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殺さずにはいられない [日本の作家 か行]


殺さずにはいられない - 小泉喜美子傑作短篇集 (中公文庫)

殺さずにはいられない - 小泉喜美子傑作短篇集 (中公文庫)

  • 作者: 小泉 喜美子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/08/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
推理作家が親友に古今東西の「殺し方」を話したその晩、人が殺された。驚きの方法で……(「冷たいのがお好き」)。昔の恋人を消す計画を練っていた男が落ちた陥穽(「殺さずにはいられない」)。幻のショートショートを含む傑作短篇集第二弾。著者選「ミステリーひねくれベスト10」も収録する。


イギリス読書第2弾は、「殺さずにはいられない」 (中公文庫)です。
「痛みかたみ妬み」 (中公文庫)に続く、小泉喜美子傑作短篇集の第2弾です。「痛みかたみ妬み」は買ってあるんですが未読で、ゆっくり船便でイギリスにやってくるはずです(笑)。
シャーロック・ホームズの次が、小泉喜美子かい、と言われそうですが...このところ復刊著しい作者ですから、気になっていまして。
収録作品は
「尾行報告書」
「冷たいのがお好き」
「血筋」
「犯人のお気に入り」
「子供の情景」
「突然、氷のごとく」
「殺人者と踊れば」
「髪ーーかみーー」
「被告は無罪」
「殺さずにはいられない」
「客にはやさしく」
「投書」
「ボーナスを倍にする方法」
「御案内しましょう」
「ありのまま」
「プロの心得教えます」
で、これに加えてエッセイ「ミステリーひねくれベスト10」が収められています。
「客にはやさしく」以降の6作は、ボーナストラックともいうべきショートショートとのことです。

まず率直に言って、いかんせん古いですね。今の感覚で読むと、古めかしい。冒頭の「尾行報告書」をちょっと読むだけでそのことがわかります。
なので、時代色を楽しむ感じで読むのが吉だと思います。逆に、古めかしいところが味わい深かったりして。
閉店に「かんばん」とルビがふってある(20ページ)とか「小型の早撮りカメラ」(30ページ)なんてものが出てきたりとか(いったい、どんなカメラのことを言うんでしょうか?)...
「呼ばわる」(30ページ)や「飾り窓」(32ページ)、「けぶりにも見せず」(271ページ)というのも最近はあまり目にしない表現ですね。
エッセイ「ミステリーひねくれベスト10」にも「彫心鏤骨」(348ページ)なんて素敵な表現が出てきます。
このあたりも楽しみどころといえるのではないでしょうか?

古めかしいことを別にしますと、いずれの作品でも、ツイスト(ひねり)が効かせてあることが特徴だと思います。
それぞれのツイスト自体は他愛もないというか、よくあるパターンのものなのですが、よくあるパターンといっても、そこは編者解説にも書かれているように
「洗練されていなくては、ミステリーとは言えないわ」
「メイン・ディッシュはミステリー」 (新潮文庫)で言い、
『「何を」より「いかに」書くかに重きをおくタイプの作家』
とされていた小泉喜美子ですから、細かな配慮が行き届いているように見受けられましたので、さらっと読んでしまってはもったいない作品集なのかもしれません。

気になった作品について触れておきます。ってほとんどの作品ですが。
「冷たいのがお好き」はあらすじにも触れられていますが特異な殺人方法が取り上げられています。ただしそれは実際には実現不可能な方法なんです(この方法では人は死なない)。その意味ではあらすじが殺人方法に焦点を当てているのは間違いだと思います。とはいえ、だからダメな作品ということはなく、わたしと司まゆみの関係や振る舞いに焦点を当ててみると、(たとえ作中で殺人が起こらなくても。つまり例のトリックで被害者が死ななくても)ツイストはきちんと成立しているんですよね。殺人を中心に奥行きがあるというか、広がりがあるというか、おもしろい狙いの作品だと思いました。

「血筋」は、うーん、わかりやすすぎ? ただ、ラストははっきりと書かずに思わせぶりなところが〇だな、と感じました。

「犯人のお気に入り」は、かなりツイストがうまく効いていると思いましたね。読んでいてなんかおかしいな、と思っていたんですけど...同じ趣向を西澤保彦が長編でやっていますね。(← amazon にリンクを貼っておいたのでネタバレが気になる方はクリックなさいませんよう)西澤保彦の作品も好きな作品です。

「子供の情景」は、タイトルからしてオチが読めてしまうという方がいらっしゃってもおかしくない話であまり高くは評価できない気がしますが、きっかけが皮肉な感じに出来上がっているのがポイントでしょうか(そうでなければお話しにならないかも、ですが)。

「突然、氷のごとく」は、倦怠期の有閑夫人(!)が陥る罠、という話で、これまた予想通りの展開といえるかもしれませんが、ラストの有閑夫人の行く末が個人的にはパンチが効いているというか、小泉さん意地悪だなぁ、というところ。

「殺人者と踊れば」も、うっかりすると気づかずに作者の罠にはまるかも、ですね。さらっとさらっと書かれています。丘(山)の上の館といういかにもな舞台をこういう風に使うんですね。導入部というラストといい、雰囲気のある作品です。

「髪ーーかみーー」は、個人的には割とあっさりオチが読めたんですが、主人公の思惑をひっくり返すところのキーポイントは気づきませんでした。

「被告は無罪」は、むかーし、図書館で借りた日本推理作家協会の年鑑(今でいうと、「ザ・ベストミステリーズ」ですね)で読んだことがあるはずだと記憶しており、実はストーリーもかなり覚えているつもりだったんですが、今回読んだら、あれっ? となりました。ラストが記憶と違う。そして、記憶よりもずっとずっと気の効いたエンディングでした。小泉さん、失礼いたしました。これこそツイストをうまく利用している作品の例ですよね。

「殺さずにいられない」は、出世に役立ちそうな縁談がある若い男が、昔の恋人が邪魔になって、というストーリーで大方の予想通りといった方向に話が進むんですが、ラストの急展開はかなり皮肉が効いています。あらすじには、男が落ちた陥穽、とありますが、そこから先の「殺さずにいられない」というのが急所ですよね。

最後の「プロの心得教えます」には作者の分身みたいな作家が出てきて興味深かったです。

そしてエッセイの「ミステリーひねくれベスト10」ですが、いやあひねくれにもほどがあるというか、すごいラインナップですね。ミステリーかどうか疑わしそうなのも混じっているようですが、それでも小泉喜美子が推すんなら読んでみたいと強く思いますね。ほとんど絶版やらで手に入らないみたいですが...


<蛇足>
「エスパアハンの園の薔薇茶」(13ページ)とありましたが、今風にいうとイスパハンでしょうね。薔薇の名前というよりは、どちらかというとお菓子も名前として知られているような気がしますが。



タグ:小泉喜美子
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武家屋敷の殺人 [日本の作家 か行]

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

武家屋敷の殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/08/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
孤児院育ちの美女から生家を探してほしいとの依頼を受けた弁護士・川路。唯一の手がかりは、20年前の殺人と蘇るミイラについて書かれた異様な日記のみ。友人・那珂の助けを借りてついに家を突き止めるが、そこは江戸時代から存続するいわく付きの武家屋敷だった。そして新たな殺人が……。謎とトリック2倍増しミステリ!


今年5月に読んだ3冊目の本です。
小島正樹の本としては、島田荘司との共著である「天に還る舟」 (SSKノベルズ)を除いて考えて、「十三回忌」 (双葉文庫) (ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
文庫化された順番の関係で、次の第三作「扼殺のロンド」 (双葉文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)を先に読んでいます。
「十三回忌」 「扼殺のロンド」と違い探偵役が海老原浩一ではありません。出版社が違うからかな?

千街晶之の解説に、ノベルス版の著者のコメントが引用されています。
一晩で壁の色が変わり、空からは人が降り、塀は血を流し、床がケタケタ笑う。
そんな、さながら悪霊に魅入られた武家屋敷では、ミイラが蘇り、死体が瞬間移動し、氷室が跡形なく消え去ります。
江戸時代から続く悪意の連鎖と数々のなぞ。どうかひととき、この屋敷に滞在くださいませ。

この著者のコメントからも、「やりすぎミステリー」の雰囲気が漂ってきますね。

手記(日記)を頼りに生家を探すというわけですが、その家では「一晩で壁の色が変わり、空からは人が降り、塀は血を流し、床がケタケタ笑う。そんな、さながら悪霊に魅入られた武家屋敷では、ミイラが蘇り、死体が瞬間移動し、氷室が跡形なく消え去ります。」
というのです。
これに加えて、響き渡る死者の叫び声、だの、見えない雹だの、もう不思議な事象のてんこ盛りです。
これが、すっと論理的に解決されたら、気持ちいいですよね。
いったんは精神的な病による幻視・幻聴と川路が考えるものの、那珂により別の解決が提示されます。
すごいのは、そのほとんどの謎解きが、文庫本で590ページを超えるこの作品の、最初のほう、わずか150ページくらいのところ、第一章のうちになされてしまうことです。
その後、第二章で別の人物の観点から物語が語られると、またまた別の謎がどんどん湧き出てくる。

この後から後から謎が追加されるぜいたくさ、ほかの作家では味わえない部分だと思います。
特にこの「武家屋敷の殺人」 は登場人物たちの思惑が絡み合い、幾重にも重なった謎の大伽藍になっています。
小島正樹、ステキ。
真相も果たしてどこまでつきとめればよいのやら。
二転三転するどんでん返しの連続もぜいたくな趣向です。

しかし、ちょっと那珂邦彦の扱いがかわいそうな気もします。
川路、那珂コンビは、このあと「四月の橋」 (講談社ノベルス)にも出てくるそうなので、そちらで那珂のその後を確認したいです。


タグ:小島正樹
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シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 [日本の作家 か行]


シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 (SKYHIGH文庫)

シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 (SKYHIGH文庫)

  • 作者: 階 知彦
  • 出版社/メーカー: 三交社
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
彼女たちは確実に真実へとたどりつく--
横浜の朝霧学園高校でクラス委員を務める二年の和藤園子は、日曜模試の帰り道に立ち寄ったコンビニで、不思議な美少女・穂泉沙緒子に出会う。僅かな情報だけで園子のことを言い当て、二人の目の前で起きたコンビニ強盗を鮮やかに解決した沙緒子に強い興味を持つ園子。しかし無事に解決したかと思われた強盗事件は、意外な方向へと転がり始め、平凡だった園子の毎日を沙緒子との非日常へと導いていく--。


3月に読んだ本、4冊目です。
SKYHIGH文庫...堂々たるラノベ文庫で、通常だったら手に取らないんですが、「このミステリーがすごい! 2017年版」で千街晶之氏が「今年の本格ミステリー注目作!」として取り上げられていたので購入しました。
読んだ結果は、千街さんありがとうございます。おもしろかったです。

穂泉沙緒子がシャーロック・ホームズで、和藤園子がワトソン。
警察の方は、連城玲人がレストレイドで、暮続壮一がグレッグスンでしょうか。
冒頭イラストつきで紹介されているのは、あとは、喫茶店「真麻」をやっている波戸野真と梓夫婦で、これはハドソン夫人の役回りですね。
このネーミングはちょっとどうかなぁ、と思いましたが、中身は堂々たるミステリで、いいですね。

なによりも、謎解きというか、手掛かりをベースにして推理を組み立てていく部分の比重が高いのがGOOD。
最初、コンビニで偶然遭遇した強盗事件の犯人を捕まえてしまうところで、穂泉の推理力よりも、コンビニの防犯ボールを投げるコントロールの良さに感心してしまいましたが、その後もいろいろな手がかりでじゃんじゃん推理を構築していくのが楽しい。
そして、コンビニ強盗が、次の建設中のビルの事件につながっていく流れも良い感じです。
ただ、建設中のビルの事件の方の動機はいただけないですね。この動機はないなぁ。この辺りは、シリーズを重ねていくにつれて改善されていくといいですね。

最後に、この作品でいいなと思ったのが、ワトソン役の和藤が、単なるぼんくらという設定になっていないこと。穂泉ほどではないにせよ、きちんと推理を立てていくのが心地よかったです。
こういうコンビ、楽しいかも。


<蛇足>
「イギリスといえば紅茶なんだから、コーヒーを飲み慣れていなくても当然よね」(235ページ)
というセリフが出てきますが、これは完全なる誤解と思います。
イギリスに行ってみられればわかりますが、イギリスでは、コーヒーをよく飲みますよ。
コーヒーショップもいたるところにあります。むしろティーショップの方が少ないかもしれません。




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パラドックス実践 雄弁学園の教師たち [日本の作家 か行]


パラドックス実践 雄弁学園の教師たち (講談社文庫)

パラドックス実践 雄弁学園の教師たち (講談社文庫)

  • 作者: 門井 慶喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
初等部から大学院までをそなえた伝統ある名門校、雄弁学園。最大の特色は通常の科目の他に「雄弁」を学ぶこと。新任の教師、能瀬雅司は生徒から難問を突きつけられ、雄弁術で証明しなければならなくなった。失敗したら生徒たちに失格の烙印を押されてしまうだろう。新米教師は無事「試験」に合格できるのか?


「パラドックス実践 - 高等部」
「弁論大会始末 - 初等部」
「叔父さんが先生 - 中等部」
「職業には向かない女 - 雄弁大学」
の4編収録の連作です。

第1作目の「パラドックス実践 - 高等部」は、第62回日本推理作家協会賞短編部門の候補作です。
これが協会賞の候補作ですか...意外。
意外とは言いましたが、おもしろいんですよ。楽しみました。
生徒から
「テレポーテーションが現実に可能であることを証明せよ」
「海を山に、山を海に変えられることを証明せよ」
「ほんとうにサンタクロースがこの世にいることを証明せよ」
という3つの命題を突きつけられて、はてさてどうやって回答すべきか煩悶する教師、という話です。
相手の言説を土台に、というか、逆手にとって話を展開していくところとか、ミステリっぽいというか、ミステリにもみられる要素もちゃんとあります。
でもね、肝心の中心的アイデアが、どうでしょう、これ? これで納得しますか? しないと思うんですよね。
でも、黙り込んでしまう生徒、強引にするすると話を進めていってしまう主人公。
たまたま(?)教室にいた部長(普通の学校でいうところの校長)が、すっと話を引き継いで展開させていってしまうところは、むしろ主人公を追いつめる立場かと思われた人物が助けるサイドに回るという意外性(?)を演出したりもしますが、いかんせん弱いですよねぇ、アイデアが。

他の作品もその点いずれもなんだか喰い足りない印象です。

おもしろいのは、学園を舞台にしていても、生徒ではなく教師に焦点が当たっていること。
副題にもある通り、「雄弁学園の教師たち」なのです。
また、「日常の謎」というには日常的ではない設定ですし、パラドックスというか、もはや詭弁の領域の論旨が展開されていきますが、結局のところ教師の普通の悩みが、普通でない経路をたどりつつも、普通に解決されます。
こういうひねくれたフォーマットはいいですね。

あっ、そうか、ここまで書いて気づきました。
そういう狙いの作品だったんですね。
パラドキシカルな言説を弄じつつ、きわめて平凡な(失礼)問題を平凡に解決して見せる。
フォーマットそのものが逆説的に組み立てられていたわけですね。



<蛇足>
ぼくは個人的に宮沢賢治があまり好きではありません。
ミステリとは相性の良い詩人・文学者なんですけどね。
特に、「雨ニモマケズ」が嫌いです。
「雨ニモマケズ」は、「パラドックス実践 - 高等部」でも触れられていますが、「職業には向かない女 - 雄弁大学」において、「雨ニモマケズ」の叙述が秘める厭らしさ(レトリックの下品さと言ってもいいかもしれません)を暴き立てているのは、(視点人物とは対立する観点の人物による言説ではあるものの)、すごくツボでした。ああ、すっきりした。
宮沢賢治がお嫌いな人は、ぜひ(笑)。


タグ:門井慶喜
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このミステリーがひどい! [日本の作家 か行]


このミステリーがひどい!

このミステリーがひどい!

  • 作者: 小谷野敦
  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社
  • 発売日: 2015/07/30
  • メディア: 単行本




ミステリーファンにとっては、かなり刺激的なタイトルになっています。
確かにミステリーの悪口満載ですが、気分悪くはならなかったですね。
だいたい、作者自身 “ミステリー嫌い” として書かれているようですが、ここも実はあやしいように思います。
「ミステリー嫌い」と明記されていなかったような気がします。
「私がしばらく嫌っていた推理小説を見直すきっかけとなったのがこの作品である」(12ページ)
なんて記述もかなり早い段階で出てきます。「嫌っていた」「見直す」ってことは、今は嫌いじゃないってことでしょう??
第一章の章題が「いかにして私は推理小説嫌いとなったか」なんですが、正直、嫌いになったようには見受けられません。

「私を決定的にミステリー嫌いにしたのは、一九八四年十一月二十六日月曜日に読了したアガサ・クリスティの『クロイド殺人事件』である。」(45ページ)
なんて書かれていますが、その理由がもう一つぴんと来ません。
(ちなみに、どうでもよいことですが、大久保康雄訳の創元推理文庫版で読んだとされていますので、タイトルは、「アクロイド殺害事件」のはずです。殺人事件、ではなく、殺害事件ですね)
「『意外な犯人』と書いた紹介文が悪いのではない。記述に矛盾があるとも言われるが、それもどうでもいい。我慢ならないのは、たったそれだけのことで、いかにもいわくありげに、色々な登場人物を出して、面白くもない長いストーリーを読ませたことである」(46ページ)
と書かれています。
まあ、「アクロイド殺害事件」がどうか、というのは置いておくとしても、意外な種明かしをミステリの身上とするなら、長いストーリーが無駄だ、と思う人もいるでしょうし、そういう批判はこれまでもいろんな人がしているので、なんだかなぁ、というところ。それが理由でミステリ嫌いに?? なんだかつまんない理由ですねぇ。
で、そのあと、クリスティーが原作の映画とかドラマの話になるのです。
「まあそこそこ面白くはあるが、原作まで読もうという気にはならない」(50ページ)とも。
うーん、映画もドラマも小説もごっちゃで、ストーリーを重視されているのだなぁ、ということがうっすらとわかります。
(99ページには
「私は、純文学派ではあるが、ストーリー主義者である。」
「だから推理小説でも、トリックやらアリバイだけでなく、優れたストーリーが必要だと考えているのだが」
という記述もあります。)
であれば、こういうスタンスでミステリーを(あるいはそれ以外のジャンルの小説も)読まれているのであれば、批判されても一向に気にはなりませんねぇ。見方が違うというだけだから。そう読む人もいるんだね、ってだけです。
あと、小谷野さん、「嫌い」とされる割には、小説も、映画も、ドラマも、かなりの数を読んだり観たりされているようです。
こういうのって結局好きなんじゃないですかねぇ?
知人に、「アンチジャイアンツ」というのは結局(裏返しの)巨人ファンなんだ、と主張する人がいますが、そんな感じ?
こう受け止めたから、ミステリーの悪口満載でも気にならなかったのかも。

あとがきに、推理小説ベストが挙がっています。
一位、西村京太郎「天使の傷痕」 (講談社文庫)
一位同点、筒井康隆「ロートレック荘事件」 (新潮文庫)
三位、貴志祐介「硝子のハンマー」 (角川文庫)
四位、ヘレン・マクロイ「殺す者と殺される者」 (創元推理文庫)
五位、中町信「模倣の殺意」 (創元推理文庫)
六位、北村薫「六の宮の姫君」 (創元推理文庫)
七位、折原一「倒錯のロンド」 (講談社文庫)
偏ったリストではありますが、なかなかいい作品が並んでいるではないですか。

ほかに、悪口満載のこの本の中で褒められているのは、
「江戸川乱歩傑作選」 (新潮文庫)(33ページ)
ケン・フォレット「針の眼」 (創元推理文庫)(98ページ)
歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」 (文春文庫)(104ページ)
ディクスン・カー「皇帝のかぎ煙草入れ」 (創元推理文庫)(106ページ)
フリーマン・ウィルス・クロフツ「樽」 (創元推理文庫)(112ページ)
貴志祐介「青の炎」 (角川文庫)(113ページ)
西村京太郎「終着駅(ターミナル)殺人事件」 (光文社文庫)(143ページ)
丸谷才一「横しぐれ」 (講談社文芸文庫)(147ページ)
広瀬正「エロス―もう一つの過去」 「ツィス」  どちらも集英社文庫(167ページ)
高村薫「レディ・ジョーカー」 〈上〉〈中〉 〈下〉 (新潮文庫)(197ページ)
天藤荒太「永遠の仔」〈1〉〈2〉〈3〉〈4〉〈5〉 (幻冬舎文庫)(197ページ)
宮部みゆき「龍は眠る」 (新潮文庫)(200ページ)
辻村深月「鍵のない夢を見る」 (文春文庫)(212ページ)
野沢尚「破線のマリス」 (講談社文庫)(215ページ)
加納朋子「ななつのこ」 (創元推理文庫)(237ページ)
小杉健治「土俵を走る殺意」 (光文社文庫)(242ページ)
小野不由美「残穢」 (新潮文庫)(246ページ)
これだけ、おもしろい、よい、気に入った作品があるなんて、ミステリー好き、ですよ。

かなりネタバレ満載ですので、そこは気を付けた方がよいかもしれません。


タグ:小谷野敦
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藁の楯 [日本の作家 か行]


藁の楯 (講談社文庫)

藁の楯 (講談社文庫)

  • 作者: 木内 一裕
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2007/10/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
二人の少女を惨殺した殺人鬼の命に十億の値がついた。いつ、どこで、誰が襲ってくるか予測のつかない中、福岡から東京までの移送を命じられた五人の警察官。命を懸けて「人間の屑」の楯となることにどんな意味があるのか? 警察官としての任務、人としての正義。その狭間で男たちは別々の道を歩き出す。


作者はマンガ「BE-BOP-HIGHSCHOOL」 (ヤングマガジンコミックス)の作者きうちかずひろ。
小説第一作がこの「藁の楯」 (講談社文庫)。小説家としての筆名は漢字にされたようですね。
「藁の楯」 は映画化もされたので、かなり有名なのではないかと思います。

で、読み終わった感想は、正直、微妙、ですね。
映画「S.W.A.T」 の裏返しのような設定で、おもしろい思いつきだとは思うのですが...
そもそもの発端となる殺人依頼が、朝毎読の三大紙に掲載されることはどんなに根回しをしても、無理、ですね。
「いったいどれほどの数の人間を抱き込めばこんな事が可能なのか」(22ページ)
と主人公は考えていますが、ミステリだったら、この部分をしっかり組み立てておいてほしいところ。(ミステリを書いたつもりはない、とおっしゃるのでしょうが)
「S.W.A.T」 とは違って、まずこの部分が大きなネックですね。

また、清丸を襲ってくる理由は、十億円ということなのですが、そして確かに十億円は巨額(超巨額と言うべきでしょうか?)ではありますが、それをもらえるからといって普通の日本人が人殺しをしようと思うでしょうか?
たしかに清丸は凶悪犯で、死んだ方がいい人物という設定のようですが、それでもなお、みんながみんな殺そうとするとは思えません。(もちろん、出てくる人物全員が、というわけではありませんが、大層がそうなっています)
ましてや、職務として清丸を護送すべき警察官が、職務を擲って殺しますか? しかも、他の警察官を巻き添えにしてまで?
思いつきとしては素晴らしくても、ちょっと工夫が足りなかったなぁ、と思えてなりません。
一方で、いわゆるヤクザ系の人たちが組織的に殺しにやってくる、ということもあんまりない。不思議。

設定以外も微妙でして...

ぱらぱらと実物を手に取ってご覧いただきたいのですが、改行に次ぐ改行です。
一文で段落を構成し、改行されているのがほとんどです。
セリフの部分も非常に短く、そりゃあ、テンポのよいこと、よいこと。あっという間に読めます。
昔、山崎洋子の乱歩賞受賞作「花園の迷宮」 (講談社文庫)を読んだとき、改行の多さにびっくりした記憶がありますが、「藁の楯」 はそれを上回るインパクト。
山崎洋子はシナリオライター出身。
木内一裕は、マンガ家で映画監督、ということで、映像、視覚系の人が小説を書こうとするとこうなるのかな、とちょっと興味深い。
ということで、描写というものがほとんどありません。
ストーリーを展開させるために、ぽんぽんと突き進んでいく感じ。
なので、人物像があまり伝わってきません。

「人間の屑」である清丸も、ぴんと来ない。これ、小説としては致命傷ではないでしょうか?
守る方の主人公銘苅も、過去は設定されていますが、実感としては迫って来ません。
ほかの登場人物もしかり。
だから、守る側の警察官が、職務を放棄し清丸を襲ったとしても意外感はなく、ああ、そうですか、君もそういう設定の人物だったんだね、と思うだけです。
スリリングなストーリー展開なので、ハラハラはしますが、そこには人間が出てくることの意味合いは少なく、たとえば「ジュラシック・パーク」で恐竜に襲われるのとそんなに違いはありません。

そしてラスト。
このストーリーの設定からして、ラストの決着のつけ方が相当難しいことは予想がつくと思いますが、実際に作者が採用したラストがどうだったのか。
ちょっと中途半端ですよね。
このラストだったら、ここまで引っ張る必要がないのではなかろうかと思います。

とまぁ、欠点ばかりをあげつらってしまいましたが、「BE-BOP-HIGHSCHOOL」 を読んでいないので(実は、きうちさんの絵があんまり好きじゃないので...)、この「藁の楯」 を読んだだけの感想なのですが、それでも、この作者には何かがあるんじゃないかな、という気がしてなりません。
次もなにか読んでみるかも。


タグ:木内一裕
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道徳の時間 [日本の作家 か行]


道徳の時間

道徳の時間

  • 作者: 呉 勝浩
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: 単行本


<帯惹句>
問題。悪い人は誰でしょう?

<裏表紙側帯あらすじ>
彼を裁いたのは、「ルール」ですか? 「モラル」ですか?
ビデオジャーナリストの伏見が住む鳴川市で、連続イタズラ事件が発生。現場には『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージが置かれていた。そして、地元の名家出身の陶芸家が死亡する。そこにも、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』という落書きが。イタズラ事件と陶芸家の殺人が同一犯という疑いが深まる。同じ頃、伏見に、かつて鳴川市で起きた殺人事件のドキュメンタリー映画の仕事が舞い込む。13年前、小学生を含む300人の前で青年が講演者を刺殺。動機も背景も完全に黙秘したまま無期懲役となった。青年は判決にいたる過程で、『これは道徳の問題なのです』とだけ語った。証言者の撮影を続けるうちに、過去と現在の事件との奇妙なリンクに絡め取られていく--


単行本です。
第61回江戸川乱歩賞受賞作。
ここ数年、読んだ順を無視して先に感想を書いている乱歩賞受賞作。今年も先に他の読了本を置いておいて、先に感想を書きます。

力作だな、と思いました。
選評で辻村深月が書いているように、謎は見事だと思います。
『生物の時間を始めます』『体育の時間を始めます』といったメッセージつきの連続イタズラ事件?
地元の名家の厄介者の名士が自殺したと思われていたが、そこに、『道徳の時間を始めます。殺したのはだれ?』というメッセージがあり、イタズラ事件が殺人事件に発展したのか!?
同じ地域で13年前に起こった殺人事件の犯人向晴人が『これは道徳の問題なのです』とだけ述べてあとは沈黙を守っている理由? そして本当に向が犯人だったのか?
そして、主人公伏見に、その向の事件のドキュメンタリーを作ることを頼んできた女監督越智の本当の狙いは何か?

で、これをどう収束させるかがミステリとしては腕の見せどころかと思うのですが、正直今一つ。
収束させるよりは、バラバラなままラストになだれ込んでしまった印象。
そのせいで、途中で散漫な印象となってしまいました。がんばって一気に読んだことは読んだんですが。
個々の謎の回答も、それほどインパクトなし。たとえば、越智の正体はあまりにも予想通りというか、これ、驚く読者いますかね?
13年前と現在のつながりも、いろいろ難あり。
主人公が行動を起こすタイミングが作者にとって都合よく設定されている点含め、残念です。

巻末の選評でも結構難点が挙げられていまして、いや、よく受賞できましたね。有栖川有栖と石田衣良は好意的ではありますが、積極的に推しているの、辻村深月だけみたい。
13年前の殺人の動機は、石田衣良が「驚愕というより脱力を誘う」と、池井戸潤が「まったくばかばかしい限りで言葉もない」と書いていますが、この動機自体はミステリ的にはあり、だと思います。現実にどうかと言われると、躊躇しますが(いや、もう、こんな理由で殺されたらたまったもんじゃない)。

とはいえ、ミステリとしての不手際は多々あるものの、あと文章も読みづらかったですが、冒頭述べましたように、力作なんです。
なんだかわからないけれど、作者の気迫が...
この迫力が受賞につながったんでしょうね。


ところで、この本、乱歩賞受賞作に恒例の作者のことばが掲載されていません。
日本推理作家協会のHP(リンクはこちら)にいけば載っていますが、単行本にも収録しておいてほしかったです。


<蛇足>
些末なことですが、小学校で「生物」というのはちょっといただけないのではないでしょうか?
おそらく科目名としたら、「理科」? 
生物、物理、化学といった分け方は高校からではなかったかと思います。


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黒揚羽の夏 [日本の作家 か行]


黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)

黒揚羽の夏 (ポプラ文庫ピュアフル)

  • 作者: 倉数 茂
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2011/07/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
離婚協議中の両親の都合で、祖父のいる東北の田舎に預けられた千秋、美和、颯太。町に台風が訪れた日、美和は水たまりに映る不気味な女の姿を見る。それが不可解な事件の始まりだった。押入れから出てきた六十年前の日記、相次ぐ少女の失踪、奇妙な映画のフィルム……交錯する現在と過去に翻弄されながらも、千秋たちは真相に迫る。圧倒的な世界観で全選考委員を魅了したピュアフル小説賞「大賞」受賞作。妖しくも美しいひと夏のミステリー。


第1回ピュアフル小説賞「大賞」受賞作だそうです。
ピュアフル小説賞だし、出版されたレーベルがポプラ文庫だし、視点人物は少年少女だし、冒頭に明らかに子供が描いたとおぼしき地図が掲げられているし、あきらかにジュブナイル、あるいはヤング・アダルト向け作品ですが、扱われている内容はかなりビターです。
「ミステリマガジン 2011年 10月号」 で紹介されているのを読んで興味を持って、買いました。「解説で金原瑞人が『虚無への供物 』(講談社文庫)を引き合いに出していた」なんて書かれているのですから、ミステリファンとしては、むむむ、と思うではないですか。
解説には
「ミステリ? 幻想小説? ファンタジー? ジュブナイル? ヤングアダルト? 文芸? エンタテイメント?
どれにもあてはまるけど、どれからも見事にはみ出してしまう。それが、この『黒揚羽の夏』だ」
「ミステリ好きにも、推理小説好きにも、探偵小説好きにも、幻想小説好きにも、ジュブナイル好きにも、ヤングアダルト好きにも、文芸好きにも、エンタテイメント好きにも、進めたい一冊。」
と書かれています。
「虚無への供物 」が引き合いに出されたのは、内容・方向性が似ているということではなく、「それまでにない、とらえどころのない作品」という観点が共通するとして、でした。うーん、なるほど。
それぞれのジャンルからはみ出してしまう部分こそが本書の肝のようにも思いますが(だからこそ、金原瑞人も「虚無への供物 」を引き合いに出したのでしょう)、この作品が湛える独特の雰囲気がポイントのように感じました。
物語の構成要素が数多く盛り込まれていて(殺人事件、自動車泥棒、怪談話、炭鉱争議、古い映画などなど)、それぞれはさほど深掘りされません。さまざまな町の姿を、くるくると見せてくれているようです。
また人物描写というか、キャラクターがそっけない一方で、さびれた田舎のありさまやタイトルにもあるように夏の情景は、くっきりとしています。
この雰囲気を味わうのが良い作品だと強く思いました。

今、amazon.co.jp を見てみると、続編(?) 「魔術師たちの秋」 (ポプラ文庫ピュアフル)が出ているようですね。
そちらも気になります。



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博多豚骨ラーメンズ [日本の作家 か行]


博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)

博多豚骨ラーメンズ (メディアワークス文庫)

  • 作者: 木崎 ちあき
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
福岡は一見平和な町だが、裏では犯罪が蔓延っている。今や殺し屋業の激戦区で、殺し屋専門の殺し屋がいるという都市伝説まであった。福岡市長のお抱え殺し屋、崖っぷちの新人社員、博多を愛する私立探偵、天才ハッカーの情報屋、美しすぎる復讐屋、闇組織に囚われた殺し屋。そんなアクの強い彼らが巻き込まれ、縺れ合い紡がれていく市長選。その背後に潜む政治的な対立と黒い陰謀が蠢く事件の真相とは―。そして悪行が過ぎた時、『殺し屋殺し』は現れる―。


帯によると第20回電撃小説大賞の大賞受賞作だそうです。
その帯には
「人口3%が殺し屋の街・博多で、
 生き残るのは誰だ-!?」
 アクの強い裏稼業の男たちが踊りまくる!」
とあります。
いやあ、ぶっとんでますねぇ。人口3%が殺し屋って。
冒頭、入社試験の面接の口頭試問が
「あなたなら、どうやって人を殺しますか?」
という、殺し屋の会社(殺人請負会社=マーダーインク)に、あれれ? と思わされますが、福岡には「殺し屋殺し」屋がいる、とか、殺し屋産業(!) の激戦区とか、なんだか楽しいですね。
タイトルが(草)野球チームの名前というのも、かなりいい感じです。

数多くの登場人物の紹介が一通り終わったあたりから、人物が入り乱れ交差して、物語はガンガン進んでいくのですが、ラノベのようでいてそれほどキャラ立ちはしていないようです。
ストーリー展開が密なので、キャラクターを書き込むとあまりにもうるさくなるから、あえて書き込まなかったのかもしれません。シリーズは今のところ3巻まで出ているようなので、シリーズが進むにつれてキャラクターのイメージも深まっていくのかも。
むしろ、博多をどう盛り上げていくか(!?) なのかな? いや、市長(とその家族)も変な奴なんですけれどね。
博多、福岡は、3%どころか、殺し屋ばかりじゃないかといわんばかりの殺し屋密度です。
こういう群像劇っぽい作品、赤川次郎が得意とするところなので、この設定で赤川次郎が書いたらどうなったかなぁ、なんて想像してしまいました。

作者は福岡市内出身のようですが、あとがきに
「この本をきっかけに、『福岡行ってみたいな』なんて思ってもらえたら」
って。いや、それはないよ、殺し屋の街...(笑)

<蛇足>
「ふくや」の明太子を買ってこいと言われたのに、似た名前の違う店で買って、名前に「さ」が入ってるか入ってないかの違いなんて、たいしたことじゃない、とうそぶいていたら言われるセリフが、よかったです。
「あんた、伊藤さんと斉藤さんにも同じこと言うとね?」



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扼殺のロンド [日本の作家 か行]


扼殺のロンド (双葉文庫)

扼殺のロンド (双葉文庫)

  • 作者: 小島 正樹
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2014/04/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
女は裂かれた腹から胃腸を抜き取られ、男は冒されるはずのない高山病で死んでいた。鍵のかかった工場内、かつ窓やドアの開かない事故車で見つかった二つの遺体。刑事たちの捜査は混迷を深める。その後も男女の親族は、一人、また一人と「密室」で不可解な死を遂げていく――。読み手を圧倒する謎の連打と、想像を絶するトリックに瞠目必至の長編ミステリー。


帯の惹句がふるってます。
「密室、密室、また密室――
 これぞ『やりすぎミステリー』の極み!」
「十三回忌」 (双葉文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続いて読んだ小島正樹の作品ですが、「やりすぎミステリー」の極み、と来ましたか。
過剰さが魅力と「十三回忌」 は読んだのですが、この「扼殺のロンド」 も期待にたがわず、過剰です。
なにしろ、章題が順に
二重の密室
亡霊の密室
硝子の密室
暗黒の密室
という並びで、期待度大ですね。もうこれだけでもおなかたっぷり?
(あっ、でも、密室事件は3つです)

冒頭の二重の密室は、あらすじにも書かれていますが、謎のてんこもり。
「女は裂かれた腹から胃腸を抜き取られ、男は冒されるはずのない高山病で死んでいた。鍵のかかった工場内、かつ窓やドアの開かない事故車で見つかった二つの遺体」というんですから。

密室トリックに寄りかかっていない、というか、もう何に寄りかかっているのか分からないくらい、わんさかアイデアが詰め込まれているので、作品の疵とはいいがたいかもしれませんが、やはり密室トリックは喰い足りないものでした。
特にアトリエの密室。このトリック(?) はないんじゃないだろうか、と。現実的にはあり得ることなのかもしれませんが、ミステリでこれをやられるとがっかり。解明の手がかり(?) となる日記の記載ぶりは、微笑ましく、小ネタとしてぴりりと効いている感じがするだけに残念。奢侈って単語、久しぶりに見ました。江戸時代の倹約令の説明で見て以来?
冒頭の高山病の死体も、うーん、どうでしょうか、これで高山病と診断(?) されますでしょうか? 内臓を抜き取った理由も、ミステリ的にはOKな真相が用意されていますが、でも、もっと簡単な方法を犯人は採用するんじゃないかと思わないでもない。

とまあ、「十三回忌」 に続いて、あれこれと突っ込んでしまいますが、それもまた本作品の魅力ではなかろうかと考える次第です。
それくらい、この詰め込みぶりは味があるというか、また味わってみたいと切に願ってしまいます。癖になる。
次の文庫化が待ち遠しいです。
特に、講談社さん、早く「武家屋敷の殺人」 (講談社ノベルス)を文庫化してください。



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