもの面々が日曜になるとこの店にやってきて、ささやかな謎解きを楽しんでいく。かたわらには珈琲と猫、至福の十四か月が過ぎたとき……。乾くるみがかつてなく優しい筆致で描くピュアハート・ミステリ。
文庫オリジナルの連作短編集です。
この古書店、すごい店ですよね。100円以上の売買をしたお客さんにはコーヒーがサービスされて、しかも何時間いてもいいというだけでもすごいのに、100円で買った本をその場で読んでしまい、10円で売って帰ることが可能。つまり、90円で本が読めて、そのうえコーヒーもついてくる、という仕組み。いや、夢のようなお店ではありますが、現役の作家がこういうお店を書いちゃあいかんのではないでしょうか? 自殺行為でしょ!? だって、作者に収入が入りませんよ!?
さておき、乾くるみが「日常の謎」!? と思ったりもしましたが、各話のあとにミステリ案内と称して見開きで古今東西のミステリが紹介があったり、最後まで行くと各話の底流に流れていた思いが浮かび上がってくるという趣向があったり、なるほどなー、でした。
それぞれの謎は、暗号に対する思い入れが伝わってくるものがあったりして随所に乾くるみらしいな、と思わせるものがあることはあるのですが、やはり謎が小さい。連載という制約で各短編の長さもその一因だったのでしょうが、ここまで小粒が集まると、わざと集めたのでは、すなわち、ミステリセンスに欠ける「日常の謎」ものに対する嫌味もはいっているのではなかろうかと、そんなことも考えたりしました。
本書の眼目は、ミステリの話題満載の各話に加えてミステリ案内がある、というところにあると思うので、ミステリ好きにこそおすすめしたいです。
それにしても、ミステリ案内は、楽しいんだけど、困りますね、読みたい本が増えてしまって。第5話で紹介されている吉村達也の<惨劇の村・五部作>なんて、五冊ですよ。あ~、どうしよう~。
<おまけ--ちょっぴりネタバレなので、読み終わってから見てください>
幽霊探偵の五セント硬貨 [海外の作家 か行]

幽霊探偵の五セント硬貨 ミステリ書店 2 (ランダムハウス講談社文庫)
- 作者: アリス・キンバリー
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2006/12/02
- メディア: 文庫
<裏表紙あらすじ>
社交界の華と呼ばれた女性が殺された。そして今度は、事件の真相に迫った作家までが謎の失踪!? 自分の店に招いた作家とあらば見過ごせない! 真相究明に乗り出した書店主ペネロピーは、捜査の参考にと、店の倉庫に眠っていた幽霊探偵の事件簿を取り出してみることに。すると、中から一枚の五セント硬貨が転げ落ち……。この一枚がやがて、幽霊探偵とミステリ書店主の名コンビの命運を分ける! 待望のシリーズ第2弾。
背表紙に cozy マークがついていますので、コージー・ミステリなのですが、いかにもコージーの主人公である書店主・ペネロピーと、1940年代に活躍していた私立探偵ジャック・シェパードの幽霊とがコンビを組むという変わり種のシリーズです。コージーにハードボイルド風の私立探偵という組み合わせの妙というか、ちょっと切り口の変わった作風を展開して見せてくれるところが楽しいシリーズです。ジャックとペネロピーの掛け合いもかなり定着してきて、いい感じ。
幽霊ということを置いておくとしても、素人探偵にプロがアドバイスするという構図は、捜査の幅を広げるのにうってつけですね。ジャックには、ペネロピーの書店<バイ・ザ・ブック>から出られないという制約があったのですが、タイトルにもなっている五セント硬貨が新しい展開をもたらしてくれます。シリーズにとっては影響大です。
現在の事件と、ジャックが手掛けていた過去の事件が二重写しになるというかなり欲張りな物語ですが、混乱しません。フォントが変えてあるためではなく、作者の計算がきちんと行き届いているからだと思います。
事件は、上流階級の事件、という定番の変奏曲で、コージーにふさわしい内容。途中、地元商店街がやってみる模擬裁判(?)のだめだめっぷりもなんだかいい味出してます。
amazonで今見ると、品切れ状態のようですが、品切れにするにはもったいないシリーズだと思います。なんとか続きも読みたいですね。
奇面館の殺人 [日本の作家 あ行]
<裏表紙あらすじ>
奇面館主人・影山逸史に招かれた六人の男たち。館に伝わる奇妙な仮面で全員が“顔”を隠すなか、妖しく揺らめく“もう一人の自分(ドッペルゲンガー)”の影……。季節外れの吹雪で館が孤立したとき、<奇面の間>に転がった凄惨な死体は何を語る? 前代未聞の異様な状況下、名探偵・鹿谷門実が圧巻の推理を展開する!
名手・綾辻行人が技巧の限りを尽くして放つ「館」シリーズ、直球勝負の書き下ろし最新作。
今年の年頭、新年早々に出版された、館シリーズ最新作です。ノベルズ版です。
これがシリーズ9作目。
全10作、と宣言されていますから、あと1作でこのシリーズも終わりです。
カバー袖の作者のことばで、「作家生活もずいぶんと長くなり、相応に年もとってしまった今、自分はまだどのくらい無邪気に軽やかに(なおかつマジメに)、"本格ミステリの庭"で遊ぶことができるだろう? そんな問いかけを幾度となく繰り返しながらの執筆だった」と書かれています。
綾辻行人、しかも館シリーズの最新刊とあらば、このミステリーがすごい!や週刊文春ミステリーベスト10、そして本格ミステリーベスト10などでランクインすることはほぼ確実ではありますが、読者を選ぶ趣向が堂々と盛り込まれているあたり、いやあ、さすがは綾辻行人、余裕綽々というか、遊びまくっています。
大小さまざまなネタが惜しげもなくぶち込まれていまして、誰もがどこかしら感心できるのではないかと思うほど贅沢な仕上がりです。
綾辻行人以外が書くと、本をぶん投げられそうなアイデアが、臆面もなく (とあえて言っておきます) 使われていて、脱帽。P414を読んで苦笑してしまいました。でも、それが綾辻行人らしくもあり、否定はしたくないですね。
首を切断した理由、指を切断した理由、登場人物全員が仮面をかぶせられてしまった理由、いずれもすっきり解決されるのがミステリとしては素敵なところでしょうか。館シリーズでは当然のことながら、館の設定自体と寄り添うような謎解きに堪能できます。
そして、その解決を通してうかがわれる事件の構図が、巧緻な計画犯罪を描く本格ミステリを突き抜けたところにあるように思われたのですが、うがちすぎでしょうか? (あまりに曖昧な言い方をしているので、読み終えた方にも何のことをぼくがいっているのかわからないかもしれませんが、ネタバレを避けたいので...)
久しぶりのシリーズ最新作にふさわしい、楽しい作品でした。
しかし、奇面といったら、「3年奇面組」 (集英社文庫―コミック版 リンクは1巻)を思い出して気になって仕方ないのですが、関係なさそうでした (当たり前!!)
シルバー・スター [海外の作家 は行]
<裏表紙あらすじ>
コネティカット州の閑静な村ドーセット。映画批評家ミッチ・バーガーが住むこの地は、若きハリウッド・スター夫婦と二人を追うマスコミのせいで最近騒がしい。そして突然起きた、衝撃的な転落死事件。ミッチと女性駐在デズが死の真相を探る中、人々の意外な素顔や関係が明らかに……。人気シリーズ第3作。
「ブルー・ブラッド」 (講談社文庫)、
「芸術家の奇館」 (講談社文庫)、
「シルバー・スター」 (講談社文庫)、
「ゴールデン・パラシュート」 (講談社文庫)
と今のところ4冊目まで訳されているシリーズの3番目。
作者のデイヴィッド・ハンドラーは「笑いながら死んだ男」 (講談社文庫)で始まるホーギー・シリーズの頃から愛読しています。どちらかというと、今のバーガー&ミトリー・シリーズよりも、ホーギー・シリーズのほうが好みにあうのですが、バーガー&ミトリー・シリーズもそれなりに楽しんで読んでいます。
都会的なセンスと語り口がハンドラーの長所(ホーギー・シリーズの長所というべきかも)だと思うのですが、こちらのシリーズは、田舎に舞台を移したから、というだけではなく、ちょっともたついているところがあると思っています。会話も、ホーギーほど洒落ていない...
さて、ミステリとしては、冒頭のプロローグで事件のシーンが描かれ、その後時間が巻き戻されて、バーガーたちが事件に出会うまでを描いていく、という構図です。
人間関係から事件が浮かび上がる、という現代ミステリならではの手順はしっかり守られていますので、安心して読むことができます。
真相というか、謎解きの肝となる部分は、非常にありふれた、陳腐といってもいいくらい手垢のついたアイデアなのですが、うまく物語に溶け込ませてあります。そのあたりはハンドラーの腕というか、ナチュラルに読めます。
これからも新刊が出れば、買って読むと思います。
それにしても、もうホーギー・シリーズは書かないんでしょうね。
<おまけ>
このシリーズの原題、
1.The Cold Blue Blood ( 2001)
2.The Hot Pink Farmhouse (2002)
3.The Bright Silver Star (2003)
4.The Burnt Orange Sunrise (2004)
5.The Sweet Golden Parachute (2006)
6. The Sour Cherry Surprise (2008)
7. The Shimmering Blond Sister (2010)
8. The Blood Red Indian Summer:(2011)
9. The Snow White Christmas Cookie (Oct 16, 2012 発売予定)
となっていまして、それぞれ色が織り込まれているのと(最後のcherryはちょっと苦しい?)、かつ、6までは2つずつ対になっている、という趣向ですが、邦題にはまったく反映されていないのが残念です。文庫カバーでは、なんとかがんばっている跡がうかがわれます。こういうお遊びも、ミステリを楽しむうえでは重要だと思うので、訳者と出版社にはがんばってほしいのですが...
大東京三十五区 冥都七事件 [日本の作家 ま行]
<裏表紙あらすじ>
血を吐く松。迷路での人間消失。消える幽霊電車。天に浮かぶ文字--昭和も始め、帝都東京に現われた謎また謎。早稲田の不良書生、阿閉(あとじ)君はこれら怪事件の取材におお忙し。「玄翁(げんのう)先生」こと間直瀬玄蕃(まなせげんば)は縁側でその謎に挑む。二人の珍妙な問答の末、明かされる意外な真相とは? レトロでモダンで猟奇(エログロ)な時代の風俗を背景に、罠(トリック)と論理(ロジック)が冴え渡る探偵小説の真骨頂。
帯には、
「高橋克彦、京極夏彦両先生御推薦!
レトロでモダンで猟奇(エログロ)
薫り高き昭和六年、帝都へようこそ!」
と書かれています。
かなり凝った語り口になっていまして、古文、擬古文ではないのですが、何と呼べばよいのでしょうか? さておき、読みにくい。
講談が近いのでしょうか? 講談自体を知らないのでなんとも言えませんが...
音読するとよさそうなことが解説には書かれていますが、うーん、こちらは音読する趣味はないので...もっとも、なんとなくリズムがよさそうには感じられますが、果たしてみなさんどうでしょうか?
読みにくいことは読みにくいのですが、この文体、時代の雰囲気は十二分に伝わってきます。続編「夭都七事件―大東京三十五区」 (祥伝社文庫)、 「大東京三十五区 亡都七事件」(祥伝社)が出ていますので、読み進むうちにこちらが慣れてきて、しっくりくるのかな?
文体だけではなく、起こる事件も時代色豊かというか、あらすじにもある通り、レトロで、モダンな感じがします。昭和浪漫? 各話の冒頭に、当時の地図が掲げられているのも趣あり。
ジャンル分けすると、安楽椅子探偵ものになるのでしょうか? お年寄りが解決して見せるという趣向は古今通していろいろありますが、安楽椅子探偵ということでは、バロネス・オルツェの「隅の老人」 (ハヤカワ・ミステリ文庫) (創元推理文庫では、「隅の老人の事件簿」 )が近いかな?
それぞれの事件も、それなりに手が込んでいまして、相応に不可能興味があふれているところがいいですね。謎ときも、そりゃあ、すぐにばれるだろう、というのもありますが、ちゃんと合理的に解かれます。
最終話に至って、東京創元社から出た本なのかな? と思えるよう趣向が混じっていたりするのもご愛嬌でしょう。しかし、このエンディングでどうやって続編を書いたのか、気になります。
誰にでもおすすめできる作風ではないと思いますが、高橋克彦、京極夏彦というお二人が推薦されるだけのことはあるように思いました。
ボトムズ [海外の作家 ら行]
<裏表紙あらすじ>
80歳を過ぎた今、70年前の夏の出来事を思い出す――11歳のぼくは暗い森に迷い込んだ。そこで出会ったのは伝説の怪物“ゴート・マン”。必死に逃げて河岸に辿りついたけれど、そこにも悪夢の光景が。体じゅうを切り裂かれた、黒人女性の全裸死体が木にぶらさがっていたんだ。ぼくは親には黙って殺人鬼の正体を調べようとするけど……恐怖と立ち向かう少年の日々を描き出す、アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞受賞作。
ランズデールは、「罪深き誘惑のマンボ」 (角川文庫)で日本での紹介の始まったストレートの白人ハップとゲイの黒人レナードのシリーズで有名でしたが、この「ボトムズ」からはシリーズを離れた作品の紹介が増えました。
「ボトムズ」は、MWA賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)最優秀長編賞受賞作です。
1933年から1934年というはるか昔のテキサス南部を回想し、少年ハリーの成長を描いた作品です。
子供(少年)を扱った作品、回想する作品というのはもともと好きなジャンルではありますが、非常に引き込まれて読みました。
ランズデールがずっと書いてきている黒人差別も取り上げられています。黒人差別が日常であった時代背景で、理髪師でありながら、治安官(コンスタブル)もつとめる父親ジェイコブが、黒人に対して公平であろうとしているところが大きなポイントになっています。医者は黒人の死体を解剖するのを嫌がるし、ジェイコブは公平であろうとするがゆえに、黒人びいきだと非難されます。
ハリーは、そんな父親を尊敬していることが伝わってきますし、父親の挫折(どんな挫折かは実際に読んで確かめてください)もハリーの成長を促す要素になっています。
成長物語としてだけでもたっぷり楽しめます。
ミステリとしては、読み終わってからプロローグを読み返すと、何気ない文章が意味ありげに見えました。
解説の中の、読了後に読むようにと指示つきの部分で佳多山大地さんが指摘されている部分も、このプロローグで匂わされているような気がします。ノスタルジックな雰囲気そのものもミステリに奉仕している、そんな大きな枠組みを感じました。
MWA賞にふさわしい名作だと思います。
<おまけ>
タイトルとなっているボトムズというのは、サビーン川流域の低湿地のことです。ひょっとすると、bottomというのは底辺とか下層という意味があるので、差別の対象となっている黒人を指してもいるのかもしれない、なんて考えたりもしました。
タグ:ジョー・R・ランズデール MWA賞
鏡の迷宮、白い蝶 [日本の作家 た行]
<裏表紙あらすじ>
「水島のじいちゃん」の名代で、西遠寺家の人々とともにかのこの許嫁の家の別荘へ向かうことになった修矢。招かれた別荘の隣には、万華鏡作家が住んでいた。認知症を患うその人は、所持している大きなダイヤの隠し場所をメモしていたのだが……。中学生の美波と高校生の修矢。二人がそれぞれ出あった少し切ない事件たちを描く本格ミステリ短編集。人気シリーズ、前日譚第二弾。
「天使が開けた密室」 (創元推理文庫)、
「龍の館の秘密」 (創元推理文庫)、
「砂の城の殺人」 創元推理文庫、
とシリーズは続いてきて、その前日譚として、
「手焼き煎餅の密室」 (創元推理文庫)、
が出ていて、本書はその第2弾です。
今は亡きおじいちゃんが出てくるわけですが、おじいちゃんがその後死んでしまうことを読者は知ってしまっているので、不思議に乾いた感覚というべきものが漂っているのが特徴でしょうか。
中学生と高校生が表に出て、後ろに控えているのはじいちゃん、となると、やわな「日常の謎」かな、と思いがちですが、いえいえ、ライトな手触りでもきちんと骨格のそなわった本格ミステリです。
もちろん、「日常の謎」となっている作品もありますが、あっけなく解かれてしまう日常に埋没した作品とは違い、きちんとミステリとして解かれますので、ミステリファンにも安心して読んでもらえると思います。
冒頭の「イタリア国旗の食卓」がいい例です。特定の人物に特定も皿をサーブする、というのは毒殺ミステリでよく取り上げられる趣向ですが、トリッキーな解決が提示されます。現実問題として、そんな(犯人の)狙い通りにいくかなぁ、と疑問を抱く人もいるかもしれませんが、ミステリとしての説得力十分。
谷原さん、次はどんな作品を見せてくれるのか、楽しみです。
災厄の紳士 [海外の作家 た行]
<裏表紙あらすじ>
根っからの怠け者で、現在ではジゴロ稼業で糊口を凌いでいるネヴィル・リチャードソンは、一攫千金の儲け話に乗り、婚約者に捨てられた美人令嬢のアルマに近づく。気の強いアルマにネヴィルは手を焼くが、計画を仕切る“共犯者”の指示により、着実にアルマを籠絡していく。しかしその先には思わぬ災厄が待ち受けていた……。名手が策を巡らす、精巧かつ大胆な本格ミステリの快作。
「本格ミステリ・ベスト10 2010」(原書房)第1位。ちなみに、「このミステリーがすごい! 2010年版」では第14位です。
この前に翻訳された「ウォリス家の殺人」 (創元推理文庫)が、「本格ミステリベスト10 2009」(原書房)の第1位(ちなみに、「このミステリーがすごい! 2009年版」では第10位)、さらに前の「悪魔はすぐそこに」 (創元推理文庫)が、「本格ミステリ・ベスト10 2008」(原書房)の第2位(こちらもちなみに、「このミステリーがすごい! 2008年版」では第5位)なので、本格ミステリとして定評のある作家です。
なんですが、オープニングは本格ミステリっぽくありません。結婚詐欺を狙っているかのような青年ネヴィルの視点ではじまります。狙われているのは作家の令嬢アルマ。単なる結婚詐欺ではなさそうな描写もそこかしこにあって、気になります。
ネヴィルの性格が、いかにも軽そうに設定されていて、それはそれで楽しく読めるものの(時代感はあっても、あまり違和感なく読めました)、あれれ? 本格ミステリじゃないんだろうか、と不安に(?)なりますが、大丈夫、途中でしっかり本格ミステリに変わります。
もう一人の視点人物サラは、アルマの姉で、被害者家族(?)の癖のある人物たちをじっくり紹介していきます。
そして発生する事件、ということで、いよいよ本格ミステリの幕開け、です。視点も、ネヴィルとサラから、サラと捜査するボグ警部へ移ります。
登場人物が非常に限られているので、犯人(ネヴィルの黒幕と事件の犯人の2種類の犯人です)をつきとめるのはそんなに難しくはないのですが、本格ミステリらしからぬネヴィルのエピソードすらをも本格ミステリの枠組みに奉仕させている作者の手腕を存分に楽しみました。
ネタバレにならないようぼかした書き方となってしまいますが、手掛かりの使い方には、素直にすごいなー、と感嘆しました。派手なトリックはなくても、十分たのしめるお得な本格ミステリです。
年に一冊ずつ翻訳されていますが、これからも翻訳を続けてほしいです。
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