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QED 伊勢の曙光 [日本の作家 高田崇史]


QED 伊勢の曙光 (講談社文庫)

QED 伊勢の曙光 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
伊勢の鄙びた村から秘宝の鮑真珠を持参していた神職が、不審な墜落死を遂げる。事件解決へ協力を頼まれた桑原崇は、棚旗奈々とともに伊勢へ。しかし、二人を待ち受けていたのはシリーズ中最大の危機だった。果たして崇は、事件の真相と、日本史上最大の深秘「伊勢神宮の謎」を解けるのか? 「QED」完結編!


シリーズもとうとう最終巻。13巻っていうのも、ミステリらしくていいですね。
最終巻のテーマは伊勢神宮。
現実の事件の方は抛っておいて(失礼)、伊勢神宮と天照大神をめぐる三十の謎、てのがすごいです(474ページ)。ちょっとムリヤリっぽく数を増やしている観はありますが...

・何故、内宮より後に建てられた外宮から先にお参りするのか。
・何故、祭祀も外宮の方が先 -外宮先祭なのか。
・何故、外宮の様式は『男千木(おちぎ)』で、鰹木も奇数本なのか。 これは男神を祀っていることになるが、祭神は豊受大神-明らかに女神である。
・何故、五十鈴川を渡ってから下るのか。
・何故、外宮・内宮共に参道が九十度折れているのか。 天皇家の祖神が怨霊だというのか。
・何故、天皇は明治の御代まで公式参拝されなかったのか。
・何故、明治になって突然公式参拝されたのか。
・何故、鳥居に注連縄がないのか。
・何故、狛犬がいないのか。
・何故、賽銭箱がないのか。
・何故、神殿正面に鈴がないのか。
・何故、本殿正面に蕃塀が建てられてるのか。
・何故、興玉(おきたま)神をそれほどまでに祀るのか。二見浦に祀られている猿田彦命のことである。
・何故、倭姫巡幸で二十四ヶ所も転々としたのか。その資金は一体どこから捻出されたのか。
・何故、当時住みづらかった伊勢に落ち着いたのか。
・何故、五百年も経ってから豊受大神が呼ばれたのか。
・何故、二十年に一度、遷宮を行うのか。
・何故、伊勢参りにあれほど多くの人々が熱狂したのか。
・何故、伊勢白粉が梅毒に効くといわれるようになったのか。
そして
・天照大神は、本当に女神だったのか。
・天照大神は、蛇だったのか。
・天照大神は、『かはく』 『河童』だったのか。
・天照大神は、天岩戸で殺害されたのか。
・天照大神は、本当に天皇の祖神だったのか。
・天照大神は、何者なのか。
・天照大神は、卑弥呼だったのか。
・天照大神と、天照国照彦天火明櫛玉饒速日命との関係は。
・天照大神と、持統天皇の関係は。
・天照大神は、本当に伊勢に祀られているのか。
あとおまけ(?)
・そもそも『神宮』とは何なのか。

薀蓄系ミステリの最高峰と言っても過言ではなさそうなこのシリーズのラストを飾る謎として、伊勢神宮はなかなかよいな、と思いましたが、高田流史観といいますか、このシリーズを通して繰り返し繰り返し読者に伝えられてきたことが底流となっているので、通念が大きく覆される快感は、愛読者には少な目?
伊勢神宮の祭神や、天照大神をめぐる真相(?) はかなり衝撃的なはずなんですが(そしてなにより、ミステリ的に解かれているのが素敵なんですが)、なんだかすーっと流れてしまったような気がします。
でも、いいんですよね、これで。言ってみれば、ボスキャラと対決したんですから。
ボスキャラとの対決時に、いちいち驚いていたら....お話がめちゃくちゃになってしまいますよね。

それにしても、タタルと奈々、うまくいったんですよね、このラスト。
ここまで長々と付き合ってきたんだから、はっきり書いてくれたらいいのになぁ。最後くらい。

ということで、シリーズ完結めでだしめでたし。
ミステリの中で、個性光るシリーズです。

<蛇足1>
「大師は弘法に奪われ、黄門は光圀に取られた」(318ページ)という言葉知りませんでした。おもしろい言葉ですね。

<蛇足2>
目次に続く、あとがきの暗号、わかってうれしかったです。
でも、これ、暗号というよりは、言葉遊びでしょうか?

<蛇足3>
最後にさらっと、明治神宮をめぐる謎(祀られている明治天皇が怨霊!?)が提示されていますが、これって、解決なし??

<蛇足4>
この作品のタイトル、あけぼの、ってふりがなが振ってありました。


最後にシリーズをまとめて掲示してみます。

No. 作品名 書影
1 QED 百人一首の呪 QED 百人一首の呪 (講談社文庫)
2 QED 六歌仙の暗号 QED 六歌仙の暗号 (講談社文庫)
3 QED ベイカー街の問題 QED ベイカー街の問題 (講談社文庫)
4 QED 東照宮の怨 QED 東照宮の怨 (講談社文庫)
5 QED 式の密室 QED 式の密室 (講談社文庫)
6 QED 竹取伝説 QED 竹取伝説 (講談社文庫)
7 QED 龍馬暗殺 QED〈龍馬暗殺〉 (講談社文庫)
8 QED 鬼の城伝説 QED 鬼の城伝説 (講談社文庫)
9 QED 神器封殺 QED 神器封殺 (講談社文庫)
10 QED 河童伝説 QED 河童伝説 (講談社文庫)
11 QED 諏訪の神霊 QED 諏訪の神霊 (講談社文庫)
12 QED 出雲神伝説 QED 出雲神伝説 (講談社文庫)
13 QED 伊勢の曙光 QED 伊勢の曙光 (講談社文庫)


番外編? が4冊あります。
No. 作品名 書影
1 QED~ventus~ 鎌倉の闇 QED~ventus~〈鎌倉の闇〉 (講談社文庫)
2 QED ~ventus~ 熊野の残照 QED ~ventus~ 熊野の残照 (講談社文庫)
3 QED~ventus~御霊将門 QED~ventus~御霊将門 (講談社文庫)
4 QED ~flumen~ 九段坂の春 QED ~flumen~ 九段坂の春 (講談社文庫)



<2017.03訂正>
タイトルが間違っていました。
今頃気づきました。きちんと伊勢の曙光に修正しました。
タグ:高田崇史 QED

カンナ 鎌倉の血陣 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 鎌倉の血陣 (講談社文庫)

カンナ 鎌倉の血陣 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/09/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
甲斐は、婚約者の聡美に誘われ、茶会に出席するため鎌倉へ二人旅。しかし、そこには貴湖(たかこ)と竜之介の姿が。女二人が火花を散らす中、茶会の主催者であると息子の範夫が殺害される。甲斐は、宗朝が調べていたという源氏がたった三代で滅びた理由と、宗朝親子殺人事件の真相に、奇妙な共通点を見出す!


シリーズも順調に巻を重ねて第六冊目。
今回の史実は鎌倉、なんですが、歴史の部分にあまり切れ味を感じませんでした。すべてがすべて、ではありませんが、なにやらどこかで読んだような感じ。まあ、どこかもなにも、ほかならぬ高田崇史の「QED~ventus~〈鎌倉の闇〉」 (講談社文庫)ですけどね。
たとえば、源氏が鎌倉を幕府を開く場所として選んだ理由には「QED~ventus~〈鎌倉の闇〉」の影を感じます。それでも、「いざ鎌倉」は、武士の忠義ではなく、「組合」(武家連合みたいなものでしょうか)からの締め付けだった、とか、ちょっと楽しくなります。
注目は(?)、いつもの朝廷の横暴、がないことでしょうね。鎌倉では、朝廷に代わる黒幕、悪者は、言わずと知れた北条家。存分に力を振るっていますよ。

いや、そんなことより、このシリーズは、甲斐と貴湖たちのストーリーの方が重要ですよねっ。
貴湖が休学をとりやめようとしていたり、おおきく動こうとしていますね。
甲斐もどんどん隠れた能力を発揮しています。
ラストでは、海堂の爺さん(甲斐の婚約者聡美の祖父)が、「噂に聞く『鴨志田家の能力』」なんてモノローグを....
おまけっぽいですが、QEDの棚旗奈々が登場し、タタルや御名形の名前も登場します。

残り少なくなったシリーズ、あと少し頑張って読みます!

<蛇足>
解説の中に作者のインタビューがあって、シリーズ九冊を刊行順に並べて、タイトルの最後の一文字をつなげると、臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前となるというのを受けて、作者がこう言っています。
「陰陽師や忍者などに広く使われた『九字』の意味は、『臨める兵、闘う者、皆陣列(つ)れて前に在り』。つまり《カンナ》は、読めば鎮魂になり、さらに九冊すべて揃えると結界が張られて、悪霊や邪気から身を守れますと。」
古今東西、こんな意図を持って書かれたシリーズがありましたでしょうか!?



QED 出雲神伝説 [日本の作家 高田崇史]


QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

QED 出雲神伝説 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/01/16
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
奈良・初瀬(はせ)川沿いのマンションで起こった、密室殺人事件。その一週間前に橿原(かしはら)神宮で起こった、ひき逃げ事件。どちらの現場にも、「出雲神流(いずもしんりゅう)」という古の忍び集団の紋様が残されていた。事件の真相は?  そして、奈良に「出雲」という地名が数多く残されている理由は?  古代出雲の起源が、今、解き明かされる!


シリーズもいよいよ大詰めを迎えてきました。
次の「QED 伊勢の曙光」 (講談社文庫)が最終巻となります。

今回のテーマは、タイトルにもあるとおり、出雲、なんですが、島根の出雲、だけではありません。
文庫の帯に
「奈良の出雲と島根の出雲、どちらが本当の『出雲』なのか?」
と書かれているように、奈良の出雲が取り上げられています--というか、こちらがメイン!?
ほかにも、京都山城の国に出雲郷があった、と紹介されていますし、タタルたちは丹波亀岡の出雲大神宮を訪れます。
この亀岡市千歳町にある出雲大神宮は何度か行ったことがあるので、なんだかうれしくなってしまいました。知っているところが出てくると、うれしいですね。しかも、それがかなりマイナーな場所だったりするとひとしお。でも、「元出雲」と呼ばれていたなんて、知らなかったなぁ。吉田兼好の徒然草に出てくるのは知っていたんだけど。

このあと、タタルによる、出雲のおさらいが始まるのですが、いやあ、いつにもまして資料が多い印象ですね。盛りだくさん。
因幡の素兎の話もあっさり解説されます。あら、そうだったの? とまず感心。
高さ十六丈(48.48メートル! ビル12,3階分と書かれています)の出雲大社が何度も倒壊した理由も。これまたあっさりしているけれど、なんとなく納得。
こういうのがあちこちにあって、薀蓄系の面目躍如といったところでしょうか。

254ページになって、ようやく(?)、テーマがまとめられます。
「出雲が島根ではなく、奈良にもあった。そこまでは良いとしても、ではどちらが元なのか?
 そして、奈良や京都に、どうして出雲がたくさん散らばっているのか。」
うーん、わくわくしました。

現実の事件なんて、どうでもいい感じ(失礼)。
もともとQEDシリーズは、歴史と現実の事件の結びつきに剛腕を発揮し、そこが魅力ではあるのですが、この「QED 出雲神伝説」の場合、現実の事件の動機が、読者をねじふせるには力不足だと感じました。
事件の現場に残されている謎の紋様の仕掛け(?) は遊び心満載で楽しかったですが。

でも、全体としては、出雲をめぐる謎がおもしろかったので、十分楽しめました。
邪馬台国は九州だったか、畿内だったかのタタルの考えがあっさりと書かれていたりして、油断なりませんね。タタル説、かなり納得感あるような気がしました。

巻末に「QED~flumen~出雲大遷宮」というおまけ(?) が収録されています。
こちらでは、太古は出雲大社の本殿の高さは98メートル! と紹介されています。うわーっ。ちなみに、現在の本殿は24メートルだそうです。
こちらは、出雲大社本殿の天井に描かれている「八雲之図」には、どうして七つしか雲が描かれていないのか? という謎と、拝殿からだと大国主命の横顔を拝む形になるのはなぜなのか? という謎が解明されます。


<蛇足>
「着信履歴を鑑みて」(58ページ)という文章があります。「を鑑みて」という表現、やはり気になります。間違い、じゃないのかなぁ?





タグ:高田崇史 QED

カンナ 戸隠の殺皆 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 戸隠の殺皆 (講談社文庫)

カンナ 戸隠の殺皆 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/05/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
忍者の末裔三人組、鴨志田甲斐(伊賀服部流)、中村貴湖(伊勢服部流)、柏木竜之介(甲賀)プラス忍者犬のほうろくは、奪われた秘密の社伝を追って、長野・戸隠へ。敵対する波多野村雲流に襲われながらも、甲斐は戸隠に伝わる「鬼女・紅葉」と「天岩戸」ふたつの伝説の、これまで語られることのなかった真相に迫る!


シリーズ第5巻です。全部で9巻までありますので、折り返し地点にたどり着きました。
今回は戸隠。戸隠は行ったこともなく、知識もありませんので、よくわからないまま読み進んだのですが、シリーズの眼目である、朝廷の横暴が出てくるところでは「待ってました」といった 感じで楽しみました。戸隠に知見があればもっと楽しかったでしょうね。
このシリーズは、事件は起きても、謎解きミステリという風情はなく、冒険小説、それも「少年探偵団」 (ポプラ文庫)とかジュール・ヴェルヌ「地底旅行」 (岩波文庫)のような懐かしいテイストの冒険小説に近い感じがしています。

この5巻では、甲斐と貴湖の関係が転機を迎えているような感じがしますし、278ページからは、貴湖と海棠聡美が鞘当てを繰り広げたりもして、なかなか注目度が高かったように思います。



カンナ 奥州の覇者 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 奥州の覇者 (講談社文庫)

カンナ 奥州の覇者 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
闇に葬られた、知られざる歴史を記した秘密の社伝。この書物を持って失踪した諒司から連絡が。急ぎ、岩手・水沢へ向かう甲斐だったが、社伝はすでに修験たちに奪われていた。一方、この土地の先住民・蝦夷の長であったアテルイは、なぜ簡単に坂上田村麻呂に降伏したのか。ここにも歴史の暗部が眠っていた。


シリーズも第4作になって、こちらもずいぶん登場人物に馴染んできました。
鴨志田甲斐、中村貴湖、柏木竜之介そして忍者犬のほうろくという旅仲間と、留守を守る(?) 甲斐の両親完爾と展子そして貴湖の祖父丹波。忍びの家系というのがポイントですね。
一方、逃げる諒司は当然ながら怪しげですが、諒司の妻志乃芙も、その父含めなにやら怪しげになってきて、いいではありませんか。甲斐の婚約者海棠聡美も最初っから怪しいですし。
修験のものたち、とか、波多野村雲流の人間たち、とか味方なのか敵なのか、入り乱れて伝奇っぽい感じ。
今回の地方は、奥州。アテルイと坂上田村麻呂ですか。ちょっと馴染みがないですねぇ。
でもいいんです。英雄田村麻呂の化けの皮がはがれる、というか、朝廷の悪辣さがわかって楽しめればそれでいいのです。

73ページ、アイヌ語をいろいろと解釈しているところで、「カンナ・カムイ」が「天の神」という意味で、「カンナ」には「天」の他にも「雷」という意味や「龍」という意味まである、と紹介されています。
シリーズタイトルに絡む重要な知識ですね。
また、ラストにQEDシリーズの桑原崇と棚旗奈々とおぼしきカップルが出てきてちょっとニヤリ。ストーリーには絡みませんが、こういうの楽しいですね。

どんどん忍びを取り戻すというか、身につけるというか、能力を発揮しだしてきて、シリーズが深化していっていることがここからもうかがわれます。次が楽しみです。




カンナ 吉野の暗闘 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 吉野の暗闘 (講談社文庫)

カンナ 吉野の暗闘 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/07/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
諒司(りょうじ)捜索のため、甲斐と巫女の貴湖(たかこ)らは奈良吉野へ。その山中で、一行は山岳ガイドの光昭に助けられるが、同じ頃、光昭の母がさらわれるという事件が発生。その裏には、吉野の黄金伝説をめぐる争いがあった。吉野の山は、なぜ桜だらけなのか?  役小角(えんのおづぬ)も金鉱脈を探していたのか?  すべての解が、ここに!


シリーズ第3弾は、吉野と修験道です。
修験道・役小角の答えは、いつもの高田節なので、ファンは楽しめると思います。
来たよー、朝廷(中央政府)の横暴!!
このシリーズは(QEDシリーズも、と言えるかもしれません)、普段気づかない、あるいは学校で習う歴史では教えてくれない、この「朝廷(中央政府)の横暴」を、いろいろな形で提示することが眼目の一つだと思われますので、「また朝廷だよ」というのではなく、「おお、こんなところにも朝廷の横暴が」と楽しむのが正道だと思います。
山が女人禁制になった理由、なかなかの捻りだと感心します。
また、吉野の山が桜だらけの理由も、なんかミステリっぽい。

一方で現実の事件の方は、超薄味というか、勝手に犯人が自滅するパターンで、食い足りないですね。
「この殺人事件の『扱いの軽さ』こそが、カンナシリーズ全体で表現しようとしているテーマを象徴していると考えられるからだ。読者諸氏は、歴史の記録から意図的に消され、忘れられた敗者や庶民の存在を、高田崇史が作品を通じて繰り返し思い出すよう訴えてきたことを覚えておられると思う。彼らは、為政者から大義名分のもとに理不尽に、軽々しく生活を奪われ、その命を散らしてきた。カンナシリーズの殺人事件の『軽さ』は、人の命が虫よりも軽かった時代の時代性がむしろ二重写しにされているようにみえる。」
と解説で真中耕平が書いていますが、ものはいいようといいますか、これはいくらなんでも贔屓の引き倒しだと思います....

とはいえ、甲斐がどんどん忍者っぽくなってくるというか常人離れしてきているのが微笑ましく、シリーズとしては楽しくなってきたので、全9巻、読み進んでいきます!





カンナ 天草の神兵 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 天草の神兵 (講談社文庫)

カンナ 天草の神兵 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/04/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
出賀茂(いずかも)神社の跡取りで忍者の血を引く甲斐は、秘密の社伝『蘇我大臣馬子傳暦(そがのおおおみうまこでんりゃく)』を追って、巫女の貴湖(たかこ)らと九州・天草へ。そこでは、児童養護施設「ロザリオ園」のシスターが撲殺されるという事件が起こっていた。犯人は神父が匿っている、と睨む甲斐だが、その前に、“神の子”天草四郎出生の謎が立ちはだかる。


カンナシリーズ第2弾です。
今回の謎は、天草四郎(と島原の乱)。

前作「カンナ 飛鳥の光臨」の感想で(リンクはこちら
「QEDシリーズと同様に、どんどん歴史をひっくり返していってほしいです。」
と書いたのですが、この「カンナ 天草の神兵」 はその点弱いかな、という気がしました。
というのも、「島原の乱」(あるいは島原・天草の乱)は、キリシタン一揆であると同時に、いわゆる百姓一揆でもあった、と歴史で習っているので、定説が「ひっくり返った」感があまりしなかったからです。
また、文庫の帯にある部分
「貴湖は首を捻った。やはり最後の幕府の仕打ち。
〝どうして、原城の人々を皆殺しにしなくてはならなかったのだろう……〟
これは単なる『キリシタン殲滅』とは考えらえれない。
何しろ、女子供も一人残らず殺害して、なおかつ城を破壊し、完全に埋めたのだ。
それは、一体どういう理由だったのか?」
というのも、ミステリ的にも興味深い謎の設定なのですが、ちょっと拍子抜けというか、意外感なく。

とはいえ楽しいシリーズではあるので、忍者の末裔の活躍を今後も楽しみにしたいです。



カンナ 飛鳥の光臨 [日本の作家 高田崇史]


カンナ 飛鳥の光臨 (講談社文庫)

カンナ 飛鳥の光臨 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
伊賀忍者の末裔にして、出賀茂 (いずかも) 神社のお気楽跡取り・鴨志田甲斐 (かもしだかい) 。しかし、その平穏は、秘密の社伝『蘇我大臣馬子傳暦』(そがのおおおみうまこでんりゃく) の盗難によって破られる。謎を追って、現役東大生のアルバイト巫女・貴湖 (たかこ) と飛鳥へ向かった甲斐は、そこで密室殺人事件に巻き込まれ……。日本の歴史へのまなざしが変わる、新シリーズ開幕!

QEDシリーズの高田崇史による新シリーズです。QEDシリーズが完結する前に、新しいシリーズをスタートさせたのですね。
解説で辻村深月さんが
「同じく歴史を扱った前シリーズとなぜ並行して? という疑問は、両シリーズを読んだ読者には、もうおわかりのことと思う。」
と書かれています。
でも、わかりませんでした...両シリーズを読み進めばわかるのかな? 
この解説、新シリーズの方の第1作の解説としては不親切というか、わかりにくいところが多々あり、わざとそういう書き方をされているのだとは思いますが、同じ内容でもちょっと違う書き方に変えてもらったほうがよかったように思いました。

さて内容ですが、まず主役・甲斐が忍者の末裔というのが楽しかったですね。
「お気楽」とあらすじにあって、確かにお気楽な風情を醸しているのですが、いやいやどうしてそれなりに忍者としての(?) 素養があったりします。そりゃあ、ちゃんとした忍者(?) からしたら不十分かも知れませんが、普通の一般人から見れば十分普通じゃない領域にいますよ。忍者犬ほうろくも、シリーズ通して大活躍してほしい登場人物 (? 人ではないですが) です。
シリーズとしては、甲斐の先輩諒司の行方を探す、そしてこの「カンナ 飛鳥の光臨」で盗まれた秘密の社伝の行方を探すということがあって、それは次巻以降に持ち越しとなるわけですが、その最中 (道中?) に歴史上の謎を解く、という枠組みのようです。

今回の謎は、聖徳太子。
聖徳太子といえば誰でも知っている偉人ですし、学校で歴史でも習いますし、以前はお札の肖像でもありました。そのため、数々の逸話なども残っていますが、確かに偉い人だとは思っていたのですが、同時に変な人だなぁとも思っていたので、この「カンナ 飛鳥の光臨」で新しい角度から光が当たって、とてもおもしろかったですね。
歴史を学んだのはずいぶん前なので、もうかなり忘れてしまっているので、一番勉強していた受験前なんかに「カンナ 飛鳥の光臨」を読んでいたら、相当感銘が深かったかも。一方で、教科書で学ぶような歴史を勉強するのが嫌になっていたかもしれませんねぇ(笑)。

作中にも出てきますが、
「歴史はただ暗記しさえすれば良いっていうもんじゃない」
「知識はあるに越したことはないけれど、でも、自分で考えなくてはダメだ」
ということで、QEDシリーズと同様に、どんどん歴史をひっくり返していってほしいです。

P.S.
ところで
「大化の改新--今は、乙巳の変と言うけれど」(223ページ)
となっていますが、大化の改新と乙巳の変って、イコールでよかったんでしたっけ?


毒草師 白蛇の洗礼 [日本の作家 高田崇史]


毒草師 白蛇の洗礼 (朝日文庫)

毒草師 白蛇の洗礼 (朝日文庫)

  • 作者: 高田崇史
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/11/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
裏千家の茶席で発生した毒殺事件。真相を追う編集者の西田の前で、第二の被害者は自らの吐血で十字を描いた。同席者が次々と殺害される中、彼は千利休の奇妙な経歴に辿り着く。傲岸不遜にして博学の〈毒草師〉御名形史紋の推理が冴えるシリーズ第2弾。

QEDシリーズのスピンオフ、毒草師シリーズ、「毒草師 QED Another Story」 (講談社文庫)に続く第2弾です。
昨年12月に第3弾「毒草師 パンドラの鳥籠」 (朝日新聞出版)が出ました。
この「毒草師 白蛇の洗礼」は、朝日新聞出版から出た後、講談社ノベルスでノベルス版が出て、文庫は朝日文庫、と少し変わった経路で文庫化されています。大人の事情ですかね?

今回の歴史上の謎は、千利休。
上で引用したあらすじではぼかしてありますが、帯には
『「千利休=キリシタン」説が誘う、殺人の系譜--。』
とはっきり書いてあります。
「千利休=キリシタン」説って、有名なんですね。知りませんでした。キリシタンなのに、切腹(=自殺)とは? というのがかなりポイントとなる点のようです。
編集者の西田くんというのが語り手で、狂言回しの役を果たしています。毒草師:御名形が出てくるまでがちょっと長く感じなくもないですが、個人的には西田くんがなかなかいい味を出していると思うので、これはこれでOKです。
それにしても、高田崇史は本当にすごいですね。
茶席で発生した毒殺事件というのが、現実世界でのメインになるわけですが、このトリック(?)が、とてつもない。どうやって毒を入れたのか、どうやって特定の人物に毒の効果を及ぼしたのか、本当にすごいですよ。
由緒正しい本格ミステリファン(?)としては、アンフェアだとか邪道だとかいって、腹を立てるべきところなのかもしれませんが、いや、もう、あっぱれ!、です。
読み返してみると、怪しげなプロローグをはじめとして、ヒントとまでは言わなくても、真相を暗示するようなことはあちらこちらに書かれていて、堂々としたものです。もちろん、想像もしないような真相ですので、その程度のヒント(?)ではどうやっても見抜けたりはしないと思いますが...
こんなこと思いつかないし、現実にありうることだとしても、ミステリに仕立てようなんて思わない。でも、こうやって立派にミステリになって読者の手元に届けられている。
ぜひ、唖然とするためにお読みください!

QED ~flumen~ 九段坂の春 [日本の作家 高田崇史]


QED ~flumen~ 九段坂の春 (講談社文庫)

QED ~flumen~ 九段坂の春 (講談社文庫)

  • 作者: 高田 崇史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
桜の木の下で、花びらを握り締めた男の死体が発見された。中学生の桑原崇が想いを寄せる、女教師・五十嵐弥生は事件に関係があるのか?  崇の淡い失恋、棚旗奈々のファーストキス……小松崎、御名形らの学生時代が綴られ、いつしか複雑な糸は、1本の美しい「縁」となる。切なくも眩しい、QED青春編!

QEDシリーズの番外編ではあるのですが、「QED 諏訪の神霊」 (講談社文庫)を先に読んでしまったので、あわてて(?)読みました。
この「QED ~flumen~ 九段坂の春」は、QEDシリーズの登場人物たちの若いころを描いた短編集で、「QED 諏訪の神霊」 (ブログの感想はこちら)と共通する登場人物もいます。ストーリー上に影響はないのでどちらを先に読んでも問題がないのですが、出版の順番通りに先に読んでおきたかったかな。いや、ひょっとしたら出版とは逆に読んで正解だったのかな?
「九段坂の春」
「北鎌倉の夏」
「浅草寺の秋」
「那智瀧の冬」
と季節をあしらった4作が収録されています。
シリーズ本編の諸作ほどではありませんが、いずれにも歴史や古典の謎と、現代の謎が扱われていて、本編のミニチュア版といった趣です。
謎の大きさ、深さが物足りないという方もいるとは思いますが、レギュラー陣の若かりし頃を描く、というテーマに沿って、それぞれの人物の身の丈にあった、あるいはそれぞれの置かれたシチュエーションに合った謎が配置されているので、このレベルでよいのだ、と思いました。
しかし、まあ、高田崇史というのは(登場人物に)意地悪な作家ですねぇ。どういうことかは、読んでお確かめください(笑)。
タグ:高田崇史 QED
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