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マルタの鷹 [海外の作家 は行]


マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 作者: ダシール ハメット
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/09/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
サム・スペードの事務所を若い女が訪れた。悪い男にひっかかり、駆け落ちした妹を連れ戻して欲しいとの依頼だった。スペードの相棒が相手の男を尾行するが、相棒も男も何者かに射殺されてしまう。女の依頼には何か裏があったのか……。やがて、スペードは黄金の鷹像をめぐる金と欲にまみれた醜い争いに巻き込まれていく――ハンフリー・ボガート主演映画で知られる、ハードボイルド小説の不朽の名作。改訳決定版。


言わずとしれたハードボイルドの名作中の名作の2012年に出た新訳です。2017年7月に読みました。
小鷹信光さんの改訳決定版ということで、これは読まねば! と思って即買ったものの、長い間積読にしてしまっていました。
はじめての出会いは、小学校の図書室に置いてあった、子ども向けに訳されたものでした。そのころはまったくぴんときませんでしたね。というか、あっけないラストに(ミステリを楽しむのとは違う意味で)びっくりしたことを覚えています。
大人になってから、普通の(大人向けの)訳書も読んだはずですが、印象が薄いですね。

今回ちゃんと読んでみて、気づいたことを書いておきたいと思います。
まず、子供のころびっくりした事件の構造。
これは、今読んでも同じような感覚を持つ人がいてもしょうがないかなぁ、と思いましたね。あっけない、と言ってもよい。
タイトルにもなっている「マルタの鷹」をめぐる顛末は、他愛もない。
これは、鷹をめぐる物語ではあっても、そして二転三転する展開ではあっても、そのプロットを楽しませる物語ではない、ということですね。

今回印象に残ったのは、そんなの当然と言われそうですが、やはりサム・スペード。
序文で作者ダシール・ハメットが
「ここに登場する私立探偵は、シャーロック・ホームズ風の謎々を博識ぶって解こうとはしたがらない。彼は、いかなる状況も身をもってくぐりぬけ、犯罪者であろうと罪のない傍観者であろうと、はたまた依頼人であろうと、かかわりをもった相手に打ち勝つことのできるハードな策士であろうと望んでいる男なのである。」(7ページ)
と記していますが、正直、謎、です。
この物語、サム・スペードを探るためのストーリーなのではないだろうか、と思った次第。ミステリとしてプロットを追う、とか、謎がどうしたとかに力点を置いて読んでしまうと、つまらない。 
サム・スペードのための物語だと思うと、非常に興味深く、読みどころの多い作品だと強く感じます。
最も象徴的なシーンは、ラストでサム・スペードが依頼人であるブリジッド・オショーネシーに対してとった態度ではないでしょうか。
有名なシーンなので、今となってはさっと当たり前のように受け取ってしまうかもしれませんが、ここ結構意外に感じるところではないかと思うのです。当時の読者はかなり驚いたのではないでしょうか。
死んでしまったパートナー、マイルズ・アーチャーに関するやりとりやエピソードもかなり複雑です。
ブリジッド・オショーネシーもかなり謎深い人物ですが、なによりも、サム・スペードって、いったいどんな人間なんだろう。
そういう興味の方が、事件の興味よりも強いように思います。
それに拍車をかけるのが、内面に踏み込まない、ハードボイルドならではの文体。
一層読者には謎が深まります。
最後に本人の口から
「こけにされるつもりはないんだ」(347ページ)
と語らせていますが、それだけで終わらせてよいものかどうか、いろいろと考えてしまいます。
最終ページ(356ページ)で、秘書のエフィ・ペリンから拒絶されたサム・スペードの顔が、蒼白になるところも印象深いです。


<蛇足>
「灰色の紙をとりのぞき、卵形の青白い木毛のかたまりをとりだした。」(259ページ)
とあります。恥ずかしながら、木毛という語を知りませんでした。
あれ、木毛っていうんですね...


原題:The Maltenese Falcon
作者:Dashiell Hammett
刊行:1930年
訳者:小鷹信光




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