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チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)



<裏表紙あらすじ>
しばらくの間ロンドンから離れ、妻ジョハナと用心棒ジョックとともにジャージー島に移り住むことになったモルデカイ。だが平和な島での暮らしが一変、連続レイプ魔事件が発生する。かつて島中を震撼させた〈ジャージー島の野獣〉事件を思わせる手口と、犯人が残していった手がかりから、悪魔崇拝が関係しているのではとにらんだモルデカイは、対抗手段をとるべく奮闘する。しかし事態は思わぬ展開を迎え、さらなるピンチに!?


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾なんですが、発表されたのは「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」より先のようです。物語の中の時系列として、この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 が後なんですね。

あいかわらずの怪作ぶりで、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、という構図を踏襲しているのですが、うーん、ちょっとこれは...
前作の感想で、「主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)」と書いたんですが、この作品ではそのレベルを超えて、ちょっと受け付け難いレベルの事態が起こります。
連続レイプ魔事件、という題材もよくなかったのかもしれません。
こういう不謹慎な笑いを楽しむには、まだまだ修行が足りないのでしょう。なんだか、生々しい感じがしてしまうんですよね。
いっそ殺人事件の方が、不謹慎にも楽しめたのかもしれません。

ミステリ的に見ると、犯人の隠し方は単純であっけないくらいですが、モルデカイのドタバタぶりにはこういう隠し方が似合っているのだと思いました。
残り1冊、「チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件」 (角川文庫)を読むのがちょっと怖いなぁ。いつになるのかわからないけれど。

それにしてもこの作品、以前「深き森は悪魔のにおい」 というタイトルサンリオSF文庫から出版されていたそうです。
サンリオSF文庫って、やっぱり、すごかったんですねぇ。
ピーター ディキンスンの「キングとジョーカー」 がサンリオSF文庫だったというのを知ったときも(現在は扶桑社ミステリーです)、SFじゃないなぁ、と思っていたものですが、それでもパラレル・ワールドのイギリスを舞台にしているのでぎりぎりSFと呼んでもいいのか、という余地はありました。
この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 には、SFの臭いはどこにもありません...



原題:Something Nasty in the Woodshed
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1976年
翻訳:三角和代








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アップルターンオーバーは忘れない [海外の作家 は行]


アップルターンオーバーは忘れない (ヴィレッジブックス)

アップルターンオーバーは忘れない (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジョアン・フルーク
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2012/10/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
〈クッキー・ジャー〉の6月はとにもかくにも忙しい。それでも頼まれるとイヤとはいえないのがハンナ。町長夫人主催のチャリティーパーティ用に大量のお菓子を焼いて、出張中のノーマンの愛猫を預かり、隠し芸大会に出るハーブマジックショーの助手も引き受けて、さすがにへとへと。でもハンナには他にも気になることが。あの女たらし、レイク・エデンの客員教授になった元恋人ラムジーが末妹ミシェルと関係を深めているようなのだ。 昔のことを妹に話すか悩んでいた矢先、死体となったラムジーを発見し……。
犯人探しも私にまかせて! 意外な展開が次々と、大好評お菓子探偵シリーズ第13弾!


ハンナの昔の恋人というか付き合っていた相手というか、騙された相手と言うべきですね! が殺されます。
しかしハンナ、こんなやつに騙されていたんですねぇ。若かったんだねぇ。こういう殺されても読者が残念に思わないやつを被害者に選ぶというのも、コージー・、ミステリでは大事なポイントですよね。
ハンナは今回も超いきあたりばったりの捜査(?) で犯人にたどり着きますが、この犯人像だと、ちゃんと推理でつきとめるのは難しかったでしょうねぇ。その意味では、ハンナの捜査方法にぴったりの犯人!?
このシリーズには珍しく(?) 動機がきわめて普通なのは、被害者の設定が設定だからでしょうか?

シリーズ的には、あのノーマンが怪しい動きを見せます。
一方で、マイクが妙にやさしかったりして...
さぁ、このあとどうなるんでしょうか?

こちらがぼやぼやしているうちに、
「デビルズフード・ケーキが真似している」 (ヴィレッジブックス)
「シナモンロールは追跡する」 (ヴィレッジブックス)
「レッドベルベット・カップケーキが怯えている」 (ヴィレッジブックス)
と3冊も続刊が翻訳されています。
頑張って読むぞー。いずれ...
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矜持 [海外の作家 は行]


矜持 (競馬シリーズ)

矜持 (競馬シリーズ)



<表紙袖あらすじ>
英国陸軍大尉トマス・フォーサイスは、アフガニスタンで爆弾によって右足を吹き飛ばされ、6カ月の帰宅休暇を命じられた。偉大な調教師で厩舎を経営する母ジョセフィンとは折り合いが悪かったが、ほかに行くあてもなく、彼は母と義父が暮らす家に帰る。だが、厩務長から意外な話を聞かされた。このところ厩舎の馬が勝てるはずのレースで不審な負け方をすることが続いているというのだ。さらに母と義父の口論を聞き、家計が逼迫していることを知る。彼は母の仕事部屋を調べて、母の個人口座から毎週2000ポンドもの金が引き出されていることを突き止め、脅迫状を発見する。母と義父に事情を聞くと、会計士に勧められた節税方法を採用したが、脱税をしていると何者かに脅され、金の支払いと馬をレースで負けさせることを強要されるようになったという。会計士の勧めでヘッジファンドに投資し、大金を失ってもいた。トマスは脅迫者を暴き、母の金を取り戻そうとするが、手がかりとなる会計士は死んでいた。卑劣な手段でトマスの命を奪おうとする敵と、彼は自己の名誉を賭けた闘いを繰り広げる。
*
競馬シリーズで世界中の読者に興奮と感動を与え続け、惜しくも死去したディック・フランシスの最後の作品。


ここから5月に読んだ本の感想となります。
単行本で、ディック・フランシスによる競馬シリーズの最終作です。
もう、すでに文庫化されています。
矜持〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (競馬シリーズ)

矜持〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (競馬シリーズ)

  • 作者: ディック・フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫

いや、もう、なんかもったいなくて、なかなか読めなかったんですよ。
ディック・フランシスの競馬シリーズは、おそろしく打率の高い、というよりむしろ、はずれのないすごいシリーズで、奥さんのメアリさんが亡くなってから途切れていたのが、2006年
「再起」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
で、まさに再起し、その次の
「祝宴」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
は息子さんのフェリックスが共著者となって、そのあと、
「審判」(ハヤカワ・ミステリ文庫)
「拮抗」〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
と共著が続いてきましたが、ディック・フランシスが2010年に亡くなってしまったのでいよいよこの「矜持」でそれも終わり。
いや、もったいなくて、老後の楽しみにとっておこうかと思っていたのです。
でも、フェリックス・フランシスが単独で新・競馬シリーズをスタートさせ、その翻訳↓

強襲 (新・競馬シリーズ)

強襲 (新・競馬シリーズ)

  • 作者: フェリックス・フランシス
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 単行本

も出たので、自分に解禁しました。

原題は”crossfire”
127ページに説明があります。
不正駈歩。
「馬が駈歩(かけあし)に入ったときに前脚と後脚の手前が異なる走りかたをすること。」
邦題は、これとまったく関係なく、「矜持
矜持、というのはいい単語、タイトルですね。
この作品というよりは、競馬シリーズ、ディック・フランシスの作品に共通するワードだと思います。
ストイックで、決して負けない主人公の魅力たっぷりです。
ちなみに、イギリスやイギリス人の印象って、コナン・ドイルとアガサ・クリスティとディック・フランシスで培われたような気がします。実際に行ってみると、決して本の印象通りとはいきませんでしたが...
さておき、上で引用したあらすじに詳しく書いてありますが、やむなく戻った実家で、折り合いの悪い母のために、まさに矜持をもって、戦いに挑む主人公トマス・フォーサイス。
フランシスの作品が、永く書き継いできたイメージを、丁寧になぞるように物語は展開します。

最後まで読者の期待にきちっと応えてくれたディック・フランシス。
あとは、息子のフェリックス・フランシスが継いで、ずーっとずーっと、続けていってくれることを期待します。
「強襲」を読むのが楽しみです。



原題:Crossfire
作者:Dick Francis and Felix Francis
刊行:2010年
翻訳:北野寿美枝


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チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
画商チャーリー・モルデカイは、マドリードのプラド美術館からゴヤの名画をかっぱらい、アメリカ・ニューメキシコ州の石油王に配達した。やばい仕事で命を狙われモルデカイは這々の体で故郷のイングランドに戻り鉱山の洞窟に身を潜めた。アメリカ大使館のブルーチャー大佐は、モルデカイを助ける代わりに、捜査対象と結婚し金の流れを突き止めてほしいという。夫となったモルデカイは、今度は妻から暗殺の依頼を受け――。


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾。
あいかわらずの怪作ぶりを発揮しています。
ただ、第1作「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」を通して、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、というタイプにこちらが馴れたからか、読みにくさはずいぶん緩和されました。

日本語副題に、「スパイ教育」とある通り、チャーリーが“カレッジ”で訓練を受けます。
この様子がなかなか楽しい。きっと作者も楽しんで書いたのでしょう。
方向性はまったく違いものの、訓練ということで、ちょっと胡桃沢耕史の作品を思い出しました(たぶん、「俺は秘密諜報員」(光文社文庫)ではなかったかと思うのですが、手元に本がなく、胡桃沢さんも非常に多作だったので、あまり自信はありません)。

前作もそうですが、この語り口に乗せられて、猥雑なストーリーに浸っていると、主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)ところに、この作品の醍醐味があるのでしょう。
ラストの、チャーリーにとっては皮肉な結末も、そうだろうな、とストーリーにぴったりマッチしています。


原題:After You with the Pistol
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1979年
翻訳:三角和代





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チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
マドリードで盗まれたゴヤの名画。イギリスで捜査を担当する臨時主任警視のマートランドは、学友の画商チャーリー・モルデカイを訪ね手がかりを得る。ナショナル・ギャラリー、ターナー作品の裏に隠された一枚の写真。石油王クランプフのビンテージ・カーを、外交封印のもとにアメリカに運ぶ仕事を引き受けたモルデカイだが、マートランドに弱みを握られ汚れ仕事を押しつけられ―。怪作ミステリー第一弾!


ジョニー・デップ主演の「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」の原作(映画の感想はこちら)、というよりも、英国推理作家協会賞の第1回ジョン・クリーシー賞(新人賞)受賞作というべきでしょうか、ミステリ好きとしては。
感想は前後しましたが、映画を観る前にこの「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)は読んでいます。
40年以上たって本邦初訳らしいです。ジョニー・デップさまさま、というところ?
いやあ、もう、怪作というしかないですね、これは。
あらすじには全く意味がありません。いや、ストーリーはあることはあるんですが、ストーリー展開には重きが置かれていません。
オフビート、なんてよく言ったりしますが、猥雑な主人公が猥雑な語り口で猥雑に突き進んでいく、そういう話で、すぐ横道にそれるし、話のそれ方がはなはだしい。
最初のうち、とても読みにくくて、なんだかなぁ、とおもいつつ我慢して読んでいったのですが、馴染んでくると悪くない。訳者は相当ご苦労されたことでしょう。
脱線ぶりを楽しんでしまいました。
インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、というタイプの日本では受けそうもない作風で、訳されたのは、やはりジョニー・デップさまさま。
真面目な作品がお好きな方は、避けた方がよさそう。

登場人物では、モルデカイの用心棒ジョックがお気に入りです。
(映画のジョックはちょっとイメージが違いましたね)

このあと「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)まで読み終えています。--感想を書くにはまだ先になりそうですが。




原題:Don't Point That Thing at Me
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1972年
翻訳:三角和代



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サファリ殺人事件 [海外の作家 は行]


サファリ殺人事件 (海外ミステリGem Collection)

サファリ殺人事件 (海外ミステリGem Collection)



<帯あらすじ>
閉塞空間に演出されるミステリ・パズルの傑作
殺人事件に遭遇したヴェイチェル警視。
彼は宝石の盗難事件を極秘に調査していたが、身分を明かし、犯人探しに転じる。
閉ざされたサファリの世界のなか、解き放たれる真実とは。

前回の「鍵のない家」 (論創海外ミステリ)に続いて単行本です。

この本、翻訳が悲惨です。
「鍵のない家」 もかなりたどたどしかったですが、この「サファリ殺人事件」 は更に上を行くひどさ。
中学生とか高校生の英文和訳を読まされているみたい。
本が売れない、特に、翻訳ミステリが売れない、と言われていますが、翻訳がこういうレベルだと致し方なし、ですね。

翻訳のまずさを棚に上げると、中身はまずまず楽しめました。
閉塞空間というには開放的ですが、限定された登場人物の間での謎解きと、サファリという異国情緒あふれる舞台がポイントです。
車、飛行機、そしてライフル。サファリらしい小道具も雰囲気を盛り上げますし、当然ながら、バッファローとかハゲタカ、レイヨウにサイ、ヒョウなんかもしっかり登場します。

バッファローの糞で時間を推測するところ(93ページ)とか、なんだかいい感じではありませんか? (たいして有効な手がかりでもないんですが、こういう小ネタがあるとうれしい)
古き良き植民地時代を背景にした、堅実なミステリでした。

ハクスリーは、他にも2冊ほどミステリを書いているようです。翻訳されたら読んでみたいと思います。でも、翻訳されることはないんだろうなぁ...

<蛇足>
「いわしとショウガのクラッカー」(170ページ)というのが出てきますが、きっと、オイル・サーディンとジンジャー・ブレッドでしょうねぇ。

原題:Murder on Safari
作者:Elspeth Huxley
刊行:1938年
翻訳:小笠原はるの




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鍵のない家 [海外の作家 は行]


鍵のない家 (論創海外ミステリ)

鍵のない家 (論創海外ミステリ)

  • 作者: E.D. ビガーズ
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2014/08
  • メディア: 単行本




単行本です。
昔、「チャーリー・チャンの活躍」 (創元推理文庫)を読んだことがあるはずですが、覚えていません。
探偵役のチャーリー・チャン初登場作、なわけですが、チャーリー・チャンは映画化やラジオドラマなどにもされた、アメリカでは(当時)非常に高名なキャラクターです。中国人、というのがポイントですね。
この「鍵のない家」はハワイが舞台で、チャーリー・チャンはホノルル警察の巡査部長です。
チャーリー・チャンはハワイが拠点となる探偵だったんですねぇ。認識がありませんでした。
物語はおおむね、ジョン・クィンシー・ウィンタスリップというボストン上流階級に属する青年の視点で語られます。
ハワイに居ついてしまったおばミス・ミネルバを連れ戻すという役目を担ってハワイにやってくるものの、次第にハワイに惹かれていく、という展開。
この展開が、常套的といえば常套的なんですが、非常に心地よい作品です。楽しい。
ボストン上流階級とハワイ、という異文化もあれば、探偵役が中国人という異文化もある(日本人も登場します)。これらの融合が、このシリーズの醍醐味なのかもしれません。

ミステリ的には、「本作の原題“The House Without a Key” は、鍵をかける必要がないほど平穏な土地にあるダン・ウィンスタリップ邸を指すとともに、手がかりが次々と消えていき、『手がかり一つない(without a key)』状態になることを読者に告げるものではないだろうか」と解説で大山誠一郎が指摘している通り、わりと手がかりが興味深い作品です。
チャーリー・チャンが素晴らしいのは、
「本の中では指紋やその他の科学的方法は役に立ちます。現実の捜査ではそうでもありません。私の経験は、人々を人間として深い考察の対象にすべしと命じます。人間の激しい心の動きを。殺人の背後にあるもの、それは何か? 憎悪、復讐、口封じ、あるいは金銭。人々を人間としてつねに研究するのです」(158ページ)
と心理学的推理を標榜しているようでいて、
「この仕事では証拠がぜったいに必要です」(393ページ)
と物理的証拠も重視していて、安心感があるところでしょう。
推理法同様、性格もかなり安定しています。

ジョン・クィンシー・ウィンタスリップのロマンスも快調で、バランスの良い作品だなぁと感じました。
このシリーズの他の作品も読んでみたいです。
「チャーリー・チャンの活躍」も、いつか読み直さなければ。


原題:The House Without a Key
作者:E.D. Biggers
刊行:1925年
翻訳:林たみお

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トムは真夜中の庭で [海外の作家 は行]


トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))





<裏表紙あらすじ>
友だちもなく退屈しきっていたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのをきき,昼間はなかったはずの庭園に誘いだされて,ヴィクトリア時代のふしぎな少女と友だちになります。歴史と幻想が織りなす傑作ファンタジー

この本、昔から気にはなっていてずっと前に購入していたのですが、例によって積読。
ジム・ケリーの「水時計」 (創元推理文庫)の解説で、杉江松恋さんが、イーリーが舞台ということで、この「トムは真夜中の庭で」 を紹介されていまして、おお、(やはり)読んでみようとそのとき思いました。だけど、「水時計」 を読んだのは2013年1月。それからもほぼ2年積読にしてしまっていました。

結論としては、もっと早く読めばよかったなぁ、と思いました。
児童書ではありますが、結構素敵なファンタジーですね。
最初とっつきにくくて、読みづらい印象だったのですが、物語が進むにつれ、殊にタイトルにもなっている庭での出来事が始まると、ずんずん読み進めることができました。
あらすじに「ヴィクトリア朝時代のふしぎな少女と友だちにな」ると書いてあるので、若干ネタバレ気味ながら書いてしまいますと、トムは庭を介してタイムトラベル(?) をすることになります。
ファンタジー(あるいはSF? )の一つの典型的なパターンを踏襲しているわけですが、このディテールが凝っていて楽しめました。
ファンタジーといっても全般的には落ち着いたトーンなので、冒険もの的なファンタジーを想定すると期待外れになりますが、なかなかに味わい深い作品です。
丁寧に書き込まれているので、ゆったり読むのがふさわしいですね。子供が読むと、退屈しちゃう可能性もありますね。
訳文がちょっと古臭いのも、かえって雰囲気が出ているような...

ネタバレついでに(?) 書いてしまいますと、この種のストーリーでは、主人公たちの“出会い”はなかなかに扱いが難しいと思うのですが、アパートと庭を介在させることで、自然に“出会い”を演出していていいなぁと思いました。

やはり圧巻は、1895年の大氷結を背景としたスケートのシーンでしょうか。
うーん、イーリーに行ってみたくなりましたね。

ところで、表紙絵も挿絵も、原著から引いたものだと思うのですが、ちっともかわいくないですね。むしろ、怖いくらい...


原題:Tom's Midnight Garden
著者:Philippa Pearce
刊行:1958


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強盗こそ、われらが宿命(さだめ) [海外の作家 は行]


強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈上〉 (ヴィレッジブックス)強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)強盗こそ、われらが宿命(さだめ)〈下〉 (ヴィレッジブックス)
  • 作者: チャック ホーガン
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 文庫




<裏表紙あらすじ>
全米一、銀行強盗発生率の高い街であるボストン郊外のチャールズタウン。ここでは強盗は誇り高き家業だ。そんな街で生まれ育ったダグは、幼なじみを率いて、現金強奪をすることに何の疑問も抱いていなかった。だが、ある銀行襲撃をきっかけに、何かが変わった――銀行の女性支店長クレアに恋をしてしまったらしい。深入りできない苦しい恋に悩みながら、次の襲撃の準備を進めるダグ。一方、FBIは着々とダグたち一味に捜査の手を伸ばしていた。加害者と被害者、追う者と追われる者が、クレアを軸にして出会ったとき……。巧みな人物描写とプロットで読ませる、傑作ミステリー!<上巻>
朝出勤してきたら、天井から降ってきた強盗が金を奪い、副支店長が眼前で半殺しにされ、自分も人質にされる――そんな苛酷な経験をしたクレアは、なかなか心の傷が癒えない。彼女の苦痛を目の当たりにしたダグは、次の仕事を機に強盗稼業からは足を洗おうと決心する。しかし、他の仲間たちはこんな実入りのいい商売をやめる気はさらさらない。青春時代を共にした悪党どものために、ダグは最後の大博打を打つことにした。クレアに淡い恋心を抱くFBI捜査官フローリーはそれを察知、ダグへの嫉妬心からある奸計を思いつくのだが……。すべてが終わって微笑むのは誰か。運命の時は来た!<下巻>


2005年度ハメット賞受賞作。
上に引用したあらすじは、かなり要領よくストーリーを取りまとめていますが、銀行強盗を生業とするダグが、その強盗の被害者たる銀行の支店長クレアに恋をし、彼女のために(?) その稼業から足を洗おうとする、というストーリーです。
その意味では、邦題「強盗こそ、われらが宿命」はニュアンスが違いますね。なんだかこれだと、強盗は絶対やめないっ、みたいな感じ。ラストシーンに来て、宿命(さだめ)とつけたくなった気持ちがなんとなくわかった気もしましたが、それだと「われらが」ではなく「わが」とした方が収まりがよいな、と思いました(若干、ネタバレでしょうか?)。
原題 The Prince of Thieves の方が雰囲気出ています。「泥棒の王子さま」。
荒んだ地域で生まれ育って、強盗稼業をしていても、どことなく自らを律している雰囲気漂うダグにぴったりです。

そのダグとクレアを取り巻くのは、ダグの足抜けを快く思っていない仕事仲間(で幼馴染)と、強盗逮捕を目指すFBI捜査官(で、かつこちらもクレアに恋している)。
そして、なにより、卑しき街チャールズタウン。
強盗シーンも見事ですが、シーン、シーンの緩急がぴたりと決まっていて、わくわくしたり、しみじみしたり、ハラハラしたり、と世界に浸れます。
BOY Meets GIRL って、やっぱり小説の王道ですね!

川出正樹さんの解説がとてもよく書かれているなぁ、と感動しました。
もし本屋さんで手に取られることがあったら、解説を読まれて、買うかどうか決めるとよいと思います。

本書は、ベン・アフレック監督・主演で映画化されています。
タイトルは「ザ・タウン」。
見ていませんが原作が充実しているので、面白いんじゃないでしょうか? 機会があれば観てみたいです。



原題:The Prince of Thieves
著者:Chuck Hogan
刊行:2004



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陸軍士官学校の死 [海外の作家 は行]

陸軍士官学校の死 上 (創元推理文庫)陸軍士官学校の死 下 (創元推理文庫) 陸軍士官学校の死 下 (創元推理文庫)
  • 作者: ルイス・ベイヤード
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/07/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
引退した名警官ガス・ランダーは、ウエストポイント陸軍士官学校のセアー校長に呼び出され、事件の捜査を依頼される。同校の士官候補生の首吊り死体から、何者かが心臓をくり抜き持ち去ったというのだ。捜査の過程でランダーは、ひとりの協力者を得る。彼は青白い顔の夢想家で、名をエドガー・アラン・ポオといった――青年時代のポオを探偵役に迎えた、詩情豊かな傑作ミステリ。 <上巻>
才気煥発なポオを協力者に、士官候補生の遺体損傷事件を調べる元辣腕警官のランダー。だが、そんな彼らの前に、第二の死体が現れる。そして、令嬢リーへの愛に全霊を捧げるポオとランダーの関係にも、暗雲が立ちこめはじめていた。内なる孤独を抱えるふたりの男が、陸軍士官学校を震撼させた殺人事件に見出した真実とは――。19世紀アメリカを舞台にした、圧巻の歴史ミステリ大作。<下巻>


「このミステリーがすごい! 2011年版」第8位
「2011本格ミステリ・ベスト10」 第2位
です。

陸軍士官学校での事件をエドガー・アラン・ポオが解く、しかもポオは陸軍士官学校の現役生というところが、大きなポイントの作品です。
いかにも、ミステリファン受けしそうでしょ?
それが、上に書いたベスト10 の結果、というわけですが、うーん、思ったより票が伸びなかったのですね。週刊文春のミステリーベスト10は惜しくも第11位で圏外。

ポオって、天才、ですよね。
でも、なんとなく「頭がいい」というよりは、感性が優れていたというか、詩情というか、そちらの才能の持ち主のような印象を持っています。本人も、そちらを褒められる方がうれしかったんじゃないでしょうか?
もちろん、「モルグ街の殺人」 をはじめとするミステリの始祖ですから、頭もよかったのだと思いますが。こちらの勝手な印象です、印象。
ディクスン・カーの高名な、あれ、にも出てきますし、ミステリでもおなじみ。
一方、天才であったのでしょうが、というか、天才だったからでしょうか、とっつきにくイメージ。なんとかとかんとかは紙一重、常人には近寄りがたいイメージも、特にポオには強くあります。
そのポオの学生(?)時代。
いやあ、ちゃんととっつきにくく登場します(笑)。
引退した警官ランダーとポオの二人組が事件の捜査にあたるわけですが、ランダーの手記とポオの(ランダーあて)報告書、というフォーマットが、ちょっとダレるところもなくはないですが、楽しく読めます。
ポオはそれほど読み込んでいないので個人的にはよくわかりませんでしたが、川出正樹さんの解説によると、文体模写になっているらしいです。
それにしても、ポオって、饒舌だったんですねぇ、おどろき。
ポオがリー嬢(被害者の姉)と恋に落ちるなんて、エピソードもあります。
うーん、恋するポオ。詩人なんで、当然恋くらいするんですが、恋する詩人って、鬱陶しいですね、正直(笑)。微笑ましくもありますが。

冒頭、事件の捜査を依頼されたランダーが言うセリフが、意外と味わい深いですね
「お望みは、リロイ・フライの心臓を盗んだ人物を見つけ出すことですか? それとも、そもそもこの青年を吊るした人物をつきとめてほしいと?」
いやあ、なんかこう、わくわくします。
全体的には、人物と事件のバランスがとてもいい作品だと思いました。
この真相、ミステリファンだと割と早い段階で想定の範囲に収めてしまうものだと思いますが、2人の書き手による物語の進め方といい、悪魔崇拝みたいな秘密団体の登場といい、長い物語も飽きずに楽しめる工夫がされています。
充実の1冊(上下巻なんで本当は2冊ですが)、です。



原題:The Pale Blue Eye
著者:Louis Bayard
刊行:2006




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