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シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 [日本の作家 か行]


シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 (SKYHIGH文庫)

シャーベット・ゲーム オレンジ色の研究 (SKYHIGH文庫)

  • 作者: 階 知彦
  • 出版社/メーカー: 三交社
  • 発売日: 2016/09/09
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
彼女たちは確実に真実へとたどりつく--
横浜の朝霧学園高校でクラス委員を務める二年の和藤園子は、日曜模試の帰り道に立ち寄ったコンビニで、不思議な美少女・穂泉沙緒子に出会う。僅かな情報だけで園子のことを言い当て、二人の目の前で起きたコンビニ強盗を鮮やかに解決した沙緒子に強い興味を持つ園子。しかし無事に解決したかと思われた強盗事件は、意外な方向へと転がり始め、平凡だった園子の毎日を沙緒子との非日常へと導いていく--。


3月に読んだ本、4冊目です。
SKYHIGH文庫...堂々たるラノベ文庫で、通常だったら手に取らないんですが、「このミステリーがすごい! 2017年版」で千街晶之氏が「今年の本格ミステリー注目作!」として取り上げられていたので購入しました。
読んだ結果は、千街さんありがとうございます。おもしろかったです。

穂泉沙緒子がシャーロック・ホームズで、和藤園子がワトソン。
警察の方は、連城玲人がレストレイドで、暮続壮一がグレッグスンでしょうか。
冒頭イラストつきで紹介されているのは、あとは、喫茶店「真麻」をやっている波戸野真と梓夫婦で、これはハドソン夫人の役回りですね。
このネーミングはちょっとどうかなぁ、と思いましたが、中身は堂々たるミステリで、いいですね。

なによりも、謎解きというか、手掛かりをベースにして推理を組み立てていく部分の比重が高いのがGOOD。
最初、コンビニで偶然遭遇した強盗事件の犯人を捕まえてしまうところで、穂泉の推理力よりも、コンビニの防犯ボールを投げるコントロールの良さに感心してしまいましたが、その後もいろいろな手がかりでじゃんじゃん推理を構築していくのが楽しい。
そして、コンビニ強盗が、次の建設中のビルの事件につながっていく流れも良い感じです。
ただ、建設中のビルの事件の方の動機はいただけないですね。この動機はないなぁ。この辺りは、シリーズを重ねていくにつれて改善されていくといいですね。

最後に、この作品でいいなと思ったのが、ワトソン役の和藤が、単なるぼんくらという設定になっていないこと。穂泉ほどではないにせよ、きちんと推理を立てていくのが心地よかったです。
こういうコンビ、楽しいかも。


<蛇足>
「イギリスといえば紅茶なんだから、コーヒーを飲み慣れていなくても当然よね」(235ページ)
というセリフが出てきますが、これは完全なる誤解と思います。
イギリスに行ってみられればわかりますが、イギリスでは、コーヒーをよく飲みますよ。
コーヒーショップもいたるところにあります。むしろティーショップの方が少ないかもしれません。




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栗色のスカーフ: 杉原爽香(43歳の秋) [日本の作家 赤川次郎]


栗色のスカーフ: 杉原爽香(43歳の秋) (光文社文庫)

栗色のスカーフ: 杉原爽香(43歳の秋) (光文社文庫)



<裏表紙あらすじ>
着々と仕事を進める爽香の前にトラブルは絶えない!  都市開発を主導する大企業が抱える複雑な事情。愛人の死体隠蔽に奔走する取引先の男。そして、勤務する“G興産”の社長・田端の心変わり!? 期せずして爽香は苦難の渦に呑み込まれる。一方、夫・明男は、彼に恋する未亡人・大宅栄子と二人きりで会うこととなり……。登場人物が年齢を重ねる大人気シリーズ!


「えんじ色のカーテン: 杉原爽香〈42歳の冬〉」の感想(リンクはこちら)で書きました通りの次第で、「えんじ色のカーテン」の感想をアップし終わったので、いよいよ(?) この「栗色のスカーフ: 杉原爽香(43歳の秋)」 (光文社文庫)の感想です。
ちなみに、この「栗色のスカーフ」 は3月に読んだ3冊目の本。今年12冊目です。


今回の話は、死体を隠そうとする取引先の社員という要素が大きいでしょうか。
実は前作「えんじ色のカーテン」の感想と変わりません。
奇矯な人物てんこ盛りで、びっくり。
もう一度書いておきます。
正直、赤川次郎には、もうすこし普通の人たちの間で巻き起こるドラマを期待したい、と。

それにしても、明男、だめですねぇ。
タイトルにもなっている「栗色のスカーフ」 が不気味ですね。
どうなっていくんでしょう。





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化学探偵Mr.キュリー2 [日本の作家 喜多喜久]


化学探偵Mr.キュリー2 (中公文庫)

化学探偵Mr.キュリー2 (中公文庫)



<裏表紙あらすじ>
鉄をも溶かす《炎の魔法》、密室に現れる人魂、過酸化水素水を用いた爆破予告、青酸カリによる毒殺、そしてコンプライアンス違反を訴える大学での内部告発など、今日もMr.キュリーこと沖野春彦准教授を頼る事件が盛りだくさん。庶務課の七瀬舞衣に引っ張られ、嫌々解決に乗り出す沖野が化学的に導き出した結論は……!? 大人気シリーズ第二弾。

「化学探偵Mr.キュリー」 (中公文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続くシリーズ第2弾。
この第2巻には
「化学探偵と炎の魔術師」
「化学探偵と盗まれた試薬の使途」
「化学探偵と疑惑の記憶」
「化学探偵と幻を見た者たち」
「化学探偵と人魂の正体」
の5話収録。

中では冒頭の、魔術師が炎の柱をたてるのを見たと言ったことで仲間から追いつめられる小学生を救う「化学探偵と炎の魔術師」がさらっとした中に重い物語を抛り込んでまとめ上げているのが好印象。
「化学探偵と盗まれた試薬の使途」はタイトル通りに、盗まれた過酸化水素水の用途を探る話。

「化学探偵と疑惑の記憶」は帯に使われています。
いわく「アーモンドの臭いがしたから青酸カリで殺された!? その推理は、大間違いだ。」
「そもそも、青酸カリは無臭だ」(158ページ)というのが既に、おおっ、ですし、
「シアン化水素はアーモンドの臭いがすると言われるが、ここで言う『アーモンド臭』は、チョコレートや菓子に使われる、ローストアーモンドの臭いではない。収穫前のアーモンドの実や花が放つ匂いのことを指している。香ばしいというより、甘酸っぱいにおいがするらしい」(159ページ)というに至っては、なんだかうっとりしてしまう。そんなことを言われてもどんなにおいなんだかわからないんですけどね。
おばあちゃんを殺してしまったのは自分かもという記憶に囚われているアイドルを救うという話ですが、美間坂剣也が出てくるのがいいですね。もっともっと剣也が引っ掻き回してもいいと思うくらいです。沖野春彦には申し訳ないですが。

「化学探偵と幻を見た者たち」はコンプライアンス違反を告発する怪電話がスタートです。
怪電話の主が迎えるのは、哀しいラストです。

最後の「化学探偵と人魂の正体」は文字通り、人魂を扱うわけですが、平凡といえば平凡ですね。
ただ、占い好きというか、占いに憑かれた登場人物がラストでコミカルな味を出していて、楽しかったです。
この後、沖野や七瀬はどう処理したんでしょうね...

シリーズはこのあと、
「化学探偵Mr.キュリー3」 (中公文庫)
「化学探偵Mr.キュリー4」 (中公文庫)
「化学探偵Mr.キュリー5」 (中公文庫)
と順調に巻を重ねております。

<蛇足>
もはや指摘するのもあれかもしれませんが、
「一生懸命」(11ページ)とか、「少年の将来を鑑みて」(134ページ)とか、なんとかならないんですかねぇ。



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C.M.B.森羅博物館の事件目録(23) [コミック 加藤元浩]






この第22巻は、
「4枚目の鏝絵」
「足摺厚焼き卵店」
「Nobody」
「グラウンド」
の4話収録です。

「4枚目の鏝絵」は、左官職人が漆喰なんかの壁に立体的に描いた絵である鏝絵を扱っています。
四方の壁に書かれたはずの鏝絵。4枚目のあった床の間の壁は絵の部分だけが燃え尽きていた。
面白い謎だと思いましたが、鏝絵の正体がミステリ的にはあまりにもありふれていてちょっと残念。

「足摺厚焼き卵店」は、厚焼き卵店での不審な状況を推理する、という話。
ムリヤリな謎ときには苦笑せずにはいられませんが、年末にふさわしい!?
蛇足ですが、ちゃんと「一所懸命」と書かれているので安心できます。

「Nobody」は、象牙の密輸組織が舞台。
通報を受けて駆け付けたが、見つかったのは人形で、死体はなし。
死体はないものの、現場は被害者の血だらけで、さて、殺し屋が殺したか、掃除屋が殺したか。
おもしろい思い付きのトリックだと思いましたが、これはさすがにうまくいかないよなぁ。

最後の「グラウンド」は、野球部が使用するグラウンドを水浸しにしたのは誰か、という話。
これ、無理があるんですけど、なんとなくありそうな話に思えるのは、甲子園の魔力でしょうか? そういう話を一杯今まで読んだり、見たりしてきたからですね。
終わり方が水戸黄門っぽいのもポイントでしょうか。



タグ:加藤元浩 CMB
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Q.E.D.証明終了(45) [コミック 加藤元浩]






この第45巻には「金星」と「初恋」の2つの話が収録されています。

「金星」は、メディア研究会を舞台にした殺人事件を描いています。
折々に「金星人サージェの宇宙冒険旅行」というマンガが挿入されるんですが、この効果がよくわからない。
事件のトリックも陳腐ですしねぇ(失礼)。
それよりも、可奈が嫉妬したってことの方が、ポイント!?

「初恋」は、高校生の仲間の殺人事件です。
「金星」と仕掛けが似ているのがポイントでしょうか?
トリックの着想はおもしろいと思いましたが、問題点も浮かびましたし、なにより動機がちょっと...これはいただけませんね。
問題点というのは、ネタバレになるので、色を変えて書いておきます。
ベランダの避難ハッチって、そもそも下から簡単に開くものでしょうか? そして、避難ハッチは開けた際、下の階に避難するためのハシゴが出てくるものだと思うのですが、トリックの邪魔にならないでしょうか? 邪魔にならないとして、外から見えてしまうのではないでしょうか? 見えないように洗濯物と思しきものが描いてあるようですが、避難ハッチの下には洗濯物が干せないように、物干しざおなんか設置されていないと思うんですよねぇ。
どうもすっきりしません。
また、サム・ロイドのパズル「トリック・ドンキー」が引用されているのですが、もう一つうまく喩えとして使われていない気がしました。

次の46巻には、「初恋」で予告されている「例の落語家の人たちの事件」というのが出てくるようです。




タグ:加藤元浩 QED
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黒影の館 [日本の作家 篠田真由美]


黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)

黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿 (講談社文庫)



<裏表紙あらすじ>
一九八〇年秋、突然の義父の死。神代宗は傷ついた心を埋めるため訪れた北の町で、殺人の罪を着せられてしまう。そして、疑惑が晴れぬまま土地を支配する久遠家の「館」に軟禁され、血塗られた過去を目撃する。謎の美少年・アレクセイが悲劇の真相を語りはじめたとき、銃声が轟いた! 大人気シリーズ第14弾。


建築探偵シリーズも残り1冊となりました。
ちなみにタイトルは「黒影」に「かげ」とルビが振ってあります。
前作「一角獣の繭 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)のラストで急展開があったので、さて、続きはどうなる!? と勢い込んだりもしましたが、この「黒影の館 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)では、さっと物語は過去に遡ってしまいます。

若かりし日の神代宗、そして桜井京介!!
シリーズ大団円の(はずの)次作「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)前にちょっと過去を振り返っておきましょう、という感じ?

22年前の、神代宗と桜井京介の出会いが描かれます。
で、あらすじ読んでいただくとわかりますし、みんながみんな想像すると思うので書いてしまうと、謎の美少年・アレクセイというのが京介です。
舞台となるのは、タイトルにもなっている館で、地元ではお館と呼ばれている、と(156ページ)。
「お館様というと特定の個人を指し示しているようですが、それはむしろ一個の抽象的な概念です。お館は共同体の内部にあるのではなく、しかし外部でもない。閉ざされた世界の中心に存在し、支配はせぬがその上に燦然と君臨している。」(157ページ)
と登場人物のひとりに解説されますが、いいではないですか。
いかにも、ミステリの舞台に似つかわしい、素晴らしい舞台。

登場人物もいいですよ。
屋敷に住む久遠(くどお)家の面々が、呉でグレゴリ、叡でアレクセイ、珠でモイラ、衿でエレナ、そして庵でイオイリ。
ロシアの高貴な血を引いている、って貴種流離譚ですか。京介にふさわしいではありませんか。
館の主グレゴリが、この世のものとは思われない怪物で権力と魔力の持ち主ってのも、いいですね。
で、当然これが、京介=アレクセイの敵なわけですよ。
シリーズの最終盤に向けて、いよいよ対決ものの素地完成といったところですか。

そういう構図なので、読者の興味は京介に集中してしまうのですが、この「黒影の館」 で描かれている事件は、きちんと本格ミステリのセオリーに則って展開されて、いわゆる意外な犯人も、見抜く読者が大半だとは思いますが、きちんと演出されています。

アレクセイがやはりとっつきにくすぎる性格に描かれている点、子どもには甘いにせよ、もう少し神代教授がアレクセイに肩入れする理由をわかりやすくしてもらえるとよかったかも、とは思いましたが、若き日の神代教授がいいやつだ、ってのもわかりましたし、よかった、よかった。
残りは、いよいよ「燔祭の丘 建築探偵桜井京介の事件簿」 (講談社文庫)です。

<蛇足>
194ページに、ポーの詩「大鴉」の翻訳をめぐるやり取りがあるのですが、
「西条八十」
とあって、ちょっとびっくり。西條だと思い込んでいたからです。
さっとネットで調べてみると、どちらの表記もあるんですねぇ。
「森鷗外」と「森鴎外」みたいなもんだったんですね。






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MIDNIGHT DRINKER
まじょ。のミステリブロ愚



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えんじ色のカーテン: 杉原爽香〈42歳の冬〉 [日本の作家 赤川次郎]




<裏表紙あらすじ>
長から休暇取得を厳命された爽香は、部下のあやめたちと温泉旅行の計画を立てる。そんな折、恩師・河村布子から相談が。社会人との交際が問題となった生徒・淡口かんなを、旅行に同行させてほしいというのだ。しかし、彼女とつながりのある人々は物騒な事情を抱えていた。爽香の休日は不穏な影に覆われて……。登場人物が年齢を重ねる人気シリーズ。


実はシリーズ次作「栗色のスカーフ: 杉原爽香(43歳の秋)」 (光文社文庫)を読んだのでその感想を書こうとしたところ、この「えんじ色のカーテン: 杉原爽香〈42歳の冬〉」の感想を書いていないことがわかり、あわてて(?) 感想を書いています。

今回の話は、淡口かんなという少女の成長物語、というところでしょうか。
しかしねぇ、奇矯な人物てんこ盛りで、びっくりできます。
これだけ変な人物が集まったら、そりゃあ、大騒ぎにもなりますよねぇ。
正直、赤川次郎には、もうすこし普通の人たちの間で巻き起こるドラマを期待したいなぁ。

今回一番ほぅっと思ったのは、タイトルです。
なかなかえんじ色のカーテンが出てこないなぁと思っていたら、こういう出し方でしたか。
なかなかインパクトのある使い方ですね。

<蛇足1>
冒頭
「『仕事人間』ってのは、家族より仕事の方を大切だって思ってる人間のことでしょ。私は家庭が何より大切」(24ページ)
という爽香のセリフがありますが、なかなかいいセリフと思うものの、それでも爽香って仕事人間ですよねぇ。
「思ってる」もさることながら、実際にどうなっているか、で判断されるものじゃないかな。

<蛇足2>
2015年9月に出た本なので、今更言っても詮無いことですが、帯に
「爽香の生き様は彼女を変えられるか!?」
とあって、がっかり。
生き様なんて品のない言葉、赤川次郎の作品に使わないでほしかった...


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記憶屋 [日本の作家 あ行]


記憶屋 (角川ホラー文庫)

記憶屋 (角川ホラー文庫)



<裏表紙あらすじ>
大学生の遼一は、想いを寄せる先輩・杏子の夜道恐怖症を一緒に治そうとしていた。だが杏子は、忘れたい記憶を消してくれるという都市伝説の怪人「記憶屋」を探しに行き、トラウマと共に遼一のことも忘れてしまう。記憶屋など存在しないと思う遼一。しかし他にも不自然に記憶を失った人がいると知り、真相を探り始めるが……。記憶を消すことは悪なのか正義なのか? 泣けるほど切ない、第22回日本ホラー小説大賞・読者賞受賞作。


第22回日本ホラー小説大賞の読者賞受賞作ということで、読みやすいんだろうな、と思って読み始めました。
この本は、エピソードを連ねた連作短編集のような構成になっていて、全体を貫くように主人公のエピソードが描かれる、という構造です。
最初のエピソードはまだぎくしゃくしたところがありましたが、2番目の弁護士のエピソードくらいからぐんと読みやすくなりました。予想通り。
記憶を消したい理由と、消された後のたたずまいがなかなか美しくて、ノスタルジック、泣ける、切ない、という評はこのあたりから来ているのでしょうね。こういうテイストのエピソード、ずーっと続けることが可能かも。

記憶屋、というから、記憶してくれる人のことかと思ったら、逆なんですね。
記憶を消してくれる人。
それは記憶屋とは呼ばないんじゃないかな、と思ったのは余計な話。
「消してしまいたい、どうしても忘れられない記憶を、消してくれる」(5ページ)
そんなに都合よく、消したい記憶だけ消せるものか、直接的ではなくても関連する部分の記憶はどうするんだ、と思いますが、まあそこはさらっと流すべきなんでしょうね。作中でもいびつな残り方をした記憶に触れられているところがありますが、作者もそのあたりは意識されたのかも。
記憶屋に会ったことは忘れるという設定に概ねなっているようです(記憶屋に会った記憶が残っているエピソードもあり、この辺りのメカニズムは今一つわかりません)が、消された記憶に登場する・関連する人物が持っている記憶までは消されないので、その人物から見ると急に記憶喪失みたいになってしまって怪しい。だから記憶屋なんて都市伝説っぽく語られてしまう。
Aという人物が持つ記憶が消されると、その記憶だけではなく周辺の人物も忘れ去られてしまう。自分が忘れられてしまう哀しみ、というのはおもしろい着眼点と思いましたが、こういう中途半端な設定の賜物ですね。

この記憶屋の存在、考えてみたら結構怖い存在ではありますが、ホラーというテイストにはなっていません。

記憶屋を捜す、つきとめる、という要素もありますが、ちょっと安直ですね。
「ミステリー要素も濃密」と帯に感想を書かれている書店員さんもいるようですが、このレベルで濃密と書かれると、ずっこけてしまいますね。
記憶屋の正体、ミステリー好きならすぐに見抜いてしまうでしょう。

記憶屋に対して懐疑的というか、嫌悪感を抱いていた主人公・遼一が、その記憶屋と遭遇するラストシーンは、なかなか考えさせられるものがあり、ノスタルジック、泣ける、切ない、というところで、印象に残りました。
(どこかで読んだことある感じだなぁ、という思いが拭えないのですが、果たしてどの作品だったのかわかりません)
エンディングは、経緯からしてそうなるしかないよなぁ、というところに着地するのですが、これは哀しいです。

個人的には、変なところに感心し、気に入っています。
記憶を消してくれる人は記憶屋と呼ばないんじゃないかな、という感想を上に記しましたが、遼一と記憶屋の対決シーン(?) で交わされる会話を通して、「記憶屋」と呼ばれるのがふさわしいんだな、と納得できたからです。

また、
第1のエピソードが、忘れたい記憶そのものではないけれど、つれて記憶から消されてしまった人物の視点。
第2のエピソードが、忘れさせたい記憶を持つ人物の視点。
第3のエピソードが、忘れたい記憶=消した記憶のまさに対象となった人物の視点。
最後となる第4のエピソードは、あえていえば、記憶屋の視点。
とそれぞれ記憶をめぐる立ち位置が違う人からみたエピソードが描かれていることもポイントかな、と思いました。

「記憶屋II」 (角川ホラー文庫)
「記憶屋III」 (角川ホラー文庫)
と、これ、シリーズにするの難しそうなのにシリーズ化されています。
興味が湧いてきました。


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エジプト十字架の謎 [海外の作家 エラリー・クイーン]


エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)

エジプト十字架の謎【新訳版】 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
クリスマスの寒村で起きた、丁字路にあるT字形の道標に、首を切断されたT字形の死体がはりつけにされる酸鼻な殺人。半年後、遠く離れた土地で第二の首なし殺人が発生したのを知ったエラリーは、ただちに駆けつけ捜査に当たる。〈国名シリーズ〉第五弾は、残酷な連続殺人に秘められた驚天動地の真相を、名探偵が入神の推理で解き明かす、本格ミステリの金字塔。


言わずと知れた、国名シリーズを代表する名作です。
帯にも「燦然たる本格ミステリの金字塔」とあります。
なんですが、個人的にはあんまり相性がよろしくない。そんなに凄まじい傑作とは思ってこなかったのです。
はじめて出会いは、小学校の図書室に置いてあった、子ども向けに訳されたものだったと思います。
そこそこ面白かったのですが、むしろカップリングだった「靴に棲む老婆」 に魅かれました。

その後、大人向けの普通の翻訳を創元推理文庫で(中学生か高校生のときに)読んだのですが...感想は、長い...途中でだれちゃった。
遥かに動きの少ない、「フランス白粉の謎」 (創元推理文庫)「オランダ靴の謎」 (創元推理文庫)は退屈などせず、むしろわくわくして読んだんですが...

今回新訳を読んでみての感想は、よくできているなぁ、というもの。天下の名作に失礼な言い方ですが、今回は素直にそう思えました。ただ、今回も長いな、と思ったのは内緒...

この作品を特徴づける、首切り死体連続というのも、ミステリとして、やはり優れていますね。
読者は誰だって、犯人が死体だった被害者と入れ替わる、と想定して読むわけですから、意外性を期待する身としては、作者がちゃんとそれを乗り越えてくれないと困る。
この部分の緩急のつけ方と、見せ方がすばらしい。

猟奇的な残忍な殺人事件ですが、わりとあっさり書かれているのがまず良いところかと思います。T字の十字架も、モンテネグロの因縁話も、おどろおどろしくなりそうな要素山盛りなのに、あっさり。ステキです。
そしてびっくりしたのは、ヌーディスト・ビーチというかヌーディスト島が登場するところ。
あれ? そうでしたか...記憶にないなぁ。
子供向けのリライト版ではたぶん割愛されていたか、書き換えられていたのでしょうが、創元推理文庫版で読んでたはずなのにまったく記憶がありません。
チェッカーの推理も、ヨードチンキの壜の推理も覚えていたのにね。(パイプは忘れていました)
そうなんです。国名シリーズならでは、というべきか、推理の過程が頭に強く残っています。
それくらい、印象的であざやか。

今回も長いと思ったのは、たぶん、第二、第三と殺人が続いても、有効な手がかりがなかなか出てこないから...せっかくの手がかりも犯人追及の決め手にはなっていない。なにしろ、第四の殺人でどーんと出てくるのですから。

なので、というべきでしょうか。
本書のもう一つの特徴である、クライマックスの追跡劇が、個人的には退屈でした。
ここを魅力に挙げる人も多いというのに、楽しめませんでした。
当時としてはかなり新しいデューセンバーグと高速交通機関を利用した追跡劇、エラリー・クイーンには不要でしょう...論理だけで十分楽しいのに。
推理して犯人を追いつめる、という手順が、犯人を追いつめてから後で推理を披露する、という流れになっていて、それはプロットの要請で必要なのは理解できても、エラリー・クイーンには推理の切れ味でおしきってほしかった気分。
たぶん、同じ1932年に発表された、「ギリシャ棺の謎」 (創元推理文庫)と対になっているのでしょう。
マニア向けが「ギリシャ棺の謎」 で、一般向けがこの「エジプト十字架の謎」
一般向けでも、推理の切れ味が劣るどころか、一層冴えわたっているところが、クイーンのクイーンたるところ。

ということで、ミステリ読みとしてまだまだ未熟だということを改めて実感させてくれた「エジプト十字架の謎」でした。


原題:The Egyptian Cross Mystery
作者:Ellery Queen
刊行:1932年
訳者:中村有希


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カンガルーは荒野を夢見る(2009年02月12日)
カンガルーは荒野を夢見る(2009年03月03日)



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松谷警部と三鷹の石 [日本の作家 は行]


松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)

松谷警部と三鷹の石 (創元推理文庫)



<裏表紙あらすじ>
ある事件をきっかけにして本庁に引き抜いた白石巡査の直感を、松谷警部は信頼している。当初は白石の推理力を動員するまでもないと思われた三鷹の事件だが、諸事情が判明するにつれて複雑な様相を見せはじめた。ケーキは消え、足跡は一つだけ。厭な予感が松谷の脳裏を掠める。打開策の見えないまま地道な捜査を続けるうちに……。本格ミステリ道まっしぐら、好評シリーズ第二作。


松谷警部シリーズ、と呼んでいいのでしょうか、「松谷警部と目黒の雨」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)に続く第2作です。
このあと、
「松谷警部と三ノ輪の鏡」 (創元推理文庫)
「松谷警部と向島の血」 (創元推理文庫)
と出てシリーズは完結しているらしいです。

いつものように(?)、創元推理文庫の常で、表紙をめくった扉のあらすじを引用します。

三鷹の堀越俊介殺害事件は無理心中の様相を呈し、松谷警部も当初捜査が難航するとは考えなかった。しかし白石巡査は納得しない。堀越の本命らしき女性の腺から、次第に河口湖とカーリングに絡む諸々の事情が判明。堀越は長野オリンピック有力候補の木屋沢を事故に巻き込み将来の芽を摘んでいた。カーリング場開設とクラブ結成の話が持ち上がった際に木屋沢はコーチに招かれ、土建屋&スポーツ用品店主の兄弟が一儲け企み……事実を積み上げても明確な方向性は見えなかったが、地道に聞き込みを続けた白石巡査はついに真相を看破する。ど真ん中の本格ミステリ、好評のシリーズ第二作。


うん、こちらは細かく事件が書かれていますね、親切です。
このあらすじに書いてある通りで、単純な無理心中かと思われた事件が、どんどん複雑になっていく、という物語。
このあたりの話の転がりかた、広がりかたを楽しむのがポイントなんだと思うのですが....

前作「松谷警部と目黒の雨」 ではアメリカン・フットボールが出てきましたが、今回はカーリング。
カーリングは、冬季オリンピックのおかげでかなり有名にはなってきていますが、それでも地味ですよねぇ。(競技されているかた、失礼なことを申し上げてすみません)
だからか、この「松谷警部と三鷹の石」 も、かなり地味。

聞き取り調査、ごちょごちょ推理、聞き取り調査、ごちょごちょ推理...この繰り返しです。
聞き取りの結果、広がっていく話に合わせて、山場があるとよかったんですけどねぇ。
本格ミステリって、地味なんだよねー、と言われやすいジャンルだけに、ちょっと残念な感じがします。
語り口とか、松谷警部と周りとの会話とか、読みやすくするための工夫はされているとは思うものの、もともと本格ミステリが好きな人以外にはつらいかも...

帯に
「犯人は意外な人物ですよ」
と白石以愛巡査のセリフであるかのような惹句があるのですが、確かに意外です。
まずもって動機が理解を超えているでしょう(笑)。
「動機は後回し」という白石巡査らしい作りになっているのですが、ここも心配なところ。
論理的に犯人を突き止める場合には不要な動機でも、読者がそう受け取ってくれるかどうか...

と余計な心配ばかりしておりますが、本格ミステリ好きからしますと、十分楽しめました。
その意味では、シリーズ快調、といってよいと思います。


<蛇足>
「松谷警部と目黒の雨」 同様、ある女性をめぐる周りの対応ぶりがちょっと個人的には、??? でした。






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