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ボランティアバスで行こう! [日本の作家 た行]


ボランティアバスで行こう! (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ボランティアバスで行こう! (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 友井 羊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/02/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
東北で大地震が発生した。多くの支援活動が行われるなか、大学生の和磨は、バスをチャーターして援助活動に参加する「ボランティアバス」を主催することに。行方不明になった父親の痕跡を探す姉弟に出会う女子高校生の紗月。あることから逃亡するため、無理やりバスに乗り込んだ陣内など、さまざまな人がそれぞれの思惑を抱えてバスに乗り合わせるが……。驚きのラストが感動に変わる!


「僕はお父さんを訴えます」 (宝島社文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)で第10回このミステリーがすごい! 大賞優秀賞を受賞してデビューした友井羊の第2作です。
前作の感想で
「次作が楽しみだと思いました」
なんて生意気をことを書いてしまったのですが、楽しみにしていたので買いました。
帯の惹句がすごいんです。いわく、
「どんでん返しを見事に決めた傑作」
ダ・ヴィンチ2013年11月号に掲載された千街晶之のコメントを引用したもののようですが、どんでん返しで傑作、ときたらミステリファンとしては読まずには...
読み終わっての感想は、確かにどんでん返しはあるものの、それをあからさまに「売り」にしないほうが良い作品なのではないだろうか、というものでした。
日常の謎といってもよいような謎解きの連なる連作なのですが、どんでん返しがある、と思って身構えて読むと、この作品で用意されているどんでん返しは新味のあるものではなく、事前に気づく人も多いと思われますし、仮に気づかずに明かされてもさほど驚かないと思われるからです。

どんでん返しそのものよりも、どんでん返しを通してボランティアというテーマ、恩送りというテーマが浮かび上がって来ることの方が重要なポイントなのだと思いました。
「恩送り、という言葉があるそうだ。誰かから受けた恩をその人に返すのではなく、他の人に送るという言葉らしい。」(P.87)
と早い段階でさらっと書かれていますが、難しいボランティアというテーマを印象付けるのに非常に効果的です。

連作という体裁で、いろんな立場のボランティアが登場しますし、ボランティアと地元の被害者の方々とのやりとりも描かれます。
ボランティアが抱える問題やいいところが、手際よく紹介されていきます。
それだけでも十分な作品に仕上がったと思いますが、どんでん返しを仕掛けることで、さらに印象が強くなったように思います。
あまり書くとネタバレになってしまいますが、どんでん返しがあることで物語が重層構造となり、その重層構造そのものが「ボランティア」の本質(?) をついている、ということではないでしょうか?
募金や寄付をするだけで実際のボランティアをやったことのないものがわかったようなことを書くことはよくないのかもしれませんが、ミステリ好きが本書を読んで、そんなことを考えました。


タグ:友井羊
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ミレイの囚人 [日本の作家 た行]


ミレイの囚人 (光文社文庫)

ミレイの囚人 (光文社文庫)

  • 作者: 土屋 隆夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
推理作家・江葉章二は、大学時代に家庭教師をしていた、白河ミレイに、監禁されてしまった。江葉の足には、重りの付いた鎖が……。彼が監禁されているとき一人の新人作家が殺された。現場に残る謎。殺人者はだれだ? 江葉はどうなる?
事件の結末は、恐ろしく、そして悲しい過去に遡る。そこには非道な犯罪に対する底知れぬ怒りがたぎっていた……。


引っ越し効果とでも言うのでしょうか。引っ越し前は、本棚の奥の方にひっそり追いやられていた本が、引っ越したらどこになにがあるかわからないので逆に表の方へ出てきます。
この「ミレイの囚人」 (光文社文庫)もそんな一冊。
土屋隆夫を読むのは、いつ以来でしょうか?? 手元の記録をみると2009年に「華やかな喪服」 (光文社文庫)を読んでいますね。意外と最近。
7年ぶりの土屋隆夫となるわけですが、この「ミレイの囚人」 は単行本が出たのが1999年。文庫が出たのが2000年ですから、ずいぶん古い本ですね。
端正な本格推理で昔は好きで読んでいたのですが、やはり古めかしいですね。

この作品を書かれたとき、作者は82歳だった、ということで、すげーって感じはしますが、古めかしいのは古めかしい。
冒頭、かなりおっさんくさい作家の視点で物語が始まるのですが、その江葉の年齢が32歳(14ページ)。こんなに老けた32歳、いますか?

作家が閉じ込められる、というのは「ミザリー」 (文春文庫)ですが、あちらはホラーで、こちらは本格ミステリ。ずいぶん手触りが違いますね。
本格ミステリに転じてからの謎解きは、ちょっとアンフェアというか、バカミスというか...楽しみましたけど。
なにより、途中まで読んだところで、「犯人は××なんじゃないの?」と思ったら、その通りだった、という個人的には脱力感あり、だったのですが、この作品のポイントはそっちよりもむしろ叙述にあると思います。
叙述トリック、というほどの仕掛けではないのですが、土屋隆夫にしては珍しい(?) 流れに注目です。
文中に、神の視点ともいえる作者の視点があちこちに顔を出すのに違和感を感じていたのですが、これも土屋隆夫による「仕掛けがあるよ~」というメッセージだったのでしょうね。

一時期(この作品が発表された頃なのかもしれませんね)ミステリで流行った◯◯法の問題を扱っているところも、作者の年齢を考えるとすごいことですね。ありきたりの主張であっても、貪欲に自らの作品に取り込んでいく心意気がいいですね。
でも、考えてみれば、「盲目の鴉」 (光文社文庫)の犯人像の裏返しともいえるメッセージですから、流行りを取り入れた、というよりは、もともと土屋隆夫がもっていた問題意識を作品に盛り込んだ、ということなのかもしれません。

土屋隆夫は、このあと、
「聖悪女」 (光文社文庫)
「物狂い」 (光文社文庫)
「人形が死んだ夜」 (光文社文庫)
と発表しているのですが、いずれも買えていません。
絶版になっているようなので、買っておけばよかったかなぁ。

タグ:土屋隆夫
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機龍警察 [日本の作家 た行]


機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

機龍警察(ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 月村 了衛
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/03/19
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
大量破壊兵器の衰退に伴い台頭した近接戦闘兵器体系・機甲兵装。『龍機兵(ドラグーン)』と呼ばれる新型機を導入した警視庁特捜部は、その搭乗要員として姿俊之ら3人の傭兵と契約した。閉鎖的な警察組織内に大きな軋轢をもたらした彼らは、密造機甲兵装による立て篭もり事件の現場で、SATと激しく対立する。だが、事件の背後には想像を絶する巨大な闇が広がっていた……“至近未来”警察小説を描く実力派脚本家の小説デビュー作!


この文庫本を買って積読にしてぼやぼやしている間に、「機龍警察〔完全版〕」 (ハヤカワ・ミステリワールド)なんてものが出てしまいました。
なので、この感想は文庫本である旧版のものです。

あらすじにもありますが、警察で機甲兵装に搭乗してうんぬんかんぬんって言ったら、これはゆうきまさみの「機動警察パトレイバー」 (小学館文庫)ではありませんか。ああ、懐かしい。
しかし、コミックではない、小説で? うーん、と思って読みましたが、いや、ちゃんとおもしろかったですね。
付け加えておくと、(当然ながら)「機動警察パトレイバー」とはテイストがずいぶん違います。

機甲兵装は「龍機兵」
特捜部がSIPD (Special Investigators, Police Dragoon)

警察小説の枠組みで書かれているのがまず第一のポイント。
そしてその機甲兵装(警察の隠語では、キモノ)に乗るのが、傭兵--すなわち警察プロパーでないというのが第二のポイントですね。

正直読む前は、アクションに傾斜した雑なつくりの小説かも、なんて思っていたのですが、たいへん失礼しました。
定型といえば定型かもしれませんが、3人の傭兵が過去も含めそれなりに描かれていて(それなり、というのは巻を追うごとにもっともっと深掘りされていくのだろうなと思えたからです)、既存の警察組織や警察官との摩擦もきちんとフォローされています。
そして、魅力は文体ですね。きびきびしていて、心地よいテンポ。緊迫したシーンと、緩んだシーンの緩急もついて、リズムよく読めます。
これらのことが、第1章(この文庫で62ページまで)を読むだけでわかります。
派手な戦闘は冒頭とラストだけで、途中はちゃんと警察捜査になっているのも、ミステリ好きにはポイント高い。

とても面白かったですが、この「機龍警察」は、
「機龍警察 自爆条項」〈上〉  〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)
「機龍警察 暗黒市場」 (ミステリ・ワールド)
「機龍警察 未亡旅団」 (ハヤカワ・ミステリワールド)
「機龍警察 火宅」 (ハヤカワ・ミステリワールド)
と続いていくシリーズの導入部、いわばご紹介といった感じなので、続きを読むのが楽しみです!



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シチュエーションパズルの攻防 [日本の作家 た行]


シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)

シチュエーションパズルの攻防 (創元推理文庫)

  • 作者: 竹内 真
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/02/27
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
銀座の文壇バー『ミューズ』に夜な夜な現われる大御所ミステリー作家・辻堂珊瑚朗。普段はホステスにちょっかいを出しながら葉巻と酒を楽しむサンゴ先生だが、一度不思議な謎に遭遇すると、さりげなく推理を披露する。ライバル作家と競う推理ゲームの顛末、男女の駆け引きに絡む謎など五つの事件を、ボーイの「僕」の視点から軽やかに描く、遊び心あふれる安楽椅子探偵ミステリー。


タイトルにもなっているシチュエーション・パズルというのは、wikipedia から引きましょう。
「シチュエーションパズルは通常何人かのグループで遊ぶ。一人が問題を出し、他の人はイエス(はい、肯定)・ノー(いいえ、否定)で答えられる質問を出す(場合によっては「関係ありません」などのイエス・ノー以外の答もあり得る)。質問者は、出題者が考えているストーリー、あるいは物を推測して語る。それがすべての謎を説明できたとき、このパズルは解けたことになる。」

裏表紙側の帯に、各話の紹介があります。
街角でホステスが目撃した、拉致事件の真相は? 「クロロホルムの厩火事」
差出人不明のFAXを元に、ライバル作家と推理ゲームを繰り広げる。 「シチュエーションパズルの攻防」
大御所作家ふたりを手玉に取って姿を消した、銀座一のホステスの伝説を追う。「ダブルヘッダーの伝説」
若き日のサンゴ先生とミーコママが遭遇した名画盗難事件の謎。 「クリスマスカードの舞台裏」
文壇バー『ミューズ』を訪れるひとりの紳士。彼の抱える悩みとは。 「アームチェアの極意」

こういうクイズを扱う作品は難しいのですね。
なんだかおもしろそうに思って手に取ったのですが、結論からいうと、期待外れでした。
かなり手のかかった作品だとは感じるのですが、それを素直にそのまま楽しむことはできませんでした。

シチュエーションパズル自体が試行錯誤を楽しむものであるため、結論に至っても鮮やかな推理とはいきませんし、舞台を銀座のバーに設定していることもあって、謎を解くよりもどう落としどころを見つけるか、ということに気を付ける必要もあります。
であれば、大人の物語になるか、というと、確かにそういう側面もないではないですが、人物の書き込みもさほどなされているわけではないので(なにしろ各話短いです)、そこにまでは至っていない。
全般的に中途半端な印象で終わってしまいました。

登場人物はかなり気に入ったんですが。
サンゴ先生って、北方謙三みたいだし、とすると、藤沢先生はやはり(何がやはりだ!?)大沢在昌?




タグ:竹内真
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僕はお父さんを訴えます [日本の作家 た行]


僕はお父さんを訴えます (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

僕はお父さんを訴えます (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 友井 羊
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/03/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第10回『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。何者かによる動物虐待で愛犬・リクを失った中学一年生の向井光一は、同級生の原村沙紗と犯人捜しをはじめる。「ある証拠」から実父に疑念を持った光一は、司法浪人の友人に教わり、実父を民事裁判で訴えることを決意する。周囲の戸惑いと反対を押して父親を法廷に引きずり出した光一だったが、やがて裁判は驚くべき真実に突き当たる!


昨日の「弁護士探偵物語 天使の分け前」 (宝島社文庫)が大賞を受賞したときの「このミステリーがすごい!」大賞優秀賞受賞作です。
この年は、大賞作にも優秀作にも法廷が出てきたんですね。

まず、「僕はお父さんを訴えます」というキャッチーなタイトルがなかなかよいではないですか。
タイトルをみたとき、どういう話になっているんだろう、といろいろと想像したんですが、あらすじを読んでびっくり。タイトル通り、息子が父親を民事で訴える。なんとまあ、ストレートな。
中学一年生が、父親を訴える、というのは、あちこちに無理がありそうです。ちょっと危ないところもありますが、訴訟に持ち込むまで、それなりに丁寧に、130ページまで描かれていきます。ここが結構楽しい。

ミステリとして作品を構成する以上このまま単に民事裁判を進めていっても意外性はないので、作者は何を仕掛けているのかな、と想像しながら読んでいくことになるわけですが、そう考えると逆に作者の狙いに見当がついてしまいます。
かなりあからさまな部分(伏線?)もありますし、ミステリを読み慣れた人にとっては、この結末は「驚くべき真実」ではありません。でも、そこへ至る道筋が楽しい。
その意味では、帯に書かれた乙一の
「想像の斜め上! 僕はこの本を推薦します。」
という推薦文が光っていますね。
想像を超えている、と言い切るのはちょっとためらってしまいますが、想像の範囲内でつまらない、というわけでもない。「斜め上」って、ステキな表現だと思います。

とても重苦しいラストではありますが、全般的にあっさりした筆致で、主人公の光一を取り巻く人間もそれなりに個性的に描かれていますし、次作が楽しみだと思いました。


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ちみどろ砂絵 くらやみ砂絵 [日本の作家 た行]


ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉 (光文社時代小説文庫)

ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 都筑 道夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/10/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
江戸は神田の橋本町、貧乏長屋に住まう砂絵かきのセンセーを始めとしたおかしな面々が、わずかな礼金めあてに、奇妙奇天烈な謎を解く異色の捕物帳シリーズ!  四季折々の江戸の風物を織り込み、大胆かつ巧緻な構成で展開する探偵噺は、時代小説のみならず本格ミステリーファンをも夢中にした傑作揃い。その名作が装いも新たに、ボリューム満点の二冊合本で刊行。


この「なめくじ長屋」シリーズは、都筑道夫の高名な捕物帳です。
以前、角川文庫に収録されていましたが、その後光文社文庫に収録され、2010年に合本して全6巻にまとめたものの第1弾がこれです。
角川文庫版で「血みどろ砂絵」(角川文庫版では、“血”が漢字でした)も「くらやみ砂絵」も読んでいますが、本屋に並んでいるのを見て、すごく懐かしくなりました。
実は「小梅富士」を読み返してみたくて、たしか最初の巻に入っていたよな、と思ってこの「ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵 なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉」 (光文社時代小説文庫)を中身も確かめもせず買ったのですが、記憶違いで、「小梅富士」が入っているのは第3巻の「からくり砂絵」のようで、次の「からくり砂絵 あやかし砂絵」 (光文社時代小説文庫)を後日買いました。
ということで、せっかく買ったので予期せぬ再読となった「ちみどろ砂絵 くらやみ砂絵」 ですが、いやあ、やはりおもしろかったですね。

「ちみどろ砂絵」の方は
渡し舟での人間消失を扱う、第一席 よろいの渡し
女の着物を着た男の首なし死体を扱う、第二席 ろくろっ首
とある商家から風呂桶を盗み出してくれと言われる、第三席 春暁八幡鐘
番頭を切り付けた手代が倉から消えてしまう、第四席 三番倉
本所七不思議の見立て殺人、第五席 本所七不思議
博打のかたにとられた妾を旗本屋敷から取り返すよう頼まれる、第六席 いのしし屋敷
心中相手が店に来たときの姿と違い老婆に代わっていたという、第七席 心中不忍池

「くらやみ砂絵」は
父子がそれぞれ相手を呪い殺そうとする、第一席 不動坊火焔
通夜の席で客が刺殺され、もとの死体が消えてしまう、第二席 天狗起し
見世物小屋の女太夫の内腿に浮かび上がる殺人予告、第三席 やれ突けそれ突け
手妻師と砂絵のセンセーの対決から意外な方向へ話が転がる、第四席 南蛮大魔術
火の見櫓で半鐘が鳴ったが火事はなく、鳴らし手が殺された、第五席 雪もよい明神下
役者絵を付けた羽子板が切り裂かれ、その役者が殺されていく、第六席 春狂言役者づくし
質屋に入った盗人はその時点で既に死んでいたはずという、第七席 地口行灯
とそれぞれ7話収録です。

ミステリとして不可能興味も満載ですし、シリーズ物といってもワンパターンではなく、事件も、なめくじ長屋の連中の事件へのかかわり方もそれぞれ工夫が凝らされています。
たとえば、解説で都筑道夫自身のコメントを引いて触れられていますが、最後の「地口行灯」はダイイング・メッセージを取り扱っていますが、唖然とするくらい素晴らしいアイデアです。
各話短い中にも趣向盛りだくさん。
脱奴(ぬーど)、巣乱(すらむ)、蕃拉布(はんかちーふ)、書場簾(かんばす)、倶游夫(ぐるーぷ)、混凝土(こんくりいと)、娯知譜(ごしっぷ)、破落窟(ばらっく)などなど、地の文で見られる言葉遊びもやはり楽しいです。

さて、次は待望の(?)「小梅富士」収録の「からくり砂絵 あやかし砂絵」 です。
とはいえ積読という悪い癖のせいで、いつになることやら....


<おまけ>
211ページに
「とんでもございません」
というセリフが出てきます。
「とんでもない」で一語なので「とんでもございません」というのは間違いで、「とんでもないことでございます」というべき、と教えられてきましたが、都筑道夫ほどの作家がこう書くと、「とんでもございません」というのも間違いではなかったのか、と思えてしまいますね。


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名前探しの放課後 [日本の作家 た行]


名前探しの放課後(上) (講談社文庫)名前探しの放課後(下) (講談社文庫)名前探しの放課後(下) (講談社文庫)
  • 作者: 辻村 深月
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/09/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。「俺、もしかして過去に戻された?」 動揺する中で浮かぶ一つの記憶。いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」二人はその「誰か」を探し始める。 <上巻>
坂崎あすなは、自殺してしまう「誰か」を依田いつかとともに探し続ける。ある日、あすなは自分の死亡記事を書き続ける河野という男子生徒に出会う。彼はクラスでいじめに遭っているらしい。見えない動機を抱える同級生。全員が容疑者だ。「俺がいた未来すごく暗かったんだ」 二人はXデーを回避できるのか。 <下巻>


過去に戻される、というギミックを前提として、自殺する同級生を探して自殺を食い止める。
こういう設定は、やはり学生生活を舞台にするのがふさわしいですね。
読んでいる途中、読者はなにやら違和感を覚えるというか、ひっかかるところを感じると思います。
作者は、丹念に、丹念に、人物紹介を重ねていきます。
なので、ミステリを読み慣れている方なら、真相はわりと簡単に見当がつくと思います。
でも、これが実にいい。
表面の物語も十分楽しめますし、上に書いた“真相”をベースにしても、高校生の気持ちは心地よい。
主人公のいつか、気に入りました。こんなに見た目もよくて、スポーツもできるやつ、あまりにも自分とかけ離れているのですが、なんとなく感情移入。

と、こう読み終わってもよい、十分楽しい作品だと思うのですが、作者はもう一つネタを抛り込んでいます。
ネタバレになると思うので、下の方↓に畳んでおきます。
ただ、「ぼくのメジャースプーン」(講談社文庫) を読んでいないとわからない内容なので、この名前探しの放課後(上) (下) を読む前に、「ぼくのメジャースプーン」 を読んでおいた方がよいと言っておきます。


<蛇足>
本書の章題、名作のタイトルが並べられています。
第一章 秘密の花園
第二章 裸の王様
第三章 オオカミ少年
第四章 エーミールと探偵たち
第五章 星の王子さま
第六章 みにくいあひるの子
第七章 白雪姫
第八章 失われた時を求めて
第九章 クリスマス・キャロル
第十章 青い鳥
そして最後
第十一章 石のスープ
この石のスープだけ、知りませんでした...


ネタバレになると思うので、ここに畳んでおきます。


タグ:辻村深月
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埋み火 [日本の作家 た行]


埋み火 (双葉文庫)

埋み火 (双葉文庫)

  • 作者: 日明 恩
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
老人世帯でつづく不可解な火事。住人は“不幸な偶然が重なって”焼死した。調査を始めた若手消防士・大山雄大は、老人たちの哀しい過去と、裏で糸を引く意外な人物を突き止めるが……。雄大の胸のすくような活躍が閉塞した世の中に風穴を開ける、人気シリーズ第2弾!


「鎮火報」 (双葉文庫) に続くシリーズ第2弾です。
上に引用したあらすじを読んだだけで、真相に見当がつきそうな....(笑)。ミステリ色は抑え目です。
(とはいえ、ぼくが買った文庫本のこのあらすじもネタを明かしすぎですし、更に帯はひどいですねぇ。ミステリとしての真相部分をあっさり明かしてしまっています。いくらすぐに見抜けてしまうようなものでも、せめて帯くらいは隠しておいてもらわないと。)

日明恩の作品ではいつものことですが、読みやすい。情報量もかなり多く、したがって分厚くなってしまっていますが、読みやすいです。
しかし、雄大の一人称でつづられるのですが、今回は、まあ、説教くさいこと。もともとそういう要素のある作家ではありますが、この「埋み火」 はそれが全開というかなんというか、ちょっと度を超えていたような。年齢二十二の主人公雄大(たけひろ。通称が“ゆうだい”)が、馬鹿だと自覚している雄大が、いろいろと考えて繰り出してくるお説教は、ちょっと耐え難い領域に突入しかかっています。主人公のモノローグで延々と語られるので、ちっともストーリーに溶け込んでいません(ストーリー展開が契機にはなっていますが)。こういうのは全部だらだらと言葉にして語ってしまうのではなく、ストーリーやプロットをして語らしめよ、というのが小説だと思うのですが...

さておき、いつもの通り、お仕事小説としてはよくできていまして、消防士だって公務員で、普通の人間なんだ、という当たり前のことがきちんと(ただし饒舌に)書かれます。
ここの好感度が大なのと、すいすい読めるので、もう少し主張は抑え目にしていただければ...

とはいえたぶん今後も日明恩の作品は読み続けていくと思います。






タグ:日明恩
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蜜蜂のデザート [日本の作家 た行]


蜜蜂のデザート (宝島社文庫)

蜜蜂のデザート (宝島社文庫)

  • 作者: 拓未 司
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2011/08/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
神戸でフレンチ・スタイルのビストロを営む料理人・柴山幸太は、デザートに力を入れようとスイーツの研究に励む。日本一のパティスリー決定戦<スイーツ・グランプリ>県代表の「テル・カキタ」に家族で食事に行くと、息子・陽太に異変が起きる。店には、以前にも食中毒を起こしたというパティシエがいて……。パティシエたちの葛藤と食の安全を問う、ビストロ・コウタシリーズ第2弾!


このミステリーがすごい! 大賞を受賞したデビュー作「禁断のパンダ」 (上) (下) (宝島社文庫) に続くシリーズ第2弾。
このミステリーがすごい! 大賞 は個人的には非常に当たり外れの激しい賞でして、まったく楽しめないような作品が受賞したりします。
そんななか、「禁断のパンダ」 (上) (下) は、ミステリとしては平凡だなぁ、と思ったものの、なぜか魅かれるというか、気になるところがあり、第2作の「蜜蜂のデザート」も読むことにしました。
読み終わっての感想も、実はさほど変わりません。
ミステリとして定番中の定番ともいえる真相に、さしたひねりもなく向かっていった「禁断のパンダ」 (上) (下) とは違い、それなりにミステリ部分もがんばった建て付けになっていますが、いかんせん登場人物も少なく、意外性に乏しかった。
けれど、楽しく、心地よく読みました(食中毒は、気持ち悪かったですけどね)。

確信をもって言えないのですが、おそらく、主人公である幸太に好感を持ったからではないでしょうか。
あれこれと分析し、少しずつ困難を克服し、向上していく様子は、ミステリの謎解きにも似て、というと我田引水にも程がありますが、向上心にあふれ、真摯に料理に取り組む姿がさわやかです。
おいしい料理、デザートもふんだんに出てきて、詳しく描写されます。それも楽しい。
上手な文章、というわけではないかもしれませんが、肌に合うのかもしれません。

もうちょっと他の作品も読んで、このあたりを探ってみます。


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漂流巌流島 [日本の作家 た行]


漂流巌流島 (創元推理文庫)

漂流巌流島 (創元推理文庫)

  • 作者: 高井 忍
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2010/08/11
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
宮本武蔵は決闘に遅れなかった!?  人使いの荒い監督に引きずり込まれて、チャンバラ映画のプロットだてを手伝う破目になった主人公。居酒屋で額を寄せ合い、あーでもない、こーでもないと集めた史料を検討していくと、巌流島の決闘や池田屋事件など、よく知られる歴史的事件の目から鱗の真相が明らかに……! 第二回ミステリーズ! 新人賞受賞作を含む、挑戦的歴史ミステリ短編集。


居酒屋で酒を飲みながら、あれこれ議論していくうちに、歴史上の出来事の裏の真相(?) に迫っていく。
この設定、鯨統一郎の「邪馬台国はどこですか?」 (創元推理文庫)と同じ趣向ですね。
歴史上の謎を解く、というのはまああってもここまで同じだと、二番煎じと思ってスルーするところなのですが、ミステリーズ! 新人賞の受賞作ということで、手に取りました。
ミステリーズ! 新人賞の前身である、創元推理短編賞は、恐ろしく受賞のハードルが高く、なかなか受賞作を出さなかった印象で、その後継となる賞を受賞したということは、かなり優れた作品であることが期待できると思ったのです。
読んでみて正解。とてもおもしろかったですね。

「漂流巌流島」
「亡霊忠臣蔵」
「慟哭新撰組」
「彷徨鍵屋ノ辻」
の四話収録。
上で引用した裏表紙あらすじでは、宮本武蔵の分だけが書かれていますが、文庫本の扉のあらすじには、ほかの3話のコメントもあり、それぞれ
「赤穂浪士は浅野内匠頭が殿中刃傷に及んだ理由を知らなかった!?」
「近藤勇は池田屋事件を無理矢理起こしていた!?」
「鍵屋ノ辻の仇討ちは上手くことが運び過ぎた!?」
というものです。

「邪馬台国はどこですか?」 をはじめとする鯨統一郎の諸作とは違った狙いのある作品だと思いました。
鯨統一郎の場合、通説といかにかけ離れた真相(仮説?) を提示し、そこまでいかに飛翔するか、飛翔してみせるか、というのが腕の見せ処になっていますが(その意味では作中で提示される真相は素っ頓狂であればあるほどよい)、この「漂流巌流島」 の場合、真相は堅実なものであって(当然のことながら、通説を信じている身には十分意外です)、いかに通説をひっくり返してみせるか、そこに眼目のある作品だと思いました。
それが証拠に、解説で有栖川有栖も指摘していますが、たとえば表題作「漂流巌流島」では、謎解きが始まるその前に、時代ものには決して似つかわしいとはいえない、一方ミステリではおなじみの単語がぽーんと出てきて、びっくりさせられるのです。
TV業界人という設定なので、さぞやいい加減に話が進むのでは、と思いきや、丁寧に史料にあたったりするところも、このひっくり返しにきっちり奉仕しています。すばらしい。
同じような設定でも、まったく違う狙いを成立させたところにも、受賞のポイントがあったのかもしれませんね。

四人の監督によるオムニバスという趣向がどんどん崩れていって、次々と難題が降りかかってくるという、いわばお約束の趣向も気に入りました。
ぜひほかの作品も読んでみたい作家です。


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