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三つの名を持つ犬 [日本の作家 近藤史恵]


三つの名を持つ犬 (徳間文庫)

三つの名を持つ犬 (徳間文庫)

  • 作者: 近藤史恵
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2013/06/07
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
犬を撫で、その温かさに触れることで、ようやく少し救われる。売れないモデルの草間都は、愛犬エルとの暮らしをブログに綴ることで、心が充たされるだけでなく、生活の糧も得ていた。だが、ある夜エルは死んでしまう。追い込まれた都は、エルそっくりの飼い犬を、思わず家に連れ帰ってしまった。ちいさな罪のはずが、それはやがて思いがけない事件に…切なく胸を打つ傑作ミステリー!


いやあ、1ヶ月以上もブログ更新しませんでした。4月、忙しかったですね。
ゴールデンティーク半ばの出勤した今日、久しぶりに更新します。

上に引用したあらすじにもある通り、犬をめぐるストーリーです。
「思いがけない事件」が起こりますが、するすると展開していって、もう一人の主人公ともいえる江口正道(FX取引で失敗し、詐欺グループに身を落としている)と草間都が交差します。
どんどん逃げ場のなくなっていく状況になり、物語は一つのラストを迎えます。
このラスト、ミステリ的な意外性とは違うのですが、非常に意外なラストだと思えました。ここに着地させるのか~、と。
ガール・ミーツ・ドッグであり、ボーイ・ミーツ・ドッグであり、かつ、ボーイ・ミーツ・ガールとして成立している物語で、苦い結末ではありますが、ある意味救いなのかもしれません。

ただ、気になったことがあります...
あらすじを読んだ印象で、犬好きな人の話なんだと思ったんですよね。
ところが、オープニングからの草間都の物語を通して、犬好きとは思えない。
ペットなんだからそれでいいのかもしれませんが、あくまで自分の都合が最優先で、なんだか犬はいろんな意味での道具みたい。(だからエルを死なせてしまう、と言ったら言い過ぎでしょうか?)
さっと読み返してみると、犬好きとして取材を受けるシーンはありますが、作者は都のことを直接的に犬好きとは書いていません。だから、あらすじから判断したこちらの勝手な思い込みのせい、ではあるのですが、気になりました。
それよりも、正道の方がよほど犬好きのように思えました。
一方で、犬好きならこういう行動はしないんじゃないかな、と思える行動を都はとり、その結果物語が転がっていくので、ストーリー上の必然だったのかも。
犬に比べて自分勝手な人間を描くために都をそういう設定にした?
あるいは、そんな程度の「犬好き」でしかない都すら動かすほど犬には魅力があると言いたかった?
ちょっとここがわかりません。
犬好きの方は、どういった感想を抱かれますでしょうか?


タグ:近藤史恵
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モップの精と二匹のアルマジロ [日本の作家 近藤史恵]


モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)

モップの精と二匹のアルマジロ (実業之日本社文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2013/04/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
妻に内緒の行動を取っていた夫が3年間の記憶を喪失!
最先端ファッションでオフィスの清掃人をつとめ、日常の謎も解くキリコ。彼女は越野真琴という地味な女性から、夫の友也の行動を探ってほしいと頼まれた。美形である友也の退社後には、数時間の空白があった。ところが友也が事故に遭い、3年間の記憶を喪失してしまう。その後、彼の身辺には不審な出来事が。キリコと夫の大介は、夫婦の絆をめぐる謎に迫るが……。


あとがきで、
「これは清掃作業員探偵キリコの四冊目の本で、そしてはじめての長編になる。」
と書かれています。
その長編でキリコと大介が取り組む謎が、夫婦の謎!
夫越野友也の方が超美形というのがミソ(?)。写真を見た大介は
「息を呑む。たしかにかなりの美形である。
 ガードレールのようなところにもたれて笑っているのだが、それだけでスナップ写真というより雑誌のグラビアのようである。切れ長なのに黒めの大きい眸と、彫りの深い顔立ち、まるで絵のようで、これなら俳優にも引けを取らない。
 身体も痩せているのに筋肉質で、タンクトップ姿でも少しも貧相に見えない」(27ページ)
続けて
「負けた、と思った。いや勝とうと思っていたわけではないが」
と続くところが可笑しいですが。
一方で妻越野真琴は地味。
「ぼくは……結婚なんかしていいような人間じゃない」なんて友也の不穏なセリフ。

真相は、意外でした、というよりも、そういうケースがあるってことを知りませんでした。
ネタバレになるので、背景と同じ色で書いておきます。
Aセクシャル。
性欲とか、性的嗜好がまったくない。
女性にも男性にも恋愛感情もないし、性欲もない。
そしてそれを大介たちが知って初めて、タイトルの意味が、286ページで明かされます。
この後の大介とキリコが、やはり素晴らしいと感じました。
友也と真琴との二人のやりとりは、このシリーズの最大の特長ですね。

「正直言うと、わたし、大介への恋愛感情もけっこう薄れてきてる」(304ページ)
なんて衝撃のセリフもキリコの口から出てきたりします。
「えええええっ!」
っていう大介の反応がまたおかしい。

このあとこのシリーズは出ていないみたいです。
続き、いつか書いてくださいね。




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エデン [日本の作家 近藤史恵]


エデン (新潮文庫)

エデン (新潮文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/12/24
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
あれから三年――。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得を巡る駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂に動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。目指すゴールは「楽園」なのか?  前作『サクリファイス』を上回る興奮と感動、熱い想いが疾走する3000kmの人間ドラマ!


「サクリファイス」 (新潮文庫)(感想のページへのリンクはこちら)の続編で、舞台はいよいよ(?) ツール・ド・フランス。
上で引用した書影ではきちんとわからないかもしれませんが、凱旋門を背景にしたレース風景の写真が使われています。
白石誓(しらいしちかう)が主人公をつとめます。
まず、前作に引き続き、ロードレース素人にもわかりやすく競技内容が描かれていきます。
このシリーズには、ミステリとしての側面、スポーツものの側面、そして誓の成長物語としての側面があります。
誓のスタンスが、きわめて日本人らしいというか、いくら日本人でも外へ出て勝負している人はもうすこし自分を強く打ち出すんじゃないかな、と思わないでもないですが、その分、こちらからはわかりやすく、ツール・ド・フランスもなんだか身近に感じることができました。
そんななか、プロ集団としてのスポーツへのかかわり方が出てきて、チーム内のごたごたや対立が盛り込まれます。
プロなので、スポンサーがつかないと終り、契約が延長されなければ終り。
「サクリファイス」の苛烈さは影を潜めていますが、それでもロードレースにかかわる人物が抱える闇は大きなもののように見受けられました。
それでも、晴れの舞台で勝負を賭けることの素晴らしさ。
作中ラスト近くで、「呪い」という単語も出てきますが、同時に、タイトルにもある通り「楽園」でもあります。
いわく、
「ここは、この世でいちばん過酷な楽園だ。過酷なことはわかっているのに、自転車選手たちは楽園を目指し続ける」(308ページ)
ミステリ的には、大きな仕掛けがあるわけではありませんが、ネガとポジの反転のように、くるっとひっくり返して見せる手際は鮮やかだったように思います。たとえそれが読者の想定の範囲内であったとしても、それがエデン(楽園)を目指すものの光と影でもあることに、作者のまなざしを感じます。

このあとの、「サヴァイヴ」 (新潮文庫)も読むのが楽しみです。




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モップの魔女は呪文を知ってる [日本の作家 近藤史恵]


モップの魔女は呪文を知ってる (実業之日本社文庫)

モップの魔女は呪文を知ってる (実業之日本社文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2011/12/03
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
深夜の病棟に現れた“魔女”の正体を新人看護師が追うと!?
清掃作業員・キリコが日常の謎をクリーンにする本格ミステリー「女清掃人探偵」シリーズ、実業之日本社文庫初登場!  小児病棟に入院している子どもたちのあいだで「病棟に魔女がいる」との噂が立ち、新人看護師・さやかがその正体をつきとめようと奔走するが……。深夜のオフィスで、スポーツクラブで、猫のブリーダー宅で、キリコが謎をあざやかに解決!


「天使はモップを持って」 (文春文庫)
「モップの精は深夜に現れる」 (文春文庫)
に続くシリーズ第3弾です。
文庫の出版社が変わりましたが、もともとジョイ・ノベルズで出ていたシリーズなので、実業之日本社文庫が創刊されたのでこちらに収録されるので自然ですね。
「天使」のあと、「モップの精」となって、今回は「魔女」。だんだん変容していっています。
第4作も出ていまして(どころかそちらも文庫化されています)、タイトルが「モップの精と二匹のアルマジロ」 (実業之日本社文庫)。「モップの精」に戻っています。

この「モップの魔女は呪文を知ってる」 には
「水の中の悪意」
「愛しの王女様」
「第二病棟の魔女」
「コーヒーを一杯」
の4話を収録。
各話で視点人物が変わりますので、今回はどういう形でキリコが登場するかな、という楽しみもあります。それぞれ印象的な登場の仕方をしますよ。
シリーズ的には、全体のタイトルに使われた「魔女」がついている、第3話の「第二病棟の魔女」がポイントですね。扱われている事件が解決するのに加え、キリコ自身の話ともなっています。前作までのエピソードを踏まえたものとなっていて、要注目です。

しかし、このシリーズ、「女清掃人探偵」シリーズ、と言うのですね...なんか強烈な感じがする...



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演じられた白い夜 [日本の作家 近藤史恵]


演じられた白い夜 (実業之日本社文庫)

演じられた白い夜 (実業之日本社文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2012/12/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
小劇場界の著名女優・麻子は、夫で演出家の匠に呼ばれ、雪深い山荘へやってきた。山荘には匠によって、初対面である八人の俳優らが集められていた。匠の新作は本格推理劇で、演じる側にも犯人がわからないよう稽古は行われていく。台本が進行するにつれ、麻子を含む女優たちに疑心が兆し、それは恐るべき事件の形を取って表れた。作中劇の中に隠された真相は――。

近藤史恵の第6作目の作品です。1998年刊行で、文庫になったのが去年の12月ですから、ずいぶん長い間文庫にならず読めずにいた本で、文庫になってよかったぁ、と買い求めたものです。
吹雪の山荘テーマだったので、デビュー作の「凍える島」 (創元推理文庫)を (ただし、あちらは孤島でしたが。孤立した舞台という意味では同じ)、非常にガーリーな感性が色濃く出ているところが、初期作でいうと「ガーデン」 (創元推理文庫)を、連想させられました。
このころ作者は、繊細な心情を、繊細に描く、という感じの手法が多かったのですね。登場人物たちの感情が、生のまま読者にぶつけられるのではなく、クッションを置いたかのように、少し遠くから眺めているかのように、でもそれでいてちゃんと伝わってくる、そんな感じです。
本作品ではさらに、作中劇が取り入れられていまして、非常に短い作品なのに、重層的で、劇中劇「マウス」の世界と、演じる役者たちの現実の世界が、二重写しになって、心理面を塗り固めていきます。
そういう細やかななかに、ぬけぬけとした大胆なトリック(?)を忍ばせているところが、ミステリファンを喜ばせてくれます。作中劇も、心象風景を強化するだけではなく、ミステリとしての構築物としての役割も果たしています。
どことなく、佐々木丸美を連想してしまいましたが、そんなに似てはいませんね。
もっともっとびっくりするような真相が仕込まれていれば言うことなし、なのですが、登場人物が限られていますし、謎解きで読者を引きずり回す作風ではありませんので、ミステリの部分と登場人物の心理的な部分が無理なく調和して、劇的であっても、しんと冷えたような手触りを味わう作品だと感じました。
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寒椿ゆれる 猿若町捕物帳 [日本の作家 近藤史恵]


寒椿ゆれる―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)

寒椿ゆれる―猿若町捕物帳 (光文社時代小説文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/03/10
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
男前ながら堅物の同心・玉島千蔭。今日もその周囲では事件が起こる。美貌の花魁・梅が枝、若手人気女形・水木巴之丞らの手も借りつつ、江戸を騒がす不可解な事件の解決にあたる。今回は、女が苦手な千蔭に久しぶりに“兵”の見合い相手が登場。事件の行方、そして、千蔭の見合いの行方は……。江戸が息づく傑作シリーズの猿若町捕物帳、待望の第四弾が文庫化。

「巴之丞鹿の子 猿若町捕物帳」 (光文社時代小説文庫)
「ほおずき地獄 猿若町捕物帳」 (光文社時代小説文庫)
「にわか大根 猿若町捕物帳」 (光文社時代小説文庫)
と猿若町捕物帳も順調に巻を重ねています。今回は第4弾。最初は幻冬舎文庫だったのですが、光文社に移って2冊目となります。3話収録の短編集です。
捕物帳という枠組みに、女形や花魁という“粋”なレギュラーメンバーを配したところに特徴があると思います。このあたりは杉江松恋さんの解説がわかりやすくてよいです。
今回はなんといっても、千蔭が見合いをする、というのが大きなポイントとなります。前回の見合い相手お駒は、なんと千蔭の父と結婚し、千蔭の義母となるという仰天の決着を見せましたが、さて、今回のろくはどうでしょうか? 見合いだなんて、梅が枝はどうなるんだ、とこちらは気をもみますが、同心と花魁では所詮かなわぬ恋ということなのか、話は進んでいってしまいます。見合いをすることが明らかになってからの梅が枝の振る舞いとか、それに対する千蔭の反応とか、両者の性格的にそうなってしまうのはわかっていても、傍から見てると、もう!!! ってな感じです。
安易な方向に流れやすい捕物帳ですが、このシリーズはミステリとしての側面もきっちりと落ち着くところに落ち着きます。決め手となる手がかりが明白にさらしてあればもっとすごくなると思いますが、今のままでも、時代背景にマッチしたミステリとして十分に楽しめます。
続巻はまだのようですが、期待して待つことにします。
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サクリファイス [日本の作家 近藤史恵]


サクリファイス (新潮文庫)

サクリファイス (新潮文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/01/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
ぼくに与えられた使命、それは勝利のためにエースに尽くすこと――。陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。青春小説とサスペンスが奇跡的な融合を遂げた! 大藪春彦賞受賞作。

あらすじにもある通り、大藪春彦賞受賞作で、第五回本屋大賞第2位。
2007年週刊文春ミステリーベスト10は第5位、「このミステリーがすごい! 2008年版」 第7位です。
これだけの勲章揃いで、この後シリーズ化されてもいるので、質が高いことはわかってはいたものの、近藤史恵さんのこれまでの作品のイメージとはあまりにも違うので、とまどいながらも期待して読みましたが、期待以上です。すごい。
マイナーな(競技者やファンの皆様すみません)スポーツである自転車ロードレースが、すっと頭に入ってきます。特に主人公の役割であるアシストの位置づけ(解説から引けば、「自分の勝利は求めない、たとえ自分の順位はさげても、よしんばリタイアすることになっても、エースの勝利のために尽力する」)が非常に印象的で、こういうスポーツって、珍しいのではないでしょうか? 個人競技と団体競技がミックスしたような。ちょっと実際の競技をテレビでいいから見てみたくなりました。
このことに関連もするのですが、主人公の性格設定がいいなと思いました。このあたりは近藤さんらしいところかな、と。青年がスポーツや事件を通して成長していく、という青春小説としての側面にぴったりです。
事件らしい事件がないのですが、チームのエース石尾に関連して過去になにかあったことがほのめかされます。「石尾さんは怖い人だ」「石尾は自分以外のエースを認めない」...
レース中心のストーリーは、やはりレースで転換を迎えます。
あらすじにもある「ヨーロッパ遠征中の悲劇」を以って、ミステリとしての構造が立ち上がってきます。このミステリとしてのスイッチの入り方が無理なくスムーズで素晴らしいと思いました。過去の石尾をめぐる事件も明かされます。自転車ロードレースのありようと不可分な真相で、それまでのレースシーンも、それだけで十分楽しめるものですが、真相を理解するのに必要なパートとしてきちんと役割を担っていて、ミステリ好きとしては非常にうれしい。
真相の苛烈さにはひるみますし、そんなに狙い通りうまくいくかな? と思うところもあるのですが、 ミステリとしては十分だと思いましたし、主人公の成長を決定づけるエピソードとして鮮烈に響きますので、ミステリ、スポーツ小説、青春小説の融合がとてもうまくいった作品だとおすすめします。
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モップの精は深夜に現れる [日本の作家 近藤史恵]

モップの精は深夜に現れる
近藤史恵
文春文庫

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

モップの精は深夜に現れる (文春文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2011/05/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大介と結婚した掃除人キリコは、短期派遣の清掃の仕事を始めた。ミニスカートにニーハイブーツの掃除のプロは、オフィスに溜まった人間関係の澱も死角も見逃さず、電器メーカーの子会社に編プロ、モデル事務所の謎を鮮やかに解き明かす。夫・大介が探偵役となる最後の謎は、キリコ自身。読後感温かなミステリ。

「天使はモップを持って」 (文春文庫)に続く、掃除人キリコのシリーズ第2作。
「掃除をしている人ってね、知らない人には見えないんだよ」「だから、この事件はわたしが見えない人が起こしたものなの」(P117)というセリフ、いいですよね。「見えない人」って、ミステリの一つのテーマではないですか。掃除人は、確かに「見えない人」の資格 (?) 十分。このあと、きっと、Aさんはこれこれというエピソードがあるからわたしに気付いている(=私が見えている)、Bさんは...という風に、犯人特定の論理に使われるんだろうなぁ、見えない人テーマを逆サイドから捉えて作品に仕立てるなんてかっこいいなぁ、と妄想全開で読んでいましたが、そういう展開には(当然)ならず。そりゃそうですよね、近藤さんって、そしてこのシリーズって、そんなギラギラした作風ではないですし。
そんな勘違い読者にも負けない(?)、「日常の謎」作品集。「日常の謎」とはいえない大きな事件もありますが、事件の解かれ方が「日常の謎」なので、全体の中で浮いていません。
各編の視点人物の目で語られていた日常を、キリコの言葉という新しい光をすっと当てることで、違った形で浮かび上がらせる。これがこのシリーズの醍醐味だと思います。肩凝りならぬ、心の凝りがほぐれていくような、視点人物の(ラストにおける)すっきり感が読みどころでしょう。
こういう文脈で捉えると、ちょっとこの動機は納得感がないなあ、と個人的にはひっかかりを覚えてしまう第3話「オーバー・ザ・レインボウ」も、テーマになじんではいます。
最終話で、大介やお祖母ちゃんと再会できたのもうれしい。いや、キリコの家出という、なにやら物騒な幕開けではありましたが。
このシリーズ、まだまだ続くようなので(単行本はあと2冊、現段階で出ています)、また読みたいと思います。
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