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シャーロック・ノート: 学園裁判と密室の謎 [日本の作家 ま行]

シャーロック・ノート: 学園裁判と密室の謎 (新潮文庫nex)

シャーロック・ノート: 学園裁判と密室の謎 (新潮文庫nex)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/03/28
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
学園裁判。暗号。密室。
謎vs論理の青春ミステリ。
剣峰成は退屈していた。都内屈指の進学校にもかかわらず、クラスメイトは凡庸な生徒ばかり。目指す高みには到底たどり着けそうにない……。そんな成の前に現れた少女、太刀杜からん。彼女との出会いをきっかけに、成は鷹司高校の真の姿を目の当たりにする。論理と論理をぶつけ合う学園裁判。殺人と暗号。連続密室爆破事件と犯人。若き才能が放つ、青春×本格ミステリの新機軸。


5月に読んだ7冊目の本です。
ルヴォワール・シリーズの円居挽の新シリーズ(といっても奥付は2015年4月)です。
オープニングのプロローグで登場する警部が鬼貫。出てくる洋館が黒死館。黒死館のオーナーが降矢木家。
おっ、なんだかやってくれそうな。
と一転そのあとは学園が舞台に。
「第1章 学園裁判と名探偵」では、名探偵育成高校である鷹司高校における学生同士の対決が描かれます。
裁判といっても、「丸太町ルヴォワール」 (講談社文庫)の双龍会(そうりゅうえ)と違って、「星覧仕合」と呼ばれており、裁判というよりむしろゲームみたいですけどね。
星覧仕合は、学年に1人しかいないとされる特究生をめぐるもので、新入生が二人一組になって片方がその特究生であるとして先輩が就く審問者の追及を切り抜けられるかどうか、というもの。
名探偵の輝きを放つ者を探し出す目的があるといっても、まあ、ゲームですよね。
この星覧仕合での、屁理屈合戦(失礼)が、まずおもしろかったですね。
若干ネタバレ気味ですが、裏ルールというのも個人的には納得の内容です。
「どんなに泥臭い謎解きをしても探偵ならば許される。探偵は謎を解くことが仕事だからだ。だが、名探偵はそうではない。名探偵の仕事は謎を解くことではなく、真実を告げることだ。」(107ページ)
ちょっとよくわかんない文言ではありますが、かっこいいですね。

「第2章 暗号と名探偵」では、主人公である剣峰成の過去に焦点があたります。
ここでも、名探偵との駆け引きが読みどころ、というか楽しいところですね。

「第3章 密室と名探偵」は、第1章、第2章と、更にはプロローグも受けてのエピソードとなっており、最後の(?) 対決が描かれます。

タイトルの意味がもう一つぴんと来ませんでしたが、シリーズ化されているので、おいおいわかるのかな?
ぎくしゃくしたところもありますが、こういう作風嫌いじゃないので、追いかけてみようと思います。





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世界記憶コンクール [日本の作家 ま行]

世界記憶コンクール (創元推理文庫)

世界記憶コンクール (創元推理文庫)

  • 作者: 三木 笙子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/05/18
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
ある日、萬朝報に載った『記憶に自信ある者求む』という求人広告。見たものを瞬時に覚えられる博一は、養父の勧めもあって募集に応じた。見事採用となり、高い給金を得て記憶力の訓練を受けていたのだが――。心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、二人の青年をはじめ明治の世に生きる人々の姿を人情味豊かに描いた、〈帝都探偵絵図〉シリーズ第二弾。表題作を含む五話収録。


「人魚は空に還る」 (創元推理文庫)に続くシリーズ第2弾は、以下の5話収録。
「世界記憶コンクール」
「氷のような女」
「黄金の日々」
「生人形の涙」
「月と竹の物語」
今回も表紙が非常に印象的ですね。
イラストは下村富美さんという方が描いていらっしゃいます。

シリーズ第2弾といいつつ、作品構成は異色(?) です。
心優しき雑誌記者:里見高広と超絶美形の天才絵師:有村礼の二人組の物語というふうにシリーズをとらえると、第1話である表題作「世界記憶コンクール」はその通りなのですが、第2話「氷のような女」は高広の父基博の話、第3話「黄金の日々」は高広・礼ではなく、以前登場した森恵(サトシ)の話。第4話「生人形の涙」と第5話「月と竹の物語」は高広・礼に戻りますが、通常のシリーズなら番外編とでもいう感じの周辺の人たちの物語が2つ挟まれています。
このシリーズはこうやって輪郭を拡げていきながら続いていくのかもしれませんね。
特に、「氷のような女」での基博、いい感じです。

『「赤毛組合」「ボヘミアの醜聞」の真相に触れています』と巻頭に掲げられていますが、「世界記憶コンクール」は裏表紙のあらすじ読んだらそのまんま「赤毛組合」ですもんねぇ。
「ボヘミアの醜聞」の方は、第4話「生人形の涙」です。
下敷きにしたものがあると批判的になる読者もいらっしゃるかもしれませんが、このシリーズはこれでよいのです。なぜなら、礼がホームズ物語のファン、で、ホームズばりの推理を高広に強要する、というのがコンセプトですから。ホームズ物にインスピレーションをもらったような物語が多くてもそれでよいのです。
それに、いずれの話もオリジナルをそのままコピーしているのではなく、物語の溶け込むようにきちんと加工してありますから。
むしろ、この2作の方が、ほかの作品より出来がいいように思います。またその方がミステリ度もアップするみたいです。
その証拠に(?)、「生人形の涙」がこの作品集の中では一番好みです。

解説で大矢博子が登場人物の相関図を掲げているのですが、これがとてもよくできている、というか、わかりやすいです。手元に置いておいて、シリーズを読むときに観るのがいいかも。

シリーズは
「人形遣いの影盗み」 (創元推理文庫)
「怪盗の伴走者」 (ミステリ・フロンティア)
と続いています。
のんびり追いかけることとしましょう。

<蛇足>
「人魚は空に還る」 に出てきた怪盗ロータスが出てこなかった!! 期待してたんですけどね。






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星宿る虫 [日本の作家 ま行]


星宿る虫

星宿る虫

  • 作者: 嶺里 俊介
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2016/02/18
  • メディア: 単行本


<裏表紙側帯あらすじ>
人間を内側から
喰い尽くす謎の虫。
我々に、何ができる?
長野県の宗教団体施設が燃え、不審な遺体が多数発見された。同じ頃、静岡県山中で見つかった老婆の遺体は、光を放つ虫の大群に覆われ、流れ出す血液は黄に変色していた。周囲には何故か讃美歌が響き、虫は列をなし銀河鉄道のように夜空へと…。異様な事態に、警察は法医昆虫学者の御堂玲子に調査を依頼。また、妹を虫に喰い殺された大学生の天崎悟は感染ルートを探る。増える犠牲者。虫の正体は? 治療方法は?


単行本です。
第19回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。

これがミステリーの新人賞の受賞作かぁ、と思うような作品でした。
選考委員の綾辻行人の
「ホラーだが、物語の中心には『ミステリー』がある」
というコメントが表表紙側の帯に引用されていますが、ホラーというのともちょっと違う手触り。
その意味では不思議な作品に仕上がっていると思いました。

妹を殺されてしまった大学生悟と、その伯母で昆虫学者の御堂玲子が、その寄生虫(?) の謎を追う、という構造になっているのですが、感染法とか、防ぐ方法とか、ともかく無茶苦茶です。
人は虫より偉いとでも!? という感じですか?
でも、そこが魅力? 不思議な読後感に見舞われますよ。

タイトルも、わかったような、わからないような。
「『星を宿しているか』、それが学生を見る第一の目だよ。ボクら教鞭を執る者が使う言葉でね。自分が向かう道を見出した学生のことを、そう呼んでいる。人生の指針を見出した人や生きる目的を持っている人を、『星が宿っている』とか『星を宿している』と表現している。『もう星を持っている』、『星宿る生徒』とかね。生涯をかけて、取り組む道を見つけた子たちを指す言葉だ。学生生活で熟成されていく芯の部分だよ」(81ページ)
なんてくだりもありますが、ストーリーと照らし合わせて考えると、ちょっとよく分からない。

個人的には文章があちこちで気になりましたね。上で引用したところの見開き部分でもいくつもあれっと思う表現があります。
「めまぐるしく頭を使う」(80ページ)って言いますか?
同じページの「一生もの」もちょっと使い方が変だと思いました。
「含み笑いを浮かべた」(81ページ)というのも苦しい表現ですよね。
「スムースに流れた」(177ページ)のように、いまどきスムーズをスムースというなんて、作者は年配の方なのかと思ったら1964年生まれらしいので、そう年配というほどのこともありませんね。
このページにも変だなと思う表現がちらほら。
「宇都宮インターチェンジで日光宇都宮道路へ入ってからは、出口まで道なりの一直線だった」
うーん、出口まで道なりって、当たり前でしょ? 日光宇都宮道路と呼ぶくらいなんだから。そして道なりなのに一直線?
「アイスコーヒーで舌を湿らせる」ってのも、言いますか? 舌を湿らせる...
編集者も修正しようとは思わなかったのでしょうか。
日本ミステリー文学大賞新人賞自体がさほどレベルの高くない賞だから、仕方ないのでしょうか。

ミステリー好きにも、ホラー好きにもちょっとおすすめしがたいですが、変な作品をお好きな方は、ぜひ。




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今出川ルヴォワール [日本の作家 ま行]


今出川ルヴォワール (講談社文庫)

今出川ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
京都・大怨寺(だいおんじ)の僧侶が転落死した。殺人容疑をかけられたのはその場に居合わせた御堂達也。嫌疑を晴らすため、彼の母校、越天(えてん)学園に向かった瓶賀流(みかがみつる)。そこで出会ったのは達也の死んだ母親と瓜二つの女性だった。三十年前に起きた悲劇と私的裁判・双龍会が繋がるとき、過去の呪縛から解放されるのは、誰だ。


今年最初に読んだ本です。
「丸太町ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら
「烏丸ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾です。
前作「烏丸ルヴォワール」の感想を書いたのが、2015年9月ですから、ほぼ1年半ぶりですか...
「河原町ルヴォワール」 (講談社文庫)もとっくに文庫化されているというのに、読むのはいつのことになるのやら。今年の目標の一つにしようっと。

さて、今回は冒頭部分は御堂達也を被告とした法廷(双龍会)で、これはこれで楽しかったのですが、いやあ、本作の重点はそこにはなくて、権々会、というお寺主催の(!) ばくち大会が見せ場ですね。
競われる種目は、「鳳」という独自ゲーム。
京都発祥のゲームとかで、「元々は占いやってんけど、いつしかそこに競技性が生まれ、ゲームになったってわけや」(184ページ)ということで、ルールも説明されています。
実はこのルール、ぴんとこなかったんですが、試合シーン(?) は迫力ありましたね。
達也の出生の秘密(?) とかいろいろと明かされるのですが、それもこれも試合シーンを盛り上げるため、だったのかも。

落花の仕掛ける技(?) も、いやあ無理でしょ、という中身ですが、絵になるし、恰好いいし、京都ならではというほどのことはなくても京都は感じさせるし、いいじゃないですか。
こういうケレン、大好き。

人間関係も、非常に狭い範囲で錯綜させているので、ちょっとやり過ぎ感も漂うのですが、舞台が京都なら、まあいいか、と思えてしまうところも、またよし、です。

次の「河原町ルヴォワール」 でシリーズ完結のようですので、今年中に読みたいです。
とても楽しみです。


<蛇足>
しかし、帯に書かれている
「彼の決意、彼女の親愛。
いくら心がすれ違っても、この手だけは絶対に離さない。」
というの、確かにそういう側面もこの物語は持っていますが、そこは前面に押し出されるべきものではないように思います。



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しだれ桜恋心中 [日本の作家 ま行]


しだれ桜恋心中

しだれ桜恋心中

  • 作者: 松浦千恵美
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/10/24
  • メディア: 単行本


<表紙袖あらすじ>
若手文楽人形遣いの屋島達也は、師匠・吉村松濤のもとで充実した修業の日々をおくっていた。
そんなある日、達也は怪しげな魅力を持つ花魁の文楽人形「桔梗」を見つける。桔梗は『しだれ桜恋心中』という演目専用に作られた、特別な人形らしい。だが、約60年前に『しだれ桜恋心中』が上演された際、技芸員が次々と不審死を遂げていたことを知り、達也は桔梗に近づくことを恐れはじめる。
一方、補助金削減問題に揺れる日本文楽協会は、『しだれ桜恋心中』を呪いの演目として興行し、観客を呼びこもうとするが……。
一つの演目に込められた想いが引き起こす悲劇を描いた、第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。


単行本です。
第4回アガサ・クリスティー賞受賞作。
奥付を見ると、2014年10月20日。うわぁ、2年も前の本だ...

アガサ・クリスティー賞は
第1回が森晶麿「黒猫の遊歩あるいは美学講義」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
第2回が中里友香「カンパニュラの銀翼」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
と非常に癖のある作品が続けて受賞したあと、
第3回が三沢陽一「致死量未満の殺人」 (ハヤカワ文庫JA)
(ブログの感想へのリンクはこちら
で普通の本格ミステリがようやく受賞しました。
で、今回第4回のこの「しだれ桜恋心中」で、再びくせ者路線に戻りましたね。

ミステリ的な趣向もあり、ミステリ的な展開を見せても、この「しだれ桜恋心中」をミステリとして呼ぶのは少々無理がありそうです。
巻末につけられている選評を拝見しても、ミステリかどうか、疑念が呈されていますね。
鴻巣友季子さんの言うところの、「無謀とも言える語りのパワー」というのがポイントなのでしょうね。

文楽が題材で、修行中の若者を中心としたストーリーなんですが、文楽人形がしゃべるわ、動くは、もう、作者はやりたい放題です。
もともと人形というのはホラーでもよく使われますし、超常現象を起こす存在として、古今東西いろいろな物語で使われてきているのですが、ミステリーの場合は、もうちょっと抑制的というか、気を配った使い方をする必要があると思います。
文楽人形がしゃべることを前提として(特殊な)ミステリー世界構築、ということでもなく(文楽人形がしゃべるからこそのトリックとか、仕掛けとかがある、わけでもない)、単に文楽人形がしゃべる世界で普通の(ミステリーっぽい)ストーリーが展開するだけ、なので、ちょっと拍子抜け。

と、ミステリーとしては破格で、まあ正直落第といった出来栄えなんですが、面白く読んじゃったんですよねぇ。
人形を意識・意志を持つ一人の登場人部として配すとどうなるか、というのは、よくある安直な発想で、しかも文楽とか人形浄瑠璃とか人形が大きなウェイトを占める古典芸能を舞台に、となるとそれこそ安直の極みみたいな感じもするのですが、こちらに馴染みのない世界だからか、わりとすっと世界に入っていけたように思います。
北上次郎さんの選評「手垢のついた素材を人形を媒介にすることで新鮮な風景に一変する鮮やかさに注目したい」というのはこのあたりのことも関係しているかもしれませんね。(北上さんが文楽にお詳しかったらすみません)

ということで、アガサ・クリスティー賞という看板は無視して、ミステリを期待せずにお読みください。









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京都寺町三条のホームズ [日本の作家 ま行]


京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

京都寺町三条のホームズ (双葉文庫)

  • 作者: 望月 麻衣
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2015/04/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
京都の寺町三条商店街にポツリとたたずむ、骨董品店『蔵』。女子高生の真城葵はひょんなことから、そこの店主の息子、家頭清貴と知り合い、アルバイトを始めることになる。清貴は、物腰は柔らかいが恐ろしく勘が鋭く、『寺町のホームズ』と呼ばれていた。葵は清貴とともに、客から持ち込まれる、骨董品にまつわる様々な依頼を受けるが―古都を舞台にした、傑作ライトミステリー!


結構人気があるシリーズのようです。
このシリーズ第1作「京都寺町三条のホームズ」 (双葉文庫)が出たのが2015年4月。
すでに
「真贋事件簿-京都寺町三条のホームズ(2)」 (双葉文庫)
「浮世に秘めた想い-京都寺町三条のホームズ(3)」 (双葉文庫)
「ミステリアスなお茶会-京都寺町三条のホームズ(4)」 (双葉文庫)
「シャーロキアンの宴と春の嵐-京都寺町三条のホームズ(5)」 (双葉文庫)
と第5作まで出ています。

帯に
E☆エブリスタ【ミステリ・推理小説】ランキング第1
と書いてあります。
しかし、これをミステリとして評価するのは相当苦しいと思います...
引用したあらすじの最後に「ライトミステリー」とあり、作者によるあとがきでも「よし、それじゃあ、京都を舞台にしたライトミステリーを書こう!」となっていますが、ライトもライト。軽すぎて、薄すぎて、もう、ミステリーの味、ほとんどしませんよ。
ライトミステリーというのは、定義が今一つ定かではありませんが、きっと、ミステリとは別物なのでしょう。
よくある「京風~」が、京都の人から見たらちっとも京都を感じさせないものであるのと同じなんですね。

帯にはさらに「いけずな京男子が鑑定するのは骨董品に秘められた謎」と書いてあります。
骨董品に秘められた謎、というのも実際のところはよくわかりません。どこに謎があったのかしらん??
あと、ホームズと呼ばれている家頭清貴(やがしらきよたか)というのが「いけずな京男子」なわけですが、ちっともいけずではありません。
文中にも、頻繁に葵が清貴のことをいけず、いけずというのですが、どこがいけずなんでしょう。こんなかわいいの、いけずのうちには入りませんよ。

とまあ、悪口にしか思えないコメントを連ねてきましたが、でも、この作品、おもしろかったかどうかというと、おもしろかったんです、個人的に。ミステリとしての評価は別にしまして。厳密にいうと、小説としての評価も別にして、となりますが(ケータイ小説やラノベにまともな小説としての結構を求めるな、というお声もあるでしょうから)。

そもそも、骨董品を扱いながら、その来歴を問うたり、あるいは真贋を争ったりしない、というのがすばらしい。

また、いかにもな、わざとらしい京都がずんずん出てくるところがいいではありませんか。
文章とか雰囲気はちっとも京都を感じさせませんが、そのかわり、地名や事物、祭りなどで京都を押しつけていく感じ、楽しいです。
京都というのは、意外と舞台にするのが難しい場所だと思います。観光という観点で観るのと、暮らしという観点で観るのとの落差が定まりにくい地だと思うので。
作者は2013年から京都にお住まいとのこと、京都のいいところ、悪いところ、きちんとご覧になったうえで、選んで、掬い上げて小説に盛り込んでおられるのでしょう。京都以外の地の人が読んだ時のわかりやすさを最重要視しながら。
(それでも、京都の仲居さんは、「こちらのお席を用意させていただきました」(198ページ)とは言わないでしょう。まあ、最近の若い仲居さんならいうかもしれませんが)
1年や2年住んだからって、京都の何がわかると言うのか、という京都の人がいいそうなことは言いません。京都素人から観てのわかりやすさ、こそがこの作品の身上だと思いますから。
さきほど申し上げた通り、これはライトミステリー。京風であればよいのです。

ホームズこと清貴と、葵の関係も、わかりやすいっちゃあわかりやすいんですが、その分親しみやすい。
清貴の、父、祖父のキャラクターも、ほどよく奇矯でなかなかよろしい。
この雰囲気は、きっとずっと楽しめます。(文章がもうすこしまともならもっとよい)

そしてもう一つ、この作品はミステリらしさがほとんどありませんが、この作者、ミステリがお好きなんじゃないかと思うんです。
ホームズという名を使っていて、あとがきで、「敬愛するコナン・ドイル先生」と書いているから、だけではなく、作中、ちらちらとミステリっぽい手法やノリが紛れ込んでいるように思われるからです。
そちらの風味を強く打ち出してもらえたら、個人的にはさらに親しみやすくなるのにな、と思いました。











タグ:望月麻衣
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雨恋 [日本の作家 ま行]


雨恋 (新潮文庫)

雨恋 (新潮文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/08/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ある晩、マンションの居間で彼女は語りだした。「わたしは幽霊です。そういうことになるんだと思います」。OL・小田切千波は自殺したとされていた。だが、何者かに殺されたのだ、と訴えた。ぼくは彼女の代わりに、事件の真相を探ることにする。次々と判明する驚愕の事実。そしてぼくは、雨の日にしか会えない千波を、いつしか愛し始めていた。名手が描く、奇跡のラブ・ストーリー。


ここから、ようやく昨年10月に読んだ本の感想に入ります。

松尾由美の作品の感想を書くのはこれが初めてですね。
松尾由美といえば、変な作品! (念のため、褒め言葉です)
ミステリでは、「バルーン・タウンの殺人」 (創元推理文庫)「安楽椅子探偵アーチー」 (創元推理文庫)も変だったし、サスペンスでは「ブラック・エンジェル」 (創元推理文庫)も、「ピピネラ」 (講談社文庫)も相当変わっていました。

ですが、この「雨恋」 は、幽霊とか出てきても、まあ、普通です。
路線としては、パラレル・ワールドを扱っていた「スパイク」 (光文社文庫)に近いのかもしれません。
小道具(?)として、「スパイク」 では犬、この「雨恋」 はで猫が使われるという類似点もありますね。

雨の日にしか会えない幽霊...
松尾由美の、透明感ある、とでも言いましょうか、ある意味乾いた文体がぴったりです。
千波の死の真相をさぐる、ミステリ風味も効かせてあります。
自分の死の真相って、結構扱いが難しそうですが、さすがは松尾由美、うまく着地してみせます。
千波とぼく渉の恋物語も、千波が幽霊である以上予想のつく着地を見せるのに、「なーんだ予想通りじゃん」なんて思わず、素直に読めました。

タイトルの読み方は、「あまごい」。ラストに響いてきます。

豊崎由美の解説が素晴らしいので買おうかどうか迷っている人は解説の最初の部分を、読み終わった人は解説を全部読まれるとよいと思います。

それにしても、帯の
「ラスト1ページ、涙が止まらない。」
というのは、いまいちですねぇ。
泣かせる話が世間的には受けるのは確かでしょうが、なんか、じめじめした売り方に思えます。
この「雨恋」 の売り方として、ふさわしいとは思えませんでした。

以下のブログにトラックバックしています。
No one’s gonna dive


<2016.11.13追記>
双葉文庫でこの作品復活しましたが、タイトルが変更になっています。
題して、「雨の日のきみに恋をして」 (双葉文庫)



雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

雨の日のきみに恋をして (双葉文庫)

  • 作者: 松尾 由美
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2016/10/13
  • メディア: 文庫







タグ:松尾由美
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偽りのスラッガー [日本の作家 ま行]


偽りのスラッガー (双葉文庫)

偽りのスラッガー (双葉文庫)

  • 作者: 水原 秀策
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2013/08/08
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
かつてスター選手だった秋草隼は、膝の故障で現役を引退した。再手術し、人目を避けて寂れたバッティングセンターに通うものの、四年が経ち、選手としての夢は消えかけている。そんな秋草に旧知の球団GMから意外な話が持ちかけられた。ある大物選手に、ドーピング疑惑があるらしい。この疑惑の真相を突き止めるため、秋草に選手として内部から調査してもらいたいという。一度は断ったが、現役復帰への思いに抗えず、秋草はスパイを引き受けることに――。スポーツ界の闇と再起をかけた男の奮闘を描く野球ミステリーの傑作。


作者である水原秀策は、「サウスポー・キラー」 (宝島社文庫)で、第3回 『このミステリーがすごい!』大賞を受賞してデビューした作家です。
「サウスポー・キラー」 は好みにぴったり合いまして、その後文庫化された作品、
「黒と白の殺意」 (宝島社文庫)
「メディア・スターは最後に笑う」 (上)  (下) (宝島社文庫)
「キング・メイカー」 (双葉文庫)
はすべて買っています。
「キング・メイカー」 だけ未読です。
語弊があるかもしれませんが、ミステリとして突出したところがあるという作風ではありません。
ただ、読み心地がすこぶる良い。人物像と語り口で読ませるタイプ、というところでしょうか?
この「偽りのスラッガー」 も期待して読みました。

今回も派手な仕掛けやトリックはありませんが、題材となっているドーピング疑惑の使い方には感心しました。
ドーピングをしていたか、いていなかったのか、結局のところ2パターンしかないわけですが、話をそっちへ持っていきますかぁ、なるほど、というところです。
そしてこの作品の場合は、なによりも野球をやる楽しさが感じられるのが長所だと思いました。
そもそも主人公が復帰するというのも野球をやりたい、という気持ちがあるからこそ、ですし、復帰後チームメイトに囲まれて、野球をやることの素晴らしさ、楽しさが溢れてくるのが伝わってきます。
大人の事情というのもありますから、必ずしもきれいごとでは済まされないし、ラストも正直不安を抱えたまま、というか、先の見えないままエンディングなのですが、それでもどこかさわやかな印象を受けるのは、野球をすることの素晴らしさ、喜びがきちんと書かれているからだと思います。

積読状態の「キング・メイカー」 も近いうちに読みたいです。


<おまけ>
しかし、主人公が復帰して調査するというストーリー、ハーラン・コーベンの「カムバック・ヒーロー」 (ハヤカワ・ミステリ文庫)を思い起こさせますね。




タグ:水原秀策
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スノーホワイト [日本の作家 ま行]


スノーホワイト (講談社文庫)

スノーホワイト (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
「真実を映し出す鏡」をもつ反則の名探偵・襟音ママエは、舞い込む事件の真相は分かるが、推理は大の苦手。ある事件が縁で顔を合わせた探偵・三途川理が、窮地に陥れようと策を練っていることも知らず――。おとぎ話のような愛らしい世界で、鋭い論理バトルが展開される、第十四回本格ミステリ大賞受賞作。


「キャットフード」 (講談社文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続く第2作です。
今回の設定は白雪姫、と紹介するよりは、〈なんでも知ることのできる鏡〉がミソというべきですね。
この鏡、よく知られている存在ですが、ミステリの道具として活用した例、なかったような気がします。nice!

二部構成になっていまして、第一部は、〈なんでも知ることのできる鏡〉で真相を知ってから、説明をでっちあげる、というミステリを裏返したようなストーリー。
肩慣らしであると同時に、三途川とママエが出会うきっかけともなります。
この設定で連作を書いてみてほしいですね。途中で飽きるかな?

そして第二部は、三途川が悪者側(?)についてママエを亡き者にしようとすることへの攻防戦です。
この第二部が本書の読みどころかと思います。
攻防戦、と書きましたが、実際のところ知恵を巡らせるのは三途川サイドだけで、ママエ側は対してなにもしませんが、それでも鏡をどう使うかをどんどん深めていくのは、面白かったです。
ただ難点は、鏡がだんだん万能になっていってしまうところ。
質問に対し事実(真実?)を答える、というのを超えて、いろんなことが出来てしまいます。
鏡の機能が第一部できちんと説明されていない。何ができて、何ができないのか、読者には示されないまま進んでいってしまうので、あれれ、と。
たとえば悪者側が「ママエを首尾よく始末するにはどうしたらいいか?」と鏡に聞くことはできない(聞いても回答が得られない)ように設定されていると思われるのですが、はっきりとは書いていない。書いてあることから類推するとたぶんそうだろうな、とわかるくらいにはなっていると思いましたが、それであれば一層、後半で展開される鏡の能力にはびっくりします。
この点を受け入れて、メルヘンチックな世界でのおとぎ話と捉えると、その範囲内であれこれと策謀をめぐらせるミステリとしてたいへん楽しく読みました。

森川智喜、ずいぶんいろいろとへんてこなこと(褒め言葉です)を繰り出してくれそうです。
今後も楽しみな作家です。




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烏丸ルヴォワール [日本の作家 ま行]


烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

烏丸ルヴォワール (講談社文庫)

  • 作者: 円居 挽
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
京都に伝わる稀覯本『黄母衣内記(きぼろないき)』。その所有者が謎の死を遂げた。事故か他殺か。そして継承を巡り兄弟争いが勃発。私的裁判・双龍会(そうりゅうえ)が開かれることに。その準備の中、瓶賀流(みかがみつる)は伝説の龍師「ささめきの山月」から、一人の少女と行動を共にすることを依頼される。だがそれは仲間達との敵対を意味していた。


ここから6月に読んだ本の感想になります。
「丸太町ルヴォワール」 (講談社文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾です。
このシリーズ、大好きですね。

これだけの企みに満ちた作品、そうそうないと思います。
このシリーズの強みはなによりやはり、私設法廷「双龍会」でしょう。
龍師(普通の法廷における検事や弁護士にあたる存在ですね)が各々得意技を持っている、とか、火帝(裁判官とはちょっと違いますね...)の下した結論は確定するとか、これらの設定が、論争時点での輝きを増します。
更にここの山場を読者に意識させることで、それ以外の企みに気づきにくくさせます。そういう仕掛けがあるに違いないと思って身構えていても、それでも易々とこちらの予想を超えていってくれました。
途中で、あれっ、と思うところがあって、戻って読み返しなどしてしまいました。こういうのも、企みのうちなのでしょうね。
何を書いてもネタバレになりそうで、感想が書きづらい...

帯の裏表紙側に書かれている
「京都の街では何が起こっても不思議じゃない。」
っていうのが、こうぐっときますね。

このシリーズ、このあと、次の
「今出川ルヴォワール」 (講談社文庫)まで文庫化されていましたが、4冊目の
「河原町ルヴォワール」 (講談社文庫)も今月文庫化されるようで、とても楽しみです。
早く「今出川ルヴォワール」 を読まなければ!



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