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憂国のモリアーティ 5 [コミック]

憂国のモリアーティ 5 (ジャンプコミックス)

憂国のモリアーティ 5 (ジャンプコミックス)

  • 作者: 三好 輝
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/03/02
  • メディア: コミック

<裏表紙あらすじ>
美貌の“あの女”は国家と探偵とを弄ぶ──
大英帝国王室で極秘裏に受け継がれて来た、重大な“禁秘”が盗み出され、行方不明となる。帝国の未来を左右するその文書の奪還へ向け、MI6が動き出す一方、シャーロックの下にはボヘミア国を巡る醜聞解決の依頼が舞い込む。2つの醜聞の裏で暗躍するのは、一人の美女──。


シリーズ第5巻。
表紙は、アルバート・モリアーティですね。モリアーティ教授の兄、です。

#16 二人の探偵 第二幕 (The Two Detectives Act 2)
#17、18、19 大英帝国の醜聞 第一幕、第二幕、第三幕(The Scandal in British Empire Act 1, Act 2, Act3)
を収録しています。

「二人の探偵」は前巻からの続きで、ホームズとモリアーティ二人が列車内での殺人事件の捜査に乗り出します。
豪華キャストですよね!
推理合戦というよりは、助け合い?

「大英帝国の醜聞」は、いよいよ(?)、アイリーン・アドラー登場となります。
アイリーンにシャーロックが手玉に取られていく様が楽しいですが、この巻の終わりではモリアーティも登場しまして、続きがとても気になります。
ちなみに、細かいですが、英語タイトル、A Scandal in British Empire は気になりますね。
冒頭にヴィクトリア女王が「あの文書は我が英国にとって重大な禁秘」とまで言っている醜聞ですから、The Scandal がふさわしいように思います。また、in British Empire でなく、of British Empire かなぁ、と。




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道絶えずば、また [日本の作家 ま行]


道絶えずば、また (集英社文庫)

道絶えずば、また (集英社文庫)

  • 作者: 松井 今朝子
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2012/07/20
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
江戸中村座。立女形三代目荻野沢之丞が、引退を決めて臨んだ舞台で、奈落へ落ちて死んだ。大道具方の甚兵衛が疑われたが、後日首を吊った姿で見つかる。次に沢之丞の次男・宇源次が、跡目相続がらみで怪しまれた。探索にあたる北町奉行所同心・薗部は、水死体であがった大工の筋から、大奥を巻き込んでの事件の繋がりに気づくのだが…。多彩な生き様のなかに芸の理を説く長編時代ミステリー。


松井今朝子の作品を読むのは、直木賞受賞作「吉原手引草」 (幻冬舎文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)以来で、8年ぶりですか...
この「道絶えずば、また」 (集英社文庫)は、
「非道、行ずべからず」 (集英社文庫)
「家、家にあらず」 (集英社文庫)
に続く「風姿花伝」三部作を締めくくる作品です。

タイトルの「道絶えずば、また」は、
「たとえ人から見捨てられても、けっして諦めずにひとつの道をずっと歩み続けていれば、かならずやまた浮かびあがる時節もあろうってことさ。」(130ページ)
と作品中でも説明されています。

ずいぶん久しぶりにシリーズを読んだので、前の2作のこと、すっかり忘れてしまっていました。それでも、十分楽しめましたが、続けて読んだほうがもっともっと作品の世界を楽しめたでしょう。ちょっともったいないことをしました。

名跡を継ぐ、というのは大変だな、と感じました。
冒頭死んでしまう荻野沢之丞には子供が二人。長男市之助は実子ながら、次男宇源次は不義の子で血はつながっていない。芸としては宇源次の方が立つので、生前名跡は宇源次に継がせると言っていたが...
事件が相次ぎ、芝居小屋を離れた事件・謎も出て来ますが、物語の根底にずっとこの名跡がどうなるのか、の興味が流れています。
ラストの市之助と宇源次の会話が強く印象に残っています。

芝居の世界、歌舞伎の世界に目をとられていると、それ以外の世界での事件(?) が立ち上がってきます。
こちらは宇源次が逃げる(?) 谷中の感王寺。将軍のご代参があるほどの名刹。
ここでの事件(?) のなりゆきも、かなり趣向が凝らされています。

芝居、寺社の世界に対する探偵役は、北町奉行所の薗部。シリーズキャラクターですが、おもしろい設定の人物です。妻や義父笹岡平左衛門とのつながりがキーでしょうか。
義父なので違う設定なのですが、どことなくTVの必殺シリーズを連想してしまいました。
おもしろいといえば、宇源次の恋人(と現代の言葉で言ってしまうと違和感がありますね。なんというのがよいのでしょうか? 女房でもないし。いい仲の、くらいにしておくのがいいのかもしれません)実乃とその母親富美弥も印象的です。

松井今朝子のほかの作品も読んでみようかなぁ、と思わせてくれるシリーズでした。


<蛇足>
「これはまたずっけりしたいい方で、勘三郎はただただ苦笑するしかない。」(118ページ)
「善兵衛はずっけりいった。」(198ページ)
という表現がでてきます。「ずっけり」というのがわかりませんでした。
調べると「相手の気持ちなど無視して、無遠慮に物を言い切るさま。ずけずけ。」ということのようです。








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ドラマ:開かない箱 [ドラマ・DVD]

Jonathan Creek: The Complete Colletion [Region 2]

Jonathan Creek: The Complete Colletion [Region 2]

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: DVD



「奇術探偵ジョナサン・クリーク」の第1作目「闇からの銃弾」(The Westlers Tomb)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)を観てからずいぶん日があいてしまいましたが、ようやく第2作「開かない箱」 (Jack in the Box)を観ました。
半年ぶり、ですか... 

いつものように英語の字幕をつけてヨタヨタと観たのですが、ジョナサン・クリーク役の俳優アラン・デイヴィスの英語、早口なうえに、籠ったような発音をするので、ちっとも聞き取れません。もっぱら字幕での鑑賞でした(苦笑)。

それでも、やはりこの「奇術探偵ジョナサン・クリーク」は無茶苦茶面白いです。

「開かない箱」は、岩盤をくり抜いて、分厚いコンクリートの壁を用いて作られた核シェルターの中で密室状態で自殺体と思われる死体が発見される、という事件を扱っています。右手に銃を持って、頭を撃ちぬいて。
ところが、この人、手の具合が悪くて銃の引き金を引けない状態だったので、殺人だろう、と。
でも、シェルターの中には被害者以外に誰もいなかった...

うわぁ、完璧な密室!
わくわくしますね!

この謎解きが、また、一種の反則技だと思うんですが、それでも素晴らしい。
いやあ、そう来ましたか。

また、いいなあと特に思ったのが、ジョナサン・クリークがトリックに気づくシーン。
なんの変哲もないあるものを見ていて表情が変わっていくので、いま見ているものがトリックのヒントなんだろうな、と思うのですが、そしてそれは、核シェルターの中でのシーンでも思わせぶりに映し出されていたものと関連がありそうなので、なにか解決のヒントというか手がかりというか伏線なんだろうなと思って観ていたのですが、まさかねぇ、そういう風に(話が)転がっていきますか!!

このシリーズ、いろいろとわくわくします!
シリーズの続きを見るのがとても楽しみです。今度は半年もあけずに観たいですね。

前回同様「The Jonathan Creek homepage」という英語のHPにリンクを貼っておきます。
第2作「開かない箱」(Jack in the Box)のページへのリンクはこちらです。
ただし、こちらのHP、犯人、トリックも含めてストーリーが書いてあるのでご注意を。写真でネタばらしをしていることもあるので、お気をつけください。


<蛇足>
バナナの皮ですべる、というギャグを、ジョナサン・クリークが実際にすべるかどうか試してみる、というシーンがラストであるんですが、見事にすべっていまして、笑ってしまいました。
バナナの皮で、本当にあんなにすべるんでしょうか?


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ROMES 06 まどろみの月桃 [日本の作家 か行]

ROMES 06 まどろみの月桃 (徳間文庫)

ROMES 06 まどろみの月桃 (徳間文庫)

  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 2011/07/15
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
最先端の施設警備システム・ROMESを擁する西日本国際空港で、密輪の摘発が続いた。税関から協力要請を受けた空港警備チームは、ROMESを駆使して次々と運び屋たちを発見していく。だが、うまく行きすぎる。疑問を抱いたシステム運用の天才・成嶋優弥はひそかに調査を開始する。大模規密輪を隠れ蓑にして進んでいた恐るべきテロ計画。成嶋は首謀者の男の執念に対抗できるか?


「ROMES 06」 (徳間文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
「ROMES 06 誘惑の女神」 (徳間文庫)
に続くシリーズ第3作です。
前作「ROMES 06 誘惑の女神」 (徳間文庫)の感想を書きそびれています。

久しぶりに読んだシリーズですが、やっぱり面白いですね!

不満がないわけではなくて、それは、ROMESの使われ方が地味であること...
ROMESって、すごい機能を搭載してあるはずなんですが、今回の使いかたは密輸の運び屋捜し、とか、空港にやってくる人物のサーチ。すなわち、顔認証とかのレベルなんですよね。
いや、空港にやってくる人物全体をサーチするだけでも相当すごいことなんだろうな、とは思うんですが、このレベルだとROMESにお出ましいただかなくても...なんて思ってしまいます。

また砂村が友人堤の依頼で、成嶋の許可を取ったうえでROMESの機能を流用するのですが、これもどうかなぁ...
「もしかしたらターゲットの男が犯罪者である可能性があるわけだし、砂村の友だちの頼みとあらば、虫もできないだろう?」(125ページ)
って、この程度でROMESの機能をほかの用途に、しかも、関係者でもない人のために使う、というのはコンプライアンスの観点から問題ありではなかろうかと...

もっとも、こうやって使った結果得られる情報や、ターゲットの男自体が、全体のプロットと有機的に絡みついていくのは当然のことでして、ROMESを使わせてやって、よかったよかった、という展開にはなるのですが、それでもねぇ...プライバシーの保護とか、どうなんでしょうね?

それは置いておくとすると、快調、快調。
ROMES擁する成嶋たち西空と、テロリスト、という知恵比べをたっぷり楽しめます。
西空側の捜査(?) がするすると順調にいくのはやや難あり、なのですが、成嶋が、あの成嶋が自ら動き回ったり、あるいはテロリストサイドの機微に触れたり、意外な展開を堪能しました。
テロリストの仕掛ける二重三重どころか、三重四重、四重五重にもなった複層的なたくらみがいいですよね。放射性廃棄物のエピソードとか、もう、大好物です。

試合に勝って勝負に負けた、というか、勝負に勝って試合に負けたというか、テロリストサイドの視点が効果的だったな、と思いました。

元麻薬取締犬のハルも活躍しましたし(あれ? 違いましたか?)、シリーズがどんどん楽しくなってきています。
シリーズ、このあと出ていないようなんですよね。
とてもおもしろいシリーズなので、ぜひぜひ、続巻をお願いします!


<蛇足>
冒頭に「空港は世界で最も重要な公共交通施設の一つであり」(10ページ)とあります。
もっとも〇〇なものの一つ、という言いかた、one of the most ~という英語の翻訳から生まれた表現だと思うのですが、気になる表現です。本来の日本語では、もっとも、というのは一番という意味ですから、一番のうちの一つ、というのは変なんですよね。(その意味で、英語の最上級を「最上」級と呼ぶのは間違いだと思います。もっとも、という意味ではないのだ、と。)
この文章、日本語としては、最の字をとっても意味がちゃんと通ります。
空港は世界でも重要な公共交通施設の一つであり~
これでよいのではないでしょうか?







タグ: 五條瑛 ROMES
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伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ [日本の作家 さ行]

伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ (講談社文庫)

伽藍堂の殺人 ~Banach-Tarski Paradox~ (講談社文庫)

  • 作者: 周木 律
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/09/13
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
謎の宗教団体・BT教団の施設だった二つの館の建つ伽藍島。リーマン予想解決に関わる講演会のため訪れた、放浪の数学者・十和田只人と天才・善知鳥(うとう)神、宮司兄妹。その夜、ともに招かれた数学者二人が不可能と思われる"瞬間移動"殺人の犠牲となる。秘められた不穏な物語がさらに動く"堂"シリーズ第四弾。


堂シリーズの第四作です。
今回も奇矯な登場人物に、奇矯な建物です。
館ミステリにつきものの図面(と数学的なものを説明する図面)が今回もふんだんに盛り込まれています。

数学をめぐる蘊蓄は、例によってちんぷんかんぷんで正直うるさいくらいです。
副題につけてあるBanach-Tarski Paradox、まったくわけがわかりません。
中身のつまった球体Kが「ひとつ」ある。この球を、適当に有限個に分割し、再び寄せ集めることによって、球体Kを「二つ」つくることができる(44ページ)、「バナッハ-タルスキのパラドックス」として紹介されていますが、どういうこと!? さっぱりです。
ミステリ的には...今回のトリックは、またまたすごいですよ(笑)。
182ページになってようやく死体登場というストーリー展開になっているのですが、その状態がたとえられているのが、百舌のはやにえ。
マイクスタンドに、身体を無残に貫かれたそれら(182ページ)と書かれています。
ひゃーっ、と叫びたくなる残酷なシーンなんですが、こういう死体のシーンだと思い出すのが、谺健二の「未明の悪夢」 (光文社文庫)
「未明の悪夢」もある意味奇想にあふれた作品でしたが、そのおかげでこの「伽藍堂の殺人」のトリック(の一部)にうっすらとですが見当がついてしまったんですよね。
そんなうまくいくかな? と思えるトリックではありますが、ミステリ的には、あり、でしょう。

前作「五覚堂の殺人」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)の感想で、「あからさまな手がかりがちりばめられていて、作者の仕掛けをたどっていく楽しみがあふれている」と書きましたが、ちょっと今回はバランスが悪かったかな、と思いました。
驚天動地の大技トリックを惜しげもなく投入したぜいたくな作品なのですが、それがかえって無理を際立たせてしまったかな、と。

しかし、このシリーズがどこに向かっていくのか、興味あります!


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血か、死か、無か? [日本の作家 森博嗣]

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

血か、死か、無か? Is It Blood, Death or Null? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/02/22
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
イマン。「人間を殺した最初の人工知能」と呼ばれる軍事用AI。電子空間でデボラらの対立勢力と通信の形跡があったイマンの解析に協力するため、ハギリはエジプトに赴く。だが遺跡の地下深くに設置されたイマンには、外部との通信手段はなかった。一方、蘇生に成功したナクチュの冷凍遺体が行方不明に。意識が戻らない「彼」を誘拐する理由とは。知性が抽出する輪環の物語。


Wシリーズの第8作です。
今回の舞台はエジプトです。
今回は、「人間を殺した最初の人工知能」。
確かに、これはエポックメイキングな出来事でしょう。
ウォーカロンにせよ、コンピューターにせよ、人間に近づけば近づくほど、人間を殺しやすくなっていくのでしょうねぇ。変な言いかたですが。

話の展開が、ここへきて遅くなったような気がします。

「僕は、空を見上げた。綺麗なブルーだ。空というのは、つまり宇宙なのだが、実際には、その手前にある空気の層に明るさがあって、宇宙は見えない。真実というものも、これと同じだ。クリアに見える層でも、また希望によって照らされた層であっても、真実を隠してしまうことがある。
 夜になれば見えるではないか、と思いついた。
 なるほど、正義の輝かしさを忘れることが、真実を見通す方法なのかもしれない。正義を捨てるとは、どんな選択だろうか?
 何故か、マガタ・シキ博士のことを連想していた。」(92ページ)
なんて、マガタ・シキ博士の本質?に迫るようなモノローグもあります。

一方で、
「遠い昔に、そういったことが行われていたと、言い伝える者はおりません。私たちは、過去を伝えない。なにも書き残しません。そうすることで、今という時を、確かな強さをもって生きることができます」(155ページ)
ナクチュの人びとの暮らしぶり、生き方をカンマバが話すシーンですが、これはこれで正しい生き方なんでしょう。

こういうのが交錯しつつ、森博嗣作品のあちこちとの連関が、一気に表に出て来始めています。
だから、展開が遅くなったと感じるのかもしれません。
このシリーズも残りが少なくなってきました...


英語タイトルと章題も記録しておきます。
Is It Blood, Death or Null?
第1章 血を選ぶ Choosing blood
第2章 死を選ぶ Choosing death
第3章 無を選ぶ Choosing null
第4章 選ばない Not to choose
今回引用されているのは、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」 (ハヤカワepi文庫)です。



<蛇足>
「銃を仕舞った方が良い、マドモアゼル」後部座席にモレルがいった。
「誰がいるの?」ウグイは、外を見たまま聞いた。
「悪魔妃」モレルが答える。
「今の発言を、逆再生すると、血か死か無か、になります」デボラが囁いた。(273ページ)
うーん、わかりません!





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誰も僕を裁けない [日本の作家 は行]


誰も僕を裁けない (講談社文庫)

誰も僕を裁けない (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/07/13
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
援交少女にして名探偵・上木らいちの元に、「メイドとして雇いたい」という手紙が。しかし、そこは異形の館で、一家を襲う連続殺人が発生。一方、高校生の戸田公平は、深夜招かれた資産家令嬢宅で、ある理由から逮捕されてしまう。らいちは犯人を、戸田は無実を明らかにできるのか? エロミス×社会派の大傑作!


早坂吝の本を読むのは
「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」 (講談社文庫)
「虹の歯ブラシ 上木らいち発散」 (講談社文庫)
に続いて3作目です。
「誰も僕を裁けない」 (講談社文庫)よりも「RPGスクール」 (講談社ノベルス)の方が早く出ているのですが、文庫化の順が逆転しましたね。上木らいちシリーズを先にしたのかな?

「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」 にはとても楽しませてもらいましたが、「虹の歯ブラシ 上木らいち発散」 はいまいちピンと来ないというか、肌に合わず、「誰も僕を裁けない」については、期待と不安がひとつになった状態で読み始めました。

「2017本格ミステリ・ベスト10」第6位です。

結論から言っておくと、「誰も僕を裁けない」は期待に十分応えてくれました!
巻頭に舞台となる屋敷の俯瞰図が掲げられていて、まずニヤリ。
もういかにも回りそうなんですよね(笑)。
すると、上木らいちが屋敷を訪れた際、
「館の全貌を把握して最初に思ったのは、いかにも〇りそうな形だな、ということだった。」(96ページ)
とあっさり書かれていて、またニヤリ。
登場人物に本格ミステリ作家を目指している人がいて、上木らいちと館が回るかどうかディスカッションするところでもニヤリ。
「次に挑戦したいのは、本格と社会派の融合--の新しい形というか」
「従来の融合を謳った作品の中には、ほぼ全編ガチガチのトリック小説で、動機だけが取って付けたように社会派というようなものもあって、そうするとトリックの部分が浮いてしまって、かえって本格と社会派の乖離を強調してしまっているだけではないかと。だから俺は本格のルールが現実社会のルールをも侵食し、両者が混然一体となるような、そんな作品を書きたいと思っているのです」(113~114ページ)
ほほう...さて、本書はそうなっていますかね?

とここまで館に来た上木らいちの方の話を先に書きましたが、本書は戸田公平という人物による裁判のシーンのモノローグから幕を開けます。この戸田公平がもう一人の主人公ですね。
高校三年生の戸田公平の夢のような(と書いていいと思います。いい夢か悪夢かは置いておくとして)エロ体験がつづられます。

このエロ話と、館での殺人と、さて、どうつながるのだろう、とミステリ読者としては思って読むわけですが、いやあ、さすが早坂吝、もう脱帽です!
タイトルの「誰も僕を裁けない」というのが、そういう意味だとは、到底思いつきません!
社会派かどうかは、???、ですが、大満足の1冊でした。

そして、作者のあとがき。
ここで、「本格ミステリー・ワールド2017」の「読者に勧める黄金の本格ミステリ」に「誰も僕を裁けない」が選ばれた際に寄せた自作解説が再掲されているのですが、これが含蓄深くて。
「二作品は論理偏重主義がかえって不定解を導き出す点で共通している。しかし『虹の歯ブラシ』が天かける虹のように現実の地表から遊離していたのに対し、本書は人が統治する現実の大地に足を着けたスタンスで書いた。
 したがって、多くの方には本作の方が身近で馴染みやすいかもしれません。一方、私のように『現実なんてクソ食らえ』と思っている人間は『虹の歯ブラシ』の方が好きでしょう。
 もっとも本作にも、現実に向かって特大のクソを投げ付けるような部分はあります(私の作品は概ねそうですが)。この作品が社会派だとはちっとも思わないという読者も多いと思いますが、私は『引きこもりの視点から見た社会』を書いているつもりです。社会という我が物顔に幅を利かせている強大な存在に対して、私と同じような孤独を感じている方には、きっと届くはずだと信じています。」
ちょっと長く引用しましたが、なるほどねー、と。
「虹の歯ブラシ」 が肌に合わない理由がしっかり書かれていました...
早坂吝、注目の作家です!

ところで、「〇〇〇〇〇〇〇〇殺人事件」 の感想、書けていないのですが、実は気になることがあるので、いつか(日本に戻って実物を再び手に取ることができたら)感想を書きたいと思っています。






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未必のマクベス [日本の作家 は行]


未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 早瀬 耕
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/09/21
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
IT系企業Jプロトコルの中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。同僚の伴浩輔とともにバンコクでの商談を成功させた優一は、帰国の途上、澳門(マカオ)の娼婦から予言めいた言葉を告げられる――「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一だったが、そこには底知れぬ陥穽が待ち受けていた。異色の犯罪小説にして、痛切なる恋愛小説。


本屋さんで気になっていたので購入した本です。
帯に朝日新聞に載った北上次郎の書評が全掲されていて、かなり大きめの帯になっています。文字ばかり...
曰く、「これほど素晴らしい小説はそうあるものではない。」

文章のリズムが性に合うのか、読みやすかったですし、おもしろくは読みましたが、そこまで激賞する程の作品かなぁ、というのが正直な感想です。

ポイントはその語り口と、主人公の性格でしょうか。
「ぼくは、これまでの三十八年間を通じて、友人と呼べるような相手がいない。クラスに溶け込めないということもないし、大学ではノートの貸し借りもしたし、誘われれば合コンや飲み会にも参加した。けれども、所属する団体や組織が変わった後も交遊を続ける友人はいなかった。」(31ページ)
なかなか象徴的な自己分析、自己紹介かと思いますが、こういう人物が主人公です。
高校時代の友人、伴浩輔、それに女子生徒鍋島というのが主要登場人物になります。
といっても、鍋島はなかなか登場せず、もっぱらぼくの回想の中での登場なのですが。
(とはいえ、鍋島はぼくからは常に鍋島と呼ばれていて、下の名前が出てこないことにはかなり好感度大でした。鍋島冬香というフルネームもちゃんと登場はしますが)

あとはやはり、「マクベス」
冒頭にある澳門のシーンから早速登場しますし、伴浩輔(そして鍋島)と出会う都立高校の回想シーンでも出てきます。
物語の終盤で、主人公がある人物に聞きます
「なぁ……、これって、『マクベス』なのか?」(403ページ)

ネガティブなことをまず書いておきますと、この作品でもっとも違和感を持ったのが、殺人です。
この動機で、人を殺すでしょうか? 個人的にはかなり否定的です。
このせいで、個人的にはストーリーに現実味がまったくなくなってしまいました。
これは大きなマイナス点だと思います。
小説なんて所詮は絵空事ではありますが、非現実的な設定のストーリーではなく、現実的な物語としてつづられている場合には、リアルさが感じられないとちょっと困ります。
物語の終盤である登場人物が犯す殺人が典型的かな、と思います。さすがにこの人まで殺人を犯すなんて...
その点でこの小説は激賞するわけにはいかないと思うのです。
あと、北上次郎は「経済小説であり」と書いていますが、うーん、どうでしょうか。経済小説としての側面にもあまり現実味は感じませんでしたね...暗号化技術って、こんな感じなんでしょうか...

このあたりが「そこまで激賞する程の作品かなぁ」と思った所以です。
ところが、この点を置いておくと、物語はとてもおもしろいと思いました。
感情移入しにくそうな主人公にもしっかり馴染めました。
北上次郎も
「年上の上司にして恋人となる由記子、同級生にして同僚の伴を始めとして、ビジネスとして優一を助けるカイザー・リー、優一のボディガードとなる蓮花のわき役にいたるまでリアルに描かれている」
と書いていますが、癖のある登場人物たちもちょっと会ってみたいかな、と思えました。
痛切なる恋愛小説、とあらすじに書いてあり、恋愛小説的匂いも感じることは感じるのですが、恋愛小説であるとしてもかなり異色な恋愛小説ですね。
恋愛になっていない、というか。
ミステリーであるによせ、ないにせよ、優れた小説というのは伏線が効果的に張られているものですが、この「未必のマクベス」はわかりやすい伏線がリフレインのように使われているので、読んでいて心地よいのですね、きっと。
この作者の作品なら、不満点はあっても楽しく読めるんじゃないかな、と思わせてくれる、そんな作者と出会うことができたと思います。


<蛇足>
「バンコクという街は、地図の上にしか存在しない。
 正しくは、『インドラがヴィシュヌカルマ神に命じてお作りになった、神が権化としてお住みになる、多くの大宮殿を持ち、九宝のように楽しい王の都。最高にして偉大なる土地、インドラの戦争のない平和な、インドラの不滅の宝石のような、偉大な天使の都』という長い名前の街がある。そこに住む人々も、その街を『クルンテープ(天使の街)』と呼ぶ」(484ページ)
そういえば、そんなことを昔聞いたことがあるなぁ、と思いながら読みました。

<蛇足2>
「けれども、旅に一番不要なものは『慣れ』だと思わないか?」(538ページ)
なかなかいいセリフだと思いました。
「だから、長い旅はしない方がいい。旅に慣れてしまう前に、一旦、自分の元いた場所に帰ることは、必要だと思うんだ。」(539ページ)
なるほどねー。


タグ:早瀬耕
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夜の床屋 [日本の作家 さ行]


夜の床屋 (創元推理文庫)

夜の床屋 (創元推理文庫)

  • 作者: 沢村 浩輔
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/06/28
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
慣れない山道に迷い、無人駅での一泊を余儀なくされた大学生の佐倉と高瀬。だが深夜、高瀬は駅前の理髪店に明かりがともっていることに気がつく。好奇心に駆られた高瀬が、佐倉の制止も聞かず店の扉を開けると…。第4回ミステリーズ!新人賞受賞作の「夜の床屋」をはじめ、奇妙な事件に予想外の結末が待ち受ける全7編を収録。新鋭による不可思議でチャーミングな連作短篇集。


裏表紙のあらすじに、チャーミングな連作短編集とありますが、目次を見てみると

夜の床屋
空飛ぶ絨毯
ドッペルゲンガーを捜しにいこう
葡萄荘のミラージュⅠ
葡萄荘のミラージュⅡ
『眠り姫』を売る男
 エピローグ

となっていまして、純粋な(単なる寄せ集めの)短編集ではないですね。
創元からデビューした新人の方々には多い作風ではありますが、この「夜の床屋」 (創元推理文庫)は、中でも異色の着地を見せる作品だと思いました。
解説で、千街晶之が
「本書『夜の床屋』(二〇一一年三月に東京創元社から刊行された『インディアン・サマー騒動記』を改題)は、単に多彩な小説を楽しめるというだけの短編集ではない。エピローグまで到達したとき、読者は『今、自分が読み終えた小説は一体何だったのか』と茫然とするに違いないのだ。こんな途轍もないことを思いついた発想力とと、それを成立させた構想力への感嘆とともに」
と書いていますが、まったくその通りで、へんなことを考える作家ですね。気に入りました!

「夜の床屋」「空飛ぶ絨毯」「ドッペルゲンガーを捜しにいこう」
この3編は、日常の謎、とは言い難いけれど、ふとしたきっかけから、予想外の犯罪や裏に秘められた謎が明らかになる、というかたちの、割と小味なミステリなんですね。
でも、小味とはいえ、それぞれ独特の味わいがあって楽しい。
「葡萄荘のミラージュⅠ」は、まだその範囲の続きという感じなのが、幕間的な「葡萄荘のミラージュⅡ」とそのあとの作中作「『眠り姫』を売る男」で大きく様相を変えていき、ラストのエピローグで主人公がたどり着く境地は、いやはや、すごくおもしろいです。
好みがわかれる着地かとも思いますが、支持します!


<蛇足1>
「背筋をきちんと伸ばし、落ち着いた所作でスプーンを口に運ぶクインを見ているうちに、ダンはアップタウンのレストランにいるような気がしてきた。」(237ページ)
とあります。
イギリスの監獄でのシーンなのですが、アップタウンという表現に違和感を覚えました。
アップタウン、ダウンタウンという表現は日本でもかなりおなじみになっていますが、基本的にアメリカの表現で、イギリスではあまり使わないような気がします。
また階級意識の強固だったイギリスで、監獄にいるような(ことをしでかす)ダンが高級レストランに行ったことがあるかな? こんな感想抱くかな? とも思いましたが、ダンは「ロンドンの大富豪の遺産を掠め取ろうとしてあっさり御用となり」(232ページ)ということなので、そういうことも可能な育ちだったのかもしれませんね。

<蛇足2>
「だとすれば、いったい女はどこに消えてしまったのか?
『彼女に足はあったのか?』
 それまで黙って聞いていたクインが奇妙な質問を投げかけた。
『おいおい。まさか幽霊が犯人だったなんて言い出すんじゃないだろうな』」(255ページ)
密室状況から消えた女についての会話で、おもしろい展開だとは思うのですが、幽霊に足がないのは日本だけのような気がします。イギリスの幽霊には足がついていると思うので、このような会話は成立しないはずです。
もっとも、この部分は、パーカー博士が持ってきた小説で、それを読んでいる人物(僕)が訳をつけていることになりますから、日本人にわかりやすいように意訳したと考えることはできますが...

<蛇足3>
それにしても、「インディアン・サマー騒動記」が改題されて『夜の床屋』になる、というのはかなりの落差ですね。
まったく受ける印象が違います。どちらかというと、個人的には「インディアン・サマー騒動記」の方が好みですが...

実は沢村浩輔、第2作である「北半球の南十字星」 (ミステリ・フロンティア)も文庫になる際に「海賊島の殺人」 (創元推理文庫)と全然違うタイトルに改題されているのですよね。
その点でもおもしろい作家ですね...

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もろこし桃花幻 [日本の作家 あ行]


もろこし桃花幻 (創元推理文庫)

もろこし桃花幻 (創元推理文庫)

  • 作者: 秋梨 惟喬
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2012/03/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
道に迷った漁夫が行き着いたのは、戦乱を逃れた民の子孫が王朝の変遷も知らず平和に暮らしているユートピアだった―陶淵明『桃花源記』を思わせるのどかな村にやってきた、陶華ら旅の一行。ところが、落ち着く間もなく大騒動に巻き込まれ、下手人扱いの憂き目に遭う。道すがら連れになった一癖も二癖もある顔ぶれを見ればそれもやむなしかと、凡人の陶華は溜息をつくが…。


秋梨惟喬の
「もろこし銀侠伝」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら)、
「もろこし紅游録」 (創元推理文庫)(ブログの感想ページへのリンクはこちら
に続く銀牌侠伝説シリーズ第3弾は、長編です。
といっても薄めの長編なので、快調にすいすい読めました!
「もろこし紅游録」以来すごく久しぶりに読んだのですが、すっと世界に入り込めます。これはいつもの通り。

物語の背景となっている、元朝末期の流賊が面白かったですね。
なるほどこういう仕組みなんだ、と勉強になります。
桃渓山という険しい山を遥かに望む渓陵の小さな県城を攻め落とそうとして苦戦している流賊の姿がオープニングです。そのあと、桃渓の城に籠っている側(一人は顔軍師と呼ばれている!)の話に。
続けて、桃渓山の下流の村で、川に女性のバラバラ死体が流れてきたという怪事。
さらに章が変わって、桃渓村のたどりついた陶華(科挙を目指していたが、王朝末期で科挙が行われず、旅に出ている男)に合流する様々な人物たち。
一行は、なんだかんだしたあと、桃源郷ともいうべき隠れ村にたどり着くが、その村はどうもただならぬ様子で...

いいではないですか、こういうの。
当然ながら、桃渓山に隠された秘密を暴いていくわけですが、この真相がまたいいんです。
馬鹿馬鹿しいけど(為念、褒め言葉です)、それでいてこの時代背景、この世界設定ならあるかもなー、と思えてしまう大技(反則技!?)が、むしろ爽快でした。

活劇シーン(?) とか戦闘シーンで無茶苦茶強い奴が出てくるのは、銀牌侠ならではで、楽しんで読むのがいいですね。残酷なシーンもあちらこちらにありますが。
こういうぬけぬけとした話は大好きです。

作者のあとがきには
「ですから、銀牌侠の物語はまだまだ続きます」
と書かれているのですが、このあと続きは出版されていないようです。
ぜひ、ぜひ、ぜひ。



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