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夏服パースペクティヴ [日本の作家 な行]


夏服パースペクティヴ (角川文庫)

夏服パースペクティヴ (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
都筑台高校2年生にして弱小映研部長の遊佐渉は、気鋭の映像作家・真壁梓が夏休みに企画した撮影合宿に参加することに。しかし、キャストの女子生徒が突然倒れ込む。なんとその胸にはクロスボウの矢が深々と突き刺さっていた。セミドキュメンタリーの撮影現場で起こる虚構の殺人が、いつしか本物の惨劇へ。交錯する思惑、驚愕のトリック、慟哭の真実。“美少女”探偵・樋口真由が、難攻不落のクローズド・サークルに挑む!


「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本7冊目で、3月最後の本です。
横溝正史ミステリ大賞「消失グラデーション」 (角川文庫)に続き、樋口真由を探偵役としています。

文庫のカバーには、
樋口真由“消失”シリーズ 少女洋弓銃殺人事件
と書かれています。“消失”シリーズっていうんですか...消失と通してつけるのは違和感があるなぁ、と最初思ったのですが、読後はなるほど、と思えました。ただ、この後もシリーズを消失とつけられるかは疑問を感じますが...
あと、少女洋弓銃殺人事件って、サブタイトルなのかな、と思ったんですが、書いてあるのはカバーにだけで、文庫本本体にはどこにも書いてないんですね。不思議。

それにしても、樋口真由を探偵役とするシリーズが読めるなんて...「消失グラデーション」を読み終わった時には、魅力的な探偵役ではあるけれど、ラストからしてシリーズ化は無理だろうなぁ、と思っていたんですが、なるほどねー、時代(時間)を遡りましたか。時系列的に、本書「夏服パースペクティヴ」は、「消失グラデーション」よりも前に起こった話なんですね。
ということは、樋口真由は転校したんですね、高校生で。
まあ、時代を遡ったところで、シリーズ化が簡単になるわけではなく、作者の筆の冴えというか、苦労しているところがわかってそういう楽しみ方もシリーズ読者にはありました(もっとも、「消失グラデーション」を読んだ身からすると、あれっ、いいのかなと思うところもあって、たとえばラストの1行なんてものすごーく意味深なんですけど...)。

さっと上で引用したあらすじを読んでから本書に取り掛かったのですが、オープニングはあらすじとは大きく異なり、かなり残虐そうな事件からスタートします。
おいおい、と思っていると(あんまり残虐なものは好みでないので)、16ページからの第1章であらすじに記載された物語が始まります。よかった。(とはいえ、折々、残虐な感じのエピソードがつづられるのでそこはちょっと警戒しながらお読みください)
あらすじにも触れてありますが、虚構を作り上げる最中の現実で起こる殺人、というのは、実はあんまり好きじゃないプロットなんですよね。
よほどうまく組み立ててもらわないと、虚構サイドのストーリーや事件が、現実サイドのストーリーや事件をわかりにくくするためだけのものになってしまうことが多いからです。
で、「夏服パースペクティヴ」の首尾はどうだったかというと、さすがは「消失グラデーション」の作者だけあって、周到です。「うまく組み立て」られた作品ですね。
この種の作品では当たり前のことですが、現実と虚構がきちんとリンクしています。現実の謎解きが、虚構の仕掛けと不可分になっているところは、とてもいいです。

ではありますが、全体としての建付けを考えると、ちょっと冗長になったかなぁ、と思います。
虚構と現実に加えて、過去の事件の関係者が現在の誰に相当するか、ということまで盛り込んであるので、なかなか窮屈です。
前半ゆったり進むのは、このあたりを踏まえて、読者に登場人物をきちんと印象付ける目的があるのだと思いますが、そしてそのことは、青春小説としての色合いを打ち出すのにも役立ってはいるのですが、それでもやはり、長いかな、と感じました。
ミステリとしては、早めに事件が起こったほうが、なにかとね。

とはいえ、巧緻というか精緻というか、非常に練りこまれた作品だと感じ入りました。
この作者の本は続けて読んでいこうと思います。


「消失グラデーション」のときに続き、ここでもリンクを貼っておきます。(またもや勝手リンクです。すみません)
a picture is worth a thousand words
*the long fish*
また、以下のブログにトラックバックしています。
積読本は積読け!!
とある暇人の感想日記


<蛇足1>
177ページに、「位置シーン」と書いてあるのは、「一シーン」のタイプミスですね。

<蛇足2>
「全裸探偵」というふざけた作中作が挿入されるのですが、その作中作について
「解決自体はロジカルな手順が踏まれしっかりと描かれていた」(302ページ)
と僕の視点で評されるのですが、うーん、作中作も一部だけだからなんとも言えないのかもしれないけれど、見た感じそれほど「しっかり」とは思えませんでした。自画自賛はほほえましかったですが。




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燔祭の丘 [日本の作家 篠田真由美]


燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫


『僕は――ヒトゴロシ』。謎の詩を残して姿を消した桜井京介は、久遠アレクセイの名に戻り、14歳まで育った屋敷にいた。神代宗の話を聞いた蒼は、京介を捜し歩き、20年前の忌まわしき事件を知る。久遠家のルーツが明らかになった時、父グレゴリの狂気が京介を襲う!「建築ミステリ」の金字塔、ついに完結!


「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本、6冊目です。

引用したあらすじにも書いてある通り、まさしく、ついに完結、です。
ここまでくると、建築探偵とか本格ミステリとかあんまり関係なくなってきていますね。
前作「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)で過去に遡ってみた物語は、現在時点に戻ってきます(解かれる謎は過去のものにせよ)。

『僕は――ヒトゴロシ』という京介は本当に人殺しなのか、という謎は、ミステリ読者なら当然「実は違った」という着地を想定して読むわけですが、さて、篠田真由美はどう料理したか、さすがに究極のネタバレになるので実際に読んでみてください、としかここでは書けませんが、なるほどそう来ましたか、という読後感でした。

たぶん、シリーズもここまで続いてくると、ミステリとしての解決云々もさることながら、シリーズのレギュラー登場人物たちがどうなるのか、にも読者は相応に興味を持つので、その意味でも意義深い完結編となっていると思いました。
作中、神代教授が振り返って
「血の繋がらない、だが心は結ばれた疑似家族」(439ページ)
と考えるシーンがありますが、まさにこれこそがシリーズのポイントだったのでしょう。

京介=アレクセイとの対決の相手であるラスボスたる久遠グレゴリは、親子なわけで、上で引用した部分とは対比になっている、と考えるのはさほど見当外れではないのでは、と思います。
言ってみれば
「血はつながっている、だが心はまったく結びついていない家族」
というわけですね。
とすると、この「燔祭の丘」で明かされる真相は、かなり印象に強く残りますね。

それにしても、グレゴリ、すごすぎ。
「お父様は人間ではないわよ!」
「お父様は疾うに、人間の限界を超えておられる」(660ページ)
なんてセリフも出てきますが、いやあ、本当に、人間を超えていますよ。

シリーズ番外編、スピンオフがいろいろと出ているようです。
文庫化を待って読み進めていきたいと思っています。



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MIDNIGHT DRINKER



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化学探偵Mr.キュリー4 [日本の作家 喜多喜久]

化学探偵Mr.キュリー4 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー4 (中公文庫)


<裏表紙あらすじ>
大学で暗躍する『互助組合』の謎。反応を掻き混ぜる以外に使い道のない《スターラー盗難事件》。切断された銅像と雪の上の足跡。そして今回、Mr. キュリーこと沖野春彦がなんと被害者に!? この事件の謎に立ち向かうのは、イケメン俳優にして「春ちゃんラブ」の美間坂剣也。沖野リスペクトによる化学的知識を駆使して新たな名探偵となれるのか!?


「シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究」 (SKYHIGH文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本、5冊目です。

シリーズ第4弾です。
しかし、数字がついていくだけのタイトルって、わかりやすいですが、ちょっとさびしいですね。
この第4巻には
「化学探偵と猫騒動」
「化学探偵と互助組合の暗躍」
「『化学探偵』の殺人研究」
「沖野春彦と偽装の真意」
「七瀬舞衣と三月の幽霊」
の5話収録。

「化学探偵と猫騒動」は、「大学猫を守る会」というサークルに入っていた女の子が、猫アレルギーになってしまって、好きな会長と一緒にいられなくなると困るなぁ、と思っている、という話です。ところが、アレルギー検査をしてみたところ...という風に話が転がっていくわけですが、この真相はどうでしょうか。いくらなんでも、これはなしだと思います。
犯人(と呼んでおきます)の心理ととった手段のあまりのアンバランスさに、ちょっと気持ちが悪くなってしまいます。

「化学探偵と互助組合の暗躍」は、スマホゲームの課金アイテムを利用した資金略取が取り上げられていますが、そちらよりも焦点はやはり互助組合とは何か、なのでしょう。
互助組合の発想は昔からあるものですし、ここまでの規模ではなくても同様のことは割とよく行われているのではないだろうか、と思いますが、それとスマホゲームの課金という新しい切り口とを同じ作品の中に置いてみたところの構図が面白かったです。

「『化学探偵』の殺人研究」は、美間坂剣也主演のTVドラマにつかうトリックを考えてくれ、とMr. キュリーこと沖野春彦が頼まれるところからスタートします。
使われているトリックは、あまりにも専門的すぎて、普通のミステリには使えないですが、こういう形だと有効活用できますね。
驚きは、やはり沖野が襲われて入院してしまう、というところでしょうか。
全体に対してひねりが仕掛けられているのはご愛敬でしょう。   

「沖野春彦と偽装の真意」は盗んでも使い道がないスターラー(攪拌子を回すための装置)が盗まれる、という素敵な謎が扱われています。
だから、と言ってしまっては少し申し訳ないですが、割と定型的な着地を迎えます。

「七瀬舞衣と三月の幽霊」は、四宮大学初代学長の胸像の首が切り落とされるという事件です。
雪が降って一面真っ白の世界で、なのに胸像へ向かう足跡のようなものは途中で途切れていた...
うわー、絵になる事件!! トリックも、すっきりしていて素敵です。
なにより、この作品ですごいのは動機でしょうか。
ミステリ的にすごいのではないですが、シリーズ的には絶対に見逃せない動機ですね!!

シリーズはこのあと、
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
が出ていまして、今月6巻が出るようです。



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