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完全なる首長竜の日 [日本の作家 あ行]


完全なる首長竜の日 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

完全なる首長竜の日 (宝島社文庫)

  • 作者: 乾 緑郎
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/01/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第9回『このミス』大賞受賞作品。
植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具「SCインターフェース」が開発された。少女漫画家の淳美は、自殺未遂により意識不明の弟の浩市と対話を続ける。「なぜ自殺を図ったのか」という淳美の問いに、浩市は答えることなく月日は過ぎていた。弟の記憶を探るうち、淳美の周囲で不可思議な出来事が起こり――。衝撃の結末と静謐な余韻が胸を打つ。

第9回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作です。
選考委員会は、満場一致ですんなり決まったそうです。第10回までで3回しか満場一致はないそうで、それは第1回の浅倉卓弥 「四日間の奇蹟」 (宝島社文庫) と東山彰良「逃亡作法 TURD ON THE RUN」 (上) (下) (宝島社文庫)、第4回の海堂尊 「チーム・バチスタの栄光」 (上) (下) (宝島社文庫) とこの「完全なる首長竜の日」のようです。
否が応でも期待が高まるわけですが...
これは、「ミステリー」ではあっても「ミステリ」ではないですね。もともと、『このミステリーがすごい!』大賞は、ミステリーというものをきわめて広くとらえていますので、これはミステリではないよ、という感想を抱かれる作品もちらほらあるのですが、今回もその傾向に沿ったものということかと。

あらすじをご覧いただくとわかるのですが、植物状態になった患者とコミュニケートできる医療器具という仕掛けをベースにして、「意識」や「記憶」を取り扱っています。
「意識」や「記憶」を取り扱った作品は、実は苦手で、好きではありません。物語の基盤となるべき立脚点が揺らいでしまう、というところが、気になるのです。「意識」や「記憶」が揺らぐと、なんでもあり、になってしまって、それでは物語の面白さに身をゆだねることができないと思うからです。
なので、この作品も苦手な部類に入るのですが、それでも嫌にはなりませんでした。どうして嫌にならなかったのか、なにが嫌になりそうなのを留めたのか、よくわかりません。
次々と繰り出されるさまざまなエピソードが作り出すイメージの奔流が心地よかったのです。ぼくの個人的に好きなリネ・マグリットの絵「光の帝国」が取り上げられているから、だけではないと思います。
だから、ミステリとして見た場合の着地点の凡庸さ (あらすじに「衝撃の結末」なんて煽ってあるので、あえて「凡庸」と強く言っておきます。読者のみなさんの想定の範囲内に着地しますよ) を補って余りある読後感につながっているのではないでしょうか。
というわけで、「ミステリ」としては不満が残りますが、なぜか心地よく読めて、「ミステリー」としてよかったなぁ、と思いました。

<蛇足>
タイトルは、サリンジャーの “ A Perfect Day for Bananafish” (「ナイン・ストーリーズ」 (新潮文庫) に収録。邦題は「バナナフィッシュにうってつけの日」) から取られているのですが、「完全なる首長竜の日」と書くと、「完全なる」が「首長竜」にかかっているようにも見えますね。ぼくも「完全な首長竜」ってどんなのだろう、と変な期待をしていました...英語のタイトルからは「日」にかかるのがオリジナルのようなのでちょっと気になります。


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chokusin

黒沢清監督により実写映画化されるようですね。姉弟を幼馴染で恋人と変更するそうですが、どんな仕上がりになるか楽しみでもあります。
by chokusin (2012-12-23 19:22) 

31

chokusin さん、nice! & コメントありがとうございます。
姉弟から設定変更ですか。原作の趣向から考えると、ちょっと難しそうな変更ですね。
でも、恋人にして恋愛感情を持ち込むことで、映画的には一般受けする設定になるのかもしれませんね。
イメージが膨らむ作品なので、映像が楽しみですね。

by 31 (2012-12-23 22:37) 

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