So-net無料ブログ作成
検索選択
海外の作家 か行 ブログトップ
前の10件 | -

殺人者の湿地 [海外の作家 か行]

殺人者の湿地 (論創海外ミステリ)

殺人者の湿地 (論創海外ミステリ)




単行本です。
アンドリュウ・ガーヴの作品を読むのはいつ以来だろう...
「ヒルダよ眠れ」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「カックー線事件」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
「遠い砂」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
あたりを大昔に読んだ記憶がありますが、内容は覚えていませんね。
ただ、サスペンスものとしておもしろかったような感じがしていて、この「殺人者の湿地」 (論創海外ミステリ)を手に取りました。
論創社ミステリって、こういう地味な作品をひょいと訳してくれるので、ありがたいですね。
久しぶりに読んだガーヴですが、おもしろかったですよ。

福井健太の解説からあらすじを引用します。

ケンブリッジ州のトレーラー販売所に勤めるアラン・ハントは、ノルウェー旅行中にホテルで出逢った美女グヴェンダ・ニコルズを籠絡した。「道徳心や両親といったものが完全に欠落していた」ハントは、グヴェンダに偽の住所を渡して帰国し、資産家の娘(事実上の婚約者)スーザン・エーンジャーのもとへ戻るが、やがて予想外の事態が勃発した。ハントを探し当てたグヴェンダが「おなかに赤ちゃんがいるの」と告げたのである。ハントは「ぼくらは結婚すべきだと思う」とグヴェンダを丸め込み、大急ぎである計画を練るのだった。
その翌週、オッケン村の警察に匿名の手紙が届いた。村の湿地で男が女を殺したと思われる光景を目撃した、男はトレーラー販売所の従業員に似ている--という内容を重んじた警察は、ケンブリッジ州犯罪捜査課のジョン・ニールド警部とトム・ダイソン巡査部長を現地に赴かせる。二人はハントの言い分を疑いながらも、グヴェンダを捜そうとするが……

この解説、フェアに書こうとして、かえってポイントが浮き上がってしまっているきらいはありますが、コンパクトにまとまっていると思います。

作者の用意したちょっとした仕掛けは、まあ大したことない(し、割と早い段階で明かされる)ので取り立てていうことはないですが、作品そのものはサスペンス物として十分楽しめますよ。
なんとまあ身勝手な男だなぁ、とハントのことを思いつつも、すっかり作者の手中に嵌っちゃった気がします。
警察側の二人もなかなかいい感じですしね。

イギリスの湿地を舞台にしている、なんていかにも渋そうで、たしかに渋り展開を見せはしますが、ちゃんとサスペンスものとして読者を引っ張っていってくれますし、ラストも読後感が悪くならないよう精いっぱい配慮してくれています。このバランス感というか安定感こそがポイントなのかもしれません。
ということで、アンドリュウ・ガーヴ、久々に読めて良かったです。
未訳のものの翻訳を進めることと、既刊分の復刊をお願いしたいですね。


原題:Murderer's Fen
作者:Andrew Garve
刊行:1966年
訳者:水野恵



nice!(9)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

一千億の針 [海外の作家 か行]

一千億の針【新版】 (創元SF文庫)

一千億の針【新版】 (創元SF文庫)


<裏表紙あらすじ>
20億の針』から7年。ボブの体内には、すぐれた知性をもつゼリー状の異星人が共生し、体内の病原菌を殺したり怪我の出血をとめたりしていた。しかし最近になって、ボブの体調が悪化しはじめた。日に日に弱りゆくボブを救うには、7年前に島の近海へ墜落した異星人たちの宇宙船を探しだし、一千億の星の中からただひとつの、彼らの母星の科学者に連絡をとらなければならないのだ。


今回の「一千億の針【新版】」 (創元SF文庫)は、タイトルからも明らかなように、「20億の針【新訳版】」 (創元SF文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)の続編です。
「20億の針」 (創元SF文庫)の原書が1950年刊行で、「一千億の針」 (創元SF文庫)が1978年ですから、なんと28年ぶりの続編。待望の続編、といったところでしょうか。

宇宙人"捕り手(ハンター)"のおかげでつつがなく息災に過ごしていたはずのボブが、体調不良。
"捕り手(ハンター)"がいるがために、免疫不全が起きてしまう。
まず、このアイデアが秀逸ですね。いかにも人間の体に起きそうです。
で、これを解決するために、"捕り手(ハンター)"の母星とコンタクトしなければ、と。
でも、どうやって??
それは"捕り手(ハンター)"と"殺し屋(キラー)"が地球へやって来たときに乗っていた船を探し出せば、なんとかなる、母星でも、"捕り手(ハンター)"と"殺し屋(キラー)"が飛んで行った方向は掴んでいるはずだから...と。
若干心もとない感じもありますが、それなりの理屈はつけてあります。このあたりの塩梅が安心して読める理由なんでしょうね、きっと。

宇宙船捜し、になるわけですが、いろいろと事件が起こり、さて妨害されているのでは?
妨害されるということは、ひょっとしてやっつけたはずの"殺し屋(キラー)"が生き残っていて邪魔している?
なんかドキドキする点かいではありませんか。

ボブは疲れやすくなっていて動きが悪くなっている一方、"捕り手(ハンター)"は結構激しく活躍します。
この"捕り手(ハンター)"が非常にいいやつで、理性的。安心して読めます。この安定感がポイントですね。

ミステリ的な手法あるいはサスペンスの手法をあちこちに使って読者の興味をひっぱっていくので楽しく読めますが、ラストは若干拍子抜け、というか、うーん、今までの努力はなんだったの?  系の脱力もの。とはいえ、ボブにとっては一安心になっているのがありがたい。
ボブにも、"捕り手(ハンター)"にも、結構、愛着が湧いてきちゃってます。

<蛇足>
「一千億の針」 という邦題は、当然前作「20億の針」 を意識したものですが、「20億の針」 の原題には20億というのがなかったのと同様、今回の「一千億の針」 の原題にも一千億というのは出てきません。まあ、こじつけですね。


原題:Through the Eye of a Needle
著者:Hal Clement
刊行:1978年
訳者:小隅黎



nice!(6)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

バジャーズ・エンドの奇妙な死体 [海外の作家 か行]


バジャーズ・エンドの奇妙な死体 (創元推理文庫)

バジャーズ・エンドの奇妙な死体 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
ここはペニーフット・ホテル。田舎町バジャーズ・エンドにひっそりと建つ、紳士淑女御用達の隠れ家だ。ところがその静かな町で不審死が続発。ただでさえホテルにとって痛手なのに、そのうえ関係者がふたりも疑われているとあっては放っておけない。ホテルの女主人セシリーは、堅物の支配人バクスターの心配をよそに調査をはじめる。古き良き英国の香り漂う人気シリーズ第二弾。


舞台が1906年のイギリス南西部バジャーズ・エンドにあるペニーフット・ホテルのシリーズ第2弾です。
あらすじを読んでびっくり、第1作「ペニーフット・ホテル受難の日」 (創元推理文庫)を読んだときは意識していなかったのですが、このホテル、「紳士淑女御用達の隠れ家」ってことは、そういう用途のホテルだった!?
でも、この「バジャーズ・エンドの奇妙な死体」 (創元推理文庫)を読んでもそんな印象は受けませんでした。
「それによってさらにホテルの格が上がるわ。」(230ページ)
というセシリーのセリフも、そういう用途のホテルではないことを裏付けているように思います。
こちらの勝手な思い込みだったのでしょう。ちょっとあらすじの書き方、ミスリーディングですけどね...
時代(背景)のせいで、そう思えなかっただけ??? 後続巻では気を付けて読むことにします。

今回もセシリーがどたばたと謎を解いていきます。
バクスターが嫌々ながら、巻き込まれていってしまう段取りも、セシリーの危機一髪を、バクスターが救うという段取りも、予定通り(笑)。
登場人物のにぎやかなことも、第1作と同じく健在。
謎の宿泊客ミセス・パルマンティエとか、メイド、ガーティの妊娠騒ぎとか、わさわさと楽しいですね。
(しかし、ガーティの言葉遣い、ちょっとひどいというか、ホテルの雰囲気に合わないですね。)

事件の方は、他愛ないといえば他愛ないし(日本題の「奇妙な死体」のゆえんである殺害方法の古典的なlことにはびっくりできますよ、いまさら感があって)、(ミステリーでは)ありふれた動機ではありますが、おもしろい使い方をしているなぁ、と思いました。怒る人もいるでしょうけれどねぇ。ミッシリング・リンクの解としては、反則ですもんねぇ。

と、作品としてよかったのか、悪かったのか、今一つ難しいところですが、楽しんで読むことは読みました。
シリーズ続刊も、読んでいきます。



原題:Do not Disturb
著者:Kate Kingsbury
刊行:1994年
訳者:務台夏子





nice!(7)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

20億の針 [海外の作家 か行]


20億の針【新訳版】 (創元SF文庫)

20億の針【新訳版】 (創元SF文庫)



<裏表紙あらすじ>
2隻の宇宙船が南太平洋に墜落した。1隻に乗っていたのは捜査官、もう1隻に乗っていたのは犯罪者。両者とも人間ではない。高度な知性をもったゼリー状の生物であり、彼らは宿主なしには生きられない。捜査官は一人の少年の体内に宿り、犯罪者は別の人間にとりついている。だがいったい誰に? 容疑者は地球上の人間全員、20億人。様々な寄生生命SFの原点となった歴史的傑作。


無茶苦茶久しぶりの更新となりました。
仕事が忙しくなって...というのもあるのですが、なにより6月頭に引っ越したのが影響大。
マンガを除いてだいたい読んだ順に感想を書いていたのですが、読み終わった本がさてさていったいどの段ボールに潜んでいるのやら...ちゃんとつきとめられていない状態です。
前回感想を書いたのが、「雨恋」で、「雨恋」は2015年10月に読んだ最初の本ですから、まるまる9か月分の本が感想を書けないままです。
このままではいつまでたっても再開できないので、趣向を変えまして(?)、いま読み終わったばかりの本を採り上げたいと思います。

今回の「20億の針」は、創元SF文庫から新訳が出た作品ですが、むかーし小学生の頃、児童書で読んでいます。
覚えていたのはあらすじにも書かれているような程度のことで、細かいところは全くでした。

いやぁ、面白かったですねぇ。
もっと早く大人物としても読んでおけばよかったです。
帯には
『「寄生獣」「ヒドゥン」など、様々な共生生命SFの原点となった歴史的傑作を新訳で贈る』
と書かれていまして、なるほど、そういう歴史的意義のある作品でもあるんですね。

宇宙人で捜査官側である"捕り手(ハンター)"が、少年の体に入り込んで、"殺し屋(キラー)"(“ホシ”とも呼ばれます)をつきとめるという話。
共生する人間と、宇宙人(ゼリー状)が交流する、ファーストコンタクトもなかなかいい感じです。
人間サイドを少年に設定したことが功を奏しています。このことは本文中にも触れられていますが。
なるほどなぁ。
大学生くらいに設定したほうが物語は転がりやすかったように思いますが(まずもって少年には移動の自由が少ない)、ラストの展開などを考えると15歳というティーンエイジャーにしたのはやはり正解ですね。
個人的には、子どもを主人公にした作品は好みなので、ありがたい。

タヒチあたりの島で遭遇し、少年の学校があるシアトルでコンタクトして共生関係を築き、“ホシ”を探しに島へと戻る。ここまでで90ページ。ざっくり全体の1/4程度。
学校でのコンタクトのくだりもとてもおもしろかったですし、その後島へ戻ってからも、島でも少年の生活がいきいきしていて楽しくなりました。
おいおい、そんなことでどうやって探すんだよ、と思わないでもなかったですが...

地球全体から、"殺し屋"が潜んでいる人間を探るということで、当時の地球の人口を使って「20億の針」なわけですが、実際は島に限定されていますし、まあ、ちょっと大げさですね。
でも原題は
「Needle」
シンプルに、針、です。日本語訳するときに20億ってつけたんですね。大げさでも、なかなか良いタイトルです。

20億はおおげさでも、犯人捜しというかマンハント的要素があるわけで、ミステリ好きとしても楽しめて良いですね。

本書の続編「一千億の針」 (創元SF文庫)も新版が6月に出ていますので、読んでみたいと思います。


原題:Needle
著者:Hal Clement
刊行:1950年
訳者:鍛治靖子



nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ペニーフット・ホテル受難の日 [海外の作家 か行]


ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
ここはペニーフット・ホテル。海辺の田舎町にひっそりと建つ、上流階級に人気の快適な宿だ。そのホテル宿泊客の婦人が墜落死した。事故、それとも? ホテルの評判を守ろうと、勝ち気で行動的な女主人セシリーは、冷静で忠実な支配人のバクスターと共に、宿泊客らに事情を聞いてまわるのだが……。優雅なホテルで起こる事件の数々と、紳士淑女の人間模様を描くシリーズ第一弾。


舞台は1906年のイギリス南西部バジャーズ・エンドにあるペニーフット・ホテル。
まずこの雰囲気がポイント、と言いたいところですが、そしてその要素は確かにありますが、むしろにぎやかな登場人物たちに重点があるのでしょう。
事件そのものは安直というかなんというか、単純なものですが(時代設定を100年以上前にしているので、いろんなことが楽~に設定できますね)、ニシキヘビを使ったエンターテイメントとか、正直、何考えてるの? (笑) といいたくなる素っ頓狂さが素晴らしい。
帯に
「勝気な女主人&謹厳実直な支配人
 凸凹コンビがホテルの危機に探偵開始」
とあるように、この二人のやりとりがシリーズの注目点でもありますね、きっと。
身分の違いをどう二人が埋めていくのか、というところ?

「バジャーズ・エンドの奇妙な死体」 (創元推理文庫)
「マクダフ医師のまちがった葬式」 (創元推理文庫)
「首なし騎士と五月祭」 (創元推理文庫)
「支配人バクスターの憂鬱」 (創元推理文庫)
と出たところで翻訳はストップしているようですが、よたよたでも読み進めていきたいなと思いましたので、また、続きを翻訳してください、東京創元社さん。


原題:Room with a clue
著者:Kate Kingsbury
刊行:1993年
訳者:務台夏子


nice!(13)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

俳優パズル [海外の作家 か行]


俳優パズル (創元推理文庫)

俳優パズル (創元推理文庫)

  • 作者: パトリック・クェンティン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
出色の脚本を得て名プロデューサー復活の狼煙を上げるはずが、誤算続きのピーター・ダルース。忌まわしい噂のある劇場をあてがわれ、難点だらけの俳優陣を鼓舞してリハーサルを始めたが、無類漢の乱入に振り回されたあげく死者まで出る仕儀と相成った。真相究明か興行中止の憂き目に遭うか、初日は目前に迫っている!謎解きとサスペンスの興趣に満ちた、パズルシリーズ第二作。


「2013本格ミステリ・ベスト10」 第6位です。
前作「迷走パズル」 (創元推理文庫)に続くシリーズ第2作で、半世紀ぶりの新訳らしいです。
帯に「シリーズ最高傑作」とあります。シリーズ最高傑作かどうかは、シリーズの他の作品を読んでから判断したいと思いますが、楽しい作品になっています。

古い作品だと愉しめないかというと全然そんなことはなく、快調に読めます。
と、「迷走パズル」 の感想(リンクはこちら)とおなじことをここでも書いておきます。
読んだのが2月で、もう3ヶ月以上経っていてずいぶん忘れてしまっていたのですが、あらすじを読み返すと、かなり鮮やかに記憶がよみがえってきました。
ピーター・ダルースをはじめとする登場人物たちの人物像がくっきりしているからでしょう。
劇場を舞台にしたミステリというのは、海外ミステリの一つの定番ともいえるのではないかと思いますが、いわくつきの劇場という背景で独特の緊張感と狂騒ぶりが程よく伝わってきます。

復活を期すピーター・ダルースにとって、ちゃんと上演にこぎ着けられるのか、というのが非常に大きなことで、トラブル続発にひやひや。
クライマックスは、この上演に向けて盛り上がるところと、ミステリ的に真相が解明されるところが重なって、印象深い。満足しました。
次の「人形パズル」 (創元推理文庫)が楽しみです。


原題:Puzzle for Players
作者:Patrick Quentin
刊行:1939年
訳者:白須清美


<2016.1訂正>
タイトルが「迷走パズル」としちゃっていたのを訂正しました。

nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

エーミールと探偵たち [海外の作家 か行]


エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 (018))

エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 (018))

  • 作者: エーリヒ・ケストナー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/06/16
  • メディア: 単行本


<裏表紙あらすじ>
おばあちゃんをたずねる列車の中で、大切なお金を盗られてしまったエーミール。ベルリンの街を舞台に、少年たちが知恵をしぼって協力し、犯人をつかまえる大騒動がくりひろげられます。


いわずとしれた児童書の名作です。
引用したあらすじのところに、「小学4・5年以上」なんて記載もあります。
子どもの頃読んでいるはずですが、中身は覚えておらず、なんとなく懐かしく手に取りました。
あらためて大人の目で読むと、他愛もないといえば他愛もない話ですが、ケストナーは決して手を抜いていませんね。

『エーミールは「いい子」だった。そのとおりだ。けれども、おくびょうで根性がケチ臭くて、ほんとうの子供らしさをなくしているために、「いい子」のふりをするしか知らない連中とはわけがちがう。エーミールは、「いい子」になろうと思ってなったのだ!』(54ページ)
こうダイレクトに書かれているところは児童書ならではですが、エーミールの行動を通してもきちんとそのことが伝わるようになっています。
短い物語でも、きちんと個性的な登場人物たちが騒動を繰り広げるところ、安心して読めます。

ミステリ的には(?)、とられたお金を取り返す。そのために子供たちが知恵を絞る、という王道がすっきりと描かれています。
このやり方で本当に犯人が参ったと思うかどうか若干心もとない気もしますが、176ページのイラストなんかをみると、うーん、確かに嫌かも。
子どもから見て、楽しいアイデアなんじゃないかとも思えて、かなりGOODです。

実は児童書を数冊一気に買ってみたんです。
積読に紛れてゆっくり今後も読んできます。

ところで、蛇足。
バタパン(161ページ)って、普通にいう名詞ですか?? バターパンってこと? バターパン、でもあまりぴんと来ないのですが...バターロールみたいな意味合いなんでしょうか?

あと、グスタフという子供がなかなか重要な登場人物なんですが、口癖が「てやんでい」(笑)。
ドイツ語ではどう書いてあるのでしょうか?
訳者あとがきで
「もっとも、これらは私がドイツ語で物語を読んでいて、-略- 登場人物の声が、こんなふうに日本語で聞こえてきた、ということですが」
と述べられています。子供が「てやんでい」...
訳者の池田さんはおいくつなんだろうと思ったら、1948年生まれだそうです。それにしても...「てやんでい」...

原題:Emil und die Detektive
作者:Erich Kastner
刊行:1929年
翻訳:池田香代子


nice!(4)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

ブラッド・ブラザー [海外の作家 か行]


ブラッド・ブラザー (文春文庫)

ブラッド・ブラザー (文春文庫)



<裏表紙あらすじ>
きわめて知的で魅力的な青年ジェレミー。僕の兄にして連続殺人犯。彼が施設を脱走してニューヨークに潜伏、殺人を犯したという。連続する惨殺事件。ジェレミーがひそかに進行させる犯罪計画の真の目的とは? 強烈なサスペンスに巧妙な騙しと細密な伏線を仕込んだ才人カーリイの最高傑作。 ラスト1ページまで真相はわからない。


「百番目の男」 (文春文庫)
「デス・コレクターズ」 (文春文庫)
「毒蛇の園」 (文春文庫)
に続くシリーズ第3弾。

「このミステリーがすごい! 2012年版」 第6位。
週刊文春ミステリーベスト10 第5位。
「本格ミステリ・ベスト10〈2012〉」 第2位。

ニューヨークを舞台に、僕カーソン・ライダーと、その兄ジェレミー・リッジクリフが対決します。
これだけでもう、シリーズ読者としては十分なエンターテイメントですが、上記各種ベストの結果からもおわかりいただけるように、ミステリとしても引き続き優れた作品になっています。

アラバマ州逸脱行動矯正施設に収監中のジェレミーがどうやってニューヨークへ?
アラバマ州モビール市警の刑事がニューヨークで捜査?
と、疑問が浮かびますが、答えは読んでお確かめください。
ニューヨーク市警の面々も紹介されていきます。
カーソンはよそ者、歓迎されざる人物というわけで、結構な反発を喰らいます。
そして、もっとも強硬なアリス・フォルジャー警部補とカーソンの仲が進展していく。常道といってもいい展開ですが、これが結構おもしろい。
相棒のハリー・ノーチラス刑事もアラバマ州のモビール市警でバックアップするという構図も楽しいですね。
ここで興味深いのは、カーソンが、ジェレミーが兄であることを、ニューヨーク市警の面々に明かさないまま捜査を進めていく点でしょう。緊張感(?) のレベルがあがります。

このあと翻訳が出ていませんが、まだシリーズは続けることが可能だと思うので、期待しています!

<2015.1.22追記>
無茶苦茶ボケていました。
この「ブラッド・ブラザー」 のあと、2013年に「イン・ザ・ブラッド」 (文春文庫)が訳されています。
訂正します。


原題:Blood Brother
著者:Jack Kerley
刊行:2008





nice!(3)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

フランクフルトへの乗客 [海外の作家 か行]


フランクフルトへの乗客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

フランクフルトへの乗客 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
パスポートとマントを貸してほしい――空港で出会った謎の女の申し出は、変わり者の外交官スタフォード・ナイを国際的陰謀の渦中へと巻き込んだ。彼を尾け狙う不気味な影、世界各地で頻発する暴動、そしてドイツ山中の巨大な城に棲む謎の老嬢……はたしてナイの運命は? 壮大なスケールで魅せるスパイ・スリラー。


この本、ハヤカワ文庫のミステリフェア2014ということで、「ミステリ・ワールドカップ開幕」という帯を付けて売られていました。
クリスティの未読本でしたので、いい機会と思って購入しました。
それにしても、「フランクフルトへの乗客」 は、スティーヴン・L・トンプスン「A‐10奪還チーム出動せよ」 (ハヤカワ文庫)や デイヴィッド・ベニオフ「卵をめぐる祖父の戦争」 (ハヤカワ文庫NV)マイケル・バー=ゾウハー「ベルリン・コンスピラシー」 (ハヤカワ文庫NV)などと並んで欧州代表としてフェアに出されているのですが、クリスティの数多い諸作の中、そして幾多の名作群を押しのけて、どうして「フランクフルトへの乗客」 が選ばれたのでしょうね?

さておき、クリスティは時折スパイものを書いていますが、その1冊です。
クリスティの作品群の中では、スパイものはあまり高く評価されていません。確かに、綺羅星のような本格ミステリの傑作群には遠く及びませんし、一方で、一般のスパイものを期待すると肩すかしというか、期待外れになるとは思いますが、これが味があるんですよね。
このあたりを作者も意識していたのでしょうか。
本書にはまえがきがあって、
「この物語の本質はファンタジーです。それ以上のものだというつもりはありません。
しかし、その中でおこる大部分のことは、今日の世界でおこりつつあること、あるいはおこる兆しのあることばかりです。
これはありえない話ではありません――ただファンタスティックな物語だというにすぎないのです。」
と述べています。(ここの「ファンタスティック」という語は、日本語訳としては和製英語の「ファンタジック」と訳したほうが通りがよかったような気がします)
そして、副題に、「コミック・オペラ」と付してあります。

あらすじにもありますが、物語の発端が、いきなり現実離れしていますね。
パスポートを貸してほしいといわれて、貸す人、いないですよね(笑)。
このあたりを含めたゆったり感こそが、クリスティのスパイものを読む醍醐味だと思うんです。
この作品、原書は1970年発表なんですね。
クリスティは1890年生まれとのことですから、なんと御年80歳のときの作品。
ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、80歳にもなって、こんなファンタジックな作品をものにするんですから、なんと自由な発想をお持ちだったのでしょうか。あらためてクリスティというのはすごい人だったんだなぁ、と、感銘を受けました。
展開も中身も、無邪気というか、すごく若い発想なんですよね。
結構深刻で、恐ろしいことが描かれているのですが、どことなくやわらかでふんわりした印象。実はこういう作風を受け継いでいるのが、意外と赤川次郎なんじゃないかと睨んでいるのですが....

解説を、「エマ」 (Beam comix)の漫画家森薫がマンガで書いているのですが、これもなかなか楽しかったです。
ここで森薫が書いているような楽しみ方ができるのも、クリスティの魅力の一つですね。

さて、だいぶ残り少なくなってきたクリスティ作品。ゆっくりと、大切に読んでいきたいです。


<おまけ1>
まえがきに、どこでアイデアを仕入れるのか、と聞かれるとと答えに困ると書いてあるのですが、あれ? お風呂でリンゴ齧って考えるんじゃなかったの?(笑)


<おまけ2>
同じくまえがきのところで
「仕入れ先はたいてい陸海軍ストアですね」
というくだりがあります。
これ、Army & Navy Stores というデパートのことです。
Army & Navy 懐かしいなぁ、と思わずにっこりしてしまいます。
日本語に無理やり訳してありますが、同列に、ハロッズやマークス・アンド・スペンサーもまえがきには出てきます。発祥は陸海軍の人たちであっても1970年ごろには普通のデパートですから、訳すとしたら、固有名詞化しているので “アーミーアンドネイビー” とカナ書きすべきかと思います...


原題:Passenger to Frankfurt
著者:Agatha Christie
刊行:1970




nice!(9)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

覗く銃口 [海外の作家 か行]


覗く銃口 (新潮文庫)

覗く銃口 (新潮文庫)

  • 作者: サイモン カーニック
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
元傭兵のボディガード、マックスは天を呪った。現場に響く突然の銃声、転がる死体。わけもわからぬまま、彼は追われる身となった。一方、冴えない刑事ギャランは、ロンドン中にもつれた凶悪事件の糸を追っていた――。窮地の果てに反撃を試みるマックスと、ギャランの軌跡が交わったとき、現れた絶望の銃口とは? 緻密かつ超ハイスピードで展開する裏切りの連鎖、絶品のクライム小説!


2002年に「殺す警官」 (新潮文庫)デビューしたサイモン・カーニックの第2作です。
今 amazon.co.jp でみたら 2003年に訳された「殺す警官」 も、2005年に出たこの「覗く銃口」 も絶版・品切なんですね。
おもしろいのに、もったいない。
サイモン・カーニックは、その後2010年に「ノンストップ! 」 (文春文庫)が訳され、来月(2014年05月)には「ハイスピード! 」 (文春文庫)が出ます。
ゆったりとしたペースですが、着実に日本にも紹介されているので、品切も再版されるといいですねぇ。

さて、この作品の語り手は二人です。
ボディガード、マックスと、刑事ギャラン。
この二人の目を通して、ロンドンの裏社会がつづられます。
オープニングから、いかにもクライム・ノベルといった感じの幕開けで、ありふれたクライム・ノベルなのかな、と思わせます。
マックスに来た依頼は、怪しげな取引に立ち会ってほしい、ついてくるだけでいい、でも銃を持って、というもの。多額の報酬 (といっても6千ポンド。1ポンド200円で計算したとしても-今の為替相場だと1ポンド170円くらいでしょうか- 120万円なので意外と大したことないなぁ、なんて思ってしまいましたが、さておき)に目がくらんで引き受ける。実際に現場では部下が裏切り、仲間も殺され...。
ね? いかにもなストーリーでしょう。
特筆すべきは、このあと展開されるプロットが非常に入り組んでいることでしょうか。
刑事ギャランよりも、マックスに感情移入して読んでいったのですが、一緒に謎を抱えてハラハラしているうちに、意外な事実が明らかになったりして、飽きさせません。
きびきびしているけれど、どこか余裕を感じさせる語り口も楽しめました。

ぼちぼちと日本に紹介される作品を楽しんでいきたいです。


原題:The Murder Exchange
作者:Simon Kernick
nice!(8)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:
前の10件 | - 海外の作家 か行 ブログトップ