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悪魔と警視庁 [海外の作家 ら行]


悪魔と警視庁 (創元推理文庫)

悪魔と警視庁 (創元推理文庫)

  • 作者: E・C・R・ロラック
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/03/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
濃霧に包まれた晩秋のロンドン。帰庁途中のマクドナルド首席警部は、深夜の街路で引ったくりから女性を救った後、車を警視庁に置いて帰宅した。翌日、彼は車の後部座席に、悪魔(メフィストフェレス)の装束をまとった刺殺死体を発見する。捜査に乗り出したマクドナルドは、同夜老オペラ歌手の車に、ナイフと『ファウストの劫罰』の楽譜が残されていたことを掴む。英国本格黄金期の傑作、本邦初訳。

帯に
「クリスティに比肩する英国探偵小説黄金期もう一人の女王」
とあります。
森英俊の解説によると七十一編の長編を書いているそうで、まさに女王と呼ぶにふさわしい作家だったのですね。
ロラックの作品は、「ジョン・ブラウンの死体」 (国書刊行会)を読んだことがあります。ずいぶん前(2002年)に読んだのでよく覚えてはいないのですが、派手なところはないものの、すっきりしたいい作品だったように思っています。

一方この「悪魔と警視庁」は、道具だてというか、見た目が派手です。死体が警部の車の中で発見され、その死体はメフィストフェレスの扮装。
ところがこの魅力的な、ものものしい導入は、さすがロラックというべきか、わりとあっさりと、きわめて現実的な説明が付されてしまいます(ロンドンの霧はどこまで深いんだと少し疑念に思ったりもしますが、ロンドンに限らず深い霧というのは恐ろしく視界を損ねるものなので、まあ本書のような事態もありうるかもしれません)。
290ページほどの、近年の作品と比べると薄いといってしまっていいくらいの長さですが、人の出し入れはかなり行われ、古典ミステリにつきもの(?) の訊問に次ぐ訊問、長々とした証人尋問の羅列といったと違い、てきぱきと進んでいくのは注目すべきところなのだろうと思います。

小粒ながら、なかなかいい雰囲気だと思いましたので、その後訳された
「鐘楼の蝙蝠」 (創元推理文庫)
「曲がり角の死体」 (創元推理文庫)
にも期待します。

それにしても、
「わたしが好意をもったのは、彼が興味深い混合物だったからです。」(160ページ)って、すごい変な日本語ですねぇ。
「ベッドはベッドに可能なかぎり心地よく」(215ページ)というのも強烈です。
訳者の藤村裕美さんは訳書が多数あるベテランだと思うのですが、もうすこし、まともな日本語にならなかったんでしょうか?


原題:The Devil and The C.I.D.
作者:E.C.R. Lorac
刊行:1938年
翻訳:藤村裕美






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悪徳警官はくたばらない [海外の作家 ら行]


悪徳警官はくたばらない (文春文庫)

悪徳警官はくたばらない (文春文庫)

  • 作者: デイヴィッド ローゼンフェルト
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2005/02
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
町を騒がす汚職警官殺害事件。犯人は自分だ――弁護士アンディを訪れた男は告げた。それが悪辣な罠のはじまりだった。事件の様相は二転三転、ついにはアンディの恋人が容疑者として逮捕される事態に! 弁護に立つはわれらがアンディ。だが情勢は不利。狡猾な敵のしかけた罠を破れるか? 読みごこち最高の痛快ミステリ!


「弁護士は奇策で勝負する」 (文春文庫)に続くシリーズ第2作で、みなさんにおすすめ、と言いたいところですが、2005年に翻訳された本書、とっくに品切れ状態。
第1作のネタバレもあるので要注意なんて、警告も不要ですね。1作目も2作目も絶版ですから。

弁護士が主人公で、語り口に特徴があって(特に本作は、大部分を現在形が占めるという、かなり特殊な文体を採用していて-原文がどうなっているのかわかりませんが-、これが非常にリズムよく、心地よく読める原動力になっています)、軽い、気の効いたミステリ。

この第2作はプロットが入りくんでいるのがポイントですね。
弁護士には依頼人に関し守秘義務がある。
なので殺人を自白されても、暴露できない。同じ事件で、自分の恋人が逮捕されてしまう...さて、どうする!?
敵を見定めて、法廷で決戦。ドラマチックですが、アンディにはあまり武器はありません。
アンディ自身が被告側の証人として法廷に立つ、なんて荒技も!
トム・クルーズとジャック・ニコルソンの映画「ア・フュー・グッドメン」 への言及があったりしますので、綱渡り加減を想像いただけるかと思いますが、いやあ、危ない、危ない。
ラストにもうひと波乱あるのもうなずけますね。

あと、本書で特筆すべきは解説でしょう。
実際にはどなたが書いていらっしゃるのかわかりませんが、タラが書いたという体裁。タラ、というのは主人公アンディの飼い犬です。
冒頭の登場人物表にもしっかり記載されていて、「ぼくの愛犬 ゴールデンレトリーバー」となっています。
これが、結構、ほろりとさせられます。

このあと翻訳が途絶えていますが、アメリカではシリーズは快調に続いているようです。
訳されたら必ず買いますので、どこか翻訳出版してください!




原題:FIrst Degree
作者:David Rosenfelt
刊行:2003年
翻訳:白石朗


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名探偵カッレくん [海外の作家 ら行]


名探偵カッレくん (岩波少年文庫)

名探偵カッレくん (岩波少年文庫)

  • 作者: アストリッド・リンドグレーン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/02/16
  • メディア: 単行本


<裏表紙あらすじ>
名探偵を夢見るカッレくんは、ある日エイナルおじさんの怪しい行動に第六感を働かせ、捜査を始めます。宝石窃盗団に迫ったカッレくんは、仲良しのアンデス、エーヴァ・ロッタとともにお城の地下室に閉じこめられてしまいますが……。


「エーミールと探偵たち」 (岩波少年文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続いて児童書です。
これも子どもの頃に読んでいました。しかも、かなりお気に入りだったはず。
だから、「懐かしい」と言いたいところですが、正直いって、まったく覚えていませんでした!

あらすじに明かされているので、少々のネタバレでも書いてしまいますが、子どもが宝石強盗団と対峙するというのは、かなり大胆なストーリーですね。そこはそれかなり間抜けな強盗ですが、それでも子どもには荷の重い相手ではないでしょうか?
そのあたりは、訳者あとがきでうまく書かれています。
「とくにスウェーデンの子どもたちの現実の生活の一面をいきいきとえがいていますが、同時に子どもたちの夢をもみたしているすぐれた作品、スリルとユーモアにあふれた痛快な読みものだと思います。」
その通り。
知恵とチームワークで、手ごわい敵に立ち向かっていく。
ロマンですねぇ。子どもの頃、わくわくして読んだはずです。

巻末のエッセイで、映画監督の山田洋次さんが、「寅さんシリーズ」(の一部)は、この「名探偵カッレくん」 にインスパイアされている、と書いていらっしゃるのもなかなか趣深いですね。


<蛇足>
「ダブル、一部屋、ぼくらふたりに頼むよ」(130ページ)
というセリフがあります。
大人の男二人なんですけどね。ツインじゃなくて、ダブル!? うーむ。
つづく、
「かしこまりました。三十四号室がおよろしいと存じます」
の「およろしい」にもちょっとめまいが...
訳者が1903年生まれだということですから、時代を感じさせて楽しくもあるのですが。若い子どもはどう受け止めるでしょうか?


原題:Masterdetektiven Blomkvist
作者:Astrid Lindgren
刊行:1946年
翻訳:尾崎義


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深海のアリバイ マイアミ弁護士ソロモン&ロード [海外の作家 ら行]




<裏表紙あらすじ>
二人きりのボートで環境保護局員が殺され、サンゴ礁に浮かぶリゾートホテルを構想する大物実業家ハル・グリフィンに容疑が。ヴィクトリアは家族ぐるみの付き合いだった彼の弁護を引き受けたものの、恋人で共同経営者のスティーヴは、ジュニア・グリフィンのかっこよさに嫉妬して、ダイバーの彼を疑う始末。 <上巻>
父親の法曹資格回復申請を当人に拒否されて行き詰まるスティーヴは、事件の関係者に話を聞いてまわるうちに何者かに襲われ、甥のボビーのお蔭で九死に一生を得た。裁判は不利な展開ながら親密さを増していく母親とグリフィンの関係に悩まされるヴィクトリア。ジュニアとの恋の行方、そして事件の真相は? <下巻>


「マイアミ弁護士 ソロモン&ロード」(上) (下) (講談社文庫)の続編です。
amazon.co.jpで確認すると、「マイアミ弁護士 ソロモン&ロード」(上) (下) も、「深海のアリバイ」(上)(下)も、絶版になってしまっているようですね。おもしろいのに。
ポール・リヴァインという表記で「マイアミに死体はふえる」 (文春文庫)「愛して殺してマイアミで」 (文春文庫)が訳されていましたが、2冊で翻訳が途絶え、出版社が講談社に移って出た今回のこのシリーズも2冊で打ち止め。
軽妙なストーリー展開と登場人物のやりとりを持ち味とする作品は、なかなか日本では受け入れられないのでしょうか? 大好きなんですけどねー、こういう作品。

さておき、今回のスティーヴ・ソロモンの弁護術も強引、というか、無茶苦茶というか、すごいです。
ソロモン法とかいうスティーヴの信奉する(?) 法則が折々に書かれているのが、また楽しい。
1. 事実が法にそぐわないというなら……事実をねじまげろ。
2. 依頼人は罪を犯していると常に考えろ。そうすれば時間の節約になる。
とかですよ。かなり極端で愉快です。

今回はスティーヴに恋敵が現れます。
それは、ヴィクトリアの幼馴染み(初恋の人)で、被告人の息子ジュニア・グリフィン。
金持ちで、ハンサムで、アバクロンビー&フィッチの生きた広告で、スポーツもよくできて、そしてスピードの水着のかなり大きなふくらみ(笑)。赤銅色のアドニス(上巻120ページ)、なんて表現もあります。
ちなみに、〈ポリネシアン・ビーチ・クラブ〉に行くシーンがあるのですが、ここはヌーディスト・クラブ。
ここで、スティーブ(とヴィクトリア)は、ジュニアのふくらみの中身を確認することになります。これまたすごいですよ(笑)。
「わずかに傾いて、金髪の茂みに囲まれているのは、自信満々で “おい、おれを見ろよ” と呼びかけているサラミソーセージだった。この野郎はマレットなしでもクロッケーがプレーできそうだ。」(下巻103ページ)
怪物って表現もありますが、マレットって...どんだけ大きいんですか!?
いつもは自信満々のスティーヴが、ジュニアの登場で調子を狂わされるところがおかしい。
ヴィクトリアの内面(描写)もジュニアのせいで、ちょっとおかしくなっているみたい。

スティーヴの父親の法曹資格回復の話と、ジュニアの絡む事件の話と、ヴィクトリアの父親の話が、三つまじりあって解決になだれ込んでいく、そしてスティーブとヴィクトリアとジュニアの恋の鞘当て(?) の結末も。
事件もちゃんと二転三転しますし、弁護士らしく派手な法廷シーンもあります。
スティーヴの甥のボビーもかわいいうえに、活躍するし、こんなに何拍子も揃ったエンターテイメント、どうして売れないんでしょうね?
新刊が訳されたら、かならず買いますよ! ぜひどこかで出してください!



原題:The Deep Blue Alibi
作者:Paul Levine
刊行:2006年
翻訳:細美遥子



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赤き死の香り [海外の作家 ら行]


赤き死の香り (論創海外ミステリ)

赤き死の香り (論創海外ミステリ)

  • 作者: ジョナサン ラティマー
  • 出版社/メーカー: 論創社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
富豪一族に相次いで起こる変死事件。現場に残されたクチナシの香りを追って、酒と女に弱い私立探偵ビル・クレインが謎に挑む。古典的名作『モルグの女』のジョナサン・ラティマーによる、ハードボイルド+本格ミステリの秀作。ビル・クレイン・シリーズ最終作。

単行本です。
作者、ジョナサン・ラティマーの作品を読むのはこれが初めてです。
本書に登場する探偵ビル・クレインもので既訳の「処刑6日前」 (創元推理文庫)「モルグの女」 (Hayakawa pocket mystery books)も読んでいません。ノン・シリーズの「シカゴの事件記者」 (創元推理文庫)も読んでいません。
帯に
「『モルグの女』のラティマーによる
ハードボイルド+本格ミステリ
酔いどれ探偵ビル・クレイン登場」
と書いてあって、
「あら、本格ミステリっぽい作家だったんだ」と意外な気分で購入しました。典型的なハードボイルド作家だと思い込んでいたんですよね。
で、読み始めるとすぐに違和感が。
クレインと事務所長の姪アンとが夫婦のふりをしているところに泥棒が入ってくる、という冒頭のシーンからして、ハードボイルドで連想する緊迫感というよりは、ユーモラス。ビルとアンのやりとりは掛け合い漫才みたい。
そう、これはハードボイルドはハードボイルドでも、渋いハードボイルドではなく、軽ハードボイルドなんですね。
やった! 軽ハードボイルド、大好きです!
なによりやはり、酔いどれ探偵というだけあって、すぐにアルコールに向おうとする陽気なクレインと、わんさか登場する美女たちとのやりとりは、にやりとできます。ナイトクラブで急にダンスすることになるシーンとか、いかにもそれらしい。
アンとの微妙な距離感もまた、定番中の定番で、楽しめます。
本格ミステリ、とされている部分はちょっとぐだぐだな感じがしますが、意外な犯人を創出しようとしているだけでよしとしましょう。
ラスト近くで「あんたは単なる馬鹿かと思ってたわ」(301ページ)とビル・クレインはある登場人物から言われるのですが、うーん、行き当たりばったりで真相にたどり着いたようなもので、そう言われてもある意味やむなし(笑)。本格ミステリ的な名探偵とはちょっとずれた存在ですね。
でも、そこも軽ハードボイルドなら当然のことで、この作品を無理やり本格ミステリとして売り出す必要はないと思います。
それよりも、ちゃんと軽ハードボイルドであるということを明確に打ち出しておいて欲しかった。
それで十分楽しいんだから。
「処刑6日前」 「モルグの女」 もぜひ読んでみたいので、復刊希望です!


原題:Red Gardenias
作者:Jonathan Latimer
刊行:1939年
翻訳:稲見佳代子




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怪盗紳士ルパン [海外の作家 ら行]


怪盗紳士ルパン (ハヤカワ文庫 HM)

怪盗紳士ルパン (ハヤカワ文庫 HM)

  • 作者: モーリス・ルブラン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2005/09/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大西洋を行く客船プロヴァンス号に無線が入った。《貴船にルパンあり。一等船客、金髪、偽名はR…》 あの怪盗紳士がこの船に! いったい誰がルパンなのか? 船客たちは恐怖と興奮に沸きたつが――世界に知らぬ者なきヒーローが誕生した記念すべき「アルセーヌ・ルパンの逮捕」など、傑作九篇を収録。ルパンの前にルパンなく、ルパンの後にルパンなし。変幻自在、神出鬼没、快刀乱麻の怪盗の活躍を、最新訳で贈る第一弾。


コミック「アバンチュリエ(1)」 (イブニングKC)の感想のところで(感想ページへのリンクはこちら)、
「原作の翻訳も改めて読んでみようかな、という気になりました。」
と書いたのですが、そんなわけで購入した本です。約2年積読でしたが。
これを読んで確認できましたが、「アバンチュリエ」 はものすごく原作に忠実なコミカライズですね。
昔、子供向けのを読んだきりで、細かなことは覚えていませんでした。
アルセーヌ・ルパンの逮捕
獄中のアルセーヌ・ルパン
アルセーヌ・ルパンの脱獄
謎の旅行者
王妃の首飾り
ハートの7
アンベール夫人の金庫
黒真珠
遅かりしシャーロック・ホームズ
(ちなみに、最後の作品の原題は、Herlock Sholmes arrive trop tard です)
の9編収録の短編集です。
怪盗紳士の初のお目見えが、ほかならぬ本人の逮捕劇だというのですから、人を喰っていますね。そのあと脱獄へとつながっていき、アルセーヌ・ルパンらしさというのは、この最初の数作で決定づけられたのだと実感。
貌を自在に変えられる、というのはちょっと行き過ぎ感ありますが、ルパンの使うトリックは、こんなにも心理的なものが多かったんだと、改めて感心しました。なんだか、意外。
古臭くて楽しめないかも、と危惧していましたが、杞憂に終わりました。とても楽しい読書体験でした。
他の作品の新訳も読みたいです。


原題:Arsene Lupin Gentleman Cambrioleur
作者:Maurice Leblanc
刊行:1907年

<ちょっとネタバレ気味なので、読了後お読みください>


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スクールボーイ閣下 [海外の作家 ら行]


スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

スクールボーイ閣下〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)
スクールボーイ閣下〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

  • 作者: ジョン ル・カレ
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 1987/01/31
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ソ連情報部の工作指揮官カーラの策謀で、英国情報部〈サーカス〉は壊滅的打撃を受けた。その長に就任したスマイリーは反撃を開始する。〈サーカス〉の膨大な記録を分析し、カーラの弱点を解明しようというのだ。そこで浮かび上がったのは、パリから東南アジアへと伸びる極秘送金ルート。その受取人をつきとめるべく、スマイリーは工作員ウェスタビーを香港に派遣した! 三部作の中核を成す巨篇。英国推理作家協会賞受賞。<上巻>
カーラの資金を受け取る香港の大実業家ドレイク・コウ。彼の弟ネルソンは中国情報機関の中枢に送り込まれたカーラの二重スパイだった。そしていまウェスタビーの調査により、ドレイクが弟を中国から脱出させようと企てていることが判明した。スマイリーはネルソンを捕えるべく秘密作戦を開始する、だが、ウェスタビーが指揮下を離れ、独自に行動していたとは知るよしもなかった! ル・カレの最高傑作と絶賛された力作 <下巻>


言わずと知れた(?)スパイ小説の金字塔、です。
長らく積読だったのですが、昨年映画「裏切りのサーカス」を観て、読んでみようかと思ったのがきっかけです。(長い間積読だったため、表紙絵が上で引用したものと違います...映画にあわせて新しいカバーになったんですね)
「裏切りのサーカス」の感想(ブログへのリンクはこちら)で、「映画の記憶がなくなってしまわないうちに、読み直してみることにします!!」と書いた通り、まずは新訳なった「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ〔新訳版〕」 (ハヤカワ文庫NV)を、わりと映画を観た後すぐ読みました。この感想、ブログに書くのを忘れていました。あーあ。
で、今回、間は空いたものの、スマイリー三部作の第2作である「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 に挑んだわけです。
この「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 は名作・傑作の誉れ高く、1977年英国推理作家協会賞(ゴールド・ダガー賞)も受賞していますし、たとえば、高村薫など絶賛する作家も多い。だけど、一方で、実は身の回りではあまり評判高くない。むしろ「死ぬほど退屈」「読みにくい」「ごちゃごちゃしている」「途中で挫折した」という人がいっぱいで、ちょっと恐怖感あり。
実際に読み終わっての感想は、確かに読みにくいなぁ、と。でも、退屈とは思いませんでした。
読みにくい理由、そして退屈だという人が退屈に感じる理由は、ストーリーがなかなか前に進まないから、だと思います。
スパイもの、というと007の映画のように派手な活劇を連想しますが、本当はこういう地味な活動の積み重ねなんだろうな、と想像しながら読みました。
スマイリー三部作って、3作目の「スマイリーと仲間たち」 (ハヤカワ文庫)はまだ読んでいませんが、スマイリーがカーラにしてやられて、その後反撃する、というものだと思うんですね。「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」 でやられて、この「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 で反撃の糸口をつかんで、「スマイリーと仲間たち」 でやっつける。こういう位置づけを考えると、真ん中の「スクールボーイ閣下」〈上〉〈下〉 はどうしても地味な中でも地味になってしまうのも無理はない。香港、タイ、カンボジアと舞台は移るものの、それでも地味なものは地味ですよね。
でも、それぞれのエピソードが思わせぶりなので、いろいろと考えながら読むと退屈はしませんでした。特に「スマイリーは~~知るよしもなかった」とあらすじにありますが、どこまでスマイリーは知っているのだろう、あるいは、(知らずとも)想定していたのだろう、と想像しながら読めば、興趣は増すはずです。
まさに "Honourable" なスクールボーイも魅力的だなと思いました。
じっくり読みときたい、名作、だと思います。

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デクスター 幼き者への挽歌 [海外の作家 ら行]


デクスター 幼き者への挽歌 (ヴィレッジブックス)

デクスター 幼き者への挽歌 (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジェフ リンジー
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2007/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
デクスター・モーガン。表の顔はマイアミ警察の鑑識技官であり、人当たりのよい好青年。だが裏の顔は――殺人衝動を抑えきれず、満月の夜に悪人を狩る闇の仕置人だった! あるときデクスターは、警察官である妹のデボラから、一滴の血も残っていないという奇妙な連続殺人事件の捜査を手伝ってほしいと頼まれた。殺人鬼の心理を知りつくすデクスターは、手がかりを猛追跡し真相に肉薄してゆくが、やがて犯人とのおかしなシンクロニシティが起こりはじめる。殺人者の正体はいったい? 次の獲物は? 
数多のミステリー賞にノミネート、米で放映中のドラマも話題沸騰の大人気ミステリー。

この「デクスター 幼き者への挽歌」が絶版だったので、第2作の「デクスター 闇に笑う月」 (ヴィレッジブックス)を先に読んだこのデクスターシリーズ。(「デクスター 闇に笑う月」 の感想を書いたブログへのリンクはこちら) とてもおもしろかったので、この第1作の「デクスター 幼き者への挽歌」を Amazon マーケットプレイスで購入しました!
この作品でも語り手はデクスターなのですが、「デクスター 闇に笑う月」 を読んだときに顕著だった語り口の軽妙さは、抑え気味です。第1作目だったので、様子見だったのでしょうか。これが好評だったので、「デクスター 闇に笑う月」 で大きく花開いたのかもしれません。抑え気味とはいえ、随所に感じられる余裕(?)が大きな読みどころであることに変わりはありません。
ミステリーとしては、作中に出てくるシリアル・キラーにデクスターがシンクロしていく=周波数がぴったり合っていくというか、溶け合っていくというか=ところがポイントだと思われます。
そして、驚きのラストへ向かうわけですが、「デクスター 闇に笑う月」 を先に読んでよかったのかもしれません。冷静に考えると、ちっとも驚きでないような気もしますが、「デクスター 闇に笑う月」 を読んでいたことで、驚き何割増しかにはなっている(当社比)と感じました。
そして、デクスターにとって邪魔っ気な人物がちゃんと始末されるところもおかしい。ご都合主義と言ってはいけません。これも楽しみどころの一つなのだと思います。
シリーズ第3作の「デクスター 夜の観察者」 (ヴィレッジブックス)も当然期待高めて読みます!

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デクスター 闇に笑う月 [海外の作家 ら行]


デクスター 闇に笑う月 (ヴィレッジブックス)

デクスター 闇に笑う月 (ヴィレッジブックス)

  • 作者: ジェフ ・リンジー
  • 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
  • 発売日: 2010/05/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
昼はマイアミ・デイド郡警察で働く鑑識チームの好青年。しかしながら、夜は血に飢えた連続殺人鬼――それがデクスター・モーガンの人知れぬ日常だ。獲物は自分と同じ冷酷な殺人者たち。だが彼の二重生活は、ある奇妙な事件を機に思わぬ方向へと転がりだす。被害者は全身を切り刻まれて、生きたまま放置されたヒスパニック男性。あまりの凄惨な現場にだれもが戦慄するなか、デクスターだけは見たこともない手口に好奇心をおぼえ、“公私”ともに犯人を追いはじめる。やがて捜査関係者と犯人の意外なつながりが浮上し、第二・第三の被害者が……。話題沸騰! 衝撃の海外ドラマ『デクスター』原作第2弾。

2010年ゴールデングローブ賞に輝くドラマ「デクスター」原作のシリーズ第2作です。
ドラマを観てはいないのですが、この原作シリーズもなかなか評判がよさそうだったので読みたいなと思っていました。
このシリーズは、
「デクスター 幼き者への挽歌」 (ヴィレッジブックス)
「デクスター 闇に笑う月」 (ヴィレッジブックス)
「デクスター 夜の観察者」 (ヴィレッジブックス)
と3冊訳されています。
ところが1冊目の「デクスター 幼き者への挽歌」 が絶版状態。やむなく2冊目から手に取ることにしました。
お話は、デクスターが行う殺人の話、デクスターのプライベートの話、そしてデクスターとは別の連続殺人犯の話、の大きく分けて3つが、デクスターの視点から語られます。そう、本書の語り手はデクスター。一人称です。
まず、この語り口がこのシリーズの最大の特徴なのだと思われます。絶好調。とても楽しい。
連続殺人犯の語り口を「楽しい」と評するのは、問題あるのでは、とも思いますが、楽しいものは仕方がないですね。皮肉の効いた、余裕ある語り口で、近頃こういう語り口の作品はないなぁ、もっと読みたいなぁ、と思いました。
たいした予備知識なく、シリーズ第1作を読まずに第2作から読み始めましたので、「人間ではない怪物であるわたし」(P78)、「じっさいは怪物、本当は人間にまじって暮らす権利もない存在」(P299)なんて書いてあるものだから、ひょっとして宇宙人とかSF的設定なのかな、なんて勘ぐりながら読みましたが、そういう仕掛けはなさそうですね。人を殺さずにはいられない自分のことを、自嘲気味に表現しているのですね。
プライベートの話でのエピソードが、ほとんどコメディの領域で、おもしろいです。子供との交流とか、デクスターが婚約(!)するとか、第2作目の本書から読んでも十分楽しめました。
ミステリー的に中心となるデクスターとは別の連続殺人犯の話は、こっちはこっちで残虐で恐ろしい犯人です。ミステリーとしては定番通りの展開を手堅く見せるので、物足りないと思うかたもいらっしゃると思いますが、いえいえ、そんなことはありません。犯人を理解し(犯人にユーモアのセンスがあることに気づき)、「心底、この男と会いたくてたまらなくなった」(P204)なんていうデクスターも相当恐ろしいのですが、そのデクスターの視点から見ると、なんだかいつものサイコ・サスペンスとは景色が違って見えるところが、このシリーズの最大のポイントなのでしょう。おもしろい。ドラマも観てみたくなりますね。
婚約者リサの子供コーディに芽生えているものが、今後どうなっていくのかも注目です。
我慢できなくて、Amazon.co.jp のマーケットプレイスで、絶版の第1作「デクスター 幼き者への挽歌」 を買ってしまいました。
ちなみに、本書の原題は、Dearly Devoted Dexter。Dでそろえていていいですね。
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どこよりも冷たいところ [海外の作家 ら行]

どこよりも冷たいところ (創元推理文庫)

どこよりも冷たいところ (創元推理文庫)

  • 作者: S.J. ローザン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2002/06
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
マンハッタンの建設現場で工具が頻繁に消え、さらにはクレーンの操作係が失踪する。疑わしい班長の素行調査を請け負った私立探偵ビル・スミスは、レンガ工として覆面捜査を開始したが、すぐに工員が瀕死の重傷を負う。ピアノを愛する中年の白人探偵と相棒のリディアが、こみいった事件の最深部に見たものとは? アンソニー賞最優秀長編賞に輝く、期待の現代私立探偵小説第四弾。

シリーズ第4弾なのですが、このシリーズなんと呼べばよいのでしょうね? 東京創元社のホームページを見ると、「リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ」と書いてありますが、もっといい呼び方ないものでしょうか?
若い女性とおっさん、という組み合わせは物語の定番といえば定番で、解説でもディック・ロクティの「眠れる犬」 (扶桑社ミステリー)が先行作として引き合いに出されていますが、日本でも赤川次郎の幽霊シリーズや樋口有介の諸作品などいっぱいありますね。この二人の関係が進展しそうで進展しないところがとても大事ですよね。ちょっとビルにはかわいそうですけれど。
このシリーズは中国系の若い女性リディアと中年白人男性ビルのコンビで、第1作 「チャイナタウン」 (創元推理文庫)の語り手がリディア、次の「ピアノ・ソナタ」 (創元推理文庫)の語り手がビル、そして第3作目の「新生の街」 (創元推理文庫)と語り手が交互に変わっていくのが特徴で、第4作の「どこよりも冷たいところ」 (創元推理文庫)はビルの番です。
今回はビルの建設現場に潜入する (しかも、レンガ工として!!)、という地味な発端です。だから、というわけでもないのでしょうが、明かされる真相も地に足のついたものだったように思いました。犯人像が明かされた時には、どことなく可笑しいような、哀れなような、そんな気分になったところがこの作品のポイントなのではないでしょうか?
このシリーズは順調に翻訳が進んでいて、このあと、
「苦い祝宴」 (創元推理文庫)
「春を待つ谷間で」 (創元推理文庫)
「天を映す早瀬」 (創元推理文庫)
「冬そして夜」 (創元推理文庫)
「夜の試写会」 (創元推理文庫)
「シャンハイ・ムーン」 (創元推理文庫)
と出ています。
読むだけではなく、買うほうもちっとも追いついていないのですが、読めば必ず満足できているので、がんばって続けて読みたいです。
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