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お言葉ですが…⑨ 芭蕉のガールフレンド [その他]




<裏表紙内容紹介>
手紙の作法にうるさい日本人。でも男が女に呼びかける手紙用の呼称は、夏目漱石の場合には「貴女」「貴方」など、「あなた」と読む言葉にほぼかぎられ、驚くほど少ない。芥川龍之介は恋文では愛称で「文ちゃん」と呼びかけているのに、結婚すると直に「お前」にかわっている。さて、江戸時代の松尾芭蕉の場合はどうだったのだろうか。


この本の著者、高島俊男の本は、きっかけは忘れましたが、「本が好き、悪口言うのはもっと好き」 (文春文庫)を読んだのが最初です。
すっかり気に入って、その後文春文庫から出ている、「お言葉ですが…」 (文春文庫)のシリーズをずっと買ってきています。
このシリーズ、
お言葉ですが… (文春文庫)
お言葉ですが…〈2〉「週刊文春」の怪 (文春文庫)
お言葉ですが…〈3〉明治タレント教授 (文春文庫)
お言葉ですが…〈4〉広辞苑の神話 (文春文庫)
お言葉ですが…〈5〉キライなことば勢揃い (文春文庫)
お言葉ですが…〈6〉イチレツランパン破裂して (文春文庫)
お言葉ですが…〈7〉漢字語源の筋ちがい (文春文庫)
お言葉ですが…〈8〉同期の桜 (文春文庫)
お言葉ですが…〈9〉芭蕉のガールフレンド― (文春文庫)
お言葉ですが…〈10〉ちょっとヘンだぞ四字熟語 (文春文庫)
お言葉ですが…〈11〉(連合出版)
と11冊出ているんですね。
最後の11巻だけ、文藝春秋ではありません。2006年に出た後、文庫化もされていませんね。
もともと週刊文春に連載されていたものが順次刊行されていったものなので、文藝春秋ではないのはちょっと???ですね。

さておき、言葉をめぐるエッセイです。
漢字だと、新字体ではなく旧字体を推しておられるので、新字体でしか知らない世代であるわれわれには、ちょっと古風に思えるところもありますが、言葉に関することなんて、古風な人に語ってもらう方がいいような気もします。
いろいろと、目からうろこ、というか、ああ、知らなかったなぁ、と思えることが出てきて、楽しいです。

たとえば、川端康成の「雪国」 (新潮文庫)を扱った「国境の長いトンネルを抜けると……」
金谷武洋先生の文章からの引用ではありますが、「雪国」 の冒頭のサイデンステッカーによる英訳が出てきます。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
「The train came out of the long tunnel into the snow country」
で、「原文では、読者の位置は当然、作者とともに、汽車の車中になる。
ところが英訳を読んだ英語話者は全員、上空から見おろした情景、ととるそうだ。」
うーん、鋭くて、おもしろいですよね。

そして、続けて、原文の冒頭の「国境」をどう読むか、と問います。
こっきょう? くにざかい?
個人的には、何も考えることなく、いままで「こっきょう」と読んでいました。
でも、確かに、意味から考えれば、「こっきょう」は変ですね。「くにざかい」に違いない。
けれどけれど、音のリズムから考えれば、「くにざかい」はちょっと分が悪い。「こっきょう」でないとしまらない。
ね、おもしろいでしょ?

中勘助の「銀の匙」 (岩波文庫)を扱った「『銀の匙』の擬声擬態語」では、「銀の匙」 が名文であることを、擬声擬態語の観点からするどく指摘しています。
「銀の匙」 をゆっくりと音読で再読してみたくなりますね。

漢字「十」の読み方を扱った「七時十分になりました」は、このテーマはこのシリーズで扱うのは初めてではないのですが、楽しく読めました。
「じゅっぷん」は誤りで、「じっぷん」が本来は正しい、というのは何度読んでも興味深いです。個人的には「じゅっぷん」と読んじゃっていますが...

物の数え方としての、「本」の謎? を扱った、「論文は何本?」も、おもしろい。
意識したことなかったですが。

「日本人にとっては、組織のなかでの役割がすなわち自分なのである。」ということを扱った「役割に生きる日本人」もいろいろと考えるところのある興味深い話。

当然ながら、次の「お言葉ですが…〈10〉 ちょっとヘンだぞ四字熟語」 (文春文庫)も買ってありますので、いずれ読みます。
こういう本をたまに読んで、言葉に関して思いを巡らせるというのもいいものです。楽しみです。



タグ:高島俊男

秘密 トップ・シークレット (11) [コミック 清水玲子]





2012年10月に出たコミックです(奥付は2012年11月になっていますが)。
「秘密 12―トップ・シークレット」 (ジェッツコミックス)が同時発売でした。一気に完結したわけですね。
この第11巻は「秘密 トップ・シークレット 2010 END GAME」の続きが収録されています。
新装版が今年出ています。

衝撃的なオープニングです。
いわく、
「本日7月6日午前1時すぎ警備員一名に対する傷害及び『第九』のレベル5 『データ九〇二〇五四』 レベル4 『データ九〇二〇五九』の無許可持出し強奪の容疑で
同日午前6時 「第九」研究室 室長 薪剛警視正に対し本部内手配の決定が下った!」
しかも、
「拳銃を所持している被疑者に対し 拳銃の使用を認める決定が先程出た」
と。

薪、青木、岡部、山本その他の第九の面々と怪しい滝沢。そして三好雪子先生。
シリーズの主だった面々がそれぞれきちんと登場し、きちんと見せ場(?) があります。すごい。
怒涛のクライマックスへ向けて、ずんずん。
シリーズ全体を覆っていた“秘密”がいったいなんだったのかが明かされますが、そして薪にずっとまとわりついていた過去に秘められた秘密も明かされますが、最初からこういう構想でこの物語は書かれていたんでしょうか? すごーく大きな絵にしあがっています。
それにしても、青木、やっぱりかわいそうですよねぇ。

この11巻のラストは、薪と青木が対峙して終わりますが、さて最終巻ではどんな結末が待っているのでしょう??

余談ではありますが、薪が潜んでいる(?)、 いや、向かっている場所がポイントとなる部分があるのですが、読み返して気づきましたが、作者は非常にフェアに書いていらっしゃいますね。
読者は気づいていてしかるべし、というところです。ステキ。



タグ:清水玲子

チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
しばらくの間ロンドンから離れ、妻ジョハナと用心棒ジョックとともにジャージー島に移り住むことになったモルデカイ。だが平和な島での暮らしが一変、連続レイプ魔事件が発生する。かつて島中を震撼させた〈ジャージー島の野獣〉事件を思わせる手口と、犯人が残していった手がかりから、悪魔崇拝が関係しているのではとにらんだモルデカイは、対抗手段をとるべく奮闘する。しかし事態は思わぬ展開を迎え、さらなるピンチに!?


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾なんですが、発表されたのは「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」より先のようです。物語の中の時系列として、この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 が後なんですね。

あいかわらずの怪作ぶりで、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、という構図を踏襲しているのですが、うーん、ちょっとこれは...
前作の感想で、「主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)」と書いたんですが、この作品ではそのレベルを超えて、ちょっと受け付け難いレベルの事態が起こります。
連続レイプ魔事件、という題材もよくなかったのかもしれません。
こういう不謹慎な笑いを楽しむには、まだまだ修行が足りないのでしょう。なんだか、生々しい感じがしてしまうんですよね。
いっそ殺人事件の方が、不謹慎にも楽しめたのかもしれません。

ミステリ的に見ると、犯人の隠し方は単純であっけないくらいですが、モルデカイのドタバタぶりにはこういう隠し方が似合っているのだと思いました。
残り1冊、「チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件」 (角川文庫)を読むのがちょっと怖いなぁ。いつになるのかわからないけれど。

それにしてもこの作品、以前「深き森は悪魔のにおい」 というタイトルサンリオSF文庫から出版されていたそうです。
サンリオSF文庫って、やっぱり、すごかったんですねぇ。
ピーター ディキンスンの「キングとジョーカー」 がサンリオSF文庫だったというのを知ったときも(現在は扶桑社ミステリーです)、SFじゃないなぁ、と思っていたものですが、それでもパラレル・ワールドのイギリスを舞台にしているのでぎりぎりSFと呼んでもいいのか、という余地はありました。
この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 には、SFの臭いはどこにもありません...



原題:Something Nasty in the Woodshed
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1976年
翻訳:三角和代








放課後はミステリーとともに [日本の作家 東川篤哉]


放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)

放課後はミステリーとともに (実業之日本社文庫)



<裏表紙あらすじ>
探偵部副部長の涼は、推理よりギャグの方が得意だった?
霧ケ峰涼が通う鯉ケ窪学園高校にはなぜか事件が多い。校舎から消えた泥棒、クラスメートと毒入り珈琲一族との関わり、校外学習のUFO騒動、密室状態の屋上から転落した女子…etc.それらの謎を解くはずの涼だが、ギャグが冴えるばかりで推理はなぜか発展途上。解決へ導くのは探偵部副部長なのか、それとも意外なあの人か? ユーモア学園推理の結末は?


もうこのシリーズの次作「探偵部への挑戦状 放課後はミステリーとともに」 も文庫化されていますね。
この「放課後はミステリーとともに」 は、連作短編集で、8話収録です。
チラシがはさまっていまして、それから写しておくと、
「霧ヶ峰涼の屈辱」
鯉ヶ窪学園高等部のE館で発生した盗難事件。涼が先輩や警備員と犯人を追いかけたが、その姿が館内で消失してしまった。
「霧ヶ峰涼の逆襲」
学園芸能クラス出身の女優の部屋を張り込む芸能カメラマン。涼がカメラマンの愚行を止めようとした時、当の女優が現れたが……。
「霧ヶ峰涼と見えない毒」
涼は親友にしてクラス委員の高林奈緒子居宅を訪れた。奈緒子の居候先の祖父が、珈琲毒殺未遂事件に巻き込まれたというのだ。
「霧ヶ峰涼とエックスの悲劇」
流星雨観測の夜、国分寺上空にUFOらしき飛行体が出現。UFO愛好家・地学の池上先生と涼はその物体を追いかけることに。
「霧ヶ峰涼の放課後」
体育倉庫から煙草の煙が。涼と奈緒子は体育倉庫の掃除道具入れで不良の荒木田を捕まえたが、肝心の煙草はどこに?
「霧ヶ峰涼の屋上密室」
学園裏門近くで、女生徒が突如落下。運悪く教育実習生に当たってしまった。居合わせた涼が、女生徒がいたらしき屋上で見たものは。
「霧ヶ峰涼の絶叫」
陸上部の自称スーパースター、走り幅跳び選手の足立が砂場で倒れていた。だが、砂場には足立以外の足跡がなかったのだ。
「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」
またもE館で事件発生。涼が美術室で昏倒している荒木田を発見。逃げる犯人は学生服姿だから間違いようがないはずだが……。


冒頭の「霧ヶ峰涼の屈辱」はミステリとしてはかなり常識的な解決を見せますので、喰い足りないといえば喰い足りないのですが、作者と編集部が「第1話『霧ヶ峰涼の屈辱』からお読みいただくようお願いいたします」という由縁の仕掛けがあるので、つかみはOKですね。(まあ、その仕掛けも他愛ないといえば他愛ないですが)
で、第2話の「霧ヶ峰涼の逆襲」が、平凡そうな舞台装置でツイストを効かせてあって〇。これがこの作品集の中では個人的にベスト。第1話「霧ヶ峰涼の屈辱」のあとに、この「霧ヶ峰涼の逆襲」が置いてあるというのも、いいではないですか。
次の「霧ヶ峰涼と見えない毒」のトリックは、正直つまらない。一転して「霧ヶ峰涼とエックスの悲劇のトリックは、その絵面のばかばかしさに和みますが、UFOと絡ませてあるのは優れているなぁ、と。
「霧ヶ峰涼の放課後」がまたつまらないトリックでがっかりするところへ、「霧ヶ峰涼の屋上密室」のシチュエーションがトリックそのものというような設定に少し感心。
「霧ヶ峰涼の絶叫」は、ちょっと作品にしたことを後悔してほしいくらいの無理さ加減ですが(砂場でのこのトリック? はないなぁ)、ラストの「霧ヶ峰涼の二度目の屈辱」は、第1話「霧ヶ峰涼の屈辱」と同じ設定の謎を違う形で解決し、そのほかにも第1話と呼応するところをちりばめた趣向に満足できる。

というように、1冊の中でアップダウンの激しい作品集なわけですが、どことなく、なんとなく愛すべき短篇集のような気がしました。
シリーズ第2作も、きっと読みます。



<蛇足>
アルファベットのEの書き順、
「よっぽどのひねくれ者でないかぎり、横、縦、横、横、横の順に棒を引いたはずである」(13ページ)
と書かれているのですが、アレ? 僕、違う書き順で書いてますね....




タグ:東川篤哉

茶坊主漫遊記 [日本の作家 田中啓文]


茶坊主漫遊記 (集英社文庫)

茶坊主漫遊記 (集英社文庫)



<裏表紙あらすじ>
関ヶ原の戦いから34年後の夏、地蔵と見紛う小柄な老僧と容貌魁偉な従者の一行が街道を行く。実はこれ、京都六条河原で斬首されたはずの石田三成であった。行く先々で起こる奇ッ怪な事件をズバッと解決、高笑いを響かせながらの諸国漫遊だが、どうやら秘めたる目的があるらしい。一方、三成存命を知った将軍家光は、一行の始末を隠密・柳生十兵衛に命じるが―。ミステリ仕立ての痛快時代小説


引用しておいていうのもなんですが、↑のあらすじ、少々フライング気味でして、この老僧が石田三成であることは、なかなか明かされない趣向になっているんです...

さておき、あらすじも見る前、タイトルだけを見て、
「茶坊主漫遊記」 か、なるほど、時代物ねぇ、と思っていたのですが、読む前に気づきました。
坊主となっていますが、要するに神職で、茶+坊主、すなわち、ブラウン+神父、ブラウン神父のもじりなんですね。
なるほどな、と思って目次をみてみると
第一話 茶坊主の知恵
第二話 茶坊主の童心
第三話 茶坊主の醜聞
第四話 茶坊主の不信
第五話 茶坊主の秘密
ですから、明確ですね。
(ただし、ブラウン神父は、童心→知恵→不信→秘密→醜聞の順ですが)
さらに第一話を読むと、茶坊主の相棒(?)が、腐乱坊。いや、恐れ入りました。
これ、でも、ミステリを読まない人が読むと、わけわかんないのでは? と余計な心配をしてしまいます。

第一話は、狭い洞窟の中で、奥から射殺されたように見える死体を扱ったちょっと小洒落たミステリ。
第二話は、仇討を題材にさらっと逆転して見せる小粋な感じ。
その後、次第次第に時代物としての色彩が強くなっていき、第三話は瀬戸内の小さい島菩提島に眠ると言われる逆し丸の財宝の行方を、第四話ではキリシタン弾圧激しい領主寺沢堅高を、そして最終話では最終目的地(?)である薩摩藩で豊臣の最期にまつわる謎を扱います。
いずれも、ブラウン神父をもじっただけあって(?)、逆説的な謎解きを見せてくれまして、満足。
とかく駄洒落に注目が集まりがちな田中啓文ですが、デビュー「本格推理〈2〉奇想の冒険者たち」 (光文社文庫)に投じた作品というだけあって、ちゃんとミステリとしての目配りもl効いています。
一方で、柳生十兵衛や宮本武蔵、猿飛佐助まで登場させて豪華ですね。

この作品はこれで完結なんだと思いますが、続きがあれば読んでみたいですね。
それくらい、この茶坊主=石田三成、気に入りました。




タグ:田中啓文