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エジプト十字架の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2016/07/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
クリスマスの寒村で起きた、丁字路にあるT字形の道標に、首を切断されたT字形の死体がはりつけにされる酸鼻な殺人。半年後、遠く離れた土地で第二の首なし殺人が発生したのを知ったエラリーは、ただちに駆けつけ捜査に当たる。〈国名シリーズ〉第五弾は、残酷な連続殺人に秘められた驚天動地の真相を、名探偵が入神の推理で解き明かす、本格ミステリの金字塔。


言わずと知れた、国名シリーズを代表する名作です。
帯にも「燦然たる本格ミステリの金字塔」とあります。
なんですが、個人的にはあんまり相性がよろしくない。そんなに凄まじい傑作とは思ってこなかったのです。
はじめての出会いは、小学校の図書室に置いてあった、子ども向けに訳されたものだったと思います。
そこそこ面白かったのですが、むしろカップリングだった「靴に棲む老婆」 に魅かれました。

その後、大人向けの普通の翻訳を創元推理文庫で(中学生か高校生のときに)読んだのですが...感想は、長い...途中でだれちゃった。
遥かに動きの少ない、「フランス白粉の謎」 (創元推理文庫)「オランダ靴の謎」 (創元推理文庫)は退屈などせず、むしろわくわくして読んだんですが...

今回新訳を読んでみての感想は、よくできているなぁ、というもの。天下の名作に失礼な言い方ですが、今回は素直にそう思えました。ただ、今回も長いな、と思ったのは内緒...

この作品を特徴づける、首切り死体連続というのも、ミステリとして、やはり優れていますね。
読者は誰だって、犯人が死体だった被害者と入れ替わる、と想定して読むわけですから、意外性を期待する身としては、作者がちゃんとそれを乗り越えてくれないと困る。
この部分の緩急のつけ方と、見せ方がすばらしい。

猟奇的な残忍な殺人事件ですが、わりとあっさり書かれているのがまず良いところかと思います。T字の十字架も、モンテネグロの因縁話も、おどろおどろしくなりそうな要素山盛りなのに、あっさり。ステキです。
そしてびっくりしたのは、ヌーディスト・ビーチというかヌーディスト島が登場するところ。
あれ? そうでしたか...記憶にないなぁ。
子供向けのリライト版ではたぶん割愛されていたか、書き換えられていたのでしょうが、創元推理文庫版で読んでたはずなのにまったく記憶がありません。
チェッカーの推理も、ヨードチンキの壜の推理も覚えていたのにね。(パイプは忘れていました)
そうなんです。国名シリーズならでは、というべきか、推理の過程が頭に強く残っています。
それくらい、印象的であざやか。

今回も長いと思ったのは、たぶん、第二、第三と殺人が続いても、有効な手がかりがなかなか出てこないから...せっかくの手がかりも犯人追及の決め手にはなっていない。なにしろ、第四の殺人でどーんと出てくるのですから。

なので、というべきでしょうか。
本書のもう一つの特徴である、クライマックスの追跡劇が、個人的には退屈でした。
ここを魅力に挙げる人も多いというのに、楽しめませんでした。
当時としてはかなり新しいデューセンバーグと高速交通機関を利用した追跡劇、エラリー・クイーンには不要でしょう...論理だけで十分楽しいのに。
推理して犯人を追いつめる、という手順が、犯人を追いつめてから後で推理を披露する、という流れになっていて、それはプロットの要請で必要なのは理解できても、エラリー・クイーンには推理の切れ味でおしきってほしかった気分。
たぶん、同じ1932年に発表された、「ギリシャ棺の謎」 (創元推理文庫)と対になっているのでしょう。
マニア向けが「ギリシャ棺の謎」 で、一般向けがこの「エジプト十字架の謎」
一般向けでも、推理の切れ味が劣るどころか、一層冴えわたっているところが、クイーンのクイーンたるところ。

ということで、ミステリ読みとしてまだまだ未熟だということを改めて実感させてくれた「エジプト十字架の謎」でした。


原題:The Egyptian Cross Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1932年
訳者:中村有希


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ギリシャ棺の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

ギリシャ棺の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/07/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
盲目のギリシャ人美術商ハルキスの葬儀が厳粛におこなわれた直後、遺言書をおさめた鋼の箱が屋敷の金庫から消えた。警察による捜索が難航する中、クイーン警視の息子エラリーが意外なありかを推理する。だが、捜査陣がそこで見つけたのは、身元不明の腐乱死体だった――〈国名シリーズ〉第四作は、若き名探偵が挑む“最初の難事件”にして、歴史に残る傑作である。


旧訳で2回読んでいます。
1回は子供の頃に、無邪気に読んでいました。長くて、難しい印象。楽しめませんでした。
なにしろ、「ギリシャ棺の謎」 は若きエラリー・クイーンが失敗を犯す話、ということは覚えていたけれど、その失敗をある程度時間が経ってから挽回する話だと思い込んでいたくらいですから。
ちっとも読めていなかった、ということですね。

で、この「ギリシャ棺の謎」 (創元推理文庫)が、かなり重要な作品(法月綸太郎さんが指摘された後期クイーン問題とか)であるということで、大人になってから再読。
でも、そのときもピンと来ていなかったですね。

そして今回新訳登場。今度こそと思って読みました。
結論からいうと、楽しんで読めましたが、クイーン問題とか難しいことは今回もピンと来なかったですね。
読者としては、あまり難しすぎることは考えずに、素直に楽しめばいいような気がします。クイーン最長、とのことですが、十二分に堅牢なミステリを楽しめますから。
それにしても、堅牢で、長大ではありますが、わかりにくいところはありません。子供の頃はともかく、大人になってもちゃんと読めていなかったなんて、しっかりしろ、と言いたいです、あの頃の自分に。

エラリー・クイーンが失敗することから、
「もしぼくがこの誓約を破るところを見かけたら、遠慮なく、ぼくの脳味噌に鉛玉をぶちこんでください。今後、ぼくが興味を持ったいかなる事件においても、その犯罪のすべての要素を継ぎ合わせ、すべての曖昧な点にしっかりした説明がつくまでは、もう二度と、解決を発表したりしません」(268ページ)
というセリフが生まれています。
名探偵が最後まで答えを口にしない定型的な言い訳ですね。
注意してくれ、じゃなくて、殺してくれ、というあたりは、若気の至りでしょうか!?

この作品では父親のクイーン警視がお茶目に感じました。
関係者を監視下に置くといったあとセリフ。
「皆さんが愉快だろうが、不愉快だろうが--こっちは痛くももかゆくもない!」(165ページ)
クイーン警視って、こういうキャラクターでしたっけ?
実際に発せられるとお茶目なセリフではないんでしょうが、今の目から見ると、お茶目に感じてしまいました。
337ページでひとりで深夜(早朝?)にコーヒーを淹れるくだりも、なんだかかわいいですね。

二転三転する展開は、本格ミステリの醍醐味十分なんですが、不満もありまして、それは真犯人。
これだけの事件を起こしたにしては、ちょっと大物感に欠けませんか?
という不満と同時に、この犯人の設定はそれなりにニタニタしてしまう仕掛けでもありまして、エラリー・クイーン、さすがだなぁ、というところ。

読むときはちゃんと読みましょう、という反省をしつつ、新訳のおかげでちゃんと楽しむことができたことを感謝します。


<蛇足1>
「鼓膜に突き刺さる沈黙」(337ページ)って、どういう状態でしょうね?
矛盾した表現ながら、なんだか迫ってくるものがあります。翻訳ものではありますが、こういう表現を見つけるのも小説を読む楽しみですね。

もう一つ、同じページに「総領息子」という表現が出てくるのですが、これ原文はどうなっているんでしょう??

<蛇足2>
この作品、色覚異常に関してミスがあることで有名ですが、あまりに初歩的なミスなので、ミスだミスだと騒ぐほどのこともないか、と言う感じ。解説で辻真先は「作品全体の価値に決定的な影響はない」と書いていますが、確かに小さな部分ではありますが、それなりにキーとなるところだと思うので、残念なミスですね。


原題:The Greek Coffin Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1932年


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オランダ靴の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

オランダ靴の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2013/07/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
〈オランダ記念病院〉 の創設者である大富豪の老婦人が、緊急手術の直前に針金で絞殺された。たまたま病院に居合わせた作家エラリーの指図で事件現場はただちに保存されるが、検証を進め関係者の証言を総合しても、手術着姿の犯人の正体は皆目つかめない。やがて再び病院内で殺人が……! 犯人当てミステリの最高峰として歴史に名を刻む 〈国名シリーズ〉第三作。


国名シリーズの新訳、
「ローマ帽子の謎」 (創元推理文庫)(ブログ感想へのリンクはこちら
「フランス白粉の謎」 (創元推理文庫)(ブログ感想へのリンクはこちら
に続く第3弾、「オランダ靴の謎」 です。
国名シリーズというと、「エジプト十字架の謎」 (創元推理文庫)「ギリシア棺の謎」 (創元推理文庫)が高名で、「オランダ靴の謎」 は陰に隠れた感じで不満だったんです。
解説で法月綸太郎が
「副業時代の最後の作品である『オランダ靴の謎』 が、《読者への挑戦》小説の最高峰として、クイーンの数多い作品群の中でも別格の地位を誇っている」
と書いていてうれしくなりました(この解説、素敵ですよ)。ちゃんと認められているんだな、と。
ちなみに、もう一つ好きなのは、「スペイン岬の謎」 (創元推理文庫)だったりします。

さて、「オランダ靴の謎」 です。
キーとなる手掛かりは、タイトルにも明示されている通り、靴、です。
この靴をめぐる推理、結構細かい部分まで覚えていました。それだけ旧訳で読んだ時の印象が強烈だったということですね。
あと、章題が “~tion” で統一されていることや、途中で読者がメモを取っていけるようにページの下が余白になっている部分があること、も覚えていました。もちろん、読者への挑戦も! 理詰めのミステリなんだけれど、いや、理詰めのミステリだからこそ、遊び心があちこちにうかがえるところがお気に入りでした。
そして、なんといっても犯人指摘の瞬間。
本格ミステリにおいて、犯人指摘はドラマチックな見せ場ですが、この作品のその瞬間は手がかり(キーポイント)と結びつき一体化した、とびきりの幕切れだと今回改めて感じました。
派手派手しい展開はありませんが、本格ミステリらしいわくわくを強く強く楽しめる傑作です!


P.S.
靴をめぐるポイントとして、靴紐を絆創膏でつないでいる、というところがあります。
絆創膏というと、どうしてもバンドエイドのような救急絆創膏(粘着部のシートの中央部に不織布製のパッドが取り付けられたもの)を連想してしまって、それで靴紐をつなぐとなると違和感を覚えるのですが、パッドのないサージカルテープのようなものも本来絆創膏と呼ぶのですね...
なんでも不思議に思ったら調べてみるもんですね。子供のころからの疑問が一つ解消しました。


原題:The Dutch Shoe Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1931年



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フランス白粉の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


フランス白粉の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

フランス白粉の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/09/27
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
五番街にある〈フレンチズ・デパート〉のウィンドウに展示された寝台から、女性の死体が転がり出た。被害者はデパートの取締役会長の後妻。遺体のくちびるには口紅が塗りかけで、所持していた別の口紅からは謎の白い粉が発見される……。この怪事件から唯一無二の犯人を導き出す、エラリーの名推理。巨匠クイーンの地位を不動のものとした〈国名シリーズ〉第二作。

「ローマ帽子の謎」 (創元推理文庫) に続くエラリー・クイーンの国名シリーズ新訳第2弾です。「ローマ帽子の謎」 の感想へのリンクはこちら
この作品はなんといっても最後の一行になるまで犯人の名前が明かされないという趣向が素晴らしいと、瀬戸川猛資さんが「夜明けの睡魔―海外ミステリの新しい波」 (創元ライブラリ)で激賞されていて、読み返してみたいなぁ、と思ってはいました。でも、再読ってなかなかきっかけがないと読んだことのない本もいっぱいあるのに踏み切れませんでした。幸い、この作品の新訳が出て、こうして読むことができました!
確かにとても印象に残るラストシーンで、オープニングの派手な死体発見シーンとともに覚えていましたが、それ以外のところはまったくおぼえていなかったので、とても楽しめました。
この作品には、ロジックの不備(?)が指摘されることがあります。エラリー・クイーンが犯人決定の最後のキーとして使う手掛かりが、あまりにも決定的で、それだけで犯人が特定されてしまう、というものです。
個人的にはそれとは別の不満がその手掛かりにはあります。犯人はAという行為をしようとして、その目的のためにBという行為をします。その結果手掛かりを残してしまうのですが、Aという行為をするのに、Bという行為をする必要はないと思うのです。Bという行為をしないで、Aという行為だけをすればよかったのです。
ですがそれは、最後の一行まで犯人を隠すという、素敵な素敵な趣向のためなのです。少々の無理は気にしない、気にしない。ミステリには、それくらいの茶目っ気というか、稚気があったほうが、ずっとずっと楽しめると思います。派手なトリックなどなくても、論理で読者をびっくりさせることができる。そのことを示して見せたエラリー・クイーンの魅力全開です。
この作品を読み返したおかげで、ミステリを読み始めたころの、わくわく感を、ドキドキ感を思い出しました。楽しかったですね。

ところで、日本語タイトルは白粉となっていますが、原題は POWDER で、手掛かりも白い粉であって、白粉(おしろい)ではありません。ひょっとして、「フランスおしろい」、と読むのではないでしょうか? では、なんと読むのでしょう? うーむ。余計なことですが、気になりました(笑)。
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ローマ帽子の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

ローマ帽子の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2011/08/30
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらす じ>
新作劇〈ピストル騒動〉上演中のローマ劇場の客席で、弁護士のフィールド氏が毒殺された。現場から被害者のシルクハットが消えていたことを手がかりに、ニューヨーク市警きっての腕ききリチャード警視と、推理小説作家エラリーのクイーン父子が難事件に挑む! 巨匠クイーンのデビュー作にして、“読者への挑戦状”を掲げた〈国名シリーズ〉第一弾の傑作長編。

いわずと知れたエラリー・クイーンのデビュー作の新訳版です。創元推理文庫ではこれを皮切りに、国名シリーズが順次新訳となるようです。楽しみ。
当然ながら(?)旧訳版はシリーズ全作読んでいます。
エラリー・クイーンファンであられる有栖川有栖さんが解説を寄せられていて、それに付け加えるようなことは何もありません...この作品を未読の本格ミステリ好きの方がこの解説を読めば、絶対に読みたくなると思います。
ロジック重視の作風であるエラリー・クイーンが、読者への挑戦を掲げて読者に挑む、まさに本格ミステリの王道をいく作品です。
昔読んだときの印象がほとんどなく、国名シリーズの中では影が薄いような記憶でしたが、十分楽しめました。
書かれた時代が時代なので(原著は1929年)、古びたところがあったり、大仰な部分があったりはしますが、シルクハットが現場から消えたのはなぜか、をキーに犯人をつきとめていくところは、ロジック派の面目躍如な感じがします。これでもまだデビュー作なのでおとなし目で、犯人限定のロジックとしてはかなりシンプルな印象を受けましたが、こういうのを読むのがミステリを読む醍醐味だなぁ、なんて生意気なことを考えてしまいました。
事件は1つだけで捜査や尋問が続きますので、現代のスピードあふれる息つく暇もないようなミステリになれた人だと展開の遅さを感じてしまうかもしれませんが、ロジックで事件を究明していくさまを味わうにはじっくりいきたいところです。
解説でも触れられていますが、今となって読み返すと、この作品の序文はすごいでたらめですね(笑)。もっとも現実の事件を扱っていてもフィクション化されているという設定なので、その後のわれらが知るエラリー・クイーンと、序文でのエラリー・クイーンがまったく別物でも矛盾はない、ということなのかな?
なんにせよ、読みやすい新訳で読めて楽しかったです。今後にも期待します。


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