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化学探偵Mr.キュリー4 [日本の作家 喜多喜久]

化学探偵Mr.キュリー4 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー4 (中公文庫)


<裏表紙あらすじ>
大学で暗躍する『互助組合』の謎。反応を掻き混ぜる以外に使い道のない《スターラー盗難事件》。切断された銅像と雪の上の足跡。そして今回、Mr. キュリーこと沖野春彦がなんと被害者に!? この事件の謎に立ち向かうのは、イケメン俳優にして「春ちゃんラブ」の美間坂剣也。沖野リスペクトによる化学的知識を駆使して新たな名探偵となれるのか!?


「シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究」 (SKYHIGH文庫)(ブログへのリンクはこちら)に続いて今年3月に読んだ本、5冊目です。

シリーズ第4弾です。
しかし、数字がついていくだけのタイトルって、わかりやすいですが、ちょっとさびしいですね。
この第4巻には
「化学探偵と猫騒動」
「化学探偵と互助組合の暗躍」
「『化学探偵』の殺人研究」
「沖野春彦と偽装の真意」
「七瀬舞衣と三月の幽霊」
の5話収録。

「化学探偵と猫騒動」は、「大学猫を守る会」というサークルに入っていた女の子が、猫アレルギーになってしまって、好きな会長と一緒にいられなくなると困るなぁ、と思っている、という話です。ところが、アレルギー検査をしてみたところ...という風に話が転がっていくわけですが、この真相はどうでしょうか。いくらなんでも、これはなしだと思います。
犯人(と呼んでおきます)の心理ととった手段のあまりのアンバランスさに、ちょっと気持ちが悪くなってしまいます。

「化学探偵と互助組合の暗躍」は、スマホゲームの課金アイテムを利用した資金略取が取り上げられていますが、そちらよりも焦点はやはり互助組合とは何か、なのでしょう。
互助組合の発想は昔からあるものですし、ここまでの規模ではなくても同様のことは割とよく行われているのではないだろうか、と思いますが、それとスマホゲームの課金という新しい切り口とを同じ作品の中に置いてみたところの構図が面白かったです。

「『化学探偵』の殺人研究」は、美間坂剣也主演のTVドラマにつかうトリックを考えてくれ、とMr. キュリーこと沖野春彦が頼まれるところからスタートします。
使われているトリックは、あまりにも専門的すぎて、普通のミステリには使えないですが、こういう形だと有効活用できますね。
驚きは、やはり沖野が襲われて入院してしまう、というところでしょうか。
全体に対してひねりが仕掛けられているのはご愛敬でしょう。   

「沖野春彦と偽装の真意」は盗んでも使い道がないスターラー(攪拌子を回すための装置)が盗まれる、という素敵な謎が扱われています。
だから、と言ってしまっては少し申し訳ないですが、割と定型的な着地を迎えます。

「七瀬舞衣と三月の幽霊」は、四宮大学初代学長の胸像の首が切り落とされるという事件です。
雪が降って一面真っ白の世界で、なのに胸像へ向かう足跡のようなものは途中で途切れていた...
うわー、絵になる事件!! トリックも、すっきりしていて素敵です。
なにより、この作品ですごいのは動機でしょうか。
ミステリ的にすごいのではないですが、シリーズ的には絶対に見逃せない動機ですね!!

シリーズはこのあと、
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
が出ていまして、今月6巻が出るようです。



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化学探偵Mr.キュリー3 [日本の作家 喜多喜久]


化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー3 (中公文庫)



<裏表紙あらすじ>
体調不良を引き起こす呪いの藁人形、深夜の研究室に現れる不審なガスマスク男、食べた者が意識を失う魅惑の《毒》鍋。次々起こる事件を、Mr.キュリーこと沖野春彦と庶務課の七瀬舞衣が解き明かす――が、今回沖野の前に、かつて同じ研究室で学び、袂を分かった因縁のライバル・氷上が現れた。彼は舞衣に対し、沖野より早く事件を解決してやると宣言し!?

「化学探偵Mr.キュリー」 (中公文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)、
「化学探偵Mr.キュリー2」 (中公文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続くシリーズ第3弾。
この第3巻には
「化学探偵と呪いの藁人形」
「化学探偵と真夜中の住人」
「化学探偵と化学少年の奮闘」
「化学探偵と見えない毒」
の4話収録。

「化学探偵と呪いの藁人形」は、タイトル通りで、体調を悪くさせる藁人形の謎を解くわけですが、うーん、合理的な解決でいいですね。
シリーズ的には、七瀬舞衣が昔取った杵柄でソフトボールのピッチャーをするのがポイント(?) でしょうか。
いや、それよりも、「クイーン・オブ・オカルティズムと呼ばれているそうですね」(22ページ)と言われちゃっていることの方がポイント高いかも。

「化学探偵と真夜中の住人」は、急に生活態度がかわった大学院生・松尾の話です。
昼間は来ずに、夜中に研究室にやってきて、朝まで一人で実験、そして他の学生やスタッフが来る前に帰ってしまう。あげく彼は実験をガスマスクを着用して行っていた。
折しも北欧にあるマイセン王国の国王陛下が来日し、四宮大学を訪れる計画があり、バイオテロを計画しているのかも...と。
松尾を思う助教・志保里の視点が効果的に使われています。
なにやら大事を感じさせる展開ですが、沖野がさらっと解決してしまいます。それにしても、ラテックス・アレルギーは知りませんでした。そういうのあっても確かにおかしくはないですね。

「化学探偵と化学少年の奮闘」は、癌になった犬を助けたいと奮闘する小学生を描きます。
問題は、その犬が飼われている家の事情。哲学の先生・能勢の家の醜い事情が。いやあ、重い話でした。

「化学探偵と見えない毒」は、あらすじにもある通り、沖野のライバル登場ってことなんですけど、肝心の氷見って、沖野のライバルとは到底言えなさそうな...
一方で、巷でちょいちょい話題になっている悪い大学サークルをめぐるエピソードが盛り込まれています。
事件の方は鍋パーティーで苦しんだ理由は...というものなんですが、これはまあ科学(化学)の素人でも想定できちゃう範囲ですね。妙にぼかした書き方になっていますが、再現性が高いからでしょうか?


シリーズはこのあと、
「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
と順調に巻を重ねております。






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化学探偵Mr.キュリー2 [日本の作家 喜多喜久]


化学探偵Mr.キュリー2 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー2 (中公文庫)



<裏表紙あらすじ>
鉄をも溶かす《炎の魔法》、密室に現れる人魂、過酸化水素水を用いた爆破予告、青酸カリによる毒殺、そしてコンプライアンス違反を訴える大学での内部告発など、今日もMr.キュリーこと沖野春彦准教授を頼る事件が盛りだくさん。庶務課の七瀬舞衣に引っ張られ、嫌々解決に乗り出す沖野が化学的に導き出した結論は……!? 大人気シリーズ第二弾。

「化学探偵Mr.キュリー」 (中公文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾。
この第2巻には
「化学探偵と炎の魔術師」
「化学探偵と盗まれた試薬の使途」
「化学探偵と疑惑の記憶」
「化学探偵と幻を見た者たち」
「化学探偵と人魂の正体」
の5話収録。

中では冒頭の、魔術師が炎の柱をたてるのを見たと言ったことで仲間から追いつめられる小学生を救う「化学探偵と炎の魔術師」がさらっとした中に重い物語を抛り込んでまとめ上げているのが好印象。
「化学探偵と盗まれた試薬の使途」はタイトル通りに、盗まれた過酸化水素水の用途を探る話。

「化学探偵と疑惑の記憶」は帯に使われています。
いわく「アーモンドの臭いがしたから青酸カリで殺された!? その推理は、大間違いだ。」
「そもそも、青酸カリは無臭だ」(158ページ)というのが既に、おおっ、ですし、
「シアン化水素はアーモンドの臭いがすると言われるが、ここで言う『アーモンド臭』は、チョコレートや菓子に使われる、ローストアーモンドの臭いではない。収穫前のアーモンドの実や花が放つ匂いのことを指している。香ばしいというより、甘酸っぱいにおいがするらしい」(159ページ)というに至っては、なんだかうっとりしてしまう。そんなことを言われてもどんなにおいなんだかわからないんですけどね。
おばあちゃんを殺してしまったのは自分かもという記憶に囚われているアイドルを救うという話ですが、美間坂剣也が出てくるのがいいですね。もっともっと剣也が引っ掻き回してもいいと思うくらいです。沖野春彦には申し訳ないですが。

「化学探偵と幻を見た者たち」はコンプライアンス違反を告発する怪電話がスタートです。
怪電話の主が迎えるのは、哀しいラストです。

最後の「化学探偵と人魂の正体」は文字通り、人魂を扱うわけですが、平凡といえば平凡ですね。
ただ、占い好きというか、占いに憑かれた登場人物がラストでコミカルな味を出していて、楽しかったです。
この後、沖野や七瀬はどう処理したんでしょうね...

シリーズはこのあと、
「化学探偵Mr.キュリー3」 (中公文庫)
「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
と順調に巻を重ねております。

<蛇足>
もはや指摘するのもあれかもしれませんが、
「一生懸命」(11ページ)とか、「少年の将来を鑑みて」(134ページ)とか、なんとかならないんですかねぇ。



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創薬探偵から祝福を [日本の作家 喜多喜久]


創薬探偵から祝福を (新潮文庫nex)

創薬探偵から祝福を (新潮文庫nex)



<裏表紙あらすじ>
病の原因を突き止め、命をつなぐ――創薬探偵
創薬チーム、それは原因不明の難病奇病に苦しむ者の最後の望み。主治医からの依頼を受け、限られた時間内に病のメカニズムを解明、対応する新薬を創造して患者を助けるのが彼らの役割だ。調査担当の薬師寺千佳と化学合成の鬼才・遠藤宗史。ふたりは、数々の難題をクリアして得た成果で、ある女性を救おうとしているのだが――。化学×人間ドラマ。ミステリの新たな扉が開かれる。


この「創薬探偵から祝福を」 より先に、喜多喜久さんでは、「化学探偵Mr.キュリー2」 (中公文庫)を読んでいるのですが、引っ越しのあおりで本が箱詰めのままのため、先にこちらの感想を。

創薬探偵、とありますが、これは探偵ではありませんね。
日本国内の患者数が五万人を超えるかどうかが、「希少疾患」か否かの基準、とのことで、創薬探偵が相手にするのは、それレベルですらない、超希少疾患。世界で一人きりという患者さえ受け入れる。
URT(Ultra Rare-disease Treatment・超希少疾患特別治療)というのが、費用が全て患者の自己負担という前提で、公的な制度として認められている世界。
疾患の原因を突き止めて、治療薬を開発する。面白い設定ですよね。
第1話の疾患が、エボラ出血熱じゃないけど、エボラ出血熱みたいな症状って...いきなりすごい設定です。
このURTのやることを考えると、探偵、とつけたくなる気持ちもよくわかります。
ミステリー色はかなり薄いストーリー展開ですが、主人公たちのやっていることは、病気という対象を相手に、探偵と擬せられるのもむべなるかな。
ただ、まあ、専門的な部分は読者にはよくわかりませんし、詳しくも書いてありません。素人目には、難病奇病というわりには、ありとあっさり治療法が見つかるあたりも、あれ、あれ、というところですが、ここをあんまりこまごまと書かれては退屈極まりないでしょうし、これでいいのでしょうね。

主人公格の一人、遠藤の設定が、
「どんな複雑な物質であっても、遠藤は迷わずに合成ルートを選ぶことができる。」
「いちいちデータを見なくても、頭の中だけで完璧なルート構築ができるのである。」
となっているのにはニヤリ。どこかで読んだ設定だなぁ、と。

感心したのは、費用が全て患者の自己負担、ということは、お金に余裕がないと治療を受けられないわけで、不公平とかの批判も出てきそうな設定であるところ、きちんとそのあたりにも触れていることでしょうか(120ページあたりから)。
難しい問題ですから、クリアな回答が用意されているわけではありませんが、作者がきちんと制度のことを考えていることがわかってうれしくなります。
こういうところを疎かにしないことが作品世界の強度を支えるのだと思います。










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桐島教授の研究報告書 テロメアと吸血鬼の謎 [日本の作家 喜多喜久]


桐島教授の研究報告書 - テロメアと吸血鬼の謎 (中公文庫)

桐島教授の研究報告書 - テロメアと吸血鬼の謎 (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
拓也が大学で出会った美少女は、日本人女性初のノーベル賞受賞者・桐島教授。彼女は未知のウイルスに感染し、若返り病を発症したという。一方、大学では吸血鬼の噂が広まると同時に拓也の友人が意識不明に。完全免疫を持つと診断された拓也は、まず桐島と吸血鬼の謎を追うことになり!?
『美少女教授・桐島統子の事件研究録』改題


喜多喜久、快調ですねぇ。ぽんぽん新刊が出ています。
この「桐島教授の研究報告書 - テロメアと吸血鬼の謎」 は2012年12月に出た「美少女教授・桐島統子の事件研究録」を文庫化にあたって改題したものです。
テロメアというのは1ページ目に説明がありますが、真核生物の染色体の末端を保護する特殊な構造のことらしいです。なんのこっちゃ!?
こちらには、なんのこっちゃ、なんですが、桐島統子(キリシマモトコ)は、この研究でノーベル生理学・医学賞を受賞したという設定になっています。日本人女性初という設定。
現在御年88歳。だけど、若返り病に発病し、十代相当の肉体になってしまっている。
もう一人の主人公は入学したばかりの大学一年生・芝村拓也。こちらは、ウイルスに完璧な(?)抵抗力を持つ、完全免疫の持ち主。若返り病がウイルス性だったとしてもかかる心配がなく、助手(?) に選ばれる。
おりしも大学では吸血鬼が跋扈していた。
うん、おもしろそうではないですか。
喜多さんの作品らしく、すいすい読めます。
「吸血鬼」の狙いも、ミステリ(あるいはSF?)では前例がないわけではないと思いますが、壮大というか気の遠くなるような話であるところがポイントかなぁ、と思いました。おもしろい。
遠大な話が、きわめて卑近な手段でなされるところも、特徴的ですね。

なんですが、ちょっとこの作品には不満があるのです。
それは、若返り病、という設定があまり活かされていないように思えるところです。
桐島教授が若返る必要、ないんですよねぇ。芝村とのつながりをつけるため、なら、ほかにいくらでも方法あるでしょうし。
まあ、続編がありそうな書きぶりではあるので、続編に期待しましょう。2016年05月現在、まだ続編は出ていませんが...




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二重螺旋の誘拐 [日本の作家 喜多喜久]


二重螺旋の誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

二重螺旋の誘拐 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2014/10/04
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学に助手として勤務する香坂啓介は、学生時代の先輩・佐倉雅幸の一人娘の真奈佳に、亡くなった妹の面影を重ねて可愛がっていた。ある日、真奈佳は一人プールに出かけ、そのまま行方不明になってしまう。真奈佳の行方を必死に探す雅幸と妻・貴子のもとに誘拐を知らせる脅迫電話が……。啓介の物語と雅幸の物語は二重螺旋のように絡み合いながら、予想だにしない結末へと収束していく――。


帯に
「驚愕のどんでん返しに二度読み必至!
とありまして、読者を煽っています。

いわゆる「理系ミステリ」で知られる作者で、今回はその部分は抑え気味ではありますが、主人公の設定にその影響が、というと理系の人に叱られるでしょうね。
啓介の設定が、正直、非常に気持ち悪い。
亡くなった妹の面影を重ねて、という言い訳は用意されていますが、まあ、要するにロリコン。三十歳前の男が、五歳の少女(ってか、幼女ですね)に恋をするって...
一人称で語られる視点人物の行動って、割と気になりにくいものですが、これはさすがにアウトでしょう。
一方で、物語のもう一つのパート、雅幸の方は三人称。こちらは苦労していて、なんか共感できます。

雅幸から見た娘真奈佳の誘拐パートと啓介の話をどう着地させるんだろう、と思って読んでいましたが、なるほどねー、そこへ持っていきますか、というところ。タイトルに込められた意味がわかると、ちょっと、おおっと思います。
ちょっと安直ではありますが、誘拐ミステリの新機軸かもしれません。
啓介をめぐるラストも、なんだか無理やりではありますが、ハッピーエンドではないですか。性癖からすると、あんまりハッピーエンドを迎えられそうにない設定だと思いますが...
雅幸もそうですが、割と優秀な科学者なんですね。
なにより、真奈佳ちゃんがいい子でよかったね。



<ちょっとネタバレ気味の蛇足>


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リプレイ2.14 [日本の作家 喜多喜久]


リプレイ2.14 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

リプレイ2.14 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/09/05
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
東大農学部院生の浅野奈海は2月14日の朝、同じゼミに在籍し、想いを寄せている本田の死体を発見する。凶事に茫然自失する奈海の前に、突如“死神”を名乗る青年が姿を現して、「過去に戻って愛する者を救う機会を与える」と言う。奈海は本田の死因を突き止め、彼を救うことを決意。しかし、本田が密かに開発していた惚れ薬も絡み、事態は思わぬ方向へ――。果たしてふたりの運命やいかに!?


喜多喜久の、「ラブ・ケミストリー」 (宝島社文庫)「猫色ケミストリー」 (宝島社文庫)に続く第3作。単行本のときのタイトル「ラブ・リプレイ」 でした。
文庫化時に改題したタイトルでわかるように、バレンタイン・デーを描く作品です。しかも、リプレイ、ということで、2月14日を10回繰り返します。
主人公であるわたし、は、好きな人本田を救おうと過去を繰り返すわけですが、それだけではなくて、四方丸く収めよう(?) というのですから、かなりの難事業です。そんなのうまくいうわけないや、と最初の方は意地悪く突っ込みながら読んでいたのですが、喜多さんの軽妙な筆致に乗せられて、途中からは主人公といっしょに、やきもき。
10回繰り返す、という設定はちょっと多すぎるなぁ、とも思いましたが、途中から、あと◯回しかない...とあせったりして。
有機化学×ラブコメ×ミステリー、今回も好調です。

過去を繰り返すという設定は、日本では西澤保彦の「七回死んだ男」 (講談社文庫)、海外ではケン・グリムウッドの「リプレイ」 (新潮文庫)をはじめとして、幾多の作例があります。
なので、新機軸を打ち出すのはなかなか大変なわけですが、斬新とはいえなくても、まずまず手堅い着地だと思いました(その分、想像がつきやすいかもしれません)。

後味も悪くない、軽いコメディタッチのミステリとして、いい感じでした。




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化学探偵Mr.キュリー [日本の作家 喜多喜久]


化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2013/07/23
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
構内に掘られた穴から見つかった化学式の暗号、教授の髪の毛が突然燃える人体発火、ホメオパシーでの画期的な癌治療、更にはクロロホルムを使った暴行など、大学で日々起こる不可思議な事件。この解決に一役かったのは、大学随一の秀才にして、化学オタク(?) 沖野春彦准教授――通称Mr.キュリー。彼が解き明かす事件の真相とは……!?

積読にしている間に、次作の「化学探偵Mr.キュリー2」 (中公文庫)が出ちゃったので、あわてて(?) 読みました。
「化学探偵と埋蔵金の暗号」
「化学探偵と奇跡の治療法」
「化学探偵と人体発火の秘密」
「化学探偵と悩める恋人たち」
「化学探偵と冤罪の顛末」
の5話収録の作品で、2013年7月に文庫書き下ろしで刊行されました。
しかし、大学の准教授である沖野春彦をMr. とは、ちょっと???です。ずっと研究をしてきた人で准教授だったら、博士号くらいとっているでしょうから、 Mr. ではなく Dr. とせねばならぬのでは? 名づけたのが大学の職員、しかも庶務課の課長をやるくらいのひとだったら、自分の大学の先生を Mr. とは呼ばないと思います。素人向けにわかりやすくしたのでしょうか? Dr. でも十分わかりやすそうですけれど。
さておき、化学探偵ってコンセプトは、物理学者であるガリレオの二番煎じっぽいですが、あちらよりもはるかにはるかに軽~い作品に仕上がっています。「ラブ・ケミストリー」 (宝島社文庫)「猫色ケミストリー」 (宝島社文庫)の喜多喜久ならでは、です。
帯に「製薬会社現役研究員の著者が贈る、至極の化学ミステリ!」とありますが、ほとんど化学っぽくないというか、化学ならでは、という作品がなかったのがちょっと残念。
Dr. ではなく Mr. としたことも含めて、化学には縁遠い読者に配慮されたのかもしれませんが、専門知識の乱舞というのでさえなければ、読者なんてわからなくてもなんとなくわかった気になって読んでいくものなので、もう少し化学寄りに設定されてよかったのでは、と思いました。

なかでは人体発火に強烈な(?) 動機を組み合わせた「化学探偵と人体発火の秘密」と、クロロホルムを使って意識を奪われたという証言から、窮地に陥ったアイドルを救う(「クロロホルムで麻酔を掛けるためには、少なくとも十分以上は気化させたクロロホルムを吸入させなければならない」らしいです)「化学探偵と冤罪の顛末」が面白かったですね。
「化学探偵Mr.キュリー2」もすでに買ってあるので、そのうち読みます!

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猫色ケミストリー [日本の作家 喜多喜久]


猫色ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

猫色ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2013/05/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
落雷によって、計算科学専攻の大学院生の明斗と、構内に棲みつく野良猫、女子院生スバルの魂が入れ替わってしまった。しかも明斗はスバルに、スバルは猫に意識が入りこんでいる。明斗の肉体は昏睡状態。元にもどるため奔走する一人と一匹は、猫の餌から研究室で違法薬物の合成事件に気づく。餌に薬物を混入した犯人の目的とは?『このミス』大賞作家による、大人気の化学ミステリー!


「ラブ・ケミストリー」 (宝島社文庫) (感想のページへのリンクはこちら)でこのミステリーがすごい! 大賞を受賞した喜多喜久の第2作です。
今回も舞台は大学。またもや有機化学を題材としています。
前作が取り扱っていたのは全合成。今回は不斉反応ができる触媒探し。有機化学とあまり縁のなかった主人公明斗の目を通すので、素人にもわかりやすくなっています--というのは嘘ですね。ちょっと見栄を張りました。正直なんのことかわからないです。だけど、やっぱり今回も楽しそう、研究室は。
今回死神は登場しませんが、人の入れ替えが起こります。いや、それどころか、猫も巻き込んだ入れ替わり。
もっとも猫の意識が入り込んだ明斗は昏睡状態ということで動き回りませんので、明斗の意識を乗せたスバルと、スバルの意識を乗せた猫がメインとなります。
男女の入れ替わり、という事項があっさり処理されているのも、実はポイント高いんじゃないでしょうか。
猫の取扱い、結構難しいだろうなぁ、と思って、読んでいてうまくいくかどうか、ちょっとドキドキ、ハラハラできました。ですが、そのへん研究室だったらうまくいくのかも、なんて思ってしまいました。

今回は前作よりも、軽めは軽めなんですが、ミステリ度が大幅アップ。(書きようによっては、重苦しい仕上がりにすることも可能に思いました)
入れ替わった意識をどうやってもとに戻すか、ということが、事件の謎解きとリンクする構成も、なかなかよく考えられているなぁ、と感心しました。
偶然入れ替わって、偶然元に戻る、というのでもよいのですが、何かひねりが加えられていると楽しく感じますよね。
あらすじはかなり先の方まで明かしてしまっていますが、書いちゃっているので触れておくと、違法薬物の合成事件、というのが舞台に非常にふさわしくて、ここにも感心。

喜多喜久、お気に入りに指定しておこうと思いました。
わりとハイテンポで文庫で出ているようですので、フォローしていきたいと思います。
(積読本が多すぎて、ゆっくりペースになっていまいますが)




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ラブ・ケミストリー [日本の作家 喜多喜久]


ラブ・ケミストリー (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

ラブ・ケミストリー (宝島社文庫)

  • 作者: 喜多 喜久
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2012/03/06
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
第9回『このミス』大賞優秀賞受賞作品。有機化合物の合成ルートが浮かぶという特殊能力を持つ、有機化学を専攻する東大院生の藤村桂一郎。ところが初恋によって、その能力を失ってしまった。悶々とした日々を過ごしていた彼の前にある日、「あなたの恋を叶えてあげる」と、死神を名乗る少女、カロンが現われて……。東大で理系草食男子が巻き起こす、前代未聞の“日常系コメディ”登場!

第9回『このミステリーがすごい!』大賞の優秀賞受賞作です。このときの大賞は、昨日感想をアップした「完全なる首長竜の日」 (宝島社文庫)なんですね。ブログ感想へのリンクはこちら
あちらもファンタジックなところがありましたが、この作品にも“死神”が(笑)。
帯に、「理系草食男子のラブコメ&ミステリー」とありますが、ほとんど全体がラブコメで、ミステリーはほとんどありませんね。ミステリー的な趣向といえば、途中に何度か挟まれる「ダイアローグ」という断章に出てくる人物は誰か、ということくらい。
しかし、ミステリー味はこの上なく薄くても、とてもおもしろく読みました。
なんといっても、有機化学なんて世界を舞台に、こんなに楽しいストーリーが展開できようとは。塩基式とか亀の子とか、まさかそんなものでエンターテイメントが作られるなんて。
有機化学にはまったく縁がなかったですが、読んでいるとなんとなくわかった気になれました! なんだか楽しそうですね、研究室って。
服を自分で買いに行ったことがないというエピソードは強烈でずいぶん笑わせてもらいましたが、東大(の理系と付け加えたほうがよいでしょうか?)にはこんな人がいるのかな? 
ラノベみたいとか、軽すぎるとかいう厳しいご意見もあるようですが、ミステリー的な唯一の趣向がゆるゆるで、誰もが予想できるようなものであったとしても、またかなり使い古されたネタであったとしても、十分楽しめたので、満足です。
肩の凝らない、気軽に読めるエンターテイメントです。

<おまけ>
英語のchemistry (ケミストリー)には、化学という意味以外にも、「不思議な力[作用, 変化]」とか、「(人との)相性」とかいう意味があるので(もっとも、これも化学とか化学物質とかから意味が派生したのだと思いますが)、そういう雰囲気を感じさせる内容があればもっとよかったのに、と余計なことを考えました。

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