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秘密 トップ・シークレット (8) [コミック 清水玲子]


秘密 8―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)

秘密 8―トップ・シークレット (ジェッツコミックス)

  • 作者: 清水 玲子
  • 出版社/メーカー: 白泉社
  • 発売日: 2010/07/29
  • メディア: コミック


<帯>
最高傑作シリーズ、第8弾!!
犯罪被害者の脳を取り出し、生前の映像記憶を再現する技術を駆使し、難解な事件の真相に迫る科学警察研究所・法医第九研究室。今回は地震発生後に、ある小学校で死者3名が見つかった事件。その原因は「震災」か「事故」か、或いは「事件」なのか!? 捜査が進むにつれ、思いがけない事実が明らかに…!!


2010年8月に出たコミックです。
死者の脳を分析して、死者が生前に見ていたものをMRIスキャナーで再生できるようになっている、という物語の前提がSF的な設定のシリーズです。
第8巻には「秘密 トップ・シークレット 2009 特別編 一期一会 A once-in-a-lifetime chance」と「秘密 トップ・シークレット 2010」が収録されています。

「秘密 トップ・シークレット 2009 特別編 一期一会 A once-in-a-lifetime chance」は、青木と三好先生の婚約祝いの宴会が舞台です。
三好先生と薪警視と、そして三好先生の死んだ恋人と、さらに青木と、この4名の関係、ややこしくてしょうがないですね。
宴会に来ないはずだった薪が私服で現れ、第九の将来像が語られる。番外編としては注目度高い作品です。
それにしても、青木、お前も十分おかしいよ(笑)。

「秘密 トップ・シークレット 2010」では新キャラ登場です。
副検事を5年やって、国家公務員Ⅰ種試験を受けなおして「第九」を目指した、36歳だけど36歳には到底見えない山本賢司。
第九の捜査対象として、脳に障害があって、きちんと目には見えているのに人の顔や形を認知・判断できない少年から見た世界が扱われるのですが、この山本も似た(と言ってしまってはいけないのかもしれませんが)障害を抱えていた、というのがポイントです。
あと、震災でトラウマ(と安直な表現をしてすみません)を負った少年の像も出てきます。
山本の第九の中での立ち位置がなんとなくわかるので、シリーズとしては〇なんだと思いますが、うーん、この作品単体としては、珍しく感心しませんでした。
真相というか、事件の構図がいまいち。
なによりやはり重要な人物がそういう風には「見えない」のは問題ではないだろうかと思います。作中の薪警視のセリフとは文脈が異なりますが、少なくとも読者にはそう「見える」ようになっていないと、つまらない。その人物を取り巻く登場人物たちが行動を起こしても無理ないな、そりゃそういう行動を取るよな、と読者には思えなければ。そしてそれだけの筆力を清水玲子はお持ちだと思います。その意味で、物足りない作品でした。


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偽りのスラッガー [日本の作家 ま行]


偽りのスラッガー (双葉文庫)

偽りのスラッガー (双葉文庫)

  • 作者: 水原 秀策
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/08/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
かつてスター選手だった秋草隼は、膝の故障で現役を引退した。再手術し、人目を避けて寂れたバッティングセンターに通うものの、四年が経ち、選手としての夢は消えかけている。そんな秋草に旧知の球団GMから意外な話が持ちかけられた。ある大物選手に、ドーピング疑惑があるらしい。この疑惑の真相を突き止めるため、秋草に選手として内部から調査してもらいたいという。一度は断ったが、現役復帰への思いに抗えず、秋草はスパイを引き受けることに――。スポーツ界の闇と再起をかけた男の奮闘を描く野球ミステリーの傑作。


作者である水原秀策は、「サウスポー・キラー」 (宝島社文庫)で、第3回 『このミステリーがすごい!』大賞を受賞してデビューした作家です。
「サウスポー・キラー」 は好みにぴったり合いまして、その後文庫化された作品、
「黒と白の殺意」 (宝島社文庫)
「メディア・スターは最後に笑う」 (上)  (下) (宝島社文庫)
「キング・メイカー」 (双葉文庫)
はすべて買っています。
「キング・メイカー」 だけ未読です。
語弊があるかもしれませんが、ミステリとして突出したところがあるという作風ではありません。
ただ、読み心地がすこぶる良い。人物像と語り口で読ませるタイプ、というところでしょうか?
この「偽りのスラッガー」 も期待して読みました。

今回も派手な仕掛けやトリックはありませんが、題材となっているドーピング疑惑の使い方には感心しました。
ドーピングをしていたか、いていなかったのか、結局のところ2パターンしかないわけですが、話をそっちへ持っていきますかぁ、なるほど、というところです。
そしてこの作品の場合は、なによりも野球をやる楽しさが感じられるのが長所だと思いました。
そもそも主人公が復帰するというのも野球をやりたい、という気持ちがあるからこそ、ですし、復帰後チームメイトに囲まれて、野球をやることの素晴らしさ、楽しさが溢れてくるのが伝わってきます。
大人の事情というのもありますから、必ずしもきれいごとでは済まされないし、ラストも正直不安を抱えたまま、というか、先の見えないままエンディングなのですが、それでもどこかさわやかな印象を受けるのは、野球をすることの素晴らしさ、喜びがきちんと書かれているからだと思います。

積読状態の「キング・メイカー」 も近いうちに読みたいです。


<おまけ>
しかし、主人公が復帰して調査するというストーリー、ハーラン・コーベンの「カムバック・ヒーロー」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を思い起こさせますね。




タグ:水原秀策
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ブリッジ・オブ・スパイ [映画]

ブリッジ・オブ・スパイ T0020104p.jpg

映画のHPのあらすじを引用します。

世界が戦争勃発の恐怖に怯える中 平和の鍵を握っていたのは、ひとりの普通の男だった
アメリカとソ連が一触即発の冷戦状態にあった1950~60年代。
ジェームズ・ドノヴァンは、保険の分野で実直にキャリアを積み重ねてきた弁護士だった。
ソ連のスパイの弁護を引き受けたことをきっかけに、世界の平和を左右する重大な任務を委ねられる。それは、自分が弁護したソ連のスパイと、ソ連に捕えられたアメリカ人スパイの交換を成し遂げることだった。
良き夫、良き父、良き市民として平凡な人生を歩んできた男が、米ソの戦争を食い止めるために全rひょくが不可能に立ち向かっていく!

いつものシネマ・トゥデイからも引用しておきます。

チェック:『ターミナル』以来のタッグとなる、スティーヴン・スピルバーグ監督と名優トム・ハンクスによるサスペンス大作。東西冷戦下の1960年に実際に起きた、ソ連によるアメリカ偵察機撃墜事件“U-2撃墜事件”の舞台裏に迫る。『ノーカントリー』で第80回アカデミー賞監督賞を受賞したジョエル&イーサン・コーエンが脚本を担当。一介の弁護士が挑む実現不可能と思われた作戦で、思いがけないアプローチを試みる姿に意表を突かれる。

ストーリー:アメリカとソ連の冷戦のさなか、保険関連の敏腕弁護士ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ソ連のスパイであるアベル(マーク・ライランス)の弁護を引き受ける。その後ドノヴァンの弁護により、アベルは死刑を免れ懲役刑となった。5年後、アメリカがソ連に送り込んだ偵察機が撃墜され、乗組員が捕獲される。ジェームズは、CIAから自分が弁護したアベルとアメリカ人乗組員のパワーズ(オースティン・ストウェル)の交換という任務を任され……。


あらすじ、なんてものは、映画本体とは直接関係がないので、あらすじにケチをつけても仕方がないのですが、見終わってみると、このあらすじ、HPのものも、シネマ・トゥデイのものも違和感があります。「思いがけないアプローチ」ということはないですし、世界の平和を左右する、というのも本映画のストーリーだけを切り取ってみればちょっと違うのではなかろうかなぁ、と。
むしろ、アメリカの弁護士が、己の信念に基づく行動ぶりから、ソ連のスパイと、互いに敬意を持つようになり、友情(?)を得ていく、その結果、スパイの交換という大きな仕事を成し遂げる、という切り取り方の方が、観た感想に近いですね。
"standing man" という語をめぐるエピソードからも、そう思います。

実話に基づいたストーリーということなので、スパイだからもっと派手派手しくなるかと思ったら、展開がかなり地味です。
じっくり観る映画ということでしょう。
トム・ハンクス演じる主人公の弁護士ドノヴァンは、まさに信念の人、standing man ですね。
アメリカ中が敵だというのに、ソ連のスパイのための弁護に打ち込んでいく。それこそが正しいことだと信じて、そして、それこそがアメリカ的なものを守ることだと信じて。
ここがこの映画の一番の見どころなのだと思いました。
ベルリンに舞台を移しての、スパイ交換の交渉、やり取りもサスペンスに満ちてはいるのですが、それは、ひょっとしたらおまけなのかもしれません。非常に充実した、迫力たっぷりのおまけですが。

ソ連のスパイ、ルドルフ・アベル役のマーク・ライランスがよかったです。
作中繰り返される、" Would it help? " というセリフ、印象的です。
グリーニッケ橋で無事交換がなされた後の、車に乗り込むアベルの姿が今も焼き付いています。



原題:BRIDGE OF SPIES
製作年:2015年
製作国:アメリカ

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迷いアルパカ拾いました [日本の作家 似鳥鶏]

迷いアルパカ拾いました (文春文庫)

迷いアルパカ拾いました (文春文庫)

  • 作者: 似鳥 鶏
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/07/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「ちょっとここで、アルパカ拾いまして」――楓ケ丘動物園のアイドル飼育員・七森さんの友人が失踪した。行方を探る鍵はアルパカ? ハムスター? それとも……飼育員仲間の桃くん、ツンデレ獣医の鴇先生、アイドル飼育員の七森さんや変態・服部君らおなじみの面々が大活躍する、大人気動物園ミステリーシリーズ第3弾!


似鳥鶏の動物園シリーズ第3弾ですが、動物園を舞台によくネタが続きますねぇ。素晴らしい。
迷いアルパカって...犬や猫じゃあるまいし、日本には野良アルパカもいなければ、迷うアルパカもいません!!
似鳥鶏の作品は、日常のような顔をしていながら、ぽーんと遠い着地点へ連れて行ってくれるのが魅力だったりするのですが、本作品は、わりと飛躍は抑え気味。動物園との結びつきが自然ですね。
ミステリとしても、僕と七森さんと服部君と鴇先生、四者それぞれが別の人間を怪しいと睨むという展開(176ページ)は素敵ですね。
そして、クライマックスの鴇先生が、すごい。なんたって女王様。
動物は刃物や棒を振り回してもそう怯まない。でも鞭の音は不思議と怖がるの」(190ページ)って本当なんですかね? ネタバレではないですが、クライマックスの見せ場(?)だと思うので、色を変えておきます。女王様にふさわしい段取りですが...
僕は、鴇先生を選びそうな雲行きでエンディングです。
続きが読みたい!!

それにしても、服部君、やはり只者ではないですね。
ラスト近くで実家がちょこっと出てくるんですけど、本当、何者!?
服部君の動向も気になります!



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日々の読書を糧にして-備忘録と駄文感想


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スターウォーズ フォースの覚醒 [映画]

STAR WARS フォースの覚醒 T0016727p.jpg

旅行に行ったりもしたので、ずいぶん間が空いてしまいましたが、また映画の感想です。
映画のHPのあらすじを引用します。

『ジェダイの帰還』から約30年後を舞台に、フォースを巡る全く新しい“家族の愛と喪失の物語”が描かれる。
砂漠の惑星で家族を待ち続けている孤独なヒロイン、レイの運命は“ある出会い”によって一変することに…。
旧シリーズの不朽のキャラクターたちに加えて、重要なカギを握るドロイドBB-8、ストームトルーパーの脱走兵フィンなどが登場。世界中が注目する悪役は十字型のライトセーバーを操るカイロ・レン。


ううん、これ↑ あらすじとはいいがたいですね?

ところが、いつものシネマ・トゥデイには、あらすじがありません。
チェック欄だけ引用します。

チェック:SF映画の金字塔にして世界中で愛され続ける人気シリーズの新3部作第1章で、『スター・トレック』シリーズなどのJ・J・エイブラムスが監督を務めた超大作。ジョン・ボイエガやデイジー・リドリー、オスカー・アイザック、アダム・ドライバー、旧シリーズのマーク・ハミルやハリソン・フォードらが出演。新たなエピソードやキャラクターと共に、最新鋭の技術とリアルなセット撮影を融合した映像にも期待。

まあ、この超話題作にあらすじは不要ですけれど。
実はスターウォーズの第1作から第3作(エピソード4~6ですね)は、リアルタイムで観ていませんので、筋金入りのファンの方からは叱られたり、甘いと言われたりしそうですが、それでも、初めて観たときはびっくりしたことを強く覚えています。
ジョン・ウィリアムズ のテーマ音楽が鳴り響けば、一瞬でスター・ウォーズの世界へ連れて行かれます。
「家族の愛と喪失の物語」としての側面が強く出過ぎているように感じてしまいましたが、これは個人的な好みの問題で、近頃の風潮としては絆だなんだで感動というのが流行りですから、時代的にはこれでよいのでしょう。
この感動押し付けの要素(失礼)も、ハン・ソロやレイア姫が出てくるからこそでして、なによりこのエピソード7は、エピソード4~6の初期三部作のキャラクターが次々と出てくるあたりがポイントなので、文句をいったらバチが当たるかも。
C3POも、R2-D2も、そしてチューバッカも。(チューバッカって、老けないんですね...)
宇宙船の戦闘や、ライトセーバーを使うバトルは、懐かしく、迫力も十分で、スターウォーズを以前観たときの感動が蘇ります。
それにしても、エピソード6のあと、時は流れてジェダイもフォースも伝説だと思われている、という設定がぐっときました。

新しいヒロイン・レイの出生の秘密が、少しずつ明かされていくので、これがエピソード7~9のテーマとなるのでしょう。楽しみです。
サブ・タイトルのフォースの覚醒というのは、レイがフォースを身につけていくことも意味していると思われますが、これまでの登場人物たちはかなり苦労してフォースを身につけてきたところを、わりとあっさりと?発現するので、それだけレイの血統は素晴らしいということなのでしょう。フォースの訓練シーン、やっぱりスターウォーズには必要でしょう!!
やはり楽しみ。

ところで、レイア姫役の女優キャリー・フィッシャーが、この作品での容姿に対する「劣化が酷い」という声に「やめてください」とツイッターでつぶやいている、というニュースが先日ありましたが、劣化していますか?
いや、もちろん、歳はとっていますから、そりゃあ昔(第一作は1977年)と比べたら劣化しているといえば劣化しているわけですが、人間、歳をとらない人なんていないわけで、40年の経過を考えれば、キャリー・フィッシャーの「老け方」は、むしろ劣化していない、老けていない、方ではないでしょうか?
なにより、レイア姫がレイア姫のまま(役者が変わることなく)スクリーンにあらわれたことに、ハリソン・フォードのハン・ソロもそうですが、感慨を覚えたんですが...



原題:STAR WARS: THE FORCE AWAKENS
製作年:2015年
製作国:アメリカ

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フィデリティ・ダヴの大仕事 [海外の作家 あ行]


フィデリティ・ダヴの大仕事

フィデリティ・ダヴの大仕事

  • 作者: ロイ・ヴィカーズ
  • 出版社/メーカー: 国書刊行会
  • 発売日: 2011/12/26
  • メディア: 単行本


<帯あらすじ>
何でも盗んでさしあげますわ
天使のように関連な淑女怪盗が次に狙うのは--?
手下を操り、完全無欠な計画で大胆不敵にあらゆるものを盗む、フィデリティ・ダヴの冒険譚!
〈どうやって盗むか〉(ハウダニット)のおもしろさを心ゆくまで味わえる傑作短編全12編。


新年を迎えたというのに、感想の方はこの「フィデリティ・ダヴの大仕事」でようやく8月に読んだ本に入りました。

単行本です。
ロイ・ヴィカーズといえば、「迷宮課事件簿 」で、倒叙ものの名手というイメージですが、この「フィデリティ・ダヴの大仕事」は、タイトルからしていわゆる義賊もののようです。

12話収録の短編集で、タイトルは順に
「顔が命」
「宙吊り(サスペンス)」
「本物の名作」
「偽造の定番」
「ガルヴァーバリー侯爵のダイヤモンド」
「貴顕淑商」
「一四〇〇パーセント」
「評判第一」
「笑う妖精」
「ことわざと利潤」
「ヨーロッパで一番ケチな男」
「グレート・カブール・ダイヤモンド」
です。

新保博久の解説からの孫引きになりますが、都筑道夫のコメントがすばらしく要点を突いています。
「ひとつひとつの短篇で、女賊ファイデリティ・ダヴは、誰かに義憤を感じ、そいつの大事にしているなにかを盗もうと計画する。つまり加害者と被害者は、さいしょからわかっていて、どうやって盗むか、に興味が集中されるのだ。ダヴは計画を立てると、多勢の手下にいいつけて、準備をさせる。その準備が読者にはなんの関連性もないように思われるのだが、最後になると、盗みにぜんぶ必要だったことがわかる。そのおもしろさである」
ここで都筑道夫は「盗む」と言っていますが、おそらくは物を(物理的に)とる、という狭い意味ではなく、広く「騙し取る」趣旨の「盗む」だと思われます。
解説で、新保博久がワンパターンの連作ではないと指摘していますが、むしろ、詐欺的な、いまでいうコンゲームのような作品がほとんどです。そこがまたよろしい。
なんといっても、主役のフィデリティ・ダヴの存在感がポイントの作品ですね。
冒頭の「顔が命」では、レーソン警部補も可憐さにあっさり騙されてしまいます。この第1作目から、窃盗というよりは、詐欺ですしね。
このあと、レーソン警部補はすっかり狂言回しの役どころですね、かわいそうに。次の「宙吊り(サスペンス)」では、文字通りクレーンによって自動車とともに宙吊りにされます。
「本物の名作」では、単純ながらもトリッキーな騙しを見せ、レーソン警部補もしっかり一役買ってしまいます。単純だし、似たような作品が後で書かれているので、今の読者から見ると想定の範囲内の手口なんですが、いいんです、そんなことは。もうこの作品を読む頃には、すっかりフィデリティ・ダヴに騙されたい、とこちらが思うようになっていますから。
「偽造の定番」は、「フィデリティ・ダヴは、歴史上唯一、風景を盗んだ泥棒である--彼女を泥棒と言っていいものなら」という魅力的な書き出しで始まります。風景を盗む!? 実際は、風景を盗んだとは言い難い仕上がりですが、ぬけぬけとしたフィデリティ・ダヴの手口には感嘆します。
誰が見ても、レーソン警部補が見ても、被害者が見ても、フィデリティ・ダヴが仕組んだことがわかっているのに、ちゃんともくろみ通りになる。この展開こそが、このシリーズの大きな特徴で、特長です。フィデリティ・ダヴなら、そうでなくては。
フィデリティ・ダヴに魅力があるからこそ、続く「ガルヴァーバリー侯爵のダイヤモンド」でのラストが印象に残ります。義賊という由縁ですね。
とまあ、12編全部にコメントをつけると長くなりすぎるので、このあたりにしておきますが、フィデリティ・ダヴのキャラクターと騙しの手口、二つのおいしさの好短編集だと思いました。
こういう人を喰ったような作品、大好きです。


<蛇足>
「貴顕淑商」の手口は、現在では違法です。
まあ、フィデリティ・ダヴのお仕事はどれも違法ではありますが、フィデリティ・ダヴが仕組んだことがわかっていても捕まらない、首尾よく目的を達成する、ことがポイントなわけで、「貴顕淑商」の場合はこの手口を使うことだけで(現代では)捕まってしまうので、よくないですね。言ってみれば、教科書的な犯罪なわけですが、当時としては、これはアリ、だったのでしょう(本文中にも、そのような記載があります)。


原題:The Exploits of Fidelity Dove
作者:Roy Vichers
刊行:1924年
翻訳:平山雄一


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ミステリ通信「みすみす」blog




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Q.E.D.証明終了(39) [コミック 加藤元浩]


Q.E.D.証明終了(39) (講談社コミックス月刊マガジン)

Q.E.D.証明終了(39) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/17
  • メディア: コミック


<帯裏表紙側あらすじ>
今なお太陽系を超えて飛び続ける無人惑星探査機・ボイジャー。
人類の偉業「ボイジャー計画」に携わった燈馬の恩師・イオ教授が、妻の命日を前に失踪した。
燈馬と可奈は、35年前に教授が成した仕事、その影で置き去りにされた一人の女の物語を知る。教授が手にした栄光、そして失った愛とは--?
〈『グランドツアー』他一編を収録〉

この第38巻には「ああばんひるず6号室事件」と「グランドツアー」の2つの話が収録されています。

「ああばんひるず6号室事件」は、「ああばんひるず」という名前だけは立派なボロアパートの大家さんの怪死事件を扱っています。
怪死の真相はいいとして、その後に付け加えられたオチ(?) の部分は失敗ではないでしょうか。
可奈がバイトの管理人として「ああばんひるず」に乗り込み、燈馬もそこに加わる、という流れですが、
「僕が借りたとき不動産屋さんが説明してくれましたよ」
という燈馬のセリフに、???、でした。
大家さんの孫から直接依頼されていたら、不動産屋さん通さないでしょう、普通は。
そこを置いておくにしても、ちょっと乱暴なストーリーだと思いました。


「グランドツアー」は、上で引用したあらすじにもあるようにボイジャー計画に関係した話です。
タイトルのグランドツアーというのは、1976年から1979年の3年間に奇跡のように起きた惑星の配置!! 「スイングバイ」で太陽系の果てまで一気に宇宙船を飛ばすことができる千載一遇の好機(チャンス)!! 天に与えられた時間が“グランドツアー” ということのようです。
「スイングバイ」は、あの“はやぶさ”でも話題となった技術(アイデア)ですね。
で、そのボイジャー計画に携わった科学者・技術者たちの人間模様。
よくある話、と片付けてしまってはかわいそうですが、世界に誇るプロジェクトでも、携わるのはやはり人間、ということでしょう。
でも、このストーリーを“グランドツアー”と名付けるのはちょっと無理があるかなぁ。
可奈たちが踊る歌が笑えました。
「ここは~~
ハワイ~~
だけど~~
ワイキキビーチはない~~
ここはハワイ島でオアフ島じゃないから~~」

ちょっとこのところ、シリーズが低調な気がします。
ぜひ、持ち直してほしい、です。

タグ:加藤元浩 QED
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このミステリーがすごい! 2016年版 [その他]

このミステリーがすごい! 2016年版

このミステリーがすごい! 2016年版

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2015/12/10
  • メディア: 単行本


年が明けてしまいましたが、「このミステリーがすごい! 2016年版」です。

日本編ベストスリーは、
第1位 米澤穂信「王とサーカス」
王とサーカス

王とサーカス

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 単行本

第2位 深緑野分「戦場のコックたち」
戦場のコックたち

戦場のコックたち

  • 作者: 深緑 野分
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本

第3位 柚木裕子「孤狼の血」
孤狼の血

孤狼の血

  • 作者: 柚月裕子
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/08/29
  • メディア: 単行本


週刊文春ミステリーベスト10 同様、昨年「満願」(新潮社)で第1位だった米澤穂信が2連覇です。

海外編ベストスリーは順に、

第1位 ジェフリー・ディーヴァー「スキン・コレクター」
スキン・コレクター

スキン・コレクター

  • 作者: ジェフリー ディーヴァー
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/17
  • メディア: 単行本

第2位 ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」
悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/10/09
  • メディア: 文庫

第3位 ウィリアム・ケント・クルーガー「ありふれた祈り」
ありふれた祈り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

ありふれた祈り (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

  • 作者: ウィリアム ケント クルーガー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/12/10
  • メディア: 新書


こちらは、週刊文春ミステリーベスト10の第1位と第2位が入れ替わったかたちです。


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天使と歌う吸血鬼 [日本の作家 赤川次郎]


天使と歌う吸血鬼 (集英社オレンジ文庫)

天使と歌う吸血鬼 (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/06/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
人気遊園地〈Mワールド〉を訪れたエリカたちを待っていたのは、突然の「入園禁止」!? 聞けば、外国の要人が視察に訪れており、その歓迎式典で、ある女性歌手が歌声を披露するというのだが!? 表題作の他に、存在を忘れられたエレベーターと事件を解決!? 『吸血鬼とさびしいエレベーター』 不思議な〈水の流れ〉を追う『水の流れと吸血鬼』の2編を収録。シリーズ最新刊!!

「吸血鬼はお年ごろ」シリーズ 第33弾。
第32作だった前作「路地裏の吸血鬼」 まではコバルト文庫からだったのですが、この「天使と歌う吸血鬼」 から、新レーベル集英社オレンジ文庫となりました。

レーベルが変わっても、正義とか、人情とかを重視する作風は変わらず、かつ、薄い、薄い。
レーベルも変わったことだし、この辺であらためてこのシリーズで長編を書いてみてはいかがでしょうか? と「路地裏の吸血鬼」 の感想(リンクはこちら)と同じことを書いておきます。
クロロックという吸血鬼を登場させるだけあって、怪異現象を怪異現象として出すことができますから、作品の幅も広げやすいのではと思うので、ぜひ。



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2016年もよろしくお願いします。 [折々の報告]

2016年になりました。
今年もよろしくお願いします。
1年ぶりに、アクセスいただいた順位を調べてみました。

順位を書いてあるところのタイトルをクリックするとブログのページへ、ついている書影やそこについている書名をクリックすると amazon.co.jp の商品ページへ飛びます。

1. かばん屋の相続 (文春文庫) 池井戸潤

かばん屋の相続 (文春文庫)

かばん屋の相続 (文春文庫)

  • 作者: 池井戸 潤
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/04/08
  • メディア: 文庫


2. 生存者ゼロ (宝島社文庫) 安生正

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 安生 正
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫


3. 魔性の馬 (小学館) ジョセフィン・テイ

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

  • 作者: ジョセフィン テイ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


4. 週刊文春2013ミステリーベスト10

5. モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫) 奥泉光

モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

モーダルな事象―桑潟幸一助教授のスタイリッシュな生活 (文春文庫)

  • 作者: 奥泉 光
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/08/05
  • メディア: 文庫



6. カラマーゾフの妹 (講談社) 高野史緒

カラマーゾフの妹

カラマーゾフの妹

  • 作者: 高野 史緒
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/02
  • メディア: ハードカバー


7. 生きてるうちに、さよならを (集英社文庫) 吉村達也

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

  • 作者: 吉村 達也
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫



8. たぶん最期の自殺うさぎの本 (青山出版社) アンディ ライリー

たぶん最期の自殺うさぎの本

たぶん最期の自殺うさぎの本

  • 作者: アンディ ライリー
  • 出版社/メーカー: 青山出版社
  • 発売日: 2012/04
  • メディア: 単行本


9.王国は星空の下 北斗学園七不思議1 (PHP文芸文庫) 篠田真由美

王国は星空の下 北斗学園七不思議1 (PHP文芸文庫)

王国は星空の下 北斗学園七不思議1 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/09/17
  • メディア: 文庫


10. 全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班 (講談社X文庫ホワイトハート) 香月日輪

全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班 (講談社X文庫ホワイトハート)

全裸男と柴犬男 警視庁生活安全部遊撃捜査班 (講談社X文庫ホワイトハート)

  • 作者: 香月 日輪
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/04/04
  • メディア: 文庫


2位の「生存者ゼロ」の勢いはすごいですね。
ずっと1位だった「かばん屋の相続」を今年抜くかもしれませんね。

昨年1年間のアクセス数も挙げてみます。

1. 生存者ゼロ (宝島社文庫) 安生正

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

生存者ゼロ (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 安生 正
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫


2. ストレイヤーズ・クロニクル(集英社)本多孝好

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1 (集英社文庫)

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1 (集英社文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 文庫

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-2 (集英社文庫)

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-2 (集英社文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/04/17
  • メディア: 文庫

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-3 (集英社文庫)

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-3 (集英社文庫)

  • 作者: 本多 孝好
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/05/20
  • メディア: 文庫


3. 生きてるうちに、さよならを (集英社文庫) 吉村達也

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫)

  • 作者: 吉村 達也
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫


4. 魔性の馬 (小学館) ジョセフィン・テイ

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

魔性の馬 (クラシック・クライム・コレクション)

  • 作者: ジョセフィン テイ
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2003/03
  • メディア: 単行本


5.  扼殺のロンド (双葉文庫) 小島正樹

扼殺のロンド (双葉文庫)

扼殺のロンド (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫


6. 闇に香る嘘 (講談社) 下村敦史

闇に香る嘘

闇に香る嘘

  • 作者: 下村 敦史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/06
  • メディア: 単行本


7. 婚活島戦記 (宝島社文庫) 柊サナカ

婚活島戦記 (宝島社文庫)

婚活島戦記 (宝島社文庫)

  • 作者: 柊 サナカ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫


8.コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫) 深津十一

コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 深津 十一
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/04/04
  • メディア: 文庫


9. 蝿の王 (角川ホラー文庫)田中啓文

蝿の王 (角川ホラー文庫)

蝿の王 (角川ホラー文庫)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2008/01/25
  • メディア: 文庫


10. トム・アット・ザ・ファーム

1年間のアクセスだと新しい記事が上位に来ます。ところが...
2013年の記事「ストレイヤーズ・クロニクル」が2位なのは、文庫化された効果だと思いますが、3位の2012年の記事「生きてるうちに、さよならを」 、4位の2011年の記事「魔性の馬」 、6位の2014年の記事「闇に香る嘘 」、9位の2013年の記事「蝿の王」 はちょっと不思議ですね。

ちなみに、いままででいちばん nice! をいただいたのは、
雲雀 (文春文庫) 佐藤亜紀
雲雀 (文春文庫)

雲雀 (文春文庫)

  • 作者: 佐藤 亜紀
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫

でした。

いつもありがとうございます!
ずいぶん更新が滞っておりますが、ことしもよろしくお願いします。



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