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松谷警部と三鷹の石 [日本の作家 は行]


松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
ある事件をきっかけにして本庁に引き抜いた白石巡査の直感を、松谷警部は信頼している。当初は白石の推理力を動員するまでもないと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するにつれて複雑な様相を見せはじめた。ケーキは消え、足跡は一つだけ。厭な予感が松谷の脳裏を掠める。打開策の見えないまま地道な捜査を続けるうちに……。本格ミステリ道まっしぐら、好評シリーズ第二作。


松谷警部シリーズ、と呼んでいいのでしょうか、「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
このあと、
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
「松谷警部と向島の血」 (創元推理文庫)
と出てシリーズは完結しているらしいです。

いつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

三鷹の堀越俊介殺害事件は無理心中の様相を呈し、松谷警部も当初捜査が難航するとは考えなかった。しかし白石巡査は納得しない。堀越の本命らしき女性の腺から、次第に河口湖とカーリングに絡む諸々の事情が判明。堀越は長野オリンピック有力候補の木屋沢を事故に巻き込み将来の芽を摘んでいた。カーリング場開設とクラブ結成の話が持ち上がった際に木屋沢はコーチに招かれ、土建屋&スポーツ用品店主の兄弟が一儲け企み……事実を積み上げても明確な方向性は見えなかったが、地道に聞き込みを続けた白石巡査はついに真相を看破する。ど真ん中の本格ミステリ、好評のシリーズ第二作。


うん、こちらは細かく事件が書かれていますね、親切です。
このあらすじに書いてある通りで、単純な無理心中かと思われた事件が、どんどん複雑になっていく、という物語。
このあたりの話の転がりかた、広がりかたを楽しむのがポイントなんだと思うのですが....

前作「松谷警部と目黒の雨」 ではアメリカン・フットボールが出てきましたが、今回はカーリング。
カーリングは、冬季オリンピックのおかげでかなり有名にはなってきていますが、それでも地味ですよねぇ。(競技されているかた、失礼なことを申し上げてすみません)
だからか、この「松谷警部と三鷹の石」 も、かなり地味。

聞き取り調査、ごちょごちょ推理、聞き取り調査、ごちょごちょ推理...この繰り返しです。
聞き取りの結果、広がっていく話に合わせて、山場があるとよかったんですけどねぇ。
本格ミステリって、地味なんだよねー、と言われやすいジャンルだけに、ちょっと残念な感じがします。
語り口とか、松谷警部と周りとの会話とか、読みやすくするための工夫はされているとは思うものの、もともと本格ミステリが好きな人以外にはつらいかも...

帯に
「犯人は意外な人物ですよ」
と白石以愛巡査のセリフであるかのような惹句があるのですが、確かに意外です。
まずもって動機が理解を超えているでしょう(笑)。
「動機は後回し」という白石巡査らしい作りになっているのですが、ここも心配なところ。
論理的に犯人を突き止める場合には不要な動機でも、読者がそう受け取ってくれるかどうか...

と余計な心配ばかりしておりますが、本格ミステリ好きからしますと、十分楽しめました。
その意味では、シリーズ快調、といってよいと思います。


<蛇足>
「松谷警部と目黒の雨」 同様、ある女性をめぐる周りの対応ぶりがちょっと個人的には、??? でした。






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僕は君を殺せない [日本の作家 は行]


僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)

僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)



<裏表紙あらすじ>
夏、クラスメートの代わりにミステリーツアーに参加し、最悪の連続猟奇殺人を目の当たりにした『おれ』。最近、周囲で葬式が相次いでいる『僕』。--一見、接点のないように見える二人の少年の独白は、思いがけない点で結びつく……!! すべての始まりは、廃遊園地にただよう、幼女の霊の噂……? 誰も想像しない驚愕のラストへ。二度読み必至、新感覚ミステリー!!
問題:だれが「僕」で、だれが「君」でしょう?


2015年度ノベル大賞受賞作らしいです。
帯がかなり煽っています。
いわく「二度読み必至!!」
いわく「誰も想像しない驚愕のラストへ!」

本書でいちばん驚いたのは、この本が短編集だったことでしょうか(笑)。
ノベル大賞、っていうから、長編だと思い込んでいたからです。
本書は表題作の他、「Aさん」「春の遺書」の2編を収録した短編集です。

と書いたことからおわかりのように、「二度読み必至」とは思いませんでしたし、「驚愕のラスト」とも思いませんでした。

実は、冒頭に掲げられた表題作を読み終わってもまだ、ストーリーが続くと思ったんですよね。
ところが続く「Aさん」は別の話で...あれっ? ここで「僕は君を殺せない」は終わりなんだ...
でも、感想はどうだったか、と聞かれると、おもしろかった、となります。
設定とか、二つの世界の接点とかは正直平凡だな、と思いましたが、少なくとも、「新感覚」という部分は楽しみました。
ミステリーに拘らずに、作品を書かれていけばよい作家だと思います。
それが証拠に(?)、続く「Aさん」「春の遺書」はミステリーではありません。
謎、は出てきますが、ミステリー、推理小説ではない扱いです。
表題作も含め、淡々とした印象でありながら、透明感があります。透明感といっても、透き通った透明感というよりは、すりガラスの透明感(いや、それは透明じゃないと言われそうな変な表現なんですが)、そう言いたくなるような不思議な手触りは、強く印象に残っています。
また新刊が出れば買ってしまうかもしれません。







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B5/500世代の読了日記






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群衆リドル Yの悲劇’93 [日本の作家 は行]


群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

群衆リドル Yの悲劇’93 (光文社文庫)

  • 作者: 古野 まほろ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浪人生の渡辺夕佳の元に届いた、壮麗な西洋館への招待状。恋人で天才ピアニストの、イエ先輩こと八重洲家康と訪れた『夢路邸』には、謎を秘めた招待客が集まっていた。そこに突如現れた能面の鬼女が、彼らの過去の罪を告発し、連続殺人の幕が切って落とされる。孤立した館に渦巻く恐怖と疑心。夕佳とイエ先輩は、『マイ・フェア・レイディ』の殺意に立ちむかうことができるか!?


古野まほろの作品を読むのは、「天帝のはしたなき果実」 (幻冬舎文庫)(感想のページへのリンクはこちら)に続いて2冊目です。
「天帝のはしたなき果実」 がかなり強烈だったので、天帝シリーズ以外だとどうかな、と思って手に取りました。
で、冒頭「夢路邸招待客等一覧」と題された登場人物リストを見て、うーん、と思いました。
東京帝国大学、勁草館高等学校...天帝シリーズと地続きなんだ...そうとわかっていたら、買っていなかったかも...

裏表紙側の帯が象徴的です。
「吹雪の山荘、死を告げるマザー・グース、密室の生首、ダイイング・メッセイジ、足痕のない殺人、ミッシング・リンク、読者への挑戦状、そして名探偵--
絢爛たる本格ミステリの饗宴!

目次で、プレリュード、アンコールに挟まれているのが、第1章、第2章ではなく、第一楽章、第二楽章...となっており、順に、鬼、瘴、點、抉。
起承転結、というわけですが、凝りすぎでしょう。
第三楽章 點の途中に第1の読者への挑戦状が、第三楽章のおわり、第四楽章の手前で第2の読者への挑戦状が挿入されています。
基本的には渡辺夕佳の一人称というかたちで、「天帝のはしたなき果実」 に比べると穏やかではありますが、それでもまだ読みにくいですね。

中身は、上で引用した帯にもある通り、ミステリのガジェットをこれでもかと詰め込んだ作品で、クリスティの「そして誰もいなくなった」を思わせる展開です。
それぞれの殺人が不可能犯罪というのはいいんですが、そのトリックが、あれ、ですか...
たしかに、あれ、は有名な古典(ネタバレになりますが、リンクを貼っておきました)へのオマージュとして使われているのでしょうが...
まあ、繰り返し使った点は、あっぱれ、というべきですか。
しかしなぁ、そんなにうまくいくかなぁ...

犯人は誰か、というのも、「そして誰もいなくなった」的展開をすると、どんどん登場人物が減って行ってしまうので、それほど難しい謎解きではありません。
ただ、それぞれの殺人に、それぞれ犯人特定の手がかりが忍ばせてあるという"こだわり"は注目。
また、おもしろいのは、
読者への挑戦状--2 に
「誰が四人を殺したのか---
 何故四人は殺されたか--
 四人を結ぶ共通点は何か--」
とあるように、被害者のミッシング・リンク(四人を結ぶ共通点)を推理でつきとめようという趣向です。
これ、新しい試みなんじゃないでしょうか? (試みの斬新さの割には読者に届きにくい趣向のような気もしますが)
ミステリではわりとよくある動機ですが、この趣向には似合っています。(現実には、こんな動機で殺されては嫌だと思う人が多いと思いますが)
あと、個人的には、ダイイング・メッセージが好みでした。ダイイング・メッセージなんて不自然だという意見に対して、開き直ってみせたかのような解決がいいですね。

ぎくしゃくしたところの多い作品で、有栖川有栖が解説で
「ロジカルな推理を駆使することで完成するパズルは、美しい一幅の絵画というよりは、一種グロテスクな風景だ」
と指摘しているようにグロテスク、ではありますが、なんとなく惹かれるものがあります。
読了2冊目にして、作者の術中に嵌ったのかもしれません。




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松谷警部と目黒の雨 [日本の作家 は行]


松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)

松谷警部と目黒の雨 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
陰ではマッタリさんと呼ばれ捜査中に俳句をひねるとの噂もある松谷警部は、目黒の殺害現場で所轄の白石巡査と合流。被害者の友人から聴取を始めたところ、過去の変死事件が浮かんできた。事件は予想外の広がりを見せるも、関係者に犯行の機会や動機は見当たらない。白石巡査の推理に期待し、松谷警部は助勢に徹するが…。犯人当ての妙味に富んだ本格ミステリ、文庫書き下ろし。


平石貴樹の新作が文庫で読めるなんて! と飛びつくように買っておいて、例によって積読。
その間に、
「松谷警部と三鷹の石」 (創元推理文庫)
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
と順調にシリーズの新作が出ています。

いつもどおり、裏表紙あらすじを上で引用しましたが、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじがよくできています。


目黒本町のマンションで殺害された小西のぞみの身辺を調べていくと、武蔵学院大学アメフト部「ボアーズ」との関連が浮上、更にはボアーズの仲間内でおの五年に複数の変死者が出ていると判明した。これらは繋がっているのか。松谷警部は白石巡査らと捜査に当たるが、のぞみの事件についてボアーズ関係者のアリバイはほぼ成立し、動機らしきものも見当たらない。過去の事件は不可解な点を残しながらも帰結事項となっている。白石巡査は「動機は後回し」と地道に捜査を進め、ついに犯人が分かったと宣言。松谷の自宅で清酒「浦霞」を傾けながら、白石の謎解きが始まる。果たして真相は?


こちらの方が、よくわかります。
タイトルにもなっている松谷警部は名探偵役ではなくて、引き立て役なんですね。で、名探偵は白石巡査。
杉田比呂美さんのちょっととぼけた感じのイラスト(表紙絵)が雰囲気が出ていていいですね。ぴったり。
白石以愛(しらいしいあい)ってちょっと変わった名前ですね。
「動機は後回し」というのが149ページに出てきますが、この事件の場合、動機がかなり変わっているので、見抜くのは難しいでしょう。だから、動機を後回しにするのは、なかなかいい方法だと思います。
もともとホームズもそうですが、ミステリは動機は後回しにしちゃっても構わないパターンが多く、推理を積み重ねて犯人を特定していくタイプの作品の場合、いっそ動機などなくてもいいくらい?
この本格ミステリらしい手際のよさが、平石作品の最大の長所なので、きっちり楽しみました。
(誤解のないように付言しておきますと、決して動機を無視しているわけではありません)

ただ、アメフト部の面々のつながり具合がちょっと理解を超えているというか、不思議です。
ひとりの女性を数人の男で取り巻き、大学時代を卒業してずいぶん経ってもまだその状況が変わらないという設定、現実味ありますかね? その女性は、白雪姫にたとえられたりもしています。ちょっとなんだかなぁ、と。
もちろん、だからこその事件、という流れになっていて、さすが、なのですが。

さて、ひさしぶりの平石貴樹、堪能しました。
「松谷警部と三鷹の石」 「松谷警部と三ノ輪の鏡」 、楽しみです。


<蛇足>
八王子に中野ってあるんですね(85ページ)。
中野区の中野には若干土地鑑がありますが、八王子は知らないので、ちょっと行ってみたいなぁ。でも、なにがあるわけでもないでしょうから、単に行くだけ、でしょうけれど。






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アコギなのかリッパなのか ― 佐倉聖の事件簿 [日本の作家 は行]




<裏表紙あらすじ>
佐倉聖21歳。腹違いの弟を独り養う大学生だ。すでに引退した大物政治家・大堂剛の事務所で雑用係の事務員を務めている。昔は不良で腕っ節が強い上、気転は利くし頭が切れる。そんな聖だからこそ、事務所に持ち込まれる、あらゆる陳情・難題・厄介事・揉め事の後始末を一任されても、見事な手際でまんまと解決していく。「しゃばけ」シリーズの著者が描く新時代のユーモア・ミステリー。


畠中恵には珍しい現代物です。
舞台は政治家の事務所。
「五色の猫」
「白い背広」
「月下の青」
「商店街の赤信号」
「親父とオヤジとピンクの便せん」
の5話が入っています。

有力後援者の家で、飼っている猫の色が時々変わるという冒頭の「五色の猫」、謎はステキですが、この着地はミステリとしてはイマイチ。ただ、通常のミステリではなく、あくまで政治家をめぐる様々なエピソードの一つとしては妥当なところかと思われます。一般的なミステリの目指すところとは違う志向性を持った作品なんですよ、と読者に示す役割を果たす作品なのでしょう。
「白い背広」は、後援会の派閥争いとお化け屋敷と化した洋館を舞台にした事件を描いています。事件そのものはたいしたことないのですが、聖はどう決着をつけるか、ということが眼目で、謎解き、というのもありますが、むしろトラブル・シューティングものなんだな、とわかります。このシリーズの趣が、このあたりで見当がついてきます。
「月下の青」は、高価な絵を持ったまま新興宗教に入信してしまった議員秘書を、絵と共に取り戻す。まさにトラブル・シューティング。
「商店街の赤信号」は、選挙事務所のボランティアの夫婦が繰り広げる夫にダイエットさせたい妻と妻に隠れてお菓子を食べたい夫の攻防。当事者にとっては大真面目なんでしょうが、微笑ましくていいですね。
「親父とオヤジとピンクの便せん」は、聖の父親が現れます。そして秘書志望のインターンたち。政治家秘書にもインターンってあるんですね。

聖のキャラクターがちょっとできすぎ感ありますが、全体として嫌味ない人物なので親しみがわきます。
続編「さくら聖・咲く」(実業之日本社)が出ているみたいなので、楽しみです。
咲く、ってことは、選挙に出て政治家になったのかな?



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神様の裏の顔 [日本の作家 は行]


神様の裏の顔

神様の裏の顔



<裏表紙側帯あらすじ>
「ああ坪井さん、お気の毒にねえ。神様のような人だったわ」
神様のような清廉潔白な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみに包まれ、誰もが涙した――と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり……。
聖職者か、それとも稀代の犯罪者か――驚愕のラストを誰かと共有したくなる、読後感強烈ミステリ!!


単行本です。
第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作。
作者の藤崎翔は、6年間お笑い芸人として活動していたそうです。
ちまたでは、又吉直樹が「火花」芥川賞を受賞したことが話題となっていますが、タレントと作家は近しいのではなかろうか、と思ったりもします。

故人の人間像が、次々とひっくり返っていく様子が大きなポイントとなる作品ですが、まずここがよくできているなぁ、と思いました。
語り手となる人物のかき分けもきちんとされていますし、文章も読みやすい。
それだけ尖ったところがない、とも言えますが、読者になだらかに読み進ませる、というのは美点だと思います。
そして、お笑い芸人出身だから、というわけではないでしょうが、ユーモラスなところも楽しい。

ただ、難点を挙げると、ラストのどんでん返しの部分でしょうか。
ミステリとしてのサプライズのための不可欠の仕掛け、ということだったのでしょうが、ちょっとありきたり。
個人的には好きになりにくいタイプの仕掛けだったこともあり、ここまで頑張って(無理に)意外なラストを仕掛ける必要はなかったのではなかろうか、と。
そして、このラストにするなら、伏線をもっともっと露骨なかたちで書き込んでおいて欲しいところ。

故人の人間像の部分だけでも十分おもしろいミステリとして成立したのではないでしょうか。
それだけの力はお持ちの作家のように感じました。
7人がディスカッションを通して、人間像に迫るわけですが、エピソードの重なり具合とか、ずれ具合も、かなり気を配って設計されているようです。

ということで、ちょっと落ちに不満はありますが、これはデビュー作、有望な作家の誕生ではないかと期待します。


<2016.8追記>
文庫化されました。



神様の裏の顔 (角川文庫)

神様の裏の顔 (角川文庫)

  • 作者: 藤崎 翔
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 2016/08/25
  • メディア: 文庫



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コレクター 不思議な石の物語 [日本の作家 は行]


コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

コレクター 不思議な石の物語 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 深津 十一
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/04/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
自分が死んだら口に石を入れ、火葬後にそれを回収してある人物に届けてほしい――。祖母の遺言に従って作った「死人石」を持って、木島耕平は石コレクターの林を訪ねた。林に興味を抱いた耕平と生物教師ナオミは、人体が埋められているという「童石」の話を林に尋ねようと再び屋敷を訪れて……。不思議な石をめぐる、時空を超えた物語の結末とは。『このミステリーがすごい!』大賞優秀賞受賞作。


ほぼ2週間ぶりの更新となりました。

本当は、積読在庫になっている、『このミステリーがすごい!』大賞の隠し玉を全部読んでしまおう、と思っていたのです。
でも、前々回感想を書いた「残留思念(サイコメトリー)捜査 オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル」 (宝島社文庫)と前回感想を書いた「婚活島戦記」 (宝島社文庫)を読んだところで力尽きました。
あのレベルの作品を続けて一杯読むのはつらい....
ということで、『このミステリーがすごい!』大賞でも隠し玉より上(? のハズ)の優秀賞の「コレクター 不思議な石の物語」 (宝島社文庫)を手に取ることに。
単行本のときのタイトル「『童石』をめぐる奇妙な物語」だったのが改題されています。

路線変更して優秀賞を手に取って、正解でした。
まず、なにより文章が安心できます。小説の基本は、やはり文章ですよね。

冒頭、まるで伝奇小説かな、と思わせるオープニングです。
そこから、すっと高二の主人公の話へ移ります。ばあちゃんの葬式で家族に内緒で怪しげなことをやる主人公耕平。これも伝奇っぽい。
で、ばあちゃんから回収した(?) 石をもって、コレクター林老人のところへ。
耕平やナオミ先生のキャラクターが今風というか、軽い感じではあるのですが、一方で主要人物である林老人のキャラクターが怪しげで、それでいて結構趣があって、この落差がポイントかと思いました。
さまざまな不思議な石にまつわる物語があれこれと語られていくわけで、ミステリーというよりは、ファンタジーに近い作品だと思いましたが、どれもおもしろかったですね。
作者が提示する世界観(?) が独特で、それを味わうことがとても楽しい。
見たこと、読んだことのない世界ながら、それでいて、どことなく懐かしいような手触りの作品でした。
異色作だと思います。



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婚活島戦記 [日本の作家 は行]


婚活島戦記 (宝島社文庫)

婚活島戦記 (宝島社文庫)

  • 作者: 柊 サナカ
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/08/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
孤島に集まったのは厳格な審査を経た選りすぐりの美女たち。巨万の富を築いたIT業界の寵児、桐生高雄の花嫁を決める選抜大会が開かれるのだ。勝者には、莫大な富と世界的名声を誇る桐生の花嫁の座が保証される。四日間のサバイバルを勝ち抜くのは果たして誰か。元アングラ格闘家の二毛作甘柿をはじめ、個性豊かな女性たちが繰り広げる壮絶な婚活バトル。戦いの幕が、切って落とされる!


この「婚活島戦記」 (宝島社文庫)は、昨日感想を書いた「残留思念捜査(サイコメトリー) オレ様先生と女子高生・莉音の事件ファイル」 (宝島社文庫)と同じく、第十一回(2013年)「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉です。

 
上に引用したあらすじを読まれて、どう思われましたか?
あり得ない、馬鹿馬鹿しい、と思われた方、その通りです。
あり得ないような、馬鹿馬鹿しいお話です。
解説で大森望が書いています。
「こんな背景設定やストーリーは、正直、どうでもいい。本書の最大の魅力は、強烈な個性を持つわれらがヒロイン、二毛作甘柿の造型にある。」
確かに、甘柿のキャラクターは魅力的です。
ハイヒールを脱ぎ捨てて、強化ガラスを蹴破る冒頭のシーンから、確かにわしづかみにされます。
魅力あふれる登場人物に出会うことも読書の醍醐味ですから、これだけの人物を作り出したのは確かにお手柄ではありますが、やはり気になるんですよねぇ、設定の陳腐さが、荒唐無稽さが。そしてその後の展開の陳腐さ、荒唐無稽さが。
花嫁の座をめぐる争い、というのだったら、体力勝負もあっていいけれど、知恵の戦いの要素を強く打ち出すとかしてくれないと、ミステリとしては楽しみが薄すぎます。全体の構想、構図も、少しは知恵の要素が絡んではいますが、なんだかありきたり。
素敵なキャラクターを生み出す力を活かせるような設定と展開の作品を次は読ませてくれることを期待します。(さんざん文句を言っておいて、次に期待というのも変な話ですが、そう思わせる力はお持ちだと思います)


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大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 [日本の作家 は行]


大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 (双葉文庫)

大富豪同心 八巻卯之吉放蕩記 (双葉文庫)

  • 作者: 幡大介
  • 出版社/メーカー: 双葉社
  • 発売日: 2010/01/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
老中も一目おく江戸一番の札差・三国屋の卯之吉が、同心株を買って定町廻同心見習いになった。武術の心得は全くないが、放蕩三昧を繰り返していたときに得た知識、人脈、そして莫大な財力で難事件を、次から次と解決していく。卯之吉の出自を知らない同心仲間は、その八面六臂の活躍にただただあきれるばかり。書き下ろし長編時代小説第一弾!


「猫間地獄のわらべ歌」 (講談社文庫)
「股旅探偵 上州呪い村」 (講談社文庫)
の2作でミステリファンを楽しませてくれた幡大介の時代小説です。
「猫間地獄のわらべ歌」「股旅探偵 上州呪い村」がおもしろかったので、その他の作品も読んでみようと思いました。
ところが、幡大介って、ものすごい多作家なんですね。
「天下御免の信十郎」シリーズ (二見時代小説文庫)
「独活の丙内密命録」シリーズ (竹書房時代小説文庫)
「大江戸三男事件帖」シリーズ (二見時代小説文庫)
「千両役者捕物帖」シリーズ (時代小説文庫)
「関八州御用狩り」シリーズ (ベスト時代文庫)
パッと見ただけでもこんなに。本当はもっとあると思います。
シリーズものがいっぱいあって、さてどれを読んだものやら。
で、筒井康隆の「富豪刑事」 (新潮文庫)を連想させてくれたこの「大富豪同心」 (双葉文庫)を手に取ることにしました。
結論から申し上げると、大変おもしろかったです。

どう考えても同心として活躍できそうもないキャラクターなのに、そして本人はたいしたことをしないのに、周りが勝手に動いたり、勝手に勘違いしたりして、剣豪で腕利きだと思われてしまう。
定番と言えば定番の設定ですが、実に気持ち良く、卯之吉をめぐる虚実の落差が心地よい。
放蕩仲間にキーマンがいるところとか、定石の展開が、かえってそうでなくちゃと思わせてくれます。

冒頭、突然同心となった卯之吉は、「江戸時代の武家社会では、自分がお役に就いたりした際に、上役や同輩を招いて自分自身の披露宴を開催する、というしきたりがあった。全額自腹で同僚たちを持てなし、みやげ物まで持たせるのだ。」とかで、宴を持つのですが、その場所が江戸屈指の料亭「叙風庵」で(「叙風庵は幕閣や大名家も贔屓にしている料亭」で、扶持米三十俵の不浄役人が足を踏み入れて良い場所ではないし、うっかり踏み込んだら無礼討ちにもされかねない、ような気もする」なんて説明があります)、酌をする芸者が、「目下のところ人気番付第一位を飾る売れっ子」で「深川芸者上位番付の貸し切り状態」。しかもその宴席に老中がやってきて卯之吉に杯をとらせ、「皆の者に申し渡す。八巻の面倒をよく見てやれ」と命じる。
いやあ、凄まじい。そりゃあ、周りも度胆抜かれますよね。

時代考証の正確さは、時代小説を読み慣れないのでわからないのですが、書き込み方からちゃんと書かれているように思われます。
軽く読めますが、登場人物のキャラクターもマンガっぽいですが際立っていますし、いいもの読んだな、と感じました。
しかし、シリーズもかなり巻数を重ねているので、今から追いかけるのは勇気がいるなぁ...



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弁護士探偵物語 天使の分け前 [日本の作家 は行]


弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

弁護士探偵物語 天使の分け前 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 法坂 一広
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/01/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第10回『このミス』大賞受賞作。「殺した記憶はない」と、母子殺害事件の容疑者・内尾は言った。裁判のあり方をめぐって司法と検察に異を唱えたことで、弁護士の「私」は懲戒処分を受ける。復帰後、事件の被害者・寅田が私の前に現れ、私は再び、違和感を抱えていた事件に挑むことに。その矢先、心神喪失として強制入院させられていた内尾が失踪。さらに周囲で不可解な殺人が起こり……。


この作者のお名前、“のりさか”ではなく、“ほうさか”なんですね。
第10回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作です。
上に引用したあらすじではわかりませんが、ジャンル的には、弁護士を主人公にしたハードボイルドになるでしょうか。
帯に「ウイット溢れる新感覚ハードボイルド!!」とありますが、「新感覚」ではありませんね。
特徴的なのは、非常に饒舌な減らず口(ワイズクラック)です。やや過剰ではあるものの、実は、個人的にはこういうの好みです。賛否分かれるというか、好き嫌いが分かれる作風ですけどね。
大賞1千2百万円の価値があるか、と聞かれると、この作品には目新しさが感じられないので、考え込んでしまいますが、過去の「このミステリーがすごい!」大賞のラインナップを見たら、これで十分ではないでしょうか?
賞を与えて出版してくれてよかったと思います。
少なくともぼくは読めてうれしかったです。(その意味では、優秀賞か、あるいは「このミステリーがすごい!」大賞らしく、隠し玉でもよかったんですけどね)

探偵キャラクターも、周りの登場人物も、事件も、見事なまでに既視感があるというか、どこかで読んだことがあるような印象ですが、それを堂々と貫き通しているのが立派です。
読んだ印象は、目新しさはなく、既視感があるものではあっても、こういう作風、実は意外と少ないような気がします。典型的すぎる王道は、かえってみんなが避けるからかもしれません。

同じ主人公でシリーズ化されているようですので、楽しみです。
事件の構図や、作者が意識している司法の問題に独自色が出てくれば、言うことなし、です。
解説で茶木則雄も触れていますが、「日本の司令塔ばしよるったい」という入院患者とのやりとりは、傑作なので、この今村という患者にまた会いたいけど、それは無理でしょうねぇ。


<蛇足>
213ページにでてくる「釈迦に説法」という語。
「この言葉の使い方自体は理論的には大きく間違っていなそうだ」と書かれていますが、間違っていますよね!
言うとしたら、釈迦に説法ではなく、馬の耳に念仏、でしょうか?







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