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黒影の館 [日本の作家 篠田真由美]


黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
一九八〇年秋、突然の義父の死。神代宗は傷ついた心を埋めるため訪れた北の町で、殺人の罪を着せられてしまう。そして、疑惑が晴れぬまま土地を支配する久遠家の「館」に軟禁され、血塗られた過去を目撃する。謎の美少年・アレクセイが悲劇の真相を語りはじめたとき、銃声が轟いた! 大人気シリーズ第14弾。


建築探偵シリーズも残り1冊となりました。
ちなみにタイトルは「黒影」に「かげ」とルビが振ってあります。
前作「一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)のラストで急展開があったので、さて、続きはどうなる!? と勢い込んだりもしましたが、この「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)では、さっと物語は過去に遡ってしまいます。

若かりし日の神代宗、そして桜井京介!!
シリーズ大団円の(はずの)次作「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)前にちょっと過去を振り返っておきましょう、という感じ?

22年前の、神代宗と桜井京介の出会いが描かれます。
で、あらすじ読んでいただくとわかりますし、みんながみんな想像すると思うので書いてしまうと、謎の美少年・アレクセイというのが京介です。
舞台となるのは、タイトルにもなっている館で、地元ではお館と呼ばれている、と(156ページ)。
「お館様というと特定の個人を指し示しているようですが、それはむしろ一個の抽象的な概念です。お館は共同体の内部にあるのではなく、しかし外部でもない。閉ざされた世界の中心に存在し、支配はせぬがその上に燦然と君臨している。」(157ページ)
と登場人物のひとりに解説されますが、いいではないですか。
いかにも、ミステリの舞台に似つかわしい、素晴らしい舞台。

登場人物もいいですよ。
屋敷に住む久遠(くどお)家の面々が、呉でグレゴリ、叡でアレクセイ、珠でモイラ、衿でエレナ、そして庵でイオイリ。
ロシアの高貴な血を引いている、って貴種流離譚ですか。京介にふさわしいではありませんか。
館の主グレゴリが、この世のものとは思われない怪物で権力と魔力の持ち主ってのも、いいですね。
で、当然これが、京介=アレクセイの敵なわけですよ。
シリーズの最終盤に向けて、いよいよ対決ものの素地完成といったところですか。

そういう構図なので、読者の興味は京介に集中してしまうのですが、この「黒影の館」 で描かれている事件は、きちんと本格ミステリのセオリーに則って展開されて、いわゆる意外な犯人も、見抜く読者が大半だとは思いますが、きちんと演出されています。

アレクセイがやはりとっつきにくすぎる性格に描かれている点、子どもには甘いにせよ、もう少し神代教授がアレクセイに肩入れする理由をわかりやすくしてもらえるとよかったかも、とは思いましたが、若き日の神代教授がいいやつだ、ってのもわかりましたし、よかった、よかった。
残りは、いよいよ「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)です。

<蛇足>
194ページに、ポーの詩「大鴉」の翻訳をめぐるやり取りがあるのですが、
「西条八十」
とあって、ちょっとびっくり。西條だと思い込んでいたからです。
さっとネットで調べてみると、どちらの表記もあるんですねぇ。
「森鷗外」と「森鴎外」みたいなもんだったんですね。






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まじょ。のミステリブロ愚



レディ・ヴィクトリア アンカー・ウォークの魔女たち [日本の作家 篠田真由美]




<裏表紙あらすじ>
アルヴァストン伯爵家で行われた晩餐会の夜、「エトワール」と讃えられるダイヤモンドの耳飾りが片方だけ、忽然と消えた。
スコットランド・ヤードも手を焼くその事件は、噂話には事欠かないヴィタ・アメリ・シーモア元子爵夫人に持ち込まれることに。
天真爛漫なレディと笑顔ひとつ見せない美貌で有能なメイド。19世紀ロンドンを舞台に自由な女性たちの冒険が、はじまる!


講談社タイガで始まった、篠田真由美の新シリーズです。
ヴィクトリア時代で、上流階級をめぐる事件で、かつ、メイドや使用人の世界も描く、というとなにやら流行に乗った作品のようです。
あとがきにも
「リアルなヴィクトリアン・メイドが活躍するミステリはありだろうか。」
と書かれていますので、それっぽい。
でもね、篠田真由美がそんなひょいと流行に乗っかったような話、書くわけないっしょ、ということで注意しながら読み進めます。

第1章でレディ・ヴィクトリア、先代シーモア子爵の未亡人ヴィクトリア・アメリ・シーモア(通称? ヴィタ)が登場するのですが、そもそも異色の貴族、です。
アメリカ出身で、お召し物もなかなか奇抜。
第2章で持ち込まれた謎が絵解きされるわけですが、いやあ、ここでニヤリとしてしまいました。
レディ・ビクトリアって、「貴族探偵」 (集英社文庫)なんですか!?
ヴィタのレディスメイドであるシレーヌがカギを握っていそうです。

で、ここで読者としては思うわけです。レディ・ヴィクトリアをめぐる使用人たちとの関係からして、本書で描かれるのは、ちっとも「リアルなビクトリアン・メイド」ではないのでは? と。
確かに、レディ・ヴィクトリアと使用人の関係の特異性と対比するかのように、それこそダイヤモンド消失事件の舞台となったアルヴァストン伯爵家のように、伝統的な? 正統派の? メイド、使用人も登場しますが、物語の比重はやはりレディ・ヴィクトリアでしょうからねぇ。

登場の仕方からして、レディ・ヴィクトリアは謎めいた人物として描かれているのですが、徐々に徐々にレディ・ヴィクトリアの謎が明らかになってくるので、より一層そう思いますね。
シリーズの展望は、レディ・ヴィクトリアがいかに敵(正体は、この第1巻「レディ・ヴィクトリア アンカー・ウォークの魔女たち」 で明らかになりますが、ここでは伏せておきます)と闘うかにあるのでしょう。
とすると、メイドたち云々というのは、背景、ということになると思います。
篠田真由美のことですから、リサーチも行き届いていると思われますし、ディテールは十分楽しめます。贅沢な感じ。

レディ・ヴィクトリアを読者に見せていくやり方も凝っています。
第1章、第2章では依頼人となる人物からの視点を中心にしてありますが、第3章からは野次馬とでもいうべき、お向かいさんの視点(!)。そしてさらっとレディ・ヴィクトリア視点が導入されたりもします。
このあたりの呼吸が、読者によっては読みやすい、あるいは読みにくいという感想につながりそうです。

ミステリ的には、冒頭の、晩餐会で消えたダイヤモンドの行方を推理するエピソードが一番ミステリっぽい。
舞台設定からして「盗まれた手紙」なんだな、と推察できてしまうので、謎解きには意外感はないものの、手段と動機が混然一体となっているので、ああうまく仕込んだなぁ、と感心できます。(真相の手がかりを大胆にさらしてある点も高ポイントなのですが、当時の人、殊に貴族だったらすぐに気づくんじゃないか、と思えるのは難点です)
以降の謎ときには、金持ちはなんでもできる、的な匂いが少しする点気になりますが、シリーズ全体のトーンが対決物なのだとしてら、これはOKということなのでしょう。

その、レディ・ヴィクトリア対敵の対決、というパターンになっていくシリーズだと思われますが、キャラクターからして、もってまわったような対決となりそうなのが、逆に期待度大です。
次の「レディ・ヴィクトリア 新米メイド ローズの秘密」 (講談社タイガ)も出ていますし、どういう風に展開するのか、楽しみですね。


<蛇足>
ヴィクトリア時代のレディスメイドが
「とんでもございません」(16ページ)
「申し訳、ございません」(34ページ)
なんていうのは、どんでもないことだと思うんですが...

<蛇足2>
アンカー・ウォークというのは、チェルシー河岸近くの小路、という設定ですが、架空の地名のようです。




一角獣の繭 [日本の作家 篠田真由美]


一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
六月の緑の森の、白い花の咲く木の下で、ぼくは君と出会った。人の姿をした美しい一角獣(ユニコーン)と――。放火殺人事件の生き残りの少女に心惹かれていく蒼。しかし少女の母は、眼窩をイッカクの牙に貫かれて無残な死を遂げた! すべてが明らかにされたとき、桜井京介の下した決断とは!? 大人気シリーズ第13弾。


『最後の「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)が文庫になる前に追い付いておきたいです。』
と前作「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)の感想で書いたのですが(リンクはこちら)、今月、その「燔祭の丘」が文庫化されたので、だめでしたね。間に合いませんでした。

蒼の初恋!? とシリーズ的に大注目の巻なんですが、いやいや、それどころではなくて、ラストにはびっくり。
そういう風にこのシリーズ展開するんですね。
京介~

先走ってはいけませんね。
この「一角獣の繭」では、京介と対決する相手との闘いから逃れて(?)、長野県の山奥へ潜む蒼が恋に落ちます。
で、事件は、その蒼の相手である七座晶那の家族に起こった事件となります。回想の殺人、という枠組みになっていますが。
晶那の父とその愛人と祖母が殺された事件。晶那の母と晶那には、確たるアリバイがあった。
こういうストーリーの場合、ミステリーでは、生き残り的少年・少女が犯人であることが多いので(おいおい)、読者は晶那が犯人じゃないか、と疑いながら読み進めることとなるわけですが、作者は慎重に慎重に、晶那が犯人というのは無理があることを述べていきます。すると、まあ、ひねくれもののミステリファンは、一層晶那を疑うようになるのですが...
実際にどうだったかは読んでお確かめください、というところですが、447ページでさらっと明かされるトリック(?) にはニヤリとしてしまいました。
これ、怒る人いますよ、きっと。でも、いいんです。
クリスティのあれを思い出しました(ある意味ネタバレなので、伏せておきます。amazon にリンクを貼っていますので、確かめる方はどうぞ)。あれを初めて読んだときは、フェアじゃないなぁ、と子供心に少し怒りを覚えたことを思い出しましたが、「一角獣の繭」のこの部分を読んでも腹は立ちませんでした。大人になった???

小道具である一角獣の牙などの使い方もおもしろいです。こっちのトリックはあんまりいただけないですが。
目を突き刺される、というのは想像しただけで怖いです。

前作「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)もそうでしたが、同じ人物が登場することもあり、ミステリ的には、あれれ? と思うような趣向が盛り込まれていますが、本格ミステリという枠組みよりは、むしろ、対決もの、という枠組みと捉えて、よし、とすべきものなのだと思います。京介を目の敵にする人物との対決という枠組みも底流に流れていますので。
(その趣向を除く部分では、本格ミステリとして閉じるようにできていて、そこはそれなりに上述のとおり楽しめます)

しかしなぁ、
「彼(注:蒼のことです)が僕の最大の弱点だとは、いまさら隠しようがないし」(34ページ)
なんて京介のセリフ、いかがなもんでしょうか...
裏返しの蒼からの見方は、166ページから縷々とつづられるのですが、こっちもなぁ...
「親や庇護者に対する子供の思いと『恋』は、どんなふうにどれだけ違うものなのだろうか。」(168ページ)と付け加えられてもなぁ...
でも、まあ、蒼が恋をした、というのはいいことです。きっと。

文庫でそろったことですし、残り2冊
「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)
「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)
を楽しみに読んでいきます。


<蛇足>
我が仏、隣の宝、婿舅、天下の戦、人の善悪(108ページ)
室町時代の連歌師、牡丹花肖柏がとなえた、茶事の席で口にしてはならない話題の一覧だそうです。
知らなかった。
含蓄深くってよいですね。


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聖女の塔 [日本の作家 篠田真由美]


聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
明治の教会が残る長崎県の無人島で、女たちが火に焼かれて死んだ。宗教的理由による集団自殺か、殺人なのか? 桜井京介は、事件性を疑う私立探偵に乞われ現地へ向かう。その頃、蒼はカルト教団に入信した友人を救おうとしていた。二人に迫る悪意の罠。狂気の炎が再び空を焦がす時、京介は蒼を救えるのか!?


シリーズもどんどん大詰めに向っている、この「聖女の塔 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)を読み終わったので、残り3冊となりました。
シリーズ終盤が近づき、作者のあとがき(ノベルス版あとがき)にも書かれていますが、作品の位置づけが変わってきたようです。
一作ずつの独立性が減って、シリーズ展開へ奉仕する雰囲気が強くなっています。

前作「胡蝶の鏡」(講談社文庫)の感想で、
「どうやらこのシリーズ、京介の謎を明かしていく方向で話が進んでいきそうなので、楽しみなような、怖いような、そんな感じです。」
と書きましたが、今回、あからさまに(?)京介を目の敵にする人物がラストで明らかになります。怖い。

長崎県の無人島・波手島の事件(?) と、蒼が潜入する(?) 宗教団体の事件。
この作品の事件の構図が、すなわちこのシリーズのフィナーレへ向けての徴なのでしょう。
名探偵対名犯人、というシリーズになっていくのでしょうね。
それにしても、蒼。本当に大学生?
ファンの方々には申し訳ないですが、ちょっと気持ち悪いです...

残り3冊、最後の「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社ノベルス)が文庫になる前に追い付いておきたいです。


<蛇足>
「通話が切れてから、すばやくボタンを操作して送信記録を消去する」(P384)
というのがありますが、通話も送信記録っていうんですかね?



胡蝶の鏡 [日本の作家 篠田真由美]


胡蝶の鏡 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

胡蝶の鏡 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
4年前、父親の反対を押し切ってヴェトナムに嫁いだ四条彰子が、京介と深春に助けを求めてきた。一家の長老、レ老人との軋轢がその理由だ。なぜか日本人を嫌うレ老人。その原因は90年前の事件にあるらしい。そして、ハノイに飛んだ京介たちの目前で再び事件が起きた。建築探偵桜井京介事件簿、第3部開幕!


第3部開幕ということで、この「胡蝶の鏡 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)を含めて残り5作となったわけですが、まず目を惹くのは、オープニングが京介の独白、ということでしょう。
京介の視点で京介自身が語られる、ってやはり注目ですね。
その後、九十年前のベトナム・ハノイの事件の回想シーンを挟んで、「建築探偵挙動不審」という章で、京介の変容が深春の目を通して描かれます。これも要注目。
ジム通い(!) して、掃除・洗濯料理をするようになり(!!) 、朝もちゃんと起きるようになった(!!!)。うわー、京介らしくない!
シリーズが結末へ向けて大きく動こうとしている予感。わくわくしますね。

事件の方は、九十年前の事件と、現在進行形で彰子が逃げている事件の大きく2つとなります。
「綺羅の柩 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)の感想(リンクはこちら)にも書いた通り、「大げさなトリック、わざとらしいミステリ的虚構はなくとも、きちんとミステリが構築できるということを示しているシリーズ」だと思いました。
建築探偵ということで、実在の建築家伊東忠太をとりあげて(とあとがきに書いてあります)、ヴェトナムを舞台にしているわけですが、そのなかでヴェトナムの歴史を簡単におさらいできて(この歴史がかなり興味深いものです)、その歴史に翻弄されながらも自らの手で自らの人生を掴み取ろうとした一族の物語が浮かび上がってくるという構造になっています。
事件は、この一族の物語と一体となっているもので、たとえば真犯人の見当がついてしまったとしても、構図のあちこちに仕掛けられた意外な真相・真実が相互に支え合い、響きあって、全体としてサプライズエンディングを演出しています。

実は、この事件サイドでも、京介をある人物の目を通して語る部分があって、シリーズ的にも注目だったりします。
「容易に手の内を見せない人間だと思った。断じてお人好しの善人などではない。理性に照らして引きあわぬ犯罪などには手を染めないだろうが、既存の倫理や思想道徳は一顧だにしない、むしろ軽蔑して足蹴にしようとする。」--ほほう。
ちなみに、お人好しの善人、という部分は、「そんなお人好しの善人がいるはずがない。それにお人好しといわれる人間は大抵頭が悪いものだ。他に有りようを知らないから仕方なく、お人好しとして振る舞っている、そんなたぐいの連中だ。」というところを受けたものです。

どうやらこのシリーズ、京介の謎を明かしていく方向で話が進んでいきそうなので、楽しみなような、怖いような、そんな感じです。









闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2 [日本の作家 篠田真由美]


闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2 (PHP文芸文庫)

闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/01/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
秋の文化祭をひかえ、新聞部のアキ、ハル、タモツは、新聞制作コンクールのための企画に頭を悩ませていた。目下調査中の七不思議のひとつ「記念博物館の謎」もなかなか進展がない。そんな中、三人に奇妙なおまじないの話をした女生徒が失踪した……。魔女、人狼、暗号、複雑怪奇な建物、そしてドイツ第三帝国の秘密まで絡み出し、彼らにさらなる危機が迫る! 謎が謎を呼ぶ、大好評学園ミステリー第二弾!


北斗学園七不思議シリーズの第2弾です。
第1弾「王国は星空の下 北斗学園七不思議1」 (PHP文芸文庫)の感想ページへのリンクはこちら

冒頭、ドイツ第三帝国の敗戦を予知するSSの少佐が出てきます。そのヘルムート・リンゲ少佐から、日本へ持ち去られた聖杯を奪還せよ、もし別のものの手に落ちるようなら破壊せよ、という指示を受けるハンス二等兵。
こういう昔のエピソードが冒頭語られるのは、第1作第1弾「王国は星空の下」 と同じですね。この枠組み、なんだかかっこいい。
そしてその後語り手はオレであるアキに移ります。
やはりこの語り口には違和感が...中学生の文章としてどうもしっくりこないんですよねぇ。
さておき、トゥーレ機関だとかヴェアヴォルフ(人狼)だとか、今どきの日本とは思えないものが次々と出てきて、古き良き冒険小説を、学園ものの衣を着せて差し出してもらっているようです。楽しい。
次の「アルカディアの魔女」 (PHP文芸文庫)も買ってあります。楽しみです。


<蛇足>
アメリカに移ったドイツ人というと、第二次大戦中に亡命したと思われがちなところ、逆で、ドイツでは戦後、悪いのは全部ナチで、自分たちは被害者というみんなの風潮の中、親衛隊の上級将校やその家族が戦後アメリカに逃れた、という134ページの説明はなかなか印象的でした。






失楽の街 [日本の作家 篠田真由美]


失楽の街 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

失楽の街 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
四月一日のW大講堂前を皮切りに開始された連続爆破事件。ハンドル・ネーム《火刑法廷》の犯行予告はなにを語る。故郷を捨ててさまよう少年、過去を引きずる男女、我が子を亡くした父。魂の置き場を喪失したものたちが、巨大都市・東京で交錯する時、その救済は何処に。建築探偵シリーズ第二部、堂々の完結。


番外編を除くと建築探偵シリーズ第10作にしてシリーズ第二部のラスト、らしいのですが、第一部と第二部の違いもそんなに意識せずにこれまでこのシリーズを読んできてしまったので、そのあたりはよくわかりませんが、そういうことわからなくてもおもしろかったです...
今回は神代教授が結構活躍します。
今となっては、このシリーズのスピンオフ作品、「風信子の家 神代教授の日常と謎」 (カドカワ・エンタテインメント)「桜の園   神代教授の日常と謎」 (カドカワ・エンタテインメント)が出版されているので驚きませんが、シリーズをノベルス版でリアルタイムに追いかけてきた人はびっくりしたでしょうね。
京介、蒼、深春たちじゃなく、神代教授が主役に近い役どころで出てくるとは...
本作は、メインが神代教授でなくてはならない、と思わせてくれる仕立てになっていて感心しました。

今回の舞台(?) いや、テーマ (?) は、作中では朋潤会と名前が変えてありますが、同潤会アパート。
作者があとがきで作品の狙いを解説していてそれ以上付け加えることはないのですが...
「ひとつの建築ではなく東京という街をテーマにしてみたいと思うようになった」
とみなが貴和の「EDGE」シリーズに発想の契機があるとも書いてあって、なるほど、と思いました。
シリーズ第1作の「EDGE」 (講談社文庫)を読んでいます。最初に出版されたのが、講談社のホワイトハート文庫だったのでジュヴナイルですが(なので、かなり軽いタッチですが)、篠田真由美がいうとおり「東京をモチーフに犯罪という補助線を引いた優れた都市小説」だったように記憶しています。

この作品のもう一つの特徴は、犯人側に視点を置いたパートがあること。名探偵を主軸に据えたシリーズで、犯人側の視点が導入されることって、倒叙もののシリーズを除けば、珍しい。
これは、おそらくテーマを東京という街に据えて、都市小説であろうとした作者の狙いがもたらしたものだと思います。
このパート、シリーズものとして期待するところとはずれているとは思うのですが、意外と楽しいのです。
このパートがあることによって引き起こされるサプライズはさほど効果をあげていない、というかちょっと不発に終わっていますが、テーマに寄り添う犯人の動機を浮かび上がらせることには成功していると思うので、ミステリとしての切れ味はなくてもいいのでしょう。
この作品も「東京をモチーフに犯罪という補助線を引いた優れた都市小説」ということかと思います。

次の「胡蝶の鏡」 (講談社文庫)からいよいよ第三部でシリーズも終盤。期待して読み進んでいきたいです。


王国は星空の下 北斗学園七不思議1 [日本の作家 篠田真由美]


王国は星空の下 北斗学園七不思議1 (PHP文芸文庫)

王国は星空の下 北斗学園七不思議1 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/09/17
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
都内にありながら、深い森に囲まれた全寮制の北斗学園。戦前からの建物が点在する広大な敷地の全貌は、学生たちにも定かではない。新聞部に所属する中等部二年のアキは、学園に伝わる七不思議のある特殊性に気づき、友人のハルとタモツとともに調査を始める。しかし、それを阻もうとするかのように、不隠な事件や奇妙な出来事が次々と起こり……。魅力あふれる建築物と眩惑的な謎が織りなす学園ミステリー。


副題にもある通り、北斗学園七不思議シリーズの第1弾です。
このシリーズはもともと、理論社のミステリーYA! というヤング・アダルト向けの叢書で刊行されました。
作者のあとがきによれば「いわゆるライトノベルではないけれど、中学生以上の若い方をメインの読者と想定して書き出された連作」です。
(余談になりますが、このあとがきがとてもよかったです)

主人公は、清家彬(アキ)と桂晴樹(ハル)と青木保(タモツ)の中学2年生3人組。北斗学園の外部受験組。
北斗学園の設定がすごいですね。
幼稚園から大学院まである。中等部から上は都心からかなり外れたかなり西の方の、ものすごく広い、森みたいに樹がたくさん生えたキャンパスの中。敷地の形は東西に長い長方形で、西側の短辺と南側の長辺が川に接していて、周囲はすっかり煉瓦塀に囲まれている。
共学で全寮制。各学年3クラスずつ。中高合わせて600人もいない。女子の方がやや多い。
馬鹿馬鹿しいほど広いキャンパスで、西側の半分近くは『旧ブロック』といって、森に覆われた中に古い建物が点在していて、人はほとんど立ち入らない。
この『旧ブロック』を探検する、というのが骨子です。

オープニングは謎めいた男女の話ですが、物語の語り手は基本的にはアキ。この語り口にかなり違和感を覚えましたが、物語そのものは楽しみました。
謎めいた学園、というと、だいたい怪しげな(?) 校長とか理事長とかでてくるものですが、ちゃーんと出てきます(総長と理事長です)。謎の大人たち(謎の青年Jとか、安物のスーツを着た死神とか)もあれこれ登場しますし、篠田真由美らしく幻想文学っぽい香りも漂います(ゆえに語り口に違和感が強くなります...)。学園が結社っぽいってのも、ツボですね。
手垢のついたような真相も、なんだか違って見えます。

七不思議ということは、第7巻まで構想されているのかもしれません。
楽しみなシリーズが増えました。追いかけていきます。


Ave Maria アヴェ マリア [日本の作家 篠田真由美]


Ave Maria アヴェ マリア (講談社文庫)

Ave Maria アヴェ マリア (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/08/12
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
酸鼻を極めた薬師寺事件から、はや十四年。時効を目前にした七月、蒼(あお)こと薬師寺香澄のもとに、謎の封筒が届いた。送り主は「響」、封筒の中身はただひとこと「REMEMBER」――。蒼は京介たちの手を借りずに、過去と向き合い記憶を辿り始める。『原罪の庭』の真相に迫る、「建築探偵シリーズ」最高傑作。

「センティメンタル・ブルー 蒼の四つの冒険」 (講談社文庫)
「angels 天使たちの長い夜」 (講談社文庫)
に続く、蒼の物語と銘打たれた、建築探偵シリーズの番外編(?)の最後の作品です。
冒頭に作者の断り書きがあるように、蒼(薬師寺香澄)に重大なつながりのある薬師寺事件を扱った「原罪の庭」 (講談社文庫)を取り込むようなかたちで物語が展開します。
この作品は、蒼の一人称、「ぼく」で語られます。
これが、個人的にはきつかったですね。大学生という設定の割に幼い、という指摘はよく受けますし、作中でもそういうことが述べられていますが、どうも蒼の思考回路についていけない自分がいました。蒼自身の口から語られる蒼の人物像に違和感があった、といってもよいと思います。
「蒼の物語」と書かれていて、ということはとりもなおさず、蒼の成長物語、ということでもあるわけで、この「Ave Maria アヴェ マリア」 の着地点に思いを馳せると、当初の人物像にもストーリー展開としての必然性があることは理解できるのですが、なんか、気持ち悪い、というか、すっきりしない、というか。(ついでにいうと、この着地点にも少々気持ち悪いところが含まれているのですが、それはまた別の話。)
なのですが、この部分を除くと、素晴らしい作品です。
特に、ミステリとしてとらえた場合には、「原罪の庭」 で扱った事件を再度取り上げ、改めて検討を加える、という設定であることを考えると、「原罪の庭」 の解決を否定するか、否定とまではいかなくても別の解決を提示するか、あるいは新しい解釈やバックグラウンド、サイドストーリーを付加するか、というかたちになるのが普通で、であればもとの「原罪の庭」 の価値を損ねてしまう危険性をはらむものなのですが、「Ave Maria アヴェ マリア」 の着地は、「原罪の庭」 ともども更なる高みに至るものと個人的には読みました。
また、このミステリとしての趣向が、「蒼の物語」としての側面と響きあって、調和しているので、見事だなぁ、と感心しました。
これは作者のシリーズ構想力が図抜けていることを示していると思いますので、ますます建築探偵シリーズの残りの作品を読むのが楽しみになってきました。

angels 天使たちの長い夜 [日本の作家 篠田真由美]


angels 天使たちの長い夜 (講談社文庫)

angels 天使たちの長い夜 (講談社文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/12
  • メディア: 文庫


<背表紙あらすじ>
夏休み、人けのない校庭に男の死体が転がっていた。校内には十五人の生徒だけ。警察へは通報せずに、生徒たちによる犯人捜しが始まる。微妙に絡み合う人間関係と錯綜するアリバイから浮かび上がる意外な犯人は? 蒼こと薬師寺香澄が活躍する「建築探偵シリーズ」の番外編。ミステリーの醍醐味、ここにあり!

建築探偵シリーズの番外編です。
食中毒事件で大人が排除された状態となった夜の学園で、犯人捜しを行うという、建築探偵シリーズの中でもミステリ味の濃い作品といえるのではないでしょうか?
閉ざされてはいるけれど、それなりに広い空間を舞台にしたことで、時間軸を中心にした謎解きが展開されます。
作品そのものは、現実の事件を題材にした作中作をプロローグとエピローグで挟み込むという構成をとっています。こういう構成の場合、絵でいえば額縁にあたる部分(この作品ではプロローグとエピローグ)の狙いが作品の評価を大きく左右するわけですが、この作品は納得できるかたちだと思います。
解説(葉山響)で「建築探偵シリーズの主要登場人物である蒼--薬師寺香澄が、本書では特権的な重要性を与えられず、単に十五人の高校生のひとりとして描かれている」とされ、確かに主役のような表立った動きはしません。「おそらく作者は、特殊な過去とは離れた環境で、単なる高校生として生活する蒼を、主役級という特権的な位置から外した上で、一度は客観的に描写しておくべきだと考えたのではないか」と指摘されており、なるほどなぁ、と思いました。そういう狙いは達成されていると思います。シリーズ外の人物、同世代の人物から見た蒼像が立ちあがっていますから。
net上では、蒼が主人公でなく大して活躍もしないので不満だという趣旨のコメントが散見されますが、表面的にはそうでも、やはりこの作品のメインは蒼だと思います。一見脇役風に見えようとも、特権を剥奪しようと、まぎれもなく、≪蒼の物語≫になっています。蒼の過去を知るものが読めば広がりも感じられます。建築探偵シリーズの番外編として組み立てた作者の腕は確かだ、と読んだのですが、うがちすぎではないと確信しています。


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