So-net無料ブログ作成
検索選択
2017年06月05日| 2017年06月18日 |- ブログトップ

夏服パースペクティヴ [日本の作家 な行]


夏服パースペクティヴ (角川文庫)

夏服パースペクティヴ (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
都筑台高校2年生にして弱小映研部長の遊佐渉は、気鋭の映像作家・真壁梓が夏休みに企画した撮影合宿に参加することに。しかし、キャストの女子生徒が突然倒れ込む。なんとその胸にはクロスボウの矢が深々と突き刺さっていた。セミドキュメンタリーの撮影現場で起こる虚構の殺人が、いつしか本物の惨劇へ。交錯する思惑、驚愕のトリック、慟哭の真実。“美少女”探偵・樋口真由が、難攻不落のクローズド・サークルに挑む!


「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本7冊目で、3月最後の本です。
横溝正史ミステリ大賞「消失グラデーション」 (角川文庫)に続き、樋口真由を探偵役としています。

文庫のカバーには、
樋口真由“消失”シリーズ 少女洋弓銃殺人事件
と書かれています。“消失”シリーズっていうんですか...消失と通してつけるのは違和感があるなぁ、と最初思ったのですが、読後はなるほど、と思えました。ただ、この後もシリーズを消失とつけられるかは疑問を感じますが...
あと、少女洋弓銃殺人事件って、サブタイトルなのかな、と思ったんですが、書いてあるのはカバーにだけで、文庫本本体にはどこにも書いてないんですね。不思議。

それにしても、樋口真由を探偵役とするシリーズが読めるなんて...「消失グラデーション」を読み終わった時には、魅力的な探偵役ではあるけれど、ラストからしてシリーズ化は無理だろうなぁ、と思っていたんですが、なるほどねー、時代(時間)を遡りましたか。時系列的に、本書「夏服パースペクティヴ」は、「消失グラデーション」よりも前に起こった話なんですね。
ということは、樋口真由は転校したんですね、高校生で。
まあ、時代を遡ったところで、シリーズ化が簡単になるわけではなく、作者の筆の冴えというか、苦労しているところがわかってそういう楽しみ方もシリーズ読者にはありました(もっとも、「消失グラデーション」を読んだ身からすると、あれっ、いいのかなと思うところもあって、たとえばラストの1行なんてものすごーく意味深なんですけど...)。

さっと上で引用したあらすじを読んでから本書に取り掛かったのですが、オープニングはあらすじとは大きく異なり、かなり残虐そうな事件からスタートします。
おいおい、と思っていると(あんまり残虐なものは好みでないので)、16ページからの第1章であらすじに記載された物語が始まります。よかった。(とはいえ、折々、残虐な感じのエピソードがつづられるのでそこはちょっと警戒しながらお読みください)
あらすじにも触れてありますが、虚構を作り上げる最中の現実で起こる殺人、というのは、実はあんまり好きじゃないプロットなんですよね。
よほどうまく組み立ててもらわないと、虚構サイドのストーリーや事件が、現実サイドのストーリーや事件をわかりにくくするためだけのものになってしまうことが多いからです。
で、「夏服パースペクティヴ」の首尾はどうだったかというと、さすがは「消失グラデーション」の作者だけあって、周到です。「うまく組み立て」られた作品ですね。
この種の作品では当たり前のことですが、現実と虚構がきちんとリンクしています。現実の謎解きが、虚構の仕掛けと不可分になっているところは、とてもいいです。

ではありますが、全体としての建付けを考えると、ちょっと冗長になったかなぁ、と思います。
虚構と現実に加えて、過去の事件の関係者が現在の誰に相当するか、ということまで盛り込んであるので、なかなか窮屈です。
前半ゆったり進むのは、このあたりを踏まえて、読者に登場人物をきちんと印象付ける目的があるのだと思いますが、そしてそのことは、青春小説としての色合いを打ち出すのにも役立ってはいるのですが、それでもやはり、長いかな、と感じました。
ミステリとしては、早めに事件が起こったほうが、なにかとね。

とはいえ、巧緻というか精緻というか、非常に練りこまれた作品だと感じ入りました。
この作者の本は続けて読んでいこうと思います。


「消失グラデーション」のときに続き、ここでもリンクを貼っておきます。(またもや勝手リンクです。すみません)
a picture is worth a thousand words
*the long fish*
また、以下のブログにトラックバックしています。
積読本は積読け!!
とある暇人の感想日記


<蛇足1>
177ページに、「位置シーン」と書いてあるのは、「一シーン」のタイプミスですね。

<蛇足2>
「全裸探偵」というふざけた作中作が挿入されるのですが、その作中作について
「解決自体はロジカルな手順が踏まれしっかりと描かれていた」(302ページ)
と僕の視点で評されるのですが、うーん、作中作も一部だけだからなんとも言えないのかもしれないけれど、見た感じそれほど「しっかり」とは思えませんでした。自画自賛はほほえましかったですが。




nice!(10)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
2017年06月05日| 2017年06月18日 |- ブログトップ