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レディ・ヴィクトリア アンカー・ウォークの魔女たち [日本の作家 篠田真由美]




<裏表紙あらすじ>
アルヴァストン伯爵家で行われた晩餐会の夜、「エトワール」と讃えられるダイヤモンドの耳飾りが片方だけ、忽然と消えた。
スコットランド・ヤードも手を焼くその事件は、噂話には事欠かないヴィタ・アメリ・シーモア元子爵夫人に持ち込まれることに。
天真爛漫なレディと笑顔ひとつ見せない美貌で有能なメイド。19世紀ロンドンを舞台に自由な女性たちの冒険が、はじまる!


講談社タイガで始まった、篠田真由美の新シリーズです。
ヴィクトリア時代で、上流階級をめぐる事件で、かつ、メイドや使用人の世界も描く、というとなにやら流行に乗った作品のようです。
あとがきにも
「リアルなヴィクトリアン・メイドが活躍するミステリはありだろうか。」
と書かれていますので、それっぽい。
でもね、篠田真由美がそんなひょいと流行に乗っかったような話、書くわけないっしょ、ということで注意しながら読み進めます。

第1章でレディ・ヴィクトリア、先代シーモア子爵の未亡人ヴィクトリア・アメリ・シーモア(通称? ヴィタ)が登場するのですが、そもそも異色の貴族、です。
アメリカ出身で、お召し物もなかなか奇抜。
第2章で持ち込まれた謎が絵解きされるわけですが、いやあ、ここでニヤリとしてしまいました。
レディ・ビクトリアって、「貴族探偵」 (集英社文庫)なんですか!?
ヴィタのレディスメイドであるシレーヌがカギを握っていそうです。

で、ここで読者としては思うわけです。レディ・ヴィクトリアをめぐる使用人たちとの関係からして、本書で描かれるのは、ちっとも「リアルなビクトリアン・メイド」ではないのでは? と。
確かに、レディ・ヴィクトリアと使用人の関係の特異性と対比するかのように、それこそダイヤモンド消失事件の舞台となったアルヴァストン伯爵家のように、伝統的な? 正統派の? メイド、使用人も登場しますが、物語の比重はやはりレディ・ヴィクトリアでしょうからねぇ。

登場の仕方からして、レディ・ヴィクトリアは謎めいた人物として描かれているのですが、徐々に徐々にレディ・ヴィクトリアの謎が明らかになってくるので、より一層そう思いますね。
シリーズの展望は、レディ・ヴィクトリアがいかに敵(正体は、この第1巻「レディ・ヴィクトリア アンカー・ウォークの魔女たち」 で明らかになりますが、ここでは伏せておきます)と闘うかにあるのでしょう。
とすると、メイドたち云々というのは、背景、ということになると思います。
篠田真由美のことですから、リサーチも行き届いていると思われますし、ディテールは十分楽しめます。贅沢な感じ。

レディ・ヴィクトリアを読者に見せていくやり方も凝っています。
第1章、第2章では依頼人となる人物からの視点を中心にしてありますが、第3章からは野次馬とでもいうべき、お向かいさんの視点(!)。そしてさらっとレディ・ヴィクトリア視点が導入されたりもします。
このあたりの呼吸が、読者によっては読みやすい、あるいは読みにくいという感想につながりそうです。

ミステリ的には、冒頭の、晩餐会で消えたダイヤモンドの行方を推理するエピソードが一番ミステリっぽい。
舞台設定からして「盗まれた手紙」なんだな、と推察できてしまうので、謎解きには意外感はないものの、手段と動機が混然一体となっているので、ああうまく仕込んだなぁ、と感心できます。(真相の手がかりを大胆にさらしてある点も高ポイントなのですが、当時の人、殊に貴族だったらすぐに気づくんじゃないか、と思えるのは難点です)
以降の謎ときには、金持ちはなんでもできる、的な匂いが少しする点気になりますが、シリーズ全体のトーンが対決物なのだとしてら、これはOKということなのでしょう。

その、レディ・ヴィクトリア対敵の対決、というパターンになっていくシリーズだと思われますが、キャラクターからして、もってまわったような対決となりそうなのが、逆に期待度大です。
次の「レディ・ヴィクトリア 新米メイド ローズの秘密」 (講談社タイガ)も出ていますし、どういう風に展開するのか、楽しみですね。


<蛇足>
ヴィクトリア時代のレディスメイドが
「とんでもございません」(16ページ)
「申し訳、ございません」(34ページ)
なんていうのは、とんでもないことだと思うんですが...

<蛇足2>
アンカー・ウォークというのは、チェルシー河岸近くの小路、という設定ですが、架空の地名のようです。




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