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バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ [日本の作家 は行]


バチカン奇跡調査官  千年王国のしらべ (角川ホラー文庫)

バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ (角川ホラー文庫)

  • 作者: 藤木 稟
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2011/07/23
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
奇跡調査官・平賀とロベルトのもとに、バルカン半島のルノア共和国から調査依頼が舞いこむ。聖人の生まれ変わりと噂される若き司祭・アントニウスが、多くの重病人を奇跡の力で治癒したうえ、みずからも死亡した3日後、蘇ったというのだ! いくら調べても疑いの余地が見当たらない、完璧な奇跡。そんな中、悪魔崇拝グループに拉致された平賀が、毒物により心停止状態に陥った――!? 天才神父コンビの事件簿、驚愕の第4弾!


「バチカン奇跡調査官 黒の学院」 (角川ホラー文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「バチカン奇跡調査官 サタンの裁き」(角川ホラー文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「バチカン奇跡調査官 闇の黄金」 (角川ホラー文庫)(感想ページへのリンクはこちら
につづく、バチカン奇跡調査官シリーズの第4巻です。
第3巻を読んでから随分経っていますが、手元の記録によるとこの第4巻を読んだのは2015年10月。
シリーズはものすごい勢いで新刊が出まくっています。現段階で第16巻まで出ているようですね(あまりに多くて見落としがあるかも...)
2018年1月現在第5巻はまだ読めていません。

今回「バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ」 を読み終えたあとの感想は、あ~あ、というものでした。
正直、がっかり。

今回の謎が、まず強力なんですね。
重病人を治癒した、自ら死んだ後復活した。
それだけではなく、奇跡調査官・平賀さえも心停止状態から救ってしまう(蘇生と呼ぶのでしょうか?)。

これをどうやって解決するのか?
種明かしは...これは、なし、だよ藤木さん。反則です。
というか、この種明かしはミステリとして自殺行為です。
当然、作者にも自覚はあって
「まるでSFですね……」(366ページ)
「何もかも、荒唐無稽な話だから、全てを信じられないのは無理もないだろう。誰が聞いても突拍子もない話だ」(399ページ)
なんてセリフも出てきます。
でもね、SFとか荒唐無稽を通り越して、ミステリとしてはアウトです。
あ~、もう、このシリーズには期待しているのに、がっかり。
だから、第5巻以降も手に取っていません。

と、こう思ったのですが、感想を書こうとして本を取り出してみると、これ、角川ホラー文庫なんですよね、意識していませんでしたが。
レーベルにどのくらい意味があるのか、という点はあるものの、作者はミステリーです、とはおっしゃっていない(多分)。
こちらが勝手にミステリーと思い込み、ミステリーとしてアウトだぁ、といったところで、迷惑な話ですよね。
そう思って振り返ってみると、第1巻から第3巻にも似たようなところはないではなかった。
だから、ミステリーうんぬんではなく、大仕掛けとか大胆な設定とかを楽しむべきなんですよね、このシリーズは。
反省。

ということで、ずいぶん時間が経ってしまっておりますが、感想を書くにあたり、あらためてシリーズを読んでいこうと思った2018年初頭でした。

備忘に、現段階の第5巻以降を並べておきます。
「バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 終末の聖母」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 月を呑む氷狼」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 原罪無き使徒達」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 独房の探偵」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 悪魔達の宴」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 ソロモンの末裔」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 楽園の十字架」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 ゾンビ殺人事件」 (角川ホラー文庫)
「バチカン奇跡調査官 二十七頭の象」 (角川ホラー文庫)



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最後のトリック [日本の作家 は行]

最後のトリック (河出文庫)

最後のトリック (河出文庫)

  • 作者: 深水 黎一郎
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/10/07
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「読者が犯人」というミステリー界最後の不可能トリックのアイディアを、二億円で買ってほしい――スランプ中の作家のもとに、香坂誠一なる人物から届いた謎の手紙。不信感を拭えない作家に男は、これは「命と引き換えにしても惜しくない」ほどのものなのだと切々と訴えるのだが……ラストに驚愕必至! この本を閉じたとき、読者のあなたは必ず「犯人は自分だ」と思うはず!?


本書は、深水黎一郎のデビュー作で第36回メフィスト賞受賞作である「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ !」 (講談社ノベルス)を、全面的に加筆・修正して改題・文庫化したものです。
あらすじにもありますし、講談社ノベルス版のタイトル(副題)からもわかるように、読者が犯人、というものを扱った作品です。
読者が犯人...魅力的ですよね。
実は講談社ノベルス版「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ !」も刊行時に読んでいるのですが、肝心要のトリックの肝を覚えていませんでして...よほど勢いよく読み飛ばしてしまったのか? 2014年の文庫化を機に読みなおそうかと購入、しばらく積読にしたのち、2015年12月に読んだもの、です。その後引っ越しのどさくさで本が紛れ感想を書けていませんでした。
しかし、読者が犯人、なんて奇天烈なトリックを覚えていないとは...…(為念ですが、読者が犯人、ということは覚えていたのですが、どういう仕掛けだったかを覚えていなかった、ということです)
過去にもいくつか作例があります、それは鮮明に覚えておりまして、トリックの成立具合については不満を持ったものです。
同じ不満は、深水黎一郎も抱いていらっしゃったようで、 河出文庫版「最後のトリック」の56ページからその点が触れられています。
「今さら言うまでもないことだが、ミステリーのトリックとは、厳密かつフェアでなければダメだ。仮に読者が犯人というトリックが可能だとしても、それがある特定の読者にだけ当て嵌まるのではダメで、その小説を読んだ読者全員が、読み終わって本を閉じたときに、『犯人は俺だ』と思うのではなくては、そのトリックが成立したことにはならない」(58ページ)
うわっ、ハードルを作者自らあげていますね。

はたして首尾は如何、というところですが、ぎりぎり成立していると言ってもいいかな、と感じました。
解説で島田荘司も「一読後、なるほどこれなら確かに自分が作中人物、香坂誠一を殺したと納得したし、このアイデアに前例はないと確信して、命題の達成に同意した」と書かれています。

ただし、やはり不満はあります。
若干ネタバレ気味になりますが、ぼかして書いちゃいます。
まあ今更ノックスの十戒やヴァン・ダインの探偵小説二十則なんて古証文を持ち出すこともないですが、常識的な範囲を超えた事象が出てくると、やはりねぇ...
超能力、とか、心理学、とか出してわんさかまぶしてくれてはいますが、非現実的なことがキーとなっちゃうと行き過ぎ感は否めませんね。
インチキだと思われる読者がいてもおかしくはありません。(この点の不満を強く感じたので、講談社ノベルス版を読んでいたのに枠組みを忘れちゃったのかな?)
あと、この仕掛けだと、置き去りにされる読者がいるのではないかと思います。時制の不一致?

で、結局トータルでこの作品「最後のトリック」はどうだったのか、と聞かれたら、再読の結果こう答えます。
「嫌いじゃないです。おもしろかったです。」

なによりも、曲がりなりにも「読者が犯人」という命題を成立させたところには素直に敬意を表したいと思えます。
そしてこの「最後のトリック」で「読者が犯人」を成し遂げるための道筋が、既往の「読者が犯人」を目指した先行作のアイデアを裏返したようなものだと言えるのでは、と気づいてから余計にそう思うようになりました。
先行作が世に出てからかなり経ちます。でも、だれもひっくり返して考えてみなかった。そこを深水黎一郎はやってみせてくれた。コロンブスの卵? こういう発想、ぜひとも支持しておきたいです!
不満はあるけどね。






タグ:深水黎一郎
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松谷警部と三鷹の石 [日本の作家 は行]


松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/22
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ある事件をきっかけにして本庁に引き抜いた白石巡査の直感を、松谷警部は信頼している。当初は白石の推理力を動員するまでもないと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するにつれて複雑な様相を見せはじめた。ケーキは消え、足跡は一つだけ。厭な予感が松谷の脳裏を掠める。打開策の見えないまま地道な捜査を続けるうちに……。本格ミステリ道まっしぐら、好評シリーズ第二作。


松谷警部シリーズ、と呼んでいいのでしょうか、「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
このあと、
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
「松谷警部と向島の血」 (創元推理文庫)
と出てシリーズは完結しているらしいです。

いつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

三鷹の堀越俊介殺害事件は無理心中の様相を呈し、松谷警部も当初捜査が難航するとは考えなかった。しかし白石巡査は納得しない。堀越の本命らしき女性の腺から、次第に河口湖とカーリングに絡む諸々の事情が判明。堀越は長野オリンピック有力候補の木屋沢を事故に巻き込み将来の芽を摘んでいた。カーリング場開設とクラブ結成の話が持ち上がった際に木屋沢はコーチに招かれ、土建屋&スポーツ用品店主の兄弟が一儲け企み……事実を積み上げても明確な方向性は見えなかったが、地道に聞き込みを続けた白石巡査はついに真相を看破する。ど真ん中の本格ミステリ、好評のシリーズ第二作。


うん、こちらは細かく事件が書かれていますね、親切です。
このあらすじに書いてある通りで、単純な無理心中かと思われた事件が、どんどん複雑になっていく、という物語。
このあたりの話の転がりかた、広がりかたを楽しむのがポイントなんだと思うのですが....

前作「松谷警部と目黒の雨」 ではアメリカン・フットボールが出てきましたが、今回はカーリング。
カーリングは、冬季オリンピックのおかげでかなり有名にはなってきていますが、それでも地味ですよねぇ。(競技されているかた、失礼なことを申し上げてすみません)
だからか、この「松谷警部と三鷹の石」 も、かなり地味。

聞き取り調査、ごちょごちょ推理、聞き取り調査、ごちょごちょ推理...この繰り返しです。
聞き取りの結果、広がっていく話に合わせて、山場があるとよかったんですけどねぇ。
本格ミステリって、地味なんだよねー、と言われやすいジャンルだけに、ちょっと残念な感じがします。
語り口とか、松谷警部と周りとの会話とか、読みやすくするための工夫はされているとは思うものの、もともと本格ミステリが好きな人以外にはつらいかも...

帯に
「犯人は意外な人物ですよ」
と白石以愛巡査のセリフであるかのような惹句があるのですが、確かに意外です。
まずもって動機が理解を超えているでしょう(笑)。
「動機は後回し」という白石巡査らしい作りになっているのですが、ここも心配なところ。
論理的に犯人を突き止める場合には不要な動機でも、読者がそう受け取ってくれるかどうか...

と余計な心配ばかりしておりますが、本格ミステリ好きからしますと、十分楽しめました。
その意味では、シリーズ快調、といってよいと思います。


<蛇足>
「松谷警部と目黒の雨」 同様、ある女性をめぐる周りの対応ぶりがちょっと個人的には、??? でした。






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僕は君を殺せない [日本の作家 は行]


僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)

僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)

  • 作者: 長谷川 夕
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/12/17
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
夏、クラスメートの代わりにミステリーツアーに参加し、最悪の連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。最近、周囲で葬式が相次いでいる『僕』。--一見、接点のないように見える二人の少年の独白は、思いがけない点で結びつく……!! すべての始まりは、廃遊園地にただよう、幼女の霊の噂……? 誰も想像しない驚愕のラストへ。二度読み必至、新感覚ミステリー!!
問題:だれが「僕」で、だれが「君」でしょう?


2015年度ノベル大賞受賞作らしいです。
帯がかなり煽っています。
いわく「二度読み必至!!」
いわく「誰も想像しない驚愕のラストへ!」

本書でいちばん驚いたのは、この本が短編集だったことでしょうか(笑)。
ノベル大賞、っていうから、長編だと思い込んでいたからです。
本書は表題作の他、「Aさん」「春の遺書」の2編を収録した短編集です。

と書いたことからおわかりのように、「二度読み必至」とは思いませんでしたし、「驚愕のラスト」とも思いませんでした。

実は、冒頭に掲げられた表題作を読み終わってもまだ、ストーリーが続くと思ったんですよね。
ところが続く「Aさん」は別の話で...あれっ? ここで「僕は君を殺せない」は終わりなんだ...
でも、感想はどうだったか、と聞かれると、おもしろかった、となります。
設定とか、二つの世界の接点とかは正直平凡だな、と思いましたが、少なくとも、「新感覚」という部分は楽しみました。
ミステリーに拘らずに、作品を書かれていけばよい作家だと思います。
それが証拠に(?)、続く「Aさん」「春の遺書」はミステリーではありません。
謎、は出てきますが、ミステリー、推理小説ではない扱いです。
表題作も含め、淡々とした印象でありながら、透明感があります。透明感といっても、透き通った透明感というよりは、すりガラスの透明感(いや、それは透明じゃないと言われそうな変な表現なんですが)、そう言いたくなるような不思議な手触りは、強く印象に残っています。
また新刊が出れば買ってしまうかもしれません。







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B5/500世代の読了日記






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群衆リドル Yの悲劇’93 [日本の作家 は行]


群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浪人生の渡辺夕佳の元に届いた、壮麗な西洋館への招待状。恋人で天才ピアニストの、イエ先輩こと八重洲家康と訪れた『夢路邸』には、謎を秘めた招待客が集まっていた。そこに突如現れた能面の鬼女が、彼らの過去の罪を告発し、連続殺人の幕が切って落とされる。孤立した館に渦巻く恐怖と疑心。夕佳とイエ先輩は、『マイ・フェア・レイディ』の殺意に立ちむかうことができるか!?


古野まほろの作品を読むのは、「天帝のはしたなき果実」 (幻冬舎文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続いて2冊目です。
「天帝のはしたなき果実」 がかなり強烈だったので、天帝シリーズ以外だとどうかな、と思って手に取りました。
で、冒頭「夢路邸招待客等一覧」と題された登場人物リストを見て、うーん、と思いました。
東京帝国大学、勁草館高等学校...天帝シリーズと地続きなんだ...そうとわかっていたら、買っていなかったかも...

裏表紙側の帯が象徴的です。
「吹雪の山荘、死を告げるマザー・グース、密室の生首、ダイイング・メッセイジ、足痕のない殺人、ミッシング・リンク、読者への挑戦状、そして名探偵--
絢爛たる本格ミステリの饗宴!

目次で、プレリュード、アンコールに挟まれているのが、第1章、第2章ではなく、第一楽章、第二楽章...となっており、順に、鬼、瘴、點、抉。
起承転結、というわけですが、凝りすぎでしょう。
第三楽章 點の途中に第1の読者への挑戦状が、第三楽章のおわり、第四楽章の手前で第2の読者への挑戦状が挿入されています。
基本的には渡辺夕佳の一人称というかたちで、「天帝のはしたなき果実」 に比べると穏やかではありますが、それでもまだ読みにくいですね。

中身は、上で引用した帯にもある通り、ミステリのガジェットをこれでもかと詰め込んだ作品で、クリスティの「そして誰もいなくなった」を思わせる展開です。
それぞれの殺人が不可能犯罪というのはいいんですが、そのトリックが、あれ、ですか...
たしかに、あれ、は有名な古典(ネタバレになりますが、リンクを貼っておきました)へのオマージュとして使われているのでしょうが...
まあ、繰り返し使った点は、あっぱれ、というべきですか。
しかしなぁ、そんなにうまくいくかなぁ...

犯人は誰か、というのも、「そして誰もいなくなった」的展開をすると、どんどん登場人物が減って行ってしまうので、それほど難しい謎解きではありません。
ただ、それぞれの殺人に、それぞれ犯人特定の手がかりが忍ばせてあるという"こだわり"は注目。
また、おもしろいのは、
読者への挑戦状--2 に
「誰が四人を殺したのか---
 何故四人は殺されたか--
 四人を結ぶ共通点は何か--」
とあるように、被害者のミッシング・リンク(四人を結ぶ共通点)を推理でつきとめようという趣向です。
これ、新しい試みなんじゃないでしょうか? (試みの斬新さの割には読者に届きにくい趣向のような気もしますが)
ミステリではわりとよくある動機ですが、この趣向には似合っています。(現実には、こんな動機で殺されては嫌だと思う人が多いと思いますが)
あと、個人的には、ダイイング・メッセージが好みでした。ダイイング・メッセージなんて不自然だという意見に対して、開き直ってみせたかのような解決がいいですね。

ぎくしゃくしたところの多い作品で、有栖川有栖が解説で
「ロジカルな推理を駆使することで完成するパズルは、美しい一幅の絵画というよりは、一種グロテスクな風景だ」
と指摘しているようにグロテスク、ではありますが、なんとなく惹かれるものがあります。
読了2冊目にして、作者の術中に嵌ったのかもしれません。




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松谷警部と目黒の雨 [日本の作家 は行]


松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)

松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)

  • 作者: 平石 貴樹
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/09/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
陰ではマッタリさんと呼ばれ捜査中に俳句をひねるとの噂もある松谷警部は、目黒の殺害現場で所轄の白石巡査と合流。被害者の友人から聴取を始めたところ、過去の変死事件が浮かんできた。事件は予想外の広がりを見せるも、関係者に犯行の機会や動機は見当たらない。白石巡査の推理に期待し、松谷警部は助勢に徹するが…。犯人当ての妙味に富んだ本格ミステリ、文庫書き下ろし。


平石貴樹の新作が文庫で読めるなんて! と飛びつくように買っておいて、例によって積読。
その間に、
「松谷警部と三鷹の石」 (創元推理文庫)
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
と順調にシリーズの新作が出ています。

いつもどおり、裏表紙あらすじを上で引用しましたが、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじがよくできています。
目黒本町のマンションで殺害された小西のぞみの身辺を調べていくと、武蔵学院大学アメフト部「ボアーズ」との関連が浮上、更にはボアーズの仲間内でおの五年に複数の変死者が出ていると判明した。これらは繋がっているのか。松谷警部は白石巡査らと捜査に当たるが、のぞみの事件についてボアーズ関係者のアリバイはほぼ成立し、動機らしきものも見当たらない。過去の事件は不可解な点を残しながらも帰結事項となっている。白石巡査は「動機は後回し」と地道に捜査を進め、ついに犯人が分かったと宣言。松谷の自宅で清酒「浦霞」を傾けながら、白石の謎解きが始まる。果たして真相は?

こちらの方が、よくわかります。
タイトルにもなっている松谷警部は名探偵役ではなくて、引き立て役なんですね。で、名探偵は白石巡査。
杉田比呂美さんのちょっととぼけた感じのイラスト(表紙絵)が雰囲気が出ていていいですね。ぴったり。
白石以愛(しらいしいあい)ってちょっと変わった名前ですね。
「動機は後回し」というのが149ページに出てきますが、この事件の場合、動機がかなり変わっているので、見抜くのは難しいでしょう。だから、動機を後回しにするのは、なかなかいい方法だと思います。
もともとホームズもそうですが、ミステリは動機は後回しにしちゃっても構わないパターンが多く、推理を積み重ねて犯人を特定していくタイプの作品の場合、いっそ動機などなくてもいいくらい?
この本格ミステリらしい手際のよさが、平石作品の最大の長所なので、きっちり楽しみました。
(誤解のないように付言しておきますと、決して動機を無視しているわけではありません)

ただ、アメフト部の面々のつながり具合がちょっと理解を超えているというか、不思議です。
ひとりの女性を数人の男で取り巻き、大学時代を卒業してずいぶん経ってもまだその状況が変わらないという設定、現実味ありますかね? その女性は、白雪姫にたとえられたりもしています。ちょっとなんだかなぁ、と。
もちろん、だからこその事件、という流れになっていて、さすが、なのですが。

さて、ひさしぶりの平石貴樹、堪能しました。
「松谷警部と三鷹の石」 「松谷警部と三ノ輪の鏡」 、楽しみです。


<蛇足>
八王子に中野ってあるんですね(85ページ)。
中野区の中野には若干土地鑑がありますが、八王子は知らないので、ちょっと行ってみたいなぁ。でも、なにがあるわけでもないでしょうから、単に行くだけ、でしょうけれど。






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アコギなのかリッパなのか ― 佐倉聖の事件簿 [日本の作家 は行]


アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)

アコギなのかリッパなのか―佐倉聖の事件簿 (新潮文庫)

  • 作者: 畠中 恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/02/27
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
佐倉聖21歳。腹違いの弟を独り養う大学生だ。すでに引退した大物政治家・大堂剛の事務所で雑用係の事務員を務めている。昔は不良で腕っ節が強い上、気転は利くし頭が切れる。そんな聖だからこそ、事務所に持ち込まれる、あらゆる陳情・難題・厄介事・揉め事の後始末を一任されても、見事な手際でまんまと解決していく。「しゃばけ」シリーズの著者が描く新時代のユーモア・ミステリー。


畠中恵には珍しい現代物です。
舞台は政治家の事務所。
「五色の猫」
「白い背広」
「月下の青」
「商店街の赤信号」
「親父とオヤジとピンクの便せん」
の5話が入っています。

有力後援者の家で、飼っている猫の色が時々変わるという冒頭の「五色の猫」、謎はステキですが、この着地はミステリとしてはイマイチ。ただ、通常のミステリではなく、あくまで政治家をめぐる様々なエピソードの一つとしては妥当なところかと思われます。一般的なミステリの目指すところとは違う志向性を持った作品なんですよ、と読者に示す役割を果たす作品なのでしょう。
「白い背広」は、後援会の派閥争いとお化け屋敷と化した洋館を舞台にした事件を描いています。事件そのものはたいしたことないのですが、聖はどう決着をつけるか、ということが眼目で、謎解き、というのもありますが、むしろトラブル・シューティングものなんだな、とわかります。このシリーズの趣が、このあたりで見当がついてきます。
「月下の青」は、高価な絵を持ったまま新興宗教に入信してしまった議員秘書を、絵と共に取り戻す。まさにトラブル・シューティング。
「商店街の赤信号」は、選挙事務所のボランティアの夫婦が繰り広げる夫にダイエットさせたい妻と妻に隠れてお菓子を食べたい夫の攻防。当事者にとっては大真面目なんでしょうが、微笑ましくていいですね。
「親父とオヤジとピンクの便せん」は、聖の父親が現れます。そして秘書志望のインターンたち。政治家秘書にもインターンってあるんですね。

聖のキャラクターがちょっとできすぎ感ありますが、全体として嫌味ない人物なので親しみがわきます。
続編「さくら聖・咲く」(実業之日本社)が出ているみたいなので、楽しみです。
咲く、ってことは、選挙に出て政治家になったのかな?



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神様の裏の顔 [日本の作家 は行]


神様の裏の顔

神様の裏の顔

  • 作者: 藤崎 翔
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2014/09/26
  • メディア: 単行本


<裏表紙側帯あらすじ>
「ああ坪井さん、お気の毒にねえ。神様のような人だったわ」
神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した――と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり……。
聖職者か、それとも稀代の犯罪者か――驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!


単行本です。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
作者の藤崎翔は、6年間お笑い芸人として活動していたそうです。
ちまたでは、又吉直樹が「火花」芥川賞を受賞したことが話題となっていますが、タレントと作家は近しいのではなかろうか、と思ったりもします。

故人の人間像が、次々とひっくり返っていく様子が大きなポイントとなる作品ですが、まずここがよくできているなぁ、と思いました。
語り手となる人物のかき分けもきちんとされていますし、文章も読みやすい。
それだけ尖ったところがない、とも言えますが、読者になだらかに読み進ませる、というのは美点だと思います。
そして、お笑い芸人出身だから、というわけではないでしょうが、ユーモラスなところも楽しい。

ただ、難点を挙げると、ラストのどんでん返しの部分でしょうか。
ミステリとしてのサプライズのための不可欠の仕掛け、ということだったのでしょうが、ちょっとありきたり。
個人的には好きになりにくいタイプの仕掛けだったこともあり、ここまで頑張って(無理に)意外なラストを仕掛ける必要はなかったのではなかろうか、と。
そして、このラストにするなら、伏線をもっともっと露骨なかたちで書き込んでおいて欲しいところ。

故人の人間像の部分だけでも十分おもしろいミステリとして成立したのではないでしょうか。
それだけの力はお持ちの作家のように感じました。
7人がディスカッションを通して、人間像に迫るわけですが、エピソードの重なり具合とか、ずれ具合も、かなり気を配って設計されているようです。

ということで、ちょっと落ちに不満はありますが、これはデビュー作、有望な作家の誕生ではないかと期待します。


<2016.8追記>
文庫化されました。



神様の裏の顔 (角川文庫)

神様の裏の顔 (角川文庫)

  • 作者: 藤崎 翔
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/08/25
  • メディア: 文庫



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コレクター 不思議な石の物語 [日本の作家 は行]


コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 深津 十一
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/04/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
自分が死んだら口に石を入れ、火葬後にそれを回収してある人物に届けてほしい――。祖母の遺言に従って作った「死人石」を持って、木島耕平は石コレクターの林を訪ねた。林に興味を抱いた耕平と生物教師ナオミは、人体が埋められているという「童石」の話を林に尋ねようと再び屋敷を訪れて……。不思議な石をめぐる、時空を超えた物語の結末とは。『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。


ほぼ2週間ぶりの更新となりました。

本当は、積読在庫になっている、『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉を全部読んでしまおう、と思っていたのです。
でも、前々回感想を書いた「残留思念(サイコメトリー)捜査 オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル」 (宝島社文庫)と前回感想を書いた「婚活島戦記」 (宝島社文庫)を読んだところで力尽きました。
あのレベルの作品を続けて一杯読むのはつらい....
ということで、『このミステリーがすごい!』大賞でも隠し玉より上(? のハズ)の優秀賞の「コレクター 不思議な石の物語」 (宝島社文庫)を手に取ることに。
単行本のときのタイトルは「『童石』をめぐる奇妙な物語」だったのが改題されています。

路線変更して優秀賞を手に取って、正解でした。
まず、なにより文章が安心できます。小説の基本は、やはり文章ですよね。

冒頭、まるで伝奇小説かな、と思わせるオープニングです。
そこから、すっと高二の主人公の話へ移ります。ばあちゃんの葬式で家族に内緒で怪しげなことをやる主人公耕平。これも伝奇っぽい。
で、ばあちゃんから回収した(?) 石をもって、コレクター林老人のところへ。
耕平やナオミ先生のキャラクターが今風というか、軽い感じではあるのですが、一方で主要人物である林老人のキャラクターが怪しげで、それでいて結構趣があって、この落差がポイントかと思いました。
さまざまな不思議な石にまつわる物語があれこれと語られていくわけで、ミステリーというよりは、ファンタジーに近い作品だと思いましたが、どれもおもしろかったですね。
作者が提示する世界観(?) が独特で、それを味わうことがとても楽しい。
見たこと、読んだことのない世界ながら、それでいて、どことなく懐かしいような手触りの作品でした。
異色作だと思います。



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婚活島戦記 [日本の作家 は行]


婚活島戦記 (宝島社文庫)

婚活島戦記 (宝島社文庫)

  • 作者: 柊 サナカ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
孤島に集まったのは厳格な審査を経た選りすぐりの美女たち。巨万の富を築いたIT業界の寵児、桐生高雄の花嫁を決める選抜大会が開かれるのだ。勝者には、莫大な富と世界的名声を誇る桐生の花嫁の座が保証される。四日間のサバイバルを勝ち抜くのは果たして誰か。元アングラ格闘家の二毛作甘柿をはじめ、個性豊かな女性たちが繰り広げる壮絶な婚活バトル。戦いの幕が、切って落とされる!


この「婚活島戦記」 (宝島社文庫)は、昨日感想を書いた「残留思念捜査(サイコメトリー) オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル」 (宝島社文庫)と同じく、第十一回(2013年)「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉です。

 
上に引用したあらすじを読まれて、どう思われましたか?
あり得ない、馬鹿馬鹿しい、と思われた方、その通りです。
あり得ないような、馬鹿馬鹿しいお話です。
解説で大森望が書いています。
「こんな背景設定やストーリーは、正直、どうでもいい。本書の最大の魅力は、強烈な個性を持つわれらがヒロイン、二毛作甘柿の造型にある。」
確かに、甘柿のキャラクターは魅力的です。
ハイヒールを脱ぎ捨てて、強化ガラスを蹴破る冒頭のシーンから、確かにわしづかみにされます。
魅力あふれる登場人物に出会うことも読書の醍醐味ですから、これだけの人物を作り出したのは確かにお手柄ではありますが、やはり気になるんですよねぇ、設定の陳腐さが、荒唐無稽さが。そしてその後の展開の陳腐さ、荒唐無稽さが。
花嫁の座をめぐる争い、というのだったら、体力勝負もあっていいけれど、知恵の戦いの要素を強く打ち出すとかしてくれないと、ミステリとしては楽しみが薄すぎます。全体の構想、構図も、少しは知恵の要素が絡んではいますが、なんだかありきたり。
素敵なキャラクターを生み出す力を活かせるような設定と展開の作品を次は読ませてくれることを期待します。(さんざん文句を言っておいて、次に期待というのも変な話ですが、そう思わせる力はお持ちだと思います)


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