So-net無料ブログ作成
検索選択
日本の作家 さ行 ブログトップ
前の10件 | -

幻双城事件 仮面の王子と移動密室 [日本の作家 さ行]


幻双城事件 仮面の王子と移動密室 (角川文庫)

幻双城事件 仮面の王子と移動密室 (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
太平洋に浮かぶ離島で催されるあるパーティに招待された高校生・白鷹黒彦。なんでも招待客はみな、島に佇む城に収蔵された美術品の制作者の子息息女だという……。いるはずのない誰か、刻々と変化する城、「幻双城」という“芸術”に埋め尽くされた奇妙な空間で始まる連続殺人の宴。果たしてその目的と意外に犯人とは?――迷える探偵・黒彦と、自称ロボットの美少女果菜、そして世界最高の知性・犬神清秀が遭遇する新たな事件。


「魔神館事件 夏と少女とサツリク風景」 (角川文庫)
「天空高事件 放課後探偵とサツジン連鎖」 (角川文庫)
「露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜」 (角川文庫)
に続くシリーズ第4弾です。今のところ、シリーズはここまで。

今回も、奇天烈な本格ミステリが楽しめます。
楽しめますが、さすがこのトリックはなぁ...
タイトルは孤島ミステリっぽいけど、実態は館ものでして、要するにそういう系統の作品です。
こういうトリックの作品、正直飽きちゃいましたね。このトリックを成立させるために、孤島を舞台にしたんでしょうけれど(島じゃないと、こんな建物建てられない)...
あと、とっても大事なことを登場人物が最後で「錯覚していました」というのはねぇ、あきれるというか...

黒彦と果菜の仲が進展(?) したみたいだから、それでよしとしましょう。







うそつき、うそつき [日本の作家 さ行]


うそつき、うそつき

うそつき、うそつき



<表紙袖あらすじ>
国民管理のために首輪型嘘発見器の着用が義務付けられた世界。非合法の首輪除去技術を持つ少年フラノは、強盗犯、痣のある少女、詐欺師、不倫妻、非情な医者、優しすぎる継母など、様々な事情を抱えた人々の依頼を請けて日銭を稼いでいた。だが彼には密かな目的があった。ある人のために特殊な首輪を探しだして、外すこと。首輪には複数のタイプがあり、中でも、フラノに技術を仕込んだ師匠ですら除去法を教えられず、存在自体ほとんど確認されていない難攻不落の型こそ、フラノが探す首輪・レンゾレンゾだった。レンゾレンゾを求めることがやがてフラノを窮地へ追いやり、さらには首輪に隠された秘密へと導いてゆく。人はなぜ嘘をつき、また真実を求めるのか。フラノが辿り着いた衝撃の結末とは?
近未来の管理社会を生きる少年の苦悩と成長を瑞々しい筆致で描く、ディストピア青春ミステリ。小説推理新人賞とダブル受賞でデビューした超大型新人による、第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。


単行本です。
第5回アガサ・クリスティー賞受賞作。
ディストピアという語も上↑のあらすじには出てきますが、SF的設定を用いています。
正直、この設定、かなり疑問だらけ。
でも、まあ、この種の作品はそういうものだ、として読むのがよいのでしょう。
むしろ、その設定が効果的に使われているか、という方を気にしないといけないのでしょうね。
嘘発見器が常につけていて、他人がこちらの嘘を見抜いてしまうという状況で生まれ育つと、だいぶ人間の行動も変わってくると思うのですが、そういうような部分は読み取れませんでした...

この作品は、「首輪外し」を繰り返していくわけで、連作短編のようなテイストになっています。
後半はフラノ自身の物語としてまとまっていきます。
主人公フラノの現在と過去を交互に重ねて描いていくので、この構成はおもしろかったですね。

「首輪外し」は人助けでありながら、同時にその人を殺してしまう可能性を強く持っている設定が、フラノに与える影響が読みどころですね。
もともと少年少女の成長物語的なストーリーが好きなので、この作品には点が甘くなりますが、フラノのラストは予定調和でありながら、衝撃的で気に入っています。
しかし、このディストピア、何を目指したんでしょうか。

ただ、アガサ・クリスティー賞はどこに行ってしまうのでしょうか? 気になりますね。
アガサ・クリスティー自体、本格ミステリだけではなく、さまざまな作品を書いていましたので、本格ミステリでなければならない、とは思いませんが、これまでの5年間で、本格ミステリー「致死量未満の殺人」 (ハヤカワ文庫JA)1作だけ、残りの4作はいずれも癖球ばかり、というのはミステリ好きとしては寂しいです。
普通のミステリーでも、十分おもしろい、というのがアガサ・クリスティの王道だと思いますから、彼女の名を冠した賞もそうだといいのになぁ、と思います。




サナキの森 [日本の作家 さ行]


サナキの森

サナキの森



<裏表紙側帯あらすじ>
昭和怪奇譚的テイスト×ラノベ的文体
平成生まれの25歳が放つ、新感覚ホラーミステリー
帯留めを探して欲しい――売れない小説家だった祖父が遺した手紙に従い、仕事を辞めてひきこもっていた私は、遠野を訪れる。この地の旧家で起こった80年前の不可解な殺人事件。それは祖父の怪奇小説『サナキの森』に描かれていた「呪いによる殺人」に酷似していた……。これは偶然の一致か? 祖父は何を知っていたのか? 時空を超えた謎解きが始まる。


単行本です。
新潮ミステリー大賞とかいう、新しい賞の第1回受賞作。
奥付は2015年1月です。

昭和怪奇譚的テイスト、ラノベ的文体、新感覚ホラーミステリーと惹句はいろいろと書かれていますが、読後の印象は、一所懸命ミステリを書こうとしたんだなぁ、というもの。なんたって密室事件ですから。

印象的な文体でスタートして、なかなかいいなと思って数ページ読んでいたら、
「おかーさん」
なんて記載が16ページにあって、せりふとはいえ、なんだかなぁ、と警戒モード。
あとは、「せんせー」というのが出てきますが、それ以外はそこまでひどくない。
この2つを除けば、文章にかなり自覚的な作家なのだと思います。

それが証拠に、作中作「サナキの森」は、旧仮名遣い(!)。
若い作者(1989年生まれ)の旧仮名遣いが正しいのかどうか、わかりませんが、雰囲気は出ています。
サナキというのは「逆袈裟に身体を千切られ、左腕と頭部、それより下の部分に分れた若い女性の妖怪」(116ページ)で、舞台となる佐代村が言い伝えの発祥という設定です。
「一人で山歩きしていると、どこからともなくゆっくり草履で歩く足音が聞こえて来て、その音が聞こえる方に行くとサナキい出会ってしまうから、聞こえたら反対方向に逃げなきゃいけない、けれど絶対に走ってはいけないって話。左腕とか左耳にアクセサリーと着けていると肉ごと持って行かれる……って」(67ページ)とも説明されます。
これをベースにした、旧仮名遣いの作中作「サナキの森」がポイントで、80年前の密室事件を解き明かす、というストーリー。

ただねぇ、この密室トリックがあまりにもいただけない。よくこれで長編を支えようとしましたねぇ。
新潮「ミステリー」大賞だし、なんとかミステリーっぽくしようとして、密室を採り上げたのはいいけれど、そんなにすごいトリックを思いつけるはずもなく、平々凡々なトリックでお茶を濁しちゃった、ということでしょうか。
これなら、密室だ、ということに焦点を当てないほうがよかったと思いますが、これがないとミステリーとしての趣向がほぼなにもないことになってしまうのがねぇ。
作中作の怪奇趣味すらミステリに奉仕する構成となっているので、一層ミステリとしての弱さが気になりますね。

とはいえ、新旧の文体を取り混ぜた構成とか、それぞれの時代に配置した人物像の軽やかさとか、いくつかポイントのある作品には仕上がっていると思いましたので、無理してミステリを志向せずに、自由に想像の羽根を拡げられるとよいのでは、と思いました。


<以下のブログにトラックバックしています>
積読本は積読け!!






十二月八日の幻影 [日本の作家 さ行]


十二月八日の幻影

十二月八日の幻影



<帯>
この男たち、スパイ殺し
奇襲作戦の秘密が漏れている! 裏切り者は誰だ?
太平洋戦争前夜の帝都・東京を舞台に、帝国海軍軍令部特別班と米英露の謀報員たちの知略と謀略が火花を散らす!
プロット、筆力、そして主人公たちの魅力を選考委員[あさのあつこ・笠井潔・今野敏・藤田宜永]が絶賛。


単行本です。
第18回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
奥付を見ますと、2015年2月20日。

好きなんですよ、こういう作品。
真珠湾攻撃前夜という時代背景に、日本を舞台とした諜報戦...
頭脳戦といったタイプのスパイもので、コンゲームに近いです。
わくわくします。なので、こういう作品が好きな方はぜひ。

なによりも、主人公である潮田と、その上官となる渡海少佐がいいです。
海軍省の食堂のシーンから、すっかり引き込まれてしまいました。カレーライスをめぐるやりとり、無茶苦茶おもしろいじゃないですか。
この後も、小出し小出しに、おやっと思えるシーンの連続で最後まで楽しく読めました。

「武士道など、三百年の太平でしか存在できなかった戯れ言です」(44ページ)
「そもそも、戦国時代に暗躍した忍者、あれは間諜、諜報員、そのものではありませんか。その忍者を使っていたのは、みな、名だたる名将たちですよ。彼らは武士ですよね」(44ページ)
おっしゃる通りですね。日本伝統の武士道って、ひょっとして概念として間違っている!?

「握手をしながら足で蹴り合っている。それが国と国との駆け引きというものです」(291ページ)
この蹴り合いを、垣間見せてくれるスパイものを、日本の軍部を舞台に楽しませてくれました。
第2作「幻影たちの哀哭」が、ようやく先月出たようですが、同じように大戦前夜の日本を舞台にした諜報戦のようです。楽しみです。





<次のブログにトラックバックしています>
第二級活字中毒者の遊読記




眼球堂の殺人 ~The Book~ [日本の作家 さ行]


眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

眼球堂の殺人 ~The Book~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/09/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
神の書、"The Book"を探し求める者、放浪の数学者・十和田只人(とわだただひと)がジャーナリスト・陸奥藍子(むつあいこ)と訪れたのは、狂気の天才建築学者・驫木煬(とどろきよう)の巨大にして奇怪な邸宅 "眼球堂" だった。二人と共に招かれた各界の天才たちを次々と事件と謎が見舞う。密室、館、メフィスト賞受賞作にして「堂」シリーズ第一作となった傑作本格ミステリ!


第47回メフィスト賞受賞作で、〇〇"堂の殺人"というパターンで、で、目次をみると、「眼球堂の殺人事件」と書いてあって...いかにもな作りで、いかにもな作品ですよね。
帯には、森博嗣が
「懐かしく思い出した。
本格ミステリィの潔さを。」
なんて書いている。
うーん、どうでしょうか。期待しすぎましたか。あるいは、こちらが若い頃に読んでいたらよかったのか...
最近、本格ミステリ、より厳密にいうといわゆる新本格ミステリテイストの作品を読むとこういう感想を抱くようになりました。

奇矯な登場人物に、奇矯な建物。
世界を代表する天才建築家驫木煬(とどろきよう)が建てた建物、眼球堂。集められたのは天才たち。
つまらないと思うわけではないのですが、なにか物足りなく感じてしまうんですよね。
館ミステリにつきものの図面。
38ページとか、42、43ページに掲げられている図、わくわくすんですよね。
でも、これこの数枚の図を見ただけで、
(ネタバレにつき伏字にします)アレ? この館回転するんじゃないの?  アレ? この立地、水が溜まるんじゃないの? (ここまで伏字)
と思ってしまうんですよね。

また、驫木煬の子どもが、善知鳥神(うとうかみ)という天才数学者である、という設定になっています。
でも、館に呼ばれたのは、探偵役をつとめる、放浪の天才数学者十和田只人で、善知鳥神はいない、と。
この設定だけで、
(ネタバレにつき伏字にします)呼ばれている登場人物の中に善知鳥神がいるんだろうな、とすると候補者少ないな。 ってことは、あれか、十和田とくっついているということで冒頭から登場する、陸奥藍子が怪しいよな。叙述トリックかぁ。タイトルと違う目次だったしねぇ。(ここまで伏字)
と思ってしまうんですよね。

で、真相はその通りだったんで、ちょっと残念。
メインとなる部分が、早々に見当ついちゃうと、ちょっとね。

それでも、この作品、おもしろかったかどうかというと、おもしろかったんです。
一昔前でいうところのペダンティックな部分(天才同士の会話とか、建築学があらゆる学問の最上位に来るものだ、とか)も、もっともっと淫してほしいと思ったりもしましたが、この作品には、ミステリが古来持っていた(大げさですが)、稚気、遊び心が溢れているからです。
いわゆる新本格が大切にしていたものを、この「眼球堂の殺人 ~The Book~」 (講談社文庫)はきちんと受け継いでいると確かに感じました。

続々とシリーズが文庫化されていくようなので、追いかけてみたいです。


<下のブログにトラックバックしています>
せいぞんかくにん。
黒夜行
不定期日記



QJKJQ [日本の作家 さ行]


QJKJQ

QJKJQ



<帯あらすじ>
猟奇殺人鬼一家の長女として育った、17歳の亜李亜(いちのありあ)。一家は秘密を共有しながらひっそりと暮らしていたが、ある日、兄の惨殺死体を発見してしまう。直後に、母親も姿を消し、亜李亜は父と取り残さえっる。何が起こったのか探るうちに、亜李亜は自身の周りに違和感を覚え始め--
私の家族は全員、猟奇殺人鬼。


単行本です。
第62回江戸川乱歩賞受賞作。

なかなかよい表紙だと思うんですが、書名が目立ってなくて、書店で探すのにちょっと苦労しました。

正直、嫌いなタイプの作品だったので、いよいよ乱歩賞もこういう作品が受賞するようになったのか...とちょっと複雑な思い。
作者の気負いが伝わってくるところはいいと思うんですけれど、いかんせん、内容が嫌い。

選評を確認すると、有栖川有栖と今野敏のお二人が強く推したようですね。
今野敏の「殺人そのものを突き詰めることで、人間を見つめている。」ってすごい選評です。
湊かなえも「一番高い評価を付けました」と書いていますが、あまり推した感じはしません。
辻村深月と池井戸潤は消極的ですね。

有栖川有栖は「新しい」と評していますが、これ、新しいですか?
辻村深月ははっきりそのことに異を唱えていて、「すでに既存の小説の世界で名作がいくつもあり、そのパラダイムシフトはノベルスやライトノベルの現場で十年以上前にすでに起きていたという印象である。」と書いています。
ノベルスやライトノベルまで来なくても、SFでは昔っから取り上げられている設定だと思います。ディックなんて、こういうのいっぱい書いていませんでしたっけ?
ミステリでもかなり手垢のついたイメージだと思うのですが...
確かに、乱歩賞にはなかった傾向の作品ですが、それはそういう傾向の作品はミステリとしてはあまりおもしろいものにならないから、だと思っていました。

新しいかどうかは置いておいて、このあたりのことは池井戸潤がかなり的確に突っ込んでいます。
「その謎解きは肩すかしだ。その後の展開も、この小説世界を支える枠組みやルールを後出ししている印象を受け、果たしてこれが周到に準備された小説といえるか、という疑問を最後まで拭えなかった」
そしてこの設定を前提とした物語の構築という点でも、辻村深月が鋭い指摘をしています。
「物語のスタートが脆弱であるがゆえに、作品の土台が厚みを失ってしまっている。本来なら魅力的であるはずの“彼女の現実”が著者にのみ都合のいい単なる舞台装置に読めてしまう。」(真相に絡むので伏字にしておきます)
「混沌を混沌のまま残すに足る小説にするならば、そうした疑問を読者が差し挟む余地がないほどの、こちらの予想を遥かに裏切り、読者の目線を凌駕する何かをもうひと押し見せてほしかった。その〝何か〟は、圧倒的な真相でも、読者を煙に巻くようなさらなる混乱でも破綻でも、なんでもいい。こちらが作品世界の前で呆気に取られて棒立ちになるような瞬間を待ち続けたが、すべてが丁寧にまとまりすぎ、それが果たされないまま終わってしまった。好みの作品であり、かける期待が大きかった分、残念だ。」
湊かなえは「こういう作品があまり好きではない」としたうえで、テクニカルな指摘をしていますが、その指摘はもっともで、確かにそういう配慮があれば、読後感はずいぶん違ってくるかもしれません。

思わせぶりな(?)タイトルも、読む前からトランプでしょ、と予想していたら、そういうエピソードが出てくる。
87ページからのポーカーのシーン。
ところが、あとで、
「トランプのカードが、QJKKJQじゃなく、QJKJQだった理由は? なぜKはひとつなのか--」(238ページ)
となるのは、何かの冗談ですか? ポーカーって、6枚じゃないですよ。
218ページに出てくるKがひとつの理由っていうのも、まず無理筋。
いろいろなところで残念です。

ただ、辻村深月が「真面目」と評しているように、非常に丁寧に書かれています。
これだけ極端な設定の物語を、地道に地道に書き上げていっている。
だからこそ一層、真相が見抜きやすくなってしまっているといえばそうなんですが、このあたりのミステリの文法を守ろうとする手つきは素晴らしい。
おそらくこの佐藤究という作家は、折り目正しいミステリも、きちんと書きこなせる方なんだと思います。
作家の方向性がどちらを向いているかはわかりませんが、時には普通のミステリも書いてみてもらいたいです。


<蛇足>
昨年、呉勝浩「道徳の時間」の感想(リンクはこちら)で
「ところで、この本、乱歩賞受賞作に恒例の作者のことばが掲載されていません。
日本推理作家協会のHPにいけば載っていますが、単行本にも収録しておいてほしかったです。」
と書いたのですが、今回もありません。
「QJKJQ」の作者のことばが掲載されている日本推理作家協会のHPへのリンクはこちらです。
これを読んで、「顔に降りかかる雨」 (講談社文庫)が受賞した際の桐野夏生のことばを思い出してしまいました。



ばけもの好む中将 平安不思議めぐり [日本の作家 さ行]




<裏表紙あらすじ>
十二人の姉が居る以外は、ごく平凡な中流貴族の宗孝。御所に鬼が出たという噂を聞き、仲間たちと度胸試しで確かめに行くが、そこに居たのは怪異を愛する変人と名高い名門貴族・宣能(のぶよし)だった。なぜか彼に気に入られてしまった宗孝は、彼と共に鬼の正体を追うことに。結局、人の仕業とわかって落胆する宣能だったが、その後も続く怪異の裏には、とある陰謀が隠れていて……。新感覚、平安冒険譚!


この本を買ったとき、すでにシリーズは第3巻まで出ていました。
「ばけもの好む中将 平安不思議めぐり」 (集英社文庫)
「ばけもの好む中将 弐 姑獲鳥と牛鬼」 (集英社文庫)
「ばけもの好む中将 参 天狗の神隠し」 (集英社文庫)
時代物だし、怪異はあってもミステリとは違うみたいだし、いつもならスルーする本なのですが、ふと手に取って、表紙袖の作者紹介を見てびっくり。
「また、瀬川ことび名義での著書に『お葬式』『妖霊星』 などがある。」
えっ、瀬川貴次って、瀬川ことびだったの?
瀬川ことびだったら、第6回日本ホラー小説大賞短編賞佳作を表題作とした
「お葬式」 (角川ホラー文庫)
から始まって、
「厄落とし」 (角川ホラー文庫)
「夏合宿」 (角川ホラー文庫)
「7」 (角川ホラー文庫)
と読んでいます。
ホラーなんだか、ユーモアなんだか、かなり特異な作風で、好みでした。
これは、読まねば! そう思って、即購入。
「お葬式」 などのことび名義の作品とはちょっと趣が違いますが、楽しめました。
まずは、若い人向けということだから、かもしれませんが、キャラクターですね。
「生まれもよし、見た目もよしで、なんの不足も不満もないはずなのに、どうして宣能は化け物にこれほど入れあげるのか。」(134ページ)と宗孝に言われる宣能と、宣能に引っ張りまわされる宗孝の組み合わせがポイントですね。
そして、宗孝の大勢の姉たち。
そして、怪異だ、妖異だといいながら、人間の企みが隠されているのを暴いていくのですから、薄味とはいえ、これはミステリでもあるのです!!
もうちょっと大仕掛けの陰謀だとより楽しめると思いましたが、これはこれでよし、でしょう。
いまのところ、「ばけもの好む中将 四 踊る大菩薩寺院」 (集英社文庫)まで出ているようで、今後のシリーズに期待します。


<蛇足>
わざと現代風の言い回しを登場人物にさせている部分もあって(解説で大矢博子も指摘していますが)、それもまた楽しなのですが、
平安時代の人間が
「とんでもありません」(133ページ、259ページ)
と言うのはまずいと思います。
校正でチェックしてあげればいいのに。





雲雀 [日本の作家 さ行]


雲雀 (文春文庫)

雲雀 (文春文庫)

  • 作者: 佐藤 亜紀
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2007/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
オーストリア軍の兵士、オットーとカールの兄弟は、膠着状態の戦線で、ロシア兵達の虐殺を目撃したことをきっかけにジェルジュと呼ばれる若者に出会う…。第一次大戦の裏舞台で暗躍する、特殊な“感覚”を持つ工作員たちの闘いと青春を描いた連作短篇集。芸術選奨新人賞を受賞した『天使』の姉妹篇。


「天使」 (文春文庫)の姉妹編とありますが、続編という趣ではなく、外伝といった感じでしょうか?
「王国」
花嫁
「猟犬」
「雲雀」
4編収録の中編集。
手元の記録を見ると「天使」 を読んだのは2009年12月。ずいぶん久しぶりに姉妹篇を読むことになりました。
それでも、さすが佐藤亜紀、すっと物語世界に入っていけます。

佐藤亜紀の作品は、いつ読んでも荘厳なゴシック建築のような堅牢さを感じます。
それでいて、決して、長大ではない。
文章もそうです。
かなり切りつめられた、むしろ、そっけないといってもいいような、それでいて密度が濃い、というのか、ぎっしり詰まった印象。持ち重りがする文章、とでも言いましょうか。それでいて、リズミカルで、テンポを感じさせてくれます。
プロット、構成、文章、いずれもがきちっとあるべきところにある美しさをたたえています。
いつも、"彫琢”という語を思い出します。
さらっと読み飛ばしてしまっても、流麗なプロットと感性豊かな登場人物と、それはそれなりに楽しめます。
一方、じっくり読みこめば、簡潔な文章と構造から、どんどん拡がっていく世界に浸れます。

読者に不親切、といっては語弊があるでしょうが、最近はやりのなんでもかんでも詳細に述べ尽くしてしまう長い小説から比べると、設定も人物も細かくは書き込まれていません。
あらすじに「特殊な“感覚”を持つ」と書かれている“感覚”自体、説明されるわけではないのです。
異能というか超能力になるんだと思いますが、物語の基本設定ともいえるこのことすら、読者はエピソードなどから読み取って、膨らませていくのです。
これが、スリリングでもあり、楽しくもある。
二十世紀初頭のヨーロッパの戦乱を舞台にした流麗な世界をお楽しみください。

いつかまた、「天使」 「雲雀」 を読み返したいです。できれば続けて。


タグ:佐藤亜紀

先生と僕 [日本の作家 さ行]


先生と僕 (双葉文庫)

先生と僕 (双葉文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2011/12/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
都会の猫は推理好き。田舎のネズミは……? ――ひょんなことから大学の推理小説研究会に入ったこわがりな僕は、これまたひょんなことからミステリ大好きの先生と知り合う。そんな2人が、身のまわりにあるいろいろな「?」を解決すると同時に、古今東西のミステリ作品を紹介していく連作短編集。事件の真相に迫る名探偵は、あなたをミステリの世界に導く名案内人。巻末には仕掛けに満ちた素敵な「特別便」も収録。


うーん、なんだかなぁ、と阿藤快みたいですが、正直な感想はそんなところ。
あらすじを見て、ミステリを扱ったミステリかな、と一瞬思ったんですが、いや、そうじゃないな、日常の謎に絡めて、ミステリを紹介していくのだな、と判明。
それはそれでいいんですが、うーん、僕(伊藤二葉)の先生がねぇ...中学生(瀬川隼人)ではねぇ。
ここで紹介されている諸作を中学生が読んでいる、というのは十分あり得ると思いますし、事件を解決するのが大人ではなく中学生、というのも、まあいいでしょう。よくある設定だし。
大した謎でもないから(失礼!)、中学生でも十分でしょう。
でも、この2つが並列してしまうと、どうしてでしょうか、ちょっと受け入れがたいように感じました。

視界を写真に撮るみたいにして覚えることができる、双葉の特技(?) が有効に機能しているところとか、ミステリとしてのポイントはなかなか押さえられているとおもったんですが、やはりねぇ、ミステリを紹介してくれるのが中学生というのは、どうもねぇ。いくら二葉がミステリ初心者でもなぁ...普通、推理小説研究会の引き込んだ大学の友人がそっち方面では先生になるでしょ。
この違和感が気になって、気になって、素直には楽しめませんでした。

「先生と僕」
「消えた歌声」
「逃げ水のいるプール」
「額縁の裏」
「見えない盗品」
の5編を収めた連作短編集です。
あと、
「ホリデーとホテルと僕」
というボーナストラックが収録されています。

中学生への違和感がなくても、この作品を高く評価はしなかったと思います。
ミステリ好きとしての不満は、紹介されている作品があまりにも有名すぎて新鮮味がない、ということと、扱われている謎が魅力的ではないこと。
本作の趣向として、完全なるミステリ初心者向け、として構築したのかもしれませんが、謎も紹介作品も初歩レベルだと、ちょっとつらいです。

もう、続編「僕と先生」 (双葉社) が出てるんですよね。
今回不満を持った点は、変更されているのでしょうか!?



ウィンター・ホリデー [日本の作家 さ行]


ウィンター・ホリデー (文春文庫)

ウィンター・ホリデー (文春文庫)

  • 作者: 坂木 司
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2014/11/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
元ヤンキーでホストだった沖田大和の生活は、小学生の息子・進が突然に夏休みに現れたことから一変。宅配便のドライバーへと転身し子供のために奮闘する。そして冬休み、再び期間限定の親子生活がはじまるが、クリスマスお正月、バレンタインとイベント盛り沢山のこの季節は、トラブルも続出で……。


「ワーキング・ホリデー」 (文春文庫)に続くシリーズ第2弾です。前作の感想のページへのリンクはこちら。そこで、「続編『ウィンター・ホリデー』というのがいずれ出るらしいので、楽しみにして待ちます。」と書いていた、その続編です。
でも、感想を書いた時期と、この「ウィンター・ホリデー」の単行本が出た時期の辻褄があわないなー。すでに次作「ウィンター・ホリデー」の単行本が刊行されていたのに、例によって、ぼくがボケていた、ということですね。
為念ですが、ミステリではありません。

「ウィンター・ホリデー」とタイトルにもありますが、冬休みを背景にしています(でないと、進が大和のところにやって来にくい)。帯にもある通り、クリスマス、大晦日、お正月と、冬休みは行事が目白押し。おまけに(?) バレンタインももうすぐ。
いや、もう、てんやわんやですねぇ(←表現が古い)。
個人的なお気に入りは、おせちを扱う2つ目の「歳末特別配送」。甘いといえば甘い着地なんですが、こういう大騒ぎ、なんだか、いいですね。
慌ただしく修羅場の最中の男たちのコメントがナイス!
「なんで女って、こういうとき妙に元気なんですかね」
「そう言われれば、うちの家内もそうだなあ」
「ヒマだと死ぬんじゃないっすか」(140ページ)
若干、問題ある発言集のような気もしないではないですが、急場で頼れる女、ってことでご容赦を。

全般的には、前作の感想に書いたように、個性的な面々の登場するホームドラマみたいな話で、ちょっと安易にウェットすぎる気がしないでもないですが、懐かしい面々との再会に浸れました。

シリーズのサイド・ストーリー集「ホリデー・イン」(文藝春秋)も出ているみたいなので、文庫化が楽しみです。




前の10件 | - 日本の作家 さ行 ブログトップ