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松谷警部と三鷹の石 [日本の作家 は行]


松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ある事件をきっかけにして本庁に引き抜いた白石巡査の直感を、松谷警部は信頼している。当初は白石の推理力を動員するまでもないと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するにつれて複雑な様相を見せはじめた。ケーキは消え、足跡は一つだけ。厭な予感が松谷の脳裏を掠める。打開策の見えないまま地道な捜査を続けるうちに……。本格ミステリ道まっしぐら、好評シリーズ第二作。


松谷警部シリーズ、と呼んでいいのでしょうか、「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
このあと、
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
「松谷警部と向島の血」 (創元推理文庫)
と出てシリーズは完結しているらしいです。

いつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

三鷹の堀越俊介殺害事件は無理心中の様相を呈し、松谷警部も当初捜査が難航するとは考えなかった。しかし白石巡査は納得しない。堀越の本命らしき女性の腺から、次第に河口湖とカーリングに絡む諸々の事情が判明。堀越は長野オリンピック有力候補の木屋沢を事故に巻き込み将来の芽を摘んでいた。カーリング場開設とクラブ結成の話が持ち上がった際に木屋沢はコーチに招かれ、土建屋&スポーツ用品店主の兄弟が一儲け企み……事実を積み上げても明確な方向性は見えなかったが、地道に聞き込みを続けた白石巡査はついに真相を看破する。ど真ん中の本格ミステリ、好評のシリーズ第二作。


うん、こちらは細かく事件が書かれていますね、親切です。
このあらすじに書いてある通りで、単純な無理心中かと思われた事件が、どんどん複雑になっていく、という物語。
このあたりの話の転がりかた、広がりかたを楽しむのがポイントなんだと思うのですが....

前作「松谷警部と目黒の雨」 ではアメリカン・フットボールが出てきましたが、今回はカーリング。
カーリングは、冬季オリンピックのおかげでかなり有名にはなってきていますが、それでも地味ですよねぇ。(競技されているかた、失礼なことを申し上げてすみません)
だからか、この「松谷警部と三鷹の石」 も、かなり地味。

聞き取り調査、ごちょごちょ推理、聞き取り調査、ごちょごちょ推理...この繰り返しです。
聞き取りの結果、広がっていく話に合わせて、山場があるとよかったんですけどねぇ。
本格ミステリって、地味なんだよねー、と言われやすいジャンルだけに、ちょっと残念な感じがします。
語り口とか、松谷警部と周りとの会話とか、読みやすくするための工夫はされているとは思うものの、もともと本格ミステリが好きな人以外にはつらいかも...

帯に
「犯人は意外な人物ですよ」
と白石以愛巡査のセリフであるかのような惹句があるのですが、確かに意外です。
まずもって動機が理解を超えているでしょう(笑)。
「動機は後回し」という白石巡査らしい作りになっているのですが、ここも心配なところ。
論理的に犯人を突き止める場合には不要な動機でも、読者がそう受け取ってくれるかどうか...

と余計な心配ばかりしておりますが、本格ミステリ好きからしますと、十分楽しめました。
その意味では、シリーズ快調、といってよいと思います。


<蛇足>
「松谷警部と目黒の雨」 同様、ある女性をめぐる周りの対応ぶりがちょっと個人的には、??? でした。






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ボランティアバスで行こう! [日本の作家 た行]


ボランティアバスで行こう! (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ボランティアバスで行こう! (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 友井 羊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
東北で大地震が発生した。多くの支援活動が行われるなか、大学生の和磨は、バスをチャーターして援助活動に参加する「ボランティアバス」を主催することに。行方不明になった父親の痕跡を探す姉弟に出会う女子高校生の紗月。あることから逃亡するため、無理やりバスに乗り込んだ陣内など、さまざまな人がそれぞれの思惑を抱えてバスに乗り合わせるが……。驚きのラストが感動に変わる!


「僕はお父さんを訴えます」 (宝島社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で第10回このミステリーがすごい! 大賞優秀賞を受賞してデビューした友井羊の第2作です。
前作の感想で
「次作が楽しみだと思いました」
なんて生意気をことを書いてしまったのですが、楽しみにしていたので買いました。
帯の惹句がすごいんです。いわく、
「どんでん返しを見事に決めた傑作」
ダ・ヴィンチ2013年11月号に掲載された千街晶之のコメントを引用したもののようですが、どんでん返しで傑作、ときたらミステリファンとしては読まずには...
読み終わっての感想は、確かにどんでん返しはあるものの、それをあからさまに「売り」にしないほうが良い作品なのではないだろうか、というものでした。
日常の謎といってもよいような謎解きの連なる連作なのですが、どんでん返しがある、と思って身構えて読むと、この作品で用意されているどんでん返しは新味のあるものではなく、事前に気づく人も多いと思われますし、仮に気づかずに明かされてもさほど驚かないと思われるからです。

どんでん返しそのものよりも、どんでん返しを通してボランティアというテーマ、恩送りというテーマが浮かび上がって来ることの方が重要なポイントなのだと思いました。
「恩送り、という言葉があるそうだ。誰かから受けた恩をその人に返すのではなく、他の人に送るという言葉らしい。」(P.87)
と早い段階でさらっと書かれていますが、難しいボランティアというテーマを印象付けるのに非常に効果的です。

連作という体裁で、いろんな立場のボランティアが登場しますし、ボランティアと地元の被害者の方々とのやりとりも描かれます。
ボランティアが抱える問題やいいところが、手際よく紹介されていきます。
それだけでも十分な作品に仕上がったと思いますが、どんでん返しを仕掛けることで、さらに印象が強くなったように思います。
あまり書くとネタバレになってしまいますが、どんでん返しがあることで物語が重層構造となり、その重層構造そのものが「ボランティア」の本質(?) をついている、ということではないでしょうか?
募金や寄付をするだけで実際のボランティアをやったことのないものがわかったようなことを書くことはよくないのかもしれませんが、ミステリ好きが本書を読んで、そんなことを考えました。


タグ:友井羊
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三本の緑の小壜 [海外の作家 た行]


三本の緑の小壜 (創元推理文庫)

三本の緑の小壜 (創元推理文庫)

  • 作者: D・M・ディヴァイン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/10/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ある日、友人と遊びにいった少女ジャニスは帰ってこなかった――。その後、ジャニスはゴルフ場で全裸死体となって発見される。有力容疑者として町の診療所勤務の若い医師が浮上したものの、崖から転落死。犯行を苦にしての自殺と目されたが、また少女が殺されてしまう。危険を知りながら、なぜ犠牲に? 真犯人への手掛かりは意外にも……。英国本格の名手、待望の本邦初訳作。


久しぶりにディヴァインを読んだ、という感じです。

タイトルの「三本の緑の小壜」 というのは、
「一列に並んだ、三本の緑のガラス壜。あの有名な数え歌のように、一本ずつ落ちて割れていく。」(271ページ)
と書かれているように、童謡(?)からとられているようです。
Ten Green Bottles
でも、ここ、なぜわざわざ「緑のガラス壜」となっているのでしょうね? “glass” という単語が使われているのでしょうか? 不思議。

少女たちが続いて殺されていく作品なわけですが、
「こんなことが殺人の動機になりうるとは思えない」(344ページ)
と書かれている動機がポイントでしょうか。ミッシリング・リンクとして、面白い作品だと思いました。
個人的にはミステリとしては、あり、だと思ったものの、まあ、こんな理由で殺されちゃたまらないですが...

動機はさておくとして、犯人を見抜くのはそんなに難しくはないだろうと思います。
「この人物しかありえないというところまで、われわれは犯人を絞り込んだ。五万人から六人へ、六人からふたりへ、そしてついに最後のひとりへ。」(355ページ)
とロウビンズ警部補が言う場面がありますが、これは言い過ぎというもので、もともと容疑者は六人くらいからスタートしているわけです。
ただ、バラまかれた手がかりと作者の仕掛けたミスディレクションとはかなりいろんなパターンを組み合わせてありまして、贅沢な作りの本格ミステリです。
少々犯人が分かりやすかったとしても、満足できます。

そして、この作品は視点人物が切り替わっていくのですが、切り替わるたびに趣が変わっていくというところもポイント高い。
派手ではないですが、いわゆる“ロマンス”が盛り込まれているのも、時代を反映していい感じで楽しめました。

ディヴァインの作品は、ゆっくりとですが、着実に訳されています。
本書のあとも、
2013年に「跡形なく沈む」 (創元推理文庫)
2015年に「そして医師も死す」 (創元推理文庫)
が訳されています。
今月末に
「紙片は告発する」 (創元推理文庫)
が出版されるようですね。
楽しみです。全部読まなきゃ。

<おまけ>
HP「黄金の羊毛亭」の解説(?)は、いつもながら素晴らしいです。
これ読んじゃうと、感想書くのが悪いことをしているみたいな気分になります...


原題:Three Green Bottles
著者:Dominic Devine (D・M・Devine)
刊行:1972年
訳者:山田蘭





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