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煙で描いた肖像画 [海外の作家 は行]

煙で描いた肖像画 (創元推理文庫)

煙で描いた肖像画 (創元推理文庫)

  • 作者: ビル・S. バリンジャー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2002/07
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ある日、偶然に見つけた思い出の少女の写真。彼女は今どうしているのだろうか? そのちょっとした好奇心はいつしか憑かれたような思いに変わり、ダニーはわずかな手掛かりを追って彼女の足跡を辿り始める。この青年の物語と交互に語られていくのは、ある悪女の物語。二人の軌跡が交わるとき、どんな運命が待ち受けているのだろうか? サスペンスの魔術師の代表作がついに登場。


いったりきたりしておりますが、5月に読んだ1冊目の本の感想です。
バリンジャーといえば、「歯と爪」 (創元推理文庫)「赤毛の男の妻」 (創元推理文庫)を読んだことがあります。
分類すると、「歯と爪」は二つのストーリーをカットバックで交互に語っていく手法を用いた作品、「赤毛の男の妻」は叙述トリックを用いた作品です。
技巧派として知られる作者ですが、この「煙で描いた肖像画」 は、カットバックで交互に語る手法を初めて使った作品(らしい)です。

一つ目のストーリーは、偶然見つけた写真から思い出の少女クラッシー・アルマーニスキーの今を突き止めようとするダニー。
そしてもう一つが、その探されるほうの女の成り上がりストーリー。
しかし、若いころ一度見ただけの女性に、いくら美しかったとはいえこれほどの執着を見せるとは、すごいぞ、ダニー。今でいうストーカーに近い執念を感じますが、ピュアといやあ、ピュアですね。
一方のクラッシーのほうは次から次へと名前を変え、男を踏み台にして金を、よりよい暮らしを手に入れていく。
ダニーとクラッシーの対比が見どころなのでしょう。
そしてこの二人が交差するラスト。
今となってはあまり新味も衝撃も感じないラストになっていますが、当時のインパクトはすごかったのでしょうね。
一種のファム・ファタールものとも言えますし、いびつなボーイ・ミーツ・ガール物語とも言えます。
なかなか味わい深い面白い作品だと思いました。

「消された時間」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)も読みたいので、ぜひ復刊してください。


原題:Portrait in Smoke
作者:Bill S. Ballinger
刊行:1950年
翻訳:矢口誠




<蛇足>
この作品、創元推理文庫版が出るとほぼ同時に、小学館からも別訳で出版されました。
こういうことが起こると、どちらも売り上げに影響が出たでしょうね...
煙の中の肖像 (SHOGAKUKAN MYSTERY―クラシック・クライム・コレクション)

煙の中の肖像 (SHOGAKUKAN MYSTERY―クラシック・クライム・コレクション)

  • 作者: ビル・S. バリンジャー
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2002/05
  • メディア: 単行本




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チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件 [海外の作家 は行]

チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
憧れの口髭をたっぷりとたくわえ上機嫌なモルデカイのもとに大学時代の恩師ドライデン博士がやってきた。カレッジの女性研究者が不審な死をとげたという。依頼を受けたモルデカイは特別研究員として潜入し、調査を開始する。やがて、事件前後に被害者の周囲で目撃されたあやしい男たちの足取りや、不審な金の動きがあったことなどを突き止めるが、それは関わるには危険すぎる、ある事件とのつながりを示唆していて……!?


コミックス2冊の感想を挟んで10月8日に感想を書いた「ヒートアップ」 (幻冬舎文庫)(感想へのリンクはこちら)で9月に読んだ本の感想が終わりました。9月は5冊しか読めなかったんです。
10月の感想に入る前に、「刑事マルティン・ベック ロセアンナ」 (角川文庫)(感想へのリンクはこちら)でとまっていた4月に読んだ本の感想を終わらせます。
4月3冊目の本、「チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件」 (角川文庫)です。
4月は3冊しか読めていなかったんですね。

「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 (角川文庫) (感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第4弾にして最終巻。
カバーの裏側袖の作者紹介欄によると「シリーズ四冊目は、著者の死後、ほぼ書き上げていた未完の作品にクレイグ・ブラウンが一章ぶんを書き足して99年に発表された。」とのことで、絶筆なんですね。
本国では補遺してでも出してほしいと思われるような人気シリーズだった、ということですね。

今回はカレッジへ潜入(?)ということで、カレッジでのバカ騒ぎの巻、という感じです。
まあ、大学時代馬鹿をやっていました、というのは洋の東西を問わずあるのでしょうが、イギリスの雰囲気をぜひ味わってください。(もっともこの作品の通りとは保証できませんが...)
事件のほうも人は死にますが、悪ふざけ満載ですので、そのあたりお気を付けください。

文字通り、髭に始まり、髭に終わる本でしたが、事件はそこにあんまり関係なく(笑)、チャーリー・モルデカイとジョハナに関する話、です。

このシリーズの文庫カバー、続き物になっている趣向だったので、並べてみました。
チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 (角川文庫)チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件 (角川文庫)








<蛇足>
「モルデカイ家の縦割り半分邸宅」(13ページ)
というのが出てきます。
これ、ひょっとして “semi-detached” だとすると違和感ありありの訳語ですが、かといって、じゃあどう訳すんだよ、と言われてもなかなかしっくりくる語がありません。訳者も苦労されたんでしょうねぇ、きっと。

<蛇足2>
「検認済み送金」というのが106ページ以降出てきます。
一応説明もされているのですが、この仕組みが非常にわかりにくい。何度も読み返しましたが、結局わかりませんでした。ちょっと困った...



原題:The Great Mortdecai Moustache Mystery
作者:Kyril Bonfiglioli and Craig Brown
刊行:1997年
翻訳:三角和代






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チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
しばらくの間ロンドンから離れ、妻ジョハナと用心棒ジョックとともにジャージー島に移り住むことになったモルデカイ。だが平和な島での暮らしが一変、連続レイプ魔事件が発生する。かつて島中を震撼させた〈ジャージー島の野獣〉事件を思わせる手口と、犯人が残していった手がかりから、悪魔崇拝が関係しているのではとにらんだモルデカイは、対抗手段をとるべく奮闘する。しかし事態は思わぬ展開を迎え、さらなるピンチに!?


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾なんですが、発表されたのは「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」より先のようです。物語の中の時系列として、この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 が後なんですね。

あいかわらずの怪作ぶりで、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、という構図を踏襲しているのですが、うーん、ちょっとこれは...
前作の感想で、「主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)」と書いたんですが、この作品ではそのレベルを超えて、ちょっと受け付け難いレベルの事態が起こります。
連続レイプ魔事件、という題材もよくなかったのかもしれません。
こういう不謹慎な笑いを楽しむには、まだまだ修行が足りないのでしょう。なんだか、生々しい感じがしてしまうんですよね。
いっそ殺人事件の方が、不謹慎にも楽しめたのかもしれません。

ミステリ的に見ると、犯人の隠し方は単純であっけないくらいですが、モルデカイのドタバタぶりにはこういう隠し方が似合っているのだと思いました。
残り1冊、「チャーリー・モルデカイ (4) 髭殺人事件」 (角川文庫)を読むのがちょっと怖いなぁ。いつになるのかわからないけれど。

それにしてもこの作品、以前「深き森は悪魔のにおい」 というタイトルでサンリオSF文庫から出版されていたそうです。
サンリオSF文庫って、やっぱり、すごかったんですねぇ。
ピーター ディキンスンの「キングとジョーカー」 がサンリオSF文庫だったというのを知ったときも(現在は扶桑社ミステリーです)、SFじゃないなぁ、と思っていたものですが、それでもパラレル・ワールドのイギリスを舞台にしているのでぎりぎりSFと呼んでもいいのか、という余地はありました。
この「チャーリー・モルデカイ (3) ジャージー島の悪魔」 には、SFの臭いはどこにもありません...



原題:Something Nasty in the Woodshed
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1976年
翻訳:三角和代








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アップルターンオーバーは忘れない [海外の作家 は行]


アップルターンオーバーは忘れない (ヴィレッジブックス)

アップルターンオーバーは忘れない (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジョアン・フルーク
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2012/10/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
〈クッキー・ジャー〉の6月はとにもかくにも忙しい。それでも頼まれるとイヤとはいえないのがハンナ。町長夫人主催のチャリティーパーティ用に大量のお菓子を焼いて、出張中のノーマンの愛猫を預かり、隠し芸大会に出るハーブのマジックショーの助手も引き受けて、さすがにへとへと。でもハンナには他にも気になることが。あの女たらし、レイク・エデンの客員教授になった元恋人ラムジーが末妹ミシェルと関係を深めているようなのだ。 昔のことを妹に話すか悩んでいた矢先、死体となったラムジーを発見し……。
犯人探しも私にまかせて! 意外な展開が次々と、大好評お菓子探偵シリーズ第13弾!


ハンナの昔の恋人というか付き合っていた相手というか、騙された相手と言うべきですね! が殺されます。
しかしハンナ、こんなやつに騙されていたんですねぇ。若かったんだねぇ。こういう殺されても読者が残念に思わないやつを被害者に選ぶというのも、コージー・ミステリでは大事なポイントですよね。
ハンナは今回も超いきあたりばったりの捜査(?) で犯人にたどり着きますが、この犯人像だと、ちゃんと推理でつきとめるのは難しかったでしょうねぇ。その意味では、ハンナの捜査方法にぴったりの犯人!?
このシリーズには珍しく(?) 動機がきわめて普通なのは、被害者の設定が設定だからでしょうか?

シリーズ的には、あのノーマンが怪しい動きを見せます。
一方で、マイクが妙にやさしかったりして...
さぁ、このあとどうなるんでしょうか?

こちらがぼやぼやしているうちに、
「デビルズフード・ケーキが真似している」 (ヴィレッジブックス)
「シナモンロールは追跡する」 (ヴィレッジブックス)
「レッドベルベット・カップケーキが怯えている」 (ヴィレッジブックス)
と3冊も続刊が翻訳されています。
頑張って読むぞー。いずれ...
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矜持 [海外の作家 は行]


矜持 (競馬シリーズ)

矜持 (競馬シリーズ)

  • 作者: ディック・フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2011/01/07
  • メディア: ハードカバー


<表紙袖あらすじ>
英国陸軍大尉トマス・フォーサイスは、アフガニスタンで爆弾によって右足を吹き飛ばされ、6カ月の帰宅休暇を命じられた。偉大な調教師で厩舎を経営する母ジョセフィンとは折り合いが悪かったが、ほかに行くあてもなく、彼は母と義父が暮らす家に帰る。だが、厩務長から意外な話を聞かされた。このところ厩舎の馬が勝てるはずのレースで不審な負け方をすることが続いているというのだ。さらに母と義父の口論を聞き、家計が逼迫していることを知る。彼は母の仕事部屋を調べて、母の個人口座から毎週2000ポンドもの金が引き出されていることを突き止め、脅迫状を発見する。母と義父に事情を聞くと、会計士に勧められた節税方法を採用したが、脱税をしていると何者かに脅され、金の支払いと馬をレースで負けさせることを強要されるようになったという。会計士の勧めでヘッジファンドに投資し、大金を失ってもいた。トマスは脅迫者を暴き、母の金を取り戻そうとするが、手がかりとなる会計士は死んでいた。卑劣な手段でトマスの命を奪おうとする敵と、彼は自己の名誉を賭けた闘いを繰り広げる。
*
競馬シリーズで世界中の読者に興奮と感動を与え続け、惜しくも死去したディック・フランシスの最後の作品。


ここから5月に読んだ本の感想となります。
単行本で、ディック・フランシスによる競馬シリーズの最終作です。
もう、すでに文庫化されています。
矜持〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (競馬シリーズ)

矜持〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕 (競馬シリーズ)

  • 作者: ディック・フランシス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2012/06/05
  • メディア: 文庫

いや、もう、なんかもったいなくて、なかなか読めなかったんですよ。
ディック・フランシスの競馬シリーズは、おそろしく打率の高い、というよりむしろ、はずれのないすごいシリーズで、奥さんのメアリさんが亡くなってから途切れていたのが、2006年
「再起」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
で、まさに再起し、その次の
「祝宴」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
は息子さんのフェリックスが共著者となって、そのあと、
「審判」(ハヤカワ・ミステリ文庫)
「拮抗」〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
と共著が続いてきましたが、ディック・フランシスが2010年に亡くなってしまったのでいよいよこの「矜持」でそれも終わり。
いや、もったいなくて、老後の楽しみにとっておこうかと思っていたのです。
でも、フェリックス・フランシスが単独で新・競馬シリーズをスタートさせ、その翻訳↓

強襲 (新・競馬シリーズ)

強襲 (新・競馬シリーズ)

  • 作者: フェリックス・フランシス
  • 出版社/メーカー: イースト・プレス
  • 発売日: 2015/01/24
  • メディア: 単行本

も出たので、自分に解禁しました。

原題は”crossfire”
127ページに説明があります。
不正駈歩。
「馬が駈歩(かけあし)に入ったときに前脚と後脚の手前が異なる走りかたをすること。」
邦題は、これとまったく関係なく、「矜持
矜持、というのはいい単語、タイトルですね。
この作品というよりは、競馬シリーズ、ディック・フランシスの作品に共通するワードだと思います。
ストイックで、決して負けない主人公の魅力たっぷりです。
ちなみに、イギリスやイギリス人の印象って、コナン・ドイルとアガサ・クリスティとディック・フランシスで培われたような気がします。実際に行ってみると、決して本の印象通りとはいきませんでしたが...
さておき、上で引用したあらすじに詳しく書いてありますが、やむなく戻った実家で、折り合いの悪い母のために、まさに矜持をもって、戦いに挑む主人公トマス・フォーサイス。
フランシスの作品が、永く書き継いできたイメージを、丁寧になぞるように物語は展開します。

最後まで読者の期待にきちっと応えてくれたディック・フランシス。
あとは、息子のフェリックス・フランシスが継いで、ずーっとずーっと、続けていってくれることを期待します。
「強襲」を読むのが楽しみです。



原題:Crossfire
作者:Dick Francis and Felix Francis
刊行:2010年
翻訳:北野寿美枝


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チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
画商チャーリー・モルデカイは、マドリードのプラド美術館からゴヤの名画をかっぱらい、アメリカ・ニューメキシコ州の石油王に配達した。やばい仕事で命を狙われモルデカイは這々の体で故郷のイングランドに戻り鉱山の洞窟に身を潜めた。アメリカ大使館のブルーチャー大佐は、モルデカイを助ける代わりに、捜査対象と結婚し金の流れを突き止めてほしいという。夫となったモルデカイは、今度は妻から暗殺の依頼を受け――。


「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾。
あいかわらずの怪作ぶりを発揮しています。
ただ、第1作「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」を通して、インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、というタイプにこちらが馴れたからか、読みにくさはずいぶん緩和されました。

日本語副題に、「スパイ教育」とある通り、チャーリーが“カレッジ”で訓練を受けます。
この様子がなかなか楽しい。きっと作者も楽しんで書いたのでしょう。
方向性はまったく違いものの、訓練ということで、ちょっと胡桃沢耕史の作品を思い出しました(たぶん、「俺は秘密諜報員」(光文社文庫)ではなかったかと思うのですが、手元に本がなく、胡桃沢さんも非常に多作だったので、あまり自信はありません)。

前作もそうですが、この語り口に乗せられて、猥雑なストーリーに浸っていると、主人公チャーリーがどんなに踏んだり蹴ったりの目にあっても、ちっとも可哀想と思わない(思えない)ところに、この作品の醍醐味があるのでしょう。
ラストの、チャーリーにとっては皮肉な結末も、そうだろうな、とストーリーにぴったりマッチしています。


原題:After You with the Pistol
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1979年
翻訳:三角和代





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チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 [海外の作家 は行]


チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)

チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦 (角川文庫)

  • 作者: キリル・ボンフィリオリ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/12/25
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
マドリードで盗まれたゴヤの名画。イギリスで捜査を担当する臨時主任警視のマートランドは、学友の画商チャーリー・モルデカイを訪ね手がかりを得る。ナショナル・ギャラリー、ターナー作品の裏に隠された一枚の写真。石油王クランプフのビンテージ・カーを、外交封印のもとにアメリカに運ぶ仕事を引き受けたモルデカイだが、マートランドに弱みを握られ汚れ仕事を押しつけられ―。怪作ミステリー第一弾!


ジョニー・デップ主演の「チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密」の原作(映画の感想はこちら)、というよりも、英国推理作家協会賞の第1回ジョン・クリーシー賞(新人賞)受賞作というべきでしょうか、ミステリ好きとしては。
感想は前後しましたが、映画を観る前にこの「チャーリー・モルデカイ (1) 英国紳士の名画大作戦」 (角川文庫)は読んでいます。
40年以上たって本邦初訳らしいです。ジョニー・デップさまさま、というところ?
いやあ、もう、怪作というしかないですね、これは。
あらすじには全く意味がありません。いや、ストーリーはあることはあるんですが、ストーリー展開には重きが置かれていません。
オフビート、なんてよく言ったりしますが、猥雑な主人公が猥雑な語り口で猥雑に突き進んでいく、そういう話で、すぐ横道にそれるし、話のそれ方がはなはだしい。
最初のうち、とても読みにくくて、なんだかなぁ、とおもいつつ我慢して読んでいったのですが、馴染んでくると悪くない。訳者は相当ご苦労されたことでしょう。
脱線ぶりを楽しんでしまいました。
インテリが、まじめくさって悪ふざけをしている、というタイプの日本では受けそうもない作風で、訳されたのは、やはりジョニー・デップさまさま。
真面目な作品がお好きな方は、避けた方がよさそう。

登場人物では、モルデカイの用心棒ジョックがお気に入りです。
(映画のジョックはちょっとイメージが違いましたね)

このあと「チャーリー・モルデカイ (2) 閣下のスパイ教育」 (角川文庫)まで読み終えています。--感想を書くにはまだ先になりそうですが。




原題:Don't Point That Thing at Me
作者:Kyril Bonfiglioli
刊行:1972年
翻訳:三角和代



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サファリ殺人事件 [海外の作家 は行]


サファリ殺人事件 (海外ミステリGem Collection)

サファリ殺人事件 (海外ミステリGem Collection)

  • 作者: エルスペス ハクスリー
  • 出版社/メーカー: 長崎出版
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本


<帯あらすじ>
閉塞空間に演出されるミステリ・パズルの傑作
殺人事件に遭遇したヴェイチェル警視。
彼は宝石の盗難事件を極秘に調査していたが、身分を明かし、犯人探しに転じる。
閉ざされたサファリの世界のなか、解き放たれる真実とは。

前回の「鍵のない家」 (論創海外ミステリ)に続いて単行本です。

この本、翻訳が悲惨です。
「鍵のない家」 もかなりたどたどしかったですが、この「サファリ殺人事件」 は更に上を行くひどさ。
中学生とか高校生の英文和訳を読まされているみたい。
本が売れない、特に、翻訳ミステリが売れない、と言われていますが、翻訳がこういうレベルだと致し方なし、ですね。

翻訳のまずさを棚に上げると、中身はまずまず楽しめました。
閉塞空間というには開放的ですが、限定された登場人物の間での謎解きと、サファリという異国情緒あふれる舞台がポイントです。
車、飛行機、そしてライフル。サファリらしい小道具も雰囲気を盛り上げますし、当然ながら、バッファローとかハゲタカ、レイヨウにサイ、ヒョウなんかもしっかり登場します。

バッファローの糞で時間を推測するところ(93ページ)とか、なんだかいい感じではありませんか? (たいして有効な手がかりでもないんですが、こういう小ネタがあるとうれしい)
古き良き植民地時代を背景にした、堅実なミステリでした。

ハクスリーは、他にも2冊ほどミステリを書いているようです。翻訳されたら読んでみたいと思います。でも、翻訳されることはないんだろうなぁ...

<蛇足>
「いわしとショウガのクラッカー」(170ページ)というのが出てきますが、きっと、オイル・サーディンとジンジャー・ブレッドでしょうねぇ。

原題:Murder on Safari
作者:Elspeth Huxley
刊行:1938年
翻訳:小笠原はるの




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鍵のない家 [海外の作家 は行]


鍵のない家 (論創海外ミステリ)

鍵のない家 (論創海外ミステリ)

  • 作者: E.D. ビガーズ
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2014/08
  • メディア: 単行本




単行本です。
昔、「チャーリー・チャンの活躍」 (創元推理文庫)を読んだことがあるはずですが、覚えていません。
探偵役のチャーリー・チャン初登場作、なわけですが、チャーリー・チャンは映画化やラジオドラマなどにもされた、アメリカでは(当時)非常に高名なキャラクターです。中国人、というのがポイントですね。
この「鍵のない家」はハワイが舞台で、チャーリー・チャンはホノルル警察の巡査部長です。
チャーリー・チャンはハワイが拠点となる探偵だったんですねぇ。認識がありませんでした。
物語はおおむね、ジョン・クィンシー・ウィンタスリップというボストン上流階級に属する青年の視点で語られます。
ハワイに居ついてしまったおばミス・ミネルバを連れ戻すという役目を担ってハワイにやってくるものの、次第にハワイに惹かれていく、という展開。
この展開が、常套的といえば常套的なんですが、非常に心地よい作品です。楽しい。
ボストン上流階級とハワイ、という異文化もあれば、探偵役が中国人という異文化もある(日本人も登場します)。これらの融合が、このシリーズの醍醐味なのかもしれません。

ミステリ的には、「本作の原題“The House Without a Key” は、鍵をかける必要がないほど平穏な土地にあるダン・ウィンスタリップ邸を指すとともに、手がかりが次々と消えていき、『手がかり一つない(without a key)』状態になることを読者に告げるものではないだろうか」と解説で大山誠一郎が指摘している通り、わりと手がかりが興味深い作品です。
チャーリー・チャンが素晴らしいのは、
「本の中では指紋やその他の科学的方法は役に立ちます。現実の捜査ではそうでもありません。私の経験は、人々を人間として深い考察の対象にすべしと命じます。人間の激しい心の動きを。殺人の背後にあるもの、それは何か? 憎悪、復讐、口封じ、あるいは金銭。人々を人間としてつねに研究するのです」(158ページ)
と心理学的推理を標榜しているようでいて、
「この仕事では証拠がぜったいに必要です」(393ページ)
と物理的証拠も重視していて、安心感があるところでしょう。
推理法同様、性格もかなり安定しています。

ジョン・クィンシー・ウィンタスリップのロマンスも快調で、バランスの良い作品だなぁと感じました。
このシリーズの他の作品も読んでみたいです。
「チャーリー・チャンの活躍」も、いつか読み直さなければ。


原題:The House Without a Key
作者:E.D. Biggers
刊行:1925年
翻訳:林たみお

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トムは真夜中の庭で [海外の作家 は行]


トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

トムは真夜中の庭で (岩波少年文庫 (041))

  • 作者: フィリパ・ピアス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2000/06/16
  • メディア: 単行本




<裏表紙あらすじ>
友だちもなく退屈しきっていたトムは,真夜中に古時計が13も時を打つのをきき,昼間はなかったはずの庭園に誘いだされて,ヴィクトリア時代のふしぎな少女と友だちになります。歴史と幻想が織りなす傑作ファンタジー。

この本、昔から気にはなっていてずっと前に購入していたのですが、例によって積読。
ジム・ケリーの「水時計」 (創元推理文庫)の解説で、杉江松恋さんが、イーリーが舞台ということで、この「トムは真夜中の庭で」 を紹介されていまして、おお、(やはり)読んでみようとそのとき思いました。だけど、「水時計」 を読んだのは2013年1月。それからもほぼ2年積読にしてしまっていました。

結論としては、もっと早く読めばよかったなぁ、と思いました。
児童書ではありますが、結構素敵なファンタジーですね。
最初とっつきにくくて、読みづらい印象だったのですが、物語が進むにつれ、殊にタイトルにもなっている庭での出来事が始まると、ずんずん読み進めることができました。
あらすじに「ヴィクトリア朝時代のふしぎな少女と友だちにな」ると書いてあるので、若干ネタバレ気味ながら書いてしまいますと、トムは庭を介してタイムトラベル(?) をすることになります。
ファンタジー(あるいはSF? )の一つの典型的なパターンを踏襲しているわけですが、このディテールが凝っていて楽しめました。
ファンタジーといっても全般的には落ち着いたトーンなので、冒険もの的なファンタジーを想定すると期待外れになりますが、なかなかに味わい深い作品です。
丁寧に書き込まれているので、ゆったり読むのがふさわしいですね。子供が読むと、退屈しちゃう可能性もありますね。
訳文がちょっと古臭いのも、かえって雰囲気が出ているような...

ネタバレついでに(?) 書いてしまいますと、この種のストーリーでは、主人公たちの“出会い”はなかなかに扱いが難しいと思うのですが、アパートと庭を介在させることで、自然に“出会い”を演出していていいなぁと思いました。

やはり圧巻は、1895年の大氷結を背景としたスケートのシーンでしょうか。
うーん、イーリーに行ってみたくなりましたね。

ところで、表紙絵も挿絵も、原著から引いたものだと思うのですが、ちっともかわいくないですね。むしろ、怖いくらい...


原題:Tom's Midnight Garden
著者:Philippa Pearce
刊行:1958


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