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幽霊審査員 [日本の作家 赤川次郎]


幽霊審査員

幽霊審査員

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/05/18
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
「ずるい!」と、夕子は言った。
「仕方ないだろ」と、私は言った。
「僕だって好きで引き受けたわけじゃないよ、審査員なんて」

なんと宇野警部が、警視総監の代わりに大晦日の国民的TV番組「赤白歌合戦」の審査員に!
ケガをした警視総監の代役をつとめることになった宇野は、慣れないタキシードを着せられ、メークまでされて、審査員席で大奮闘。
恋人で女子大生の永井夕子は、羨ましがりつつも「何かが起る」と予言するが、果たして、秒刻みの進行で大騒ぎの舞台裏で事件が……。大好評、幽霊シリーズ第二十五弾。


今年1月に、シリーズ第1作である前作「幽霊列車」 (文春文庫)の新装版が出たんですね。
amazon.co.jp のページをみると「作家生活四十周年を祝して新装版刊行」と書かれています。そうか、もう40年にもなるんですね。40年でシリーズ25冊...
順調にシリーズが続いていてなによりです。

この「幽霊審査員」には
「犯罪買います」
「哀愁列車」
「幽霊審査員」
「愛と憎しみの果て」
「意地っ張りの季節」
「もういいかい」
「過去のある勲章」
の7話が収録されています。

表題作は、どうして「赤白歌合戦」なんでしょうね?
どうせあからさまなんだから、もう、「紅白歌合戦」と書いちゃったほうがすっきりすると思うんですけど。まさか、NHKが了承しなかった!?

気になったのは、「もういいかい」。
「勝手にしゃべる女」 (新潮文庫)に収録されている「長い、長いかくれんぼ」という作品が赤川次郎にはありますし、お気に入りのテーマなんでしょうか?


<蛇足>
この「幽霊審査員」、表紙の紙質がこれまでのものとは変わっています。




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オタバリの少年探偵たち [海外の作家 た行]


オタバリの少年探偵たち (岩波少年文庫)

オタバリの少年探偵たち (岩波少年文庫)

  • 作者: セシル・デイ ルイス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/09/17
  • メディア: 単行本


<裏表紙あらすじ>
第二次大戦直後のイギリスで、戦争ごっこにあけくれる少年たちの物語。ある日、みんなでかせいだお金が消えてしまいます。犯人を見つけ、お金をとりもどそうとするうちに、いつのまにか、悪党一味の大犯罪があきらかに……。


「エーミールと探偵たち」 (岩波少年文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「名探偵カッレくん」 (岩波少年文庫)(感想ページへのリンクはこちら
に続いて児童書です。
岩波少年文庫の児童書はいったんこれで打ち止め。というよりはこの「オタバリの少年探偵たち」が真打で、既読だった「エーミールと探偵たち」 「名探偵カッレくん」 はいわば前座の位置づけ。
「オタバリの少年探偵たち」は初読です。
作者のセシル・デイ=ルイスはイギリスの桂冠詩人ですが、別名ニコラス・ブレイクでミステリを書いています。「野獣死すべし」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)が有名ですね。これは読んでみなければ、とおもったわけです。

ところが冒頭、
「『オタバリの少年探偵たち』を書くにあたって、私はフランス映画 “Nous les Gosses” (『ぼくら悪ガキ』)を下敷きにしました。」
と作者が書いています。
あれれ? 本当の意味でのオリジナルではないのですね...

さて、その内容ですが、少年探偵ものとしては、かなりハードです。
最初のほうの、ガラスを割ってしまった仲間のために、みんなでお金を集めようとする、というくだり、牧歌的でいいな、なんて思っていたら、途中でどーんと大展開。本物の、冒険というかスリルです。
子どもたちの勇気に乾杯、といったところでしょうか。大人が関与していたら、きっと危険すぎるので止めたと思いますが。だって、相手は悪党一味ですから。

女の子が出てこないのが時代を感じさせますが(今この種の作品を書いたら、かならず女の子も登場すると思うので)、子どもならではというか、男の子ならでは、というか、助け合って、かばい合って、でも意地を張りあって、というあたりがよく伝わってきます。
エドワード・アーディゾーニの挿絵も(表紙もそうです)、そっけないようで、味があって、なかなかよかったです。

<蛇足1>
この作品の書き出し
「事の起こりからはじめて、結末まで行ったら、そこで終わりにしろ」
ふと岡嶋二人の「クラインの壺」 (講談社文庫)を思い出しました。
手元にないので記憶ベースですが、たしか、「クラインの壺」 も似たような書き出しだったかと。

<蛇足2>
冒頭訳者による「物語のまえに」という導入部分があるのですが、わかりにくい当時の通貨単位と度量衡の説明があって親切です。
それにしても、インチ、フィートの説明で、寸、尺、間を引き合いに出し、「一ヤードは畳の短いほうの幅くらい」という説明はいいとして、「こういう単位は、十進法とちがって計算はめんどうですが、目分量には具合よくでてきているということですね。」っていうのは、どうですかねぇ?
日本では畳をベースにわかりやすい、具合よい、と言えても、イギリスには畳ありませんよ!? さらに最近では日本でも畳のないマンションが増えていませんか?



原題:The Otterbury Incident
作者:Cecil Day Lewis
刊行:1948年
翻訳:脇明子





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 [日本の作家 あ行]


蛻 (講談社文庫)

蛻 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
尾張藩の江戸下屋敷内に実在した「御町屋」と呼ばれる宿場町。この町では、赤の他人が見せかけの夫婦として割り振られた家に住まわされ、仮の商いを営み、藩主が遊覧する時だけ立ち退かねばならなかった。御町屋で連続殺人が発生し偽の住人たちは疑心暗鬼に陥る。人心の謎と闇を射貫く時代小説の決定版。


どこだったのか忘れてしまったのですが、激賞されていたので買いました。
確か、ミステリーっぽかったし、あらすじをチェックしてみてもミステリーみたいで、面白そうだし。
帯も楽しそうなんですよ。
「江戸に実在した「偽の宿場町(テーマパーク)で、連続殺人発生。
すべてが偽で、すべてが嘘?
気鋭の作家が虚実を重ねて仕掛けた渾身の時代小説」
うん、いかにもミステリーっぽい。
ところが、この作品、ミステリーではありません....

尾張藩の下屋敷に宿場町を原寸大で再現した「御町屋」と呼ばれる一画があって、賓客に見せるのに使われていた。より現実味を出すために、御町屋に実際に人を住ませた、という設定。
屋敷の敷地の中にあるわけですから、クローズドサークルが形成されていますし、そこを舞台に連続殺人となると、新しいパターンの「吹雪の山荘」ものですよね、ミステリでいうと。
この着想が、まず素晴らしい、と思ったわけです。
さてさて、そこからどんな手を繰り出してくれるのか。
ストーリーは、まずはミステリっぽく進みます。
誰が犯人なのか、住人たちの間で、探り合い、犯人捜しが始まり、本当に御町屋は閉ざされているのか、という視点の捜査(?)も行われ、ミステリとして面白くなりそうな雰囲気がばんばん出てきます。

ところが、ところが、終盤物語の方向性はガラッと変わってしまいます。
そっちですかぁ、作者の興味があるのは...
要するに、連続殺人っていうのは、それを導くためのだしに使われているだけなんですね...謎解きをする気なんてなかったんだ...
正直、がっかりしました。勝手にミステリを期待したこちらが悪いんですが。
でもね、ミステリとしての結構を整えても、この作品はちゃんと成立するんですよ。なのに、投げ出してしまったみたい。ミステリ好きとしては、正直、手を抜くな、と思ってしまいましたね。

とネガティブなコメントを連ねましたが、つまるところ、ミステリとして読んでしまったこちらが悪いわけで、ミステリだなどと期待せず、淡々と時代小説として読んでいればまた違った感想になったことでしょう。
ミステリという観点を考えないでみても、物語のバランスが悪い点は気になりますが(それも前半をミステリっぽく書いてしまったからだと思います。でも、そうしないとサスペンスで読者をひっぱれなかったのかも)、架空の宿場町を舞台に、いろいろなタイプの人間模様を描いている点も十分おもしろい(はずな)ので、そこを楽しめばよい作品なんだろうな、と思います。

それにしても、この作品は、末國善己の解説が傑作です。
もう、無理やり現代に結びつけて、ありきたりで平凡でつまらない教訓を読み取っています。
こんな読み方をされて可哀想な作品だなぁ、と思えてしまうくらい。
「現代人への教訓として、今こそ重く受け止める必要があるのだ」なんて、そりゃあ、どう読もうが読者の勝手ではありますが、そんな窮屈な読み方をせずとも、読書の楽しみは十分あると思います。
手に取られた方は、ぜひぜひ、解説までお楽しみください。






タグ:犬飼六岐
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烏は主を選ばない [日本の作家 あ行]


烏は主を選ばない (文春文庫)

烏は主を選ばない (文春文庫)



<裏表紙あらすじ>
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、優秀な兄宮が廃嫡され、日嗣の御子の座についた若宮。世継ぎの后選びには大貴族の勢力争いが絡み、朝廷は一触即発の異常事態に陥る。そんな状況下で、若宮に仕えることになった少年・雪哉は、御身を狙う陰謀に孤立無援の宮廷で巻き込まれていく…。


松本清張賞を受賞した「烏に単は似合わない」 (文春文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾です。
シリーズの設定は、大矢博子による解説で簡潔に書かれていますが(興味を持たれた場合は、解説の2ページ目をさっと立ち読みされればよいと思います)、平安時代を思わせる舞台に烏が人間の姿をして暮らしていて、朝廷・宮中の様子が描かれます。
この「烏は主を選ばない」 は前作「烏に単は似合わない」とほぼ同じ時間軸となっています。
「烏に単は似合わない」は、お妃選びでしたが、その裏番組(どっちが表でどっちが裏かはわかりませんが)ともいえる、若君(若宮と呼ばれています)サイドのストーリーが描かれます。
(これはこれで、裏事情が分かって面白かったですが、せっかく2冊あわせてこういう構成を取ったのだから、2冊目を読むと1冊目の見え方が変わるとか、1冊目の人物の位置づけが変わるとか、そういう仕掛けがあるとミステリ好きにはより楽しめたでしょうね...完全なないものねだりですが)
「烏に単は似合わない」ではお妃に選ばれるための権謀術数が扱われていたのに対し、この「烏は主を選ばない」 では本家本元の皇位を巡る争いが扱われています。
日嗣の御子で、皇位を継ぐ者としての特徴(「金烏」と呼ばれています)を備えた奇矯な若君、対、人望厚い若君の兄を支持するものたちの争いです。
「奇矯な」と書きましたが、若宮はかなりの変人(変烏?)として描かれていまして(103ページからの、御前会議で御簾の内側の玉座から父親を追い出すシーンが圧巻です)、主人公である雪哉(若宮の側仕えに登用されちゃいます)とのやりとりは定番といえば定番ですが、楽しめます。
もっとも、雪哉だけではなく、若宮に対してはいろいろな人物がかなり失礼な言葉を投げ、振る舞いをします。いくらなんでも、どれほど若宮が変り者であろうとも、皇位継承者に対して失礼な発言をするものなどいやしないと思うので、このあたりの書き方はちょっとどうかなとも思いましたが、烏の世界ではそういうものなのかもしれないですしねぇ。うまく逃げ道を用意してあるな、と感心。
結構この皇位継承をめぐるエピソードはスリリングで、あれこれよく考えられていますし、前作同様、後半で絵姿を変えるところもポイント高いです(もっとも、前作で一度経験しているので、こちらがある程度身構えてしまっていますが)。この点を考えると、さきほど触れた御前会議のシーンはなかなか重要だったりして、ミステリでいうところのアンフェアな記述じゃないかな、と思える部分も興味深いです。

このあとシリーズは、
「黄金の烏」
「空棺の烏」
と続いているので、楽しみです。


<蛇足>
現代風のセリフが特徴ではありますが、それでも
「とんでもございませぬ」(47ページ)、(112ページ)
「力を尽くさせて頂きます」(214ページ)
「会合の様子を鑑みるに」(218ページ)、「向こうの事情を鑑みれば」(261ページ)
といった、現代ならではの誤用を盛り込むのは勘弁してもらいたいですね。
版元の文藝春秋も編集者や校正できちんと修正してあげてほしい。



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ハナシがうごく! [日本の作家 田中啓文]


ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4 (笑酔亭梅寿謎解噺)

ハナシがうごく! 笑酔亭梅寿謎解噺 4 (笑酔亭梅寿謎解噺)

  • 作者: 田中 啓文
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2011/10/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
落語ブームのはずなのに、なぜか笑酔亭梅寿一門だけは、食うや食わずの極貧生活。バイトに明け暮れる竜二も、気がつけば入門三年目、大きな節目を迎えていた。事務所にナイショの闇営業に励んだり、落語CDリリースの話が転がり込んだり、漫才師の登竜門「M壱(エムワン)」に挑戦したり…。芸人としての迷いに直面しながらも、落語の奥深さにますます魅了されていく竜二の成長を描くシリーズ第四弾。

「ハナシがちがう!  笑酔亭梅寿謎解噺」 (集英社文庫)
「ハナシにならん!  笑酔亭梅寿謎解噺2 」 (集英社文庫)
「ハナシがはずむ! 笑酔亭梅寿謎解噺3 」 (集英社文庫)
につづく第4弾。
ここまでくると、ミステリ色が薄い、というのを通り越して、ミステリではない、という領域の作品になっています。完全なる青春小説、成長小説です。
副題は、「謎解噺」とついたままですが。

いろいろと邪魔が入りますが、ちゃーんと梅駆(竜二)、落語をやるようになっていくではありませんか。よしよしというところ。
しかし、梅寿、すごいなぁ。
いくら大御所でも、人間国宝には選ばれないでしょう...(ミステリではないけれど、いちおう伏字にしておきます 笑) この人は。

あと、年季があける、というの。うれしいこと、ばかりではないんですねぇ。
たいがい二年から三年で年季があけて、師匠の家から出て独立する、そして自分で生計を立てる、という制度のようですが、独立して生計を立てるんだったら、二三年では修行の期間が短すぎるように思います。無理でしょう、入門して3年程度で自分で稼いでいくって??? 大変だなぁ、古典芸能の世界は。

いよいよシリーズも、残り「ハナシはつきぬ!  笑酔亭梅寿謎解噺 5」 (集英社文庫)1冊となりました。
どういう着地を見せるのか、楽しみです。


P.S.
第2話にあたる「仔猫」で、久しぶりに(?) 田中啓文の駄洒落が炸裂しているのですが(117ページ)、あまりのすごさに唖然としてしまいました。竜二も唖然としていますが...




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女主人公 [日本の作家 赤川次郎]


女主人公 (フタバノベルス)

女主人公 (フタバノベルス)

  • 作者: 赤川 次郎
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/08/19
  • メディア: 新書


<裏表紙あらすじ>
売れないシナリオライターだった大多の毎日は、人気女優あやめの主演ドラマを手掛けることで、一転する。脚本制作の忙しさに加え、出演者の降板や関係者の死亡事故など数々の事件が巻き起こり、あやめ達に頼られ奔走することに。一方で、不穏な動きをするのは、ドラマのモデルになった一人のシングルマザー。大多は犯人を突き止められるのか!?


赤川次郎作品ではおなじみの主人公の設定です。心優しい中年男。
急にスポットライトがあたるようになっても、慢心せず、きちんとすごす主人公。
そして舞台は、こちらも赤川次郎お手のものの芸能界。
いかにも、The 赤川次郎、というべき作品に仕上がっています。
後半に数多い登場人物がクロスする手さばきもいつもどおり手堅いです。

それにしても(少々ネタバレに近いので色を変えておきます)
さすがに 「君のせいじゃない」 「君はまだ十八歳の女の子なんだ。騙した奴の方が悪い」(252ページ) というのは、それはその通りだとしても、犯罪は犯罪ですよねぇ... ここはきちんと償う方向に話を持っていくべきでしょうね。いつもの赤川次郎だとそっちの方向性だと思うんですけれど。


<蛇足>
「スタッフも、てんでんに食堂で食べていた。」(100ページ)
とあるので、「てんで」の間違い? と思ったのですが、そもそも「てんで」が「てんでん」の音変化なんですね。
今さらながら、勉強になりました。


タグ:赤川次郎
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聖女の塔 [日本の作家 篠田真由美]


聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
明治の教会が残る長崎県の無人島で、女たちが火に焼かれて死んだ。宗教的理由による集団自殺か、殺人なのか? 桜井京介は、事件性を疑う私立探偵に乞われ現地へ向かう。その頃、蒼はカルト教団に入信した友人を救おうとしていた。二人に迫る悪意の罠。狂気の炎が再び空を焦がす時、京介は蒼を救えるのか!?


シリーズもどんどん大詰めに向っている、この「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)を読み終わったので、残り3冊となりました。
シリーズ終盤が近づき、作者のあとがき(ノベルス版あとがき)にも書かれていますが、作品の位置づけが変わってきたようです。
一作ずつの独立性が減って、シリーズ展開へ奉仕する雰囲気が強くなっています。

前作「胡蝶の鏡」(講談社文庫)の感想で、
「どうやらこのシリーズ、京介の謎を明かしていく方向で話が進んでいきそうなので、楽しみなような、怖いような、そんな感じです。」
と書きましたが、今回、あからさまに(?)京介を目の敵にする人物がラストで明らかになります。怖い。

長崎県の無人島・波手島の事件(?) と、蒼が潜入する(?) 宗教団体の事件。
この作品の事件の構図が、すなわちこのシリーズのフィナーレへ向けての徴なのでしょう。
名探偵対名犯人、というシリーズになっていくのでしょうね。
それにしても、蒼。本当に大学生?
ファンの方々には申し訳ないですが、ちょっと気持ち悪いです...

残り3冊、最後の「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社ノベルス)が文庫になる前に追い付いておきたいです。


<蛇足>
「通話が切れてから、すばやくボタンを操作して送信記録を消去する」(P384)
というのがありますが、通話も送信記録っていうんですかね?



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シンデレラの罠 [海外の作家 さ行]


シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: セバスチャン・ジャプリゾ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/02/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
わたし、ミは、火事で大火傷を負い、顔を焼かれ皮膚移植をし一命をとりとめたが、一緒にいたドは焼死。火事の真相を知るのはわたしだけだというのに記憶を失ってしまった。わたしは本当に皆の言うように大金持ちの伯母から遺産を相続するというミなのか? 死んだ娘がミで、わたしはドなのではないのか? わたしは探偵で犯人で被害者で証人なのだ。ミステリ史上燦然と輝く傑作。


ミステリ史にその名を轟かせている名作「シンデレラの罠」の新訳です。(まあ、この新訳が出たのは2012年2月なのでもう4年経っていますが...)
なんといっても、原書が出たときのキャッチ・コピーが有名ですね。

わたしの名前はミシェル・イゾラ。
歳は二十歳。
わたしが語るのは、殺人事件の物語です。
わたしはその事件の探偵です。
そして証人です。
また被害者です。
さらには犯人です。
わたしは四人全部なのです。いったわたしは何者でしょう?

一人四役、というのも、記憶喪失というのも、続々とこの「シンデレラの罠」にインスパイアされた作品が出ています。

個人的には、「シンデレラの罠」といえば、訳者あとがきでも触れられている、小泉喜美子の「メイン・ディッシュはミステリー」 (新潮文庫)
もともと名高い作品で読みたいと思っていましたが、「メイン・ディッシュはミステリー」 を読んで一層読みたくなりました。

上で引用したキャッチ・コピーに書かれている、一人四役を成立させる超絶技巧。
そして「ミステリーには自由で斬新な個性や冒険こそが大切なので、些細な辻つまなんぞたいして合っていなくったっていいんだ、とうそぶいている感じ……」と評された流麗な作風。
そういう印象を持ちつつ読んだことを思い出します。
で、読んだ感想はというと、わかったような、わからんような....
実は旧訳版は、3回か4回読んでいるのですが、そのたびに、わかったような、わからんような....
一人四役というのは、証人っていうのはちょっとインチキですが(だって、たいてい、犯人は証人を兼ねているでしょう??)、成立していることは読み取れます。
で、わたしは、ミなの?、ドなの? という部分も、ラストでさらっと決め技を出してくれます。うん、洒落ている。
が、どことなく釈然としない。本当にこれでいいんだっけ?
それでも、雰囲気にはどっぷりと毎回浸っていました。小泉喜美子の言うとおりだなぁ、なんて勝手に納得しながら。

で、ようやく長い前振りを経て、今回の新訳です。

まず、雰囲気がかなり違う。すごくクリアな手触りです。
訳者が平岡敦というのに負うところが大きいのでしょう。素晴らしい。
訳者あとがきが、すごいです。
「たしかに旧訳版の『シンデレラの罠』には、首をかしげたくなる部分も少なくなかったが、それらはすべて翻訳上の問題だからだ。」
とばっさりやっつけちゃっています。
たしかに、どこがと指摘はできなくとも、雰囲気も含め、いろいろとクリアになった印象を持ちました。
かなりシャープな物語だったんですね、「シンデレラの罠」は。
さすが、Ce qui n'est pas clair n'est pas francais. (明晰でないものはフランス語ではない)

そして、ミステリとしての趣向も、訳者あとがきでびっくりです。
えーっ、そういう話だったの?
「シンデレラの罠」といえばどうしても一人四役にだけ注目が集まっていて、この訳者あとがきで書かれているような読み方、解釈を教えてくれた本、いままでなかったと思います。
洒落てると思った決め手まで、平岡さんにひっくり返されてしまうとは...
「読者を宙吊りのまま投げ出すかのようなラストも含めて、「シンデレラの罠」は精緻に計算しつくされた作品であり、「感興のおもむくまま」や「奔放」という表現とはおよそ正反対のところに位置している」
いやあ、本当に、どれだけ緻密な設計図を引けば、こんな作品が出来上がるんでしょうか?

なによりすごいのは、それだけ精緻で彫琢の極みみたいな作品で、新訳でクリアな印象となっても、独特の雰囲気を湛えているところですね。
新訳とあとがきが読めてよかったです。

P.S.
「シンデレラの罠」というオー・デ・コロン、匂いをかいでみたいですね。架空のものでしょうから、叶えられない願いですが。

原題:Piege pour Cendrillon
作者:Sebastien Japrisot
刊行:1962年
訳者:平岡敦


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C.M.B.森羅博物館の事件目録(17) [コミック 加藤元浩]


C.M.B.森羅博物館の事件目録(17) (講談社コミックス月刊マガジン)

C.M.B.森羅博物館の事件目録(17) (講談社コミックス月刊マガジン)

  • 作者: 加藤 元浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/06/17
  • メディア: コミック



この第17巻は、
「プリニウスの博物誌」
「隠れ里」
「モザイク」
「幻の車」
の4話収録です。


「プリニウスの博物誌」は、活版印刷の「プリニウスの博物誌」をかたに東側から西側へベルリンの壁を超えようとしてうまくいかなかった家族の物語です。
映画「ブリッジ・オブ・スパイ」(ブログの感想へのリンクはこちら)を観た直後に読んだので、なかなか(個人的には)タイムリーでしたね。
ミステリを読み慣れている人なら、いやいや、このQ.E.D.シリーズを読み慣れている人なら、真相は見抜けてしまうと思いますが、
「今の話はぜんぶウソだ」
というセリフを軸にうまく作ってあるなぁと感心。なるほどねー。
そして、真相に至る道筋も自然です。
当時の新聞記事を利用して、一種の叙述トリックみたいなの(実際は、叙述トリックと言ってしまうと、言い過ぎですけどね)まで仕掛けてあって大満足の一作。

「隠れ里」は、七草がゆの七草を自分で摘んだらおいしいのでは? と思いつき、田舎へ出向いたら遭遇した怪を扱っています。
いや、おもしろいんですけどね、仕掛けは。
でも、これはないなぁ。いくらなんでも。だって、こんな家や道を作る理由がない。
この作品のために、わざわざそんな家、建てないでしょう....

「モザイク」は、設計事務所のひとたちをめぐる、いかにもミステリらしい作品なんですが、逆にミステリらしすぎて、底が浅くみえみえだし、ラストもなぁ。
ラストで森羅が見栄を切るセリフも、決め手になるようなもんじゃなく、誰でも気づいてるでしょう。警察だって...
この17巻、全体を通して、ヒヒ丸が出てこないんですが(「隠れ里」に出てきてもいいのに!!)、この「モザイク」の口絵で描かれているモザイクがヒヒ丸です!!

「幻の車」は、1931年に渋沢栄一などから資金協力を得て開発された1台しか現存していない幻の車「つくば号」が出てきます。(2台目があるという設定ですが)
真相は定番中の定番みたいな着地だし、推理は無理だし、というものですが、「つくば号」がもう一度走る、というロマンに奉仕するわけなので、この真相でいいんだ、と思えます。


タグ:加藤元浩 CMB
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九十歳の誕生パーティ [海外の作家 レスリー・メイヤー]


九十歳の誕生パーティ (創元推理文庫)

九十歳の誕生パーティ (創元推理文庫)

  • 作者: レスリー・メイヤー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/05/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
弁護士ボブが事務所でパートナーの死体を発見した。警察は自殺と判断したが、ボブはどうしても納得できず、ルーシーに調査を依頼。一方、元司書のミス・ティリーの九十歳の誕生日に町を挙げてのパーティを開くことが決まり、当然ルーシーもこき使われることに。思春期の娘や大けがをした夫の世話に、新聞記者の仕事、殺人事件の調査にパーティの準備、主婦探偵は今日も大忙し!


今回は、ミス・ティリーの九十歳の誕生パーティの準備をする、というのがテーマ(?) です。
これでもうてんやわんや(古い表現ですね(笑))なんですが、実は、引用したあらすじには書いていないんですが、弁護士の死のほかに、ミス・ティリーをめぐる騒動が、パーティー以外に本書にはあります。
訳者あとがきに書いてあります。
「九十歳の誕生日が近づいたある日、天涯孤独と思われていたミス・ティリーの前に突然、はるか昔父親に勘当された姉の娘だという女性が現れ、ミス・ティリーはもう大喜びです。その女性はまもなく叔母の家に住み込んで世話を始めます。ところが、それまでヘルパーとして世話をしていたレイチェルはもちろん、友達のルーシーが訪ねてもミス・ティリーに会わせてもらえず、二人は心配をつのらせます」
そうです、ミステリでは定番のテーマですが、ミス・ティリーに危機が忍び寄るのです。
このパターンの物語って、分かりきっていても、どきどきするんですよね。ミス・ティリー、大丈夫かなぁって、どきどきして読めました。
ルーシーが無茶をするのはいつものことですが、ミス・ティリーもがんばりますよ(?)、この作品では。
あと、弁護士の死のエピソードと、ミス・ティリーのエピソードが遊離してしまわないで、きちっと絡み合って展開していくところは、このシリーズには珍しく(失礼!)、いいなぁと感じました。

それにしても、被害者である弁護士の趣味として描かれる、南北戦争再現グループって、楽しいんですかねぇ? 



原題:Birthday Party Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2002年
訳者:髙田恵子


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