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機龍警察 [日本の作家 た行]


機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/03/19
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵(ドラグーン)』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた……“至近未来”警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作!


この文庫本を買って積読にしてぼやぼやしている間に、「機龍警察〔完全版〕」 (ハヤカワ・ミステリワールド)なんてものが出てしまいました。
なので、この感想は文庫本である旧版のものです。

あらすじにもありますが、警察で機甲兵装に搭乗してうんぬんかんぬんって言ったら、これはゆうきまさみの「機動警察パトレイバー」 (小学館文庫)ではありませんか。ああ、懐かしい。
しかし、コミックではない、小説で? うーん、と思って読みましたが、いや、ちゃんとおもしろかったですね。
付け加えておくと、(当然ながら)「機動警察パトレイバー」とはテイストがずいぶん違います。

機甲兵装は「龍機兵」
特捜部がSIPD (Special Investigators, Police Dragoon)

警察小説の枠組みで書かれているのがまず第一のポイント
そしてその機甲兵装(警察の隠語では、キモノ)に乗るのが、傭兵--すなわち警察プロパーでないというのが第二のポイントですね。

正直読む前は、アクションに傾斜した雑なつくりの小説かも、なんて思っていたのですが、たいへん失礼しました。
定型といえば定型かもしれませんが、3人の傭兵が過去も含めそれなりに描かれていて(それなり、というのは巻を追うごとにもっともっと深掘りされていくのだろうなと思えたからです)、既存の警察組織や警察官との摩擦もきちんとフォローされています。
そして、魅力は文体ですね。きびきびしていて、心地よいテンポ。緊迫したシーンと、緩んだシーンの緩急もついて、リズムよく読めます。
これらのことが、第1章(この文庫で62ページまで)を読むだけでわかります。
派手な戦闘は冒頭とラストだけで、途中はちゃんと警察捜査になっているのも、ミステリ好きにはポイント高い。

とても面白かったですが、この「機龍警察」は、
「機龍警察 自爆条項」〈上〉  〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
「機龍警察 暗黒市場」 (ミステリ・ワールド)
「機龍警察 未亡旅団」 (ハヤカワ・ミステリワールド)
「機龍警察 火宅」 (ハヤカワ・ミステリワールド)
と続いていくシリーズの導入部、いわばご紹介といった感じなので、続きを読むのが楽しみです!



小山荘のきらわれ者〜リターンズ〜 1 [コミック]


小山荘のきらわれ者〜リターンズ〜 1 (花とゆめCOMICS)

小山荘のきらわれ者〜リターンズ〜 1 (花とゆめCOMICS)

  • 作者: なかじ有紀
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2015/07/03
  • メディア: コミック


<裏表紙あらすじ>
下宿館の小山荘は、建築士を目指す成介と美容師の道を歩み始めた麻里のカップルを中心に相も変わらずにぎやかな日々!
彰吾&安古に加えて、おなじみの住人達も登場で、少し大人になった彼らの関係は──!?


帯には
「名作『小山荘のきらわれ者』の彼らにまた会える──!!」
とあります。

すみません、これ、このブログのいつもの傾向とはまーったく違います。
ミステリでも、サスペンスでも、冒険ものでもありません。
全く違うんですが、懐かしくてねー、つい。いやあ、何年振りなんだろ?
amazonによると、「小山荘のきらわれ者 7」 (花とゆめCOMICS)の刊行が1988年の6月みたいなので、なんと27年ぶりですか!?
「Step」 (花とゆめCOMICS)というこのシリーズの番外編もありましたねぇ。こちらは、1991年の2月刊行のようなので、ここから数えても24年ぶり。
友だちに紹介されて読んだマンガでしたね。あのときすでに完結していたはず...
このあと、結構なかじ有紀さんの作品は読んでいます。


ずいぶん、ずいぶん経ちますが、物語の中の設定は、3年後らしい...
絵がかなり変わっているんですね。こんなに時間が経てば、当たり前か...
最初のページに、昔の絵を使って、「~小山荘のこれまで~」という紹介ページが作られているのですが、その左がわの登場人物紹介のキャラクターの絵(現在書かれたもののようです)と全然違う(笑)。

この1巻は、復活篇の顔見世みたいなノリですので、懐かしい登場人物たちが少しずつ紹介されていきます。むしろ彰吾の父親の登場が早すぎる気がするくらい、次々と登場します。
巻末の2巻の予告を見ると、北原が大きく取り上げられるみたいですし、篠崎もフランス帰りとかで戻って来るらしいですし、昔を思い出して、楽しみに待とうと思います。
2016年春頃発売予定とのこと。



タグ:なかじ有紀

ブレイズメス1990 [日本の作家 海堂尊]


ブレイズメス1990 (講談社文庫)

ブレイズメス1990 (講談社文庫)

  • 作者: 海堂 尊
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/05/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。『ブラックペアン1988』の興奮とスケールを凌ぐ超大作、文庫化。


引用したあらすじには、超大作、とありますが、文庫本で380ページしかないし、普通ですよね。
でも、まあ、海堂尊の作品にありがちな(作者の意図ははいっていないのかもしれませんけど)、無理やり上下にわけて金稼ぎするようなインチキに近いやり方でなかったのでラッキーでした(笑)。
そういえば、このインチキ上下本商法、海堂尊もやめたみたいですね。新装版とかいって、次々と1巻本に修正されていっています。重畳ですね。

さておき、中身ですが、桜宮サーガに連なる作品で、「ブラックペアン1988」 (講談社文庫)と強くつながっています。
ミステリではありません。
今回のスターは天城雪彦で、ポイントは公開手術。テーマは医療と金でしょうか?
金持ちからはがっぽりとって、貧乏人にはその分(?) 安く、という風になるとさらに理想的ですが、そうもいかないんでしょうねぇ。

ちょっと素人目にも乱暴だなぁ、と思える展開でしたが、エンターテイメント性は十分。おもしろかったです。
やはり天城のキャラクターがいいですよねぇ。そしてやはりラッキーボーイの世良先生。
それ以外にも、桜宮サーガを読んできた読者にはおなじみの面々の若い頃の姿が見られる楽しみもあります。猫田看護主任に花房看護婦... ははは。こんな感じだったんですね、若い頃は...高階講師ってのも、なんだか新鮮で、別人みたい。

次の「スリジエセンター1991」が文庫化されるのが楽しみです。


タグ:海堂尊

ピエロがお前を嘲笑う [映画]

ピエロがお前を嘲笑う T0020254p.jpg


映画のHP(リンクはこちら)からあらすじを引用します。

ドイツで大ヒットを飛ばし、ハリウッドがリメイクに飛びついた、驚愕の〈マインドファック〉スリラー!
警察に出頭した天才ハッカー・ベンヤミン(トム・シリング)。世間を騒がせ殺人事件にまで関与を疑われ国際指名手配をされた。そのベンヤミンが自ら語りだした――
学校では苛められ冴えないベンヤミン。ピザ屋のバイトでも馬鹿にされ、想いを寄せているマリ(ハンナー・ヘルツシュプルンク)にもまともにアプローチもできない。そのマリのために試験問題をハッキングして手にいれようとしたベンヤミンだったが捕まってしまう。前歴がなかったため社会奉仕活動を命じられ、そこで野心家のマックス(エリアス・ムバレク)と知り合う。2人にはハッキングという共通の趣味が合った。マックスはベンヤミンの天才的な才能を見抜き、マックスの友人たちを交えて、破壊活動を行うハッカー集団“CLAY(クレイ)”を結成する。国内の管理システムを手当たり次第ハッキングを仕掛け、世間を混乱させ注目を集める。そしてクレイはライバルハッカー集団を挑発し、ついにはその正体を暴いてみせる。さらにドイツ連邦情報局へもハッキングを仕掛け、有頂天になっていたベンヤミンたちだったが、ベンヤミンの仕掛けた不用意なハッキングがきっかけで殺人事件が発生してしまう。ついにユーロポール(欧州刑事警察機構)の捜査が入り、ベンヤミンたち自身が危険にさらされることになり、自ら出頭することにしたのだった。
しかしベンヤミンの自供はつじつまが合わない。翻弄される捜査官たち。果たしてどこまでが真実なのか。彼の真の目的とは――。


映画のHP)には、
「まさかの結末に《100%見破れない!》《騙された!》という観客が続出ドイツで大ヒット、ハリウッドがリメイクも決定!驚愕の<マインドファック>スリラー、日本上陸」
という惹句が書かれています。

騙されると煽られていますが、こういう煽り文句はかなり要注意で、派手な煽り文句であるばあるほどがっかり率が高まるような気がします。
100%見破れない、というのはかなりレベルの高い煽り文句で、ミステリファンだとかなり気になります。

で、どうだったかというと、100%見破れない、ということはないと思いました。さすがに言い過ぎ。
でも、いろいろと考えて作ってあって、楽しみました。満足です。

マイナス面から指摘しておくと、ほかならぬ犯人の計画がまずい。
最後までいって考えると、「騙される」という煽り文句の肝というべき最後のどんでん返しで明かされるプロットには、かなり無理があります。
これはあり得ないなぁ。ちょっとがっかり。
捜査官サイドの動きや思考回路まできっちり支配できないと不可能で、そこに立脚した計画というのは、なし、ですね。
これを観客に納得させるには、すくなくとも、捜査官側のストーリーをもっともっときっちり描きこんでおく必要がありますし、かなり大量のエピソードで捜査官のキャラクターを「この捜査官なら、まず間違いなくこういう行動を取るよね」と思わせるくらいに浮き彫りにしておく必要があるでしょう。(これをやっても、納得するとは限りませんが)
あるいは、捜査官が思い通りに動かなくても、バックアップのシナリオがきちんと用意されていた、とわかるようにしておいてくれる必要があります。
さらにこの計画、警察サイドにはワークしても、ネット裏社会でもワークしていますでしょうか? 少々不安が残ります。

一方で、このどんでん返しの前に提示されるストーリーは、正直つまらないので、ひっくり返してくれたことはGOOD。
最近のミステリでは、常套手段というか手垢に塗れて面白くもなんともない、個人的には嫌いなアイデアなんですね。でも、嫌いだから批判的に見たおかげで、すぐにおかしいなと気づけました。だからどんでん返しを想定できました。
最後のどんでん返しのおかげで、この嫌いなアイデアが葬り去られたわけで、ありがたい(笑)。

現実世界とネットの世界を区分けするのに、マスクを使うのはいいアイデアだなぁと思いました。
これ、楽しかったですよ。(不気味な中身ですけれど)
根暗な主人公の成長物語という捉え方もできて(歪んだ成長ではありますが)、欠点も挙げましたが、個人的には好きな映画です。
もちろん、「100%見破れない」という映画ですから、こちらの見落としや理解不足で、もっともっと素敵な裏側が仕掛けられていたら、さらにうれしいのですが。

ハリウッドがリメイクするらしいですが、ハリウッドのリメイクって大抵オリジナルよりも、数段つまらなくなるので、心配です。怖いもの見たさ(?)で観てしまう気がしますが...



原題:WHO AM I - NO SYSTEM IS SAFE
製作年:2014年
製作国:ドイツ


カンナ 鎌倉の血陣 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 鎌倉の血陣 (講談社文庫)

カンナ 鎌倉の血陣 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
甲斐は、婚約者の聡美に誘われ、茶会に出席するため鎌倉へ二人旅。しかし、そこには貴湖(たかこ)と竜之介の姿が。女二人が火花を散らす中、茶会の主催者であると息子の範夫が殺害される。甲斐は、宗朝が調べていたという源氏がたった三代で滅びた理由と、宗朝親子殺人事件の真相に、奇妙な共通点を見出す!


シリーズも順調に巻を重ねて第六冊目。
今回の史実は鎌倉、なんですが、歴史の部分にあまり切れ味を感じませんでした。すべてがすべて、ではありませんが、なにやらどこかで読んだような感じ。まあ、どこかもなにも、ほかならぬ高田崇史の「QED~ventus~〈鎌倉の闇〉」 (講談社文庫)ですけどね。
たとえば、源氏が鎌倉を幕府を開く場所として選んだ理由には「QED~ventus~〈鎌倉の闇〉」の影を感じます。それでも、「いざ鎌倉」は、武士の忠義ではなく、「組合」(武家連合みたいなものでしょうか)からの締め付けだった、とか、ちょっと楽しくなります。
注目は(?)、いつもの朝廷の横暴、がないことでしょうね。鎌倉では、朝廷に代わる黒幕、悪者は、言わずと知れた北条家。存分に力を振るっていますよ。

いや、そんなことより、このシリーズは、甲斐と貴湖たちのストーリーの方が重要ですよねっ。
貴湖が休学をとりやめようとしていたり、おおきく動こうとしていますね。
甲斐もどんどん隠れた能力を発揮しています。
ラストでは、海堂の爺さん(甲斐の婚約者聡美の祖父)が、「噂に聞く『鴨志田家の能力』」なんてモノローグを....
おまけっぽいですが、QEDの棚旗奈々が登場し、タタルや御名形の名前も登場します。

残り少なくなったシリーズ、あと少し頑張って読みます!

<蛇足>
解説の中に作者のインタビューがあって、シリーズ九冊を刊行順に並べて、タイトルの最後の一文字をつなげると、臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前となるというのを受けて、作者がこう言っています。
「陰陽師や忍者などに広く使われた『九字』の意味は、『臨める兵、闘う者、皆陣列(つ)れて前に在り』。つまり《カンナ》は、読めば鎮魂になり、さらに九冊すべて揃えると結界が張られて、悪霊や邪気から身を守れますと。」
古今東西、こんな意図を持って書かれたシリーズがありましたでしょうか!?



ナイトクローラー [映画]

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映画のHP(リンクはこちら)からあらすじを引用します。

“ナイトクローラー”と呼ばれる報道(スクープ)パパラッチとなった男は、 視聴率がとれる刺激的な映像を手に入れるため、 行動をエスカレートさせていく--
眠らないロサンゼルスの街で、闇にまぎれて金網を盗もうとしている男(ジェイク・ギレンホール)がいる。呼び止める警備員を殴り倒した男は、戦利品を車に載せて工場に売りつける。そこで男は「僕は勤勉で志が高い人間だ」と自信満々で自分を売り込み、「コソ泥は雇わない」と断られても笑顔で去って行く。自分をルーと呼ばせる、この不気味な男の名は、ルイス・ブルーム。友達も家族もなく、ネットとテレビと共に孤独に暮らしている。
 帰り道、交通事故現場を通りかかったルイスは、事件や事故報道のスクープを専門にしている映像パパラッチ、通称〈ナイトクローラー〉と遭遇する。悲惨な映像がテレビ局に売れると聞いたルイスは、盗んだ自転車と交換にビデオカメラと無線傍受器を手に入れる。
 その夜から警察無線を盗み聞き、車で現場に急行するようになったルイスは、カージャックの被害者の撮影に成功する。しかも先に到着していたナイトクローラーより接近した生々しい映像だ。 あるテレビ局に早速映像を持ち込むと、女性ディレクターのニーナ(レネ・ルッソ)が映像を買い取ってくれた。そこで「視聴者が求めているのは、刺激的な画。さらに望ましいのは被害者が郊外に住む白人の富裕層で、犯人はマイノリティや貧困層。」とアドバイスをもらう。ルイスは、何か撮ったら一番に彼女に連絡すると約束するのだった。
 本格的に事業を始める決意をしたルイスはアシスタントを募集し、面接に来た住所不定で何の特技もないリック(リズ・アーメッド)を僅かな賃金で雇う。助手席で進路を指示する仕事さえ満足にできないリックを冷酷に叱咤するルイス。 
 ある夜、住宅街の発砲事件に駆けつけるが、負傷者もなくハデな映像は撮れそうになかった。ルイスは被害宅の裏に周りこみ、関係者たちの隙をついてコッソリ中に忍び込み、冷蔵庫の生々しい銃弾跡の横に家族の写真を置いて撮影する。映像を持ち込まれたニーナは「最高の素材よ!」と絶賛、編集担当の「不法侵入だ」という制止を振り切って放映する。
 それからもセンセーショナルなスクープ映像を次々にモノにしたルイスは、車はスピードの出る赤い高級車に、機材も最新型に買い替える。壮絶な横転事故の無線を傍受した時も、その車で誰よりも早く現場に駆け付け、絶好のアングルのために、ルイスは血だらけの遺体を車の下から引きずり出すという暴挙に出る。
ネットで学んだビジネスノウハウや格言を狂信し、成功だけに邁進するルイスに、怖いものなど何もなかった。
 そんな絶頂への階段を駆け上がるルイスに、思わぬ落とし穴が待っていた。リックのミスで飛行機墜落事故という最大のスクープを逃してしまったのだ。過激な視聴率争いからニーナにも激しく罵られ、進退窮まったルイスは遂に究極の一線を超えるのだが──。


いつも引用するシネマ・トゥデイから、チェック欄を引いておきます。

チェック:第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたサスペンス。事件や事故現場に急行して捉えた映像をテレビ局に売る報道パパラッチとなった男が、刺激的な映像を求めるあまりに常軌を逸していく。脚本家として『ボーン・レガシー』などを手掛けてきたダン・ギルロイが、本作で監督に初挑戦。『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホールを筆頭に、『マイティ・ソー』シリーズなどのレネ・ルッソ、『2ガンズ』などのビル・パクストンらが出演。報道の自由のもとで揺らぐ倫理という重いテーマが、観る者の胸をざわつかせる。


なんとも嫌な気分になる映画でした。この主人公ルイスが本当に嫌な奴です。
主演のジェイク・ギレンホールの演技が光るって、ことなんでしょうね。

はっきり言って社会のゴミ。いや、ゴミというより、犯罪者ですね。
ただ、このルイス、報道の仕事をする前から、窃盗をしているんですね。もともと犯罪者。
つまり、普通の人が、報道の仕事をするうちに感覚が麻痺してしまい、一線を越えてしまう、狂気の世界に踏み込んでいってしまう、というテイストではなくて、最初っから犯罪者=あちら側の人、なわけです。コソ泥だったのかもしれませんが。
きわめてあっさりと、常軌を逸した行動をとります。
なので、上に引用したチェック欄がいうように、「報道の自由のもとで揺らぐ倫理という重いテーマが、観る者の胸をざわつかせる」、ということはありません。だって、そもそも倫理とかをつっきったところ、向こう側にいるんですから。
一般人の常識からすれば、狂っているとしか思えない人物が主人公なので、こちらの倫理観が揺らいだりはしません。その意味では、安心して(?) 狂人の行動を眺めることになります。
要するに、「お前はおかしいことはわかっていたけど、おいおい、どこまでやるんだい?」「いくらなんでも、そんなところまでやってのけるのかい?」と、主人公がどこまで突き進んでいくのかを眺めることになります。
その意味では、主人公にまったく共感できないピカレスク(ちょっと矛盾する表現ですが)と言えるのかも。

ラストもあまりハリウッドぽくない映画となっていて、ざらざらした感触の残る作品でした。



原題:NIGHTCRAWLER
製作年:2014年
製作国:アメリカ


攪乱者 [日本の作家 石持浅海]


攪乱者 (実業之日本社文庫)

攪乱者 (実業之日本社文庫)



<裏表紙あらすじ>
コードネーム、久米・宮古・輪島のテロリスト三人。組織の目的は、一般人を装ったメンバーが、流血によらず、政府への不信感を国民に抱かせることだ。彼らの任務は、レモン三個をスーパーに置いてくるなど、一見奇妙なものだった。優秀な遂行ぶりにもかかわらず、引き起こされた思わぬ結果とは。テロ組織の正体は。そして彼らの運命を握る第四のメンバーの正体は――。


連作形式になっていまして、各話のタイトルが名作のタイトルになっています。
「檸檬」
「一握の砂」
「道程」
「小僧の神様」
「駈込み訴え」
「蜘蛛の糸」
「みだれ髪」
「破戒」
「舞姫」

こんなのもテロに入るのかなぁ? というような怪しげなテロ(?) が描かれます。
あらすじにも囲繞されている冒頭の「檸檬」 なんて、スーパーにレモンを置いてくることですからね。
こんなので、政府への不信感を国民に抱かせる、ことが可能なのかどうか?
だから、帯の惹句が印象的です。いわく、
「昼は一般人、夜はテロリスト。」
テロリストの出勤風景とか、ちょっと笑ってしまいます。

そういうちょっとオフビートな、あるいはシュールと言ってしまってもいいのかな? 活動が徐々に語られていくなかで、テロリスト集団の中のつながりとかが見えてくる、あるいはつながりができてくる。
隔靴掻痒を地で行くストーリーを面白いと思うか、なんだこりゃと思うかで、読後感は大きく変わって来るでしょう。

しかし、最後のページで語られる世界って、いい世界なんですかね?

ともあれ、シリーズ作品として「煽動者」 (実業之日本社文庫)がでているようなので、そちらも楽しみです。


タグ:石持浅海

スノーホワイト [日本の作家 ま行]


スノーホワイト (講談社文庫)

スノーホワイト (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
「真実を映し出す鏡」をもつ反則の名探偵・襟音ママエは、舞い込む事件の真相は分かるが、推理は大の苦手。ある事件が縁で顔を合わせた探偵・三途川理が、窮地に陥れようと策を練っていることも知らず――。おとぎ話のような愛らしい世界で、鋭い論理バトルが展開される、第十四回本格ミステリ大賞受賞作。


「キャットフード」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続く第2作です。
今回の設定は白雪姫、と紹介するよりは、〈なんでも知ることのできる鏡〉がミソというべきですね。
この鏡、よく知られている存在ですが、ミステリの道具として活用した例、なかったような気がします。nice!

二部構成になっていまして、第一部は、〈なんでも知ることのできる鏡〉で真相を知ってから、説明をでっちあげる、というミステリを裏返したようなストーリー。
肩慣らしであると同時に、三途川とママエが出会うきっかけともなります。
この設定で連作を書いてみてほしいですね。途中で飽きるかな?

そして第二部は、三途川が悪者側(?)についてママエを亡き者にしようとすることへの攻防戦です。
この第二部が本書の読みどころかと思います。
攻防戦、と書きましたが、実際のところ知恵を巡らせるのは三途川サイドだけで、ママエ側は対してなにもしませんが、それでも鏡をどう使うかをどんどん深めていくのは、面白かったです。
ただ難点は、鏡がだんだん万能になっていってしまうところ。
質問に対し事実(真実?)を答える、というのを超えて、いろんなことが出来てしまいます。
鏡の機能が第一部できちんと説明されていない。何ができて、何ができないのか、読者には示されないまま進んでいってしまうので、あれれ、と。
たとえば悪者側が「ママエを首尾よく始末するにはどうしたらいいか?」と鏡に聞くことはできない(聞いても回答が得られない)ように設定されていると思われるのですが、はっきりとは書いていない。書いてあることから類推するとたぶんそうだろうな、とわかるくらいにはなっていると思いましたが、それであれば一層、後半で展開される鏡の能力にはびっくりします。
この点を受け入れて、メルヘンチックな世界でのおとぎ話と捉えると、その範囲内であれこれと策謀をめぐらせるミステリとしてたいへん楽しく読みました。

森川智喜、ずいぶんいろいろとへんてこなこと(褒め言葉です)を繰り出してくれそうです。
今後も楽しみな作家です。




海街diary 3 陽のあたる坂道 [コミック 吉田秋生]


海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

  • 作者: 吉田 秋生
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2010/02/10
  • メディア: コミック


<裏表紙あらすじ>
最初の出会いから季節がひとめぐりした夏――。すずと3人の姉たちは、父の一周忌で再び河鹿沢温泉を訪れた。複雑な思いを胸に抱くすずだが…?  家族の「絆」を鎌倉の美しい風景とともに情緒的に描く、大注目のシリーズ第3巻!

このシリーズ第3弾「海街diary 3 陽のあたる坂道」 には、
「思い出蛍」
「誰かと見上げる花火」
「陽のあたる坂道」
「止まった時計
の4話 収録。

「思い出蛍」は、父の一周忌ということで、すずの住んでいた街(街というより、町という感じかも)をみんなで一年ぶりに訪問します。
義母(だった陽子)が再婚を前提に付き合いをしている、という事実に感情を爆発させるすずと、それに対峙する幸。
「初めてじゃない? すずがお姉ちゃんに口答えしたの」という佳乃のセリフが光りますね。こういうのをきちんと掬い取ってくるところがこのシリーズの長所ですね。
そして、そんなすずも、義弟の和樹と再会し、いろいろと考えを深めていく。

「誰かと見上げる花火」では、幸ねえに職場替え(転職ではありません。配置換えというのでしょうか?)の話が。また幸ねえの不倫が姉妹に知られます。
それぞれが、それぞれに観る花火大会。(アレ? でも今回千佳のエピソードはなかったような...)
幸ねえ、佳乃、すず、誰もが、思い通りでない花火大会ってところがミソなんでしょうねぇ。

「陽のあたる坂道」」で、裕也のオクトパスでのプレーが話題になります。
「たった15分でみんな悟ってしまった。
 裕也はやっぱり以前の裕也じゃないんだ と」(112ページ)
という部分が象徴するように、やはりそこは義足ですから、難しい。
でも、風太は違います。
後段ですずが
「いくら努力してもどうにもならないことってやっぱあるけど
 だからって別に終わりじゃないんだなって」(140ページ)
と感想を述べていますが、この風太の視線、これこそがこのマンガを読む醍醐味のような気がしました。
あと、カーテンをめぐるすずのエピソード。重病患者を看病することの重みが、思いがけないエピソードで提示されています。

「止まった時計」で、幸ねえの不倫に一大転機が。
しかし、このシリーズの登場人物はみんな、周りのことをよく見て、よく考えていますね。
幸ねえが、ダメナースの後輩アライさんを見る(分析する!?)くだりなんか、印象的です。
「『とても大切なこと』とそれ以外のオン・オフがあまりに激しくて不器用なだけ」(170ページ)って、意外とそういうことあるのかもしれませんね。


烏丸ルヴォワール [日本の作家 ま行]


烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
京都に伝わる稀覯本『黄母衣内記(きぼろないき)』。その所有者が謎の死を遂げた。事故か他殺か。そして継承を巡り兄弟争いが勃発。私的裁判・双龍会(そうりゅうえ)が開かれることに。その準備の中、瓶賀流(みかがみつる)は伝説の龍師「ささめきの山月」から、一人の少女と行動を共にすることを依頼される。だがそれは仲間達との敵対を意味していた。


ここから6月に読んだ本の感想になります。
「丸太町ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾です。
このシリーズ、大好きですね。

これだけの企みに満ちた作品、そうそうないと思います。
このシリーズの強みはなによりやはり、私設法廷「双龍会」でしょう。
龍師(普通の法廷における検事や弁護士にあたる存在ですね)が各々得意技を持っている、とか、火帝(裁判官とはちょっと違いますね...)の下した結論は確定するとか、これらの設定が、論争時点での輝きを増します。
更にここの山場を読者に意識させることで、それ以外の企みに気づきにくくさせます。そういう仕掛けがあるに違いないと思って身構えていても、それでも易々とこちらの予想を超えていってくれました。
途中で、あれっ、と思うところがあって、戻って読み返しなどしてしまいました。こういうのも、企みのうちなのでしょうね。
何を書いてもネタバレになりそうで、感想が書きづらい...

帯の裏表紙側に書かれている
「京都の街では何が起こっても不思議じゃない。」
っていうのが、こうぐっときますね。

このシリーズ、このあと、次の
「今出川ルヴォワール」 (講談社文庫)まで文庫化されていましたが、4冊目の
「河原町ルヴォワール」 (講談社文庫)も今月文庫化されるようで、とても楽しみです。
早く「今出川ルヴォワール」 を読まなければ!