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新聞王がボストンにやってきた [海外の作家 レスリー・メイヤー]

新聞王がボストンにやってきた (創元推理文庫)

新聞王がボストンにやってきた (創元推理文庫)

  • 作者: レスリー・メイヤー
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2014/08/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
『ペニーセイヴァー』が〈今年の最優秀コミュニティ新聞〉に選ばれ、ボスとともにボストンで開かれる新聞協会の年次総会に出席することになったルーシー。久々の都会と同業者との交流を満喫していたが、新聞業界の大立て者ルーサー・リードが晩餐会中に急死。警察が関係者を調べ始めた。すかさず新聞記者ルーシーの好奇心&探偵根性がうずきだすが……。主婦探偵ボストン出張編。


ルーシー・ストーンを探偵役とするコージー・ミステリシリーズの第10弾です。
前作「九十歳の誕生パーティ」 (創元推理文庫)(ブログへのリンクはこちら)を読んでから2年以上の日があいてしまいましたが、快調に読み進むことができました。
すっと世界に入り込むことができましたし、なによりルーシーたちおなじみの登場人物たちにまた会えて、まさにコージー、くつろいだ気分になれました。

しかし、普通の主婦探偵のような形で「メールオーダーはできません」 (創元推理文庫)に登場したルーシー、今やすっかり新聞記者になっていますね。
でも、同時に主婦でもある。二足のわらじですね。

この「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)では新聞協会の年次総会ということで、いつものティンカーズコーヴから離れ、大都会ボストンへ!
家を離れるので、留守宅と家族のことが気になってしかたがない、
ミステリ的には意味がありませんが、このルーシーの家族の物語が挟まれるところがシリーズ読者にはうれしい枠組みですね。(事件とは関係のない家族のエピソードの中から、ルーシーが謎解きのヒントを掴む、なんていう仕掛けがあればいいのですが...これは、ないものねだりです)

新聞協会の年次総会ということで、ルーシーが出席するパネルディスカッションも楽しいですし、新聞業界の舞台裏(?) が少し覗けるうえ、新聞記者の動きも興味深く読むことができます。
事件は、この総会が開かれているホテルで起こります。
ルーシーが、するすると物語の主要人物と知り合いになるところはご愛敬ですが、おかげで読者にも身近に感じさせることができていると思います。
新聞界の大立て者が殺される、経営はそんなにうまくいっているはずはないのに(新聞はどこも大変だそうです)羽振りがよさそうとか、常套的でも手堅い設定でミステリの世界を展開していきます。
ミステリ的には取り立てて尖ったところはありませんが、素人探偵であるルーシーが真相に気づいてもおかしくないように仕上がっていて自然です。

シリーズの今後にも期待、と言いたいところなのですが、
「このシリーズの日本での出版は、十作を迎えた今回で一区切りということになりました。」
と訳者あとがきで衝撃の発表がなされています。
本国では順調に年1冊程度出版されて続けていて、24冊を数えているようです。
おそらく、日本での売れ行きが良くなかったのでしょうねぇ。逆に10冊目まで訳してくれてありがとう、というべきなのかもしれません。
短い中にバランスの取れたシリーズだったので、残念ですね。
2014年8月出版のこの「新聞王がボストンにやってきた」 (創元推理文庫)が邦訳の最後だったので、そうですね、来年9月5年ぶりにシリーズの翻訳再開ってどうでしょうか、東京創元社さん? 絶対買いますよ!


<蛇足1>
「イヴァナ・トランプみたいな女性よ」(76ページ)
イヴァナ・トランプといえば、トランプ大統領の前々妻ですが、本書原書が出た2003年にはすでに離婚していていましたね。
でも、レスリー・メイヤーも、トランプ氏が後に大統領になるとは予想していなかったでしょうねぇ。

<蛇足2>
「中国風の角ばった大きなスプーンとはしはあまり使ったことがなく」(111ページ)
という記載があります。
中華風というので、レンゲのことかな? と思ったのですが、レンゲだと「角ばった」にはなりませんね... 中華で角ばったスプーンって使いましたっけ? なんだろな?


<蛇足3>
「オールドミス二人の懸垂分詞だかなんだかのごたくを聞くのはごめんだ」(194ページ)
懸垂分詞?
ネットで調べてしまいました。学校の英文法の授業では教えてもらわなかったはず...
なるほど。文法的には基本的に間違いなんですね。



原題:Farther's Day Murder
作者:Leslie Meier
刊行:2003年
訳者:髙田恵子






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ユダの窓 [海外の作家 カーター・ディクスン]

ユダの窓 (創元推理文庫)

ユダの窓 (創元推理文庫)

  • 作者: カーター・ディクスン
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
被告人のアンズウェルを弁護するためヘンリ・メリヴェール卿は久方ぶりの法廷に立つ。敗色濃厚と目されている上、腕は錆びついているだろうし、お家芸の暴言や尊大な態度が出て顰蹙を買いはしまいかと、傍聴する私は気が気でない、裁判を仕切るボドキン判事も国王側弁護人サー・ウォルターも噂の切れ者。卿は被告人の無実を確信しているようだが、下馬評を覆す秘策があるのか?


この作品は以前にハヤカワ・ミステリ文庫版で読んでいます。
2015年7月に創元推理文庫から新訳版が出たので即購入していましたが、ようやく読みました。
しかしまあ、有名なユダの窓をめぐるトリックを除いて、見事に忘れていますね。
ほぼまっさらな気持ちで、この名作を楽しむことができました。
それにしても、写真のエピソードにはびっくりしてしまいました。こんなものを忘れてしまっているとは!

創元推理文庫の常として、表紙扉部分のあらすじを引用します。
一月四日の夕刻、ジェームズ・アンズウェルは結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪ね、書斎に通された。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームと自分だけだった??。殺人の被疑者となったアンズウェルは中央刑事裁判所で裁かれることとなり、ヘンリ・メリヴェール卿が弁護に当たる。被告人の立場は圧倒的に不利、十数年ぶりの法廷に立つH・M卿に勝算はあるのか。法廷ものとして謎解きとして、間然するところのない本格ミステリの絶品。

こっちのほうが断然わかりやすい!

「ユダの窓」ですが、本来は監獄の「独房のドアに付いている四角い覗き窓のこと」(332ページ)と説明がありますが、「ユダの窓」トリックがあまりに強烈なので、まったく忘れていました。
実は95ページに「ジム・アンズウェルが刑務所で何よりいやなのはユダの窓なんですって」と説明なしに出てくるんですね。ここでひっかかって調べるべきだったか...でも、インターネットで調べようとしても、このカーの作品ばかり出てきちゃうんですよね...
「あの部屋が普通の部屋と違っているわけではない。家に帰って見てみるんじゃな。ユダの窓はお前さんの部屋にもある。この部屋にもあるし、中央刑事裁判所(オールドベイリー)の法廷にも必ずある。ただし、気づく者はほとんどおらん」(96ページ)
って、ワクワクしますよねぇ。

本書は、「プロローグ 起こったかもしれないこと」「エピローグ 本当に起こったこと」の間に「中央刑事裁判所(オールドベイリー) 起こったと思われること」という裁判シーンが入っている構成になっています。
ヘンリー・メリヴェール卿が弁護人をつとめるって、型破りなことやってくれるんじゃないかと思ってワクワクしますよねぇ。人によっては、語り手ケン・ブレークとその妻イヴリンのようにハラハラかもしれませんが。
おかげで法廷シーンが劇的になります。退屈な尋問シーンもなんだか気になるシーンに早変わり。
読後振り返ってみると、ヘンリー・メリヴェール卿は超人的な推理力を発揮していますし、あれこれ偶然というか運もヘンリー・メリヴェール卿に味方しています。

「ユダの窓」トリックに焦点が当たり勝ちですが、そしてそのトリックは確かにとても素晴らしいものですが、行き違い、勘違いの積み重ねで、事件の様相がさっと変わってしまう手際の鮮やかさこそが本書の最大の長所ではないかと思いました。
そしてそのために、周到に物語も登場人物もしっかりと構成されています。
たとえば、密室状態の部屋から消えてしまう薬入りウィスキーのデカンターやグラスなど、二重三重によく考えられています。
傑作というにふさわしい作品だと思います。

本書には巻末に、瀬戸川猛資、鏡明、北村薫、斎藤嘉久の4氏による座談会(?)の記録が収録されています。しかも司会が戸川安宣。すごくぜいたくなメンバーということもありますが、これがまた楽しい。
カーって、いろいろと突っ込みどころも多い作家なだけに、かえって座談会が盛り上がる気がしますね。

<蛇足1>
開始早々に「時に酒を過ごしたり羽目を外して愉快に騒ぐこともあったが、」(16ページ)とあって、新訳にちょっとがっかりしました。
~たり、~たり、という由緒正しい文型はもう過去のものなのでしょうか...

<蛇足2>
「その日の午後エイヴォリー老がアンズウェルのフラットに電話をかけてきて」(17ページ)
とあっさり書かれていてちょっとびっくりしました。
日本でいうところのマンションやアパートのようなものをイギリスではフラットと呼ぶのですが、そういういい方はあまり日本では広まっていないと思っていたからです。
時代も変わって、注なしですっと理解できるくらい広まっているのでしょうか?

<蛇足3>
「私はお前のためによかれと思って一生懸命だった。」(174ぺージ)
新訳版がっかりパート2です。一生懸命...

<蛇足4>
「百歩も二百歩も譲って認めて進ぜる」(181ページ)
一般に「百歩譲って」というのは誤りでもともと正しくは「一歩譲って」であると認識しています。
したがって、「一歩も二歩も譲って」というのが正しい日本語表現かと思いますが、ここの表現は、HM卿が国王側弁護人に対して大幅に譲渡してやると大袈裟に言ってのける場面かと思われますので、正統な日本語といえなくても、誇張した表現としておもしろいと思いました。
(もっとも原文を読んでいないので、ニュアンスまではわからず、日本語訳から勝手に推察しているだけですが)


原題:The Judas Window
著者:Carter Dickson
刊行:1938年
訳者:高沢治


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ドラマ:ジョニー・ウェイバリー誘拐事件 [ドラマ・DVD]

Poirot The Definitive Collection Series1-13 [DVD] [Import]

Poirot The Definitive Collection Series1-13 [DVD] [Import]

  • 出版社/メーカー: ITV Studios
  • 発売日: 2013/11/18
  • メディア: DVD



ドラマ:ミューズ街の殺人(感想ページへのリンクはこちら)から1週間、COLLECTION1 のDISC1の3作目、「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」(原題:he Adventure of Johnnie Waverly)を見ました。英語字幕付きです。

原作が収録されているのはこちら↓。
愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

愛の探偵たち (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/07/15
  • メディア: 文庫


例によって字幕を出しながら見たのですが、うーん。字幕がついていてもあまり話がわかりませんでした...英語力、ひょっとして落ちている!?

だから、というわけではありませんが、ちょっとストーリー展開がいまいちな作品だったかな、と。
動機と犯人がとった手段がミスマッチなのは大きな問題かな、と思います。
(ほかにやりようがあったのでは、と思いますし、あまり先々のことを考えて犯行に着手したと思えない点が多々あります)
またポワロも指摘していますが、誘拐するのに事前に予告するというのはあまりお利巧とは言えませんね。

一方、ドラマとしては、楽しめるところが多々あります。
ポワロが足をいためて、足湯(?) で癒すシーンとか、笑ってしまいました。
笑うと言えば、ポワロとヘイスティングスが車の中で歌を歌う!シーンなんていうのまであります。
ヘイスティングスが、車の修理(応急処置)で顔を煤だらけにするのも楽しいですね。
ヘイスティングスがスピード狂というのもよくわかりましたし(笑)。
またお屋敷の様子もいいですし、田舎の風景もとてもきれいです。
それと、具体的な金額こそ出てきませんが、ポワロ、ヘイスティングスが、依頼料のことを口に出すシーンが2度もあるのが興味深かったですね。原作にそういうシーンがあったかどうか覚えていませんが、なさそうなので。

蛇足ですが、途中、ホッグズ・バックという地名が出てきて、ひとりニヤリとしました。
F・W・クロフツに「ホッグズ・バックの怪事件」 (創元推理文庫)という作品がありますので。


DVDの日本語版はこちら↓
名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD


このシリーズに関して、とても素晴らしいサイトがありますので、いつも通りリンクをはっておきます。
「名探偵ポワロ」データベース
本作品のページへのリンクはこちら





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踊る人形 [日本の作家 ま行]

踊る人形 (講談社文庫)

踊る人形 (講談社文庫)

  • 作者: 森川 智喜
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/02/13
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
身体を自在に着脱できる人形男がどこまでも追ってくる!  目的は、自分の生みの親である博士にもう一体動く人形(ゴーレム)を作らせること。これに対し少年探偵隊は、唯一の弱点である頭部内の「命を生む紙」を入手しようとする。しかし、ようやく目にしたのは聞いたのとはまったく違う文字だった!  周到な論理によって構築された極限状況ミステリ。


前作「スノーホワイト」 (講談社文庫)(感想ページへのリンクはこちら)を読んでからずいぶん間が空いてしまいましたが、森川智喜の三途川理シリーズ第3作です。
今回は、人造人間、ですね。
泥人形なのですが、ちゃんと生きている。しかも、身体のパーツをばらばらにできて、しかもそれぞれちゃんと機能する。なんてすごい生物!

語り口が、です・ます調になっていまして、主人公古沢君が小学生ということで、おのずと江戸川乱歩の「少年探偵団」 (ポプラ文庫クラシック)シリーズを彷彿とさせます。
古沢君は、三途川理が組織した(?) 少年探偵隊のメンバーです。ここ、どうして少年探偵団と呼ばなかったんでしょうね?

さておき、少年探偵隊である古沢君と人形男との対決が軸になっていくのですが、三途川理は京都で連続殺人事件を捜査しているとかで出てきません。
三途川理が登場するのは、ようやく175ページになってから。物語も後半です。
この作品は三途川理が登場してから急展開を見せます。

これこそがこの作品のポイントなんじゃないかと思いました。
なので、この部分を除くと、残りはかなり軽い感じです。
たとえば、あらすじにも書かれている人形男頭部内の「命を生む紙」をめぐるエピソードなど、いくつも先行作があり(最も古い作例はエラリー・クイーンの短編でしょうか?)、ちっとも感心できません。
とはいえ、これは「少年探偵団」シリーズを意識した結果だとも思えますから、これはこれで認めなければならないのでしょうね。
また、ポイントの三途川理が登場してからの急展開には、たっぷり満足させられました。もう、なんてこと考えるんだ、森川智喜は!
相変わらず変なことを考える作家だなぁ、と思いましたが、「スノーホワイト」 (講談社文庫)と合わせて考えると、名探偵とされている三途川理の使いかたこそがこのシリーズの本質なのかも、と思いました。
このあと、続く
「ワスレロモノ 名探偵三途川理 vs 思い出泥棒」 (講談社タイガ)
「トランプソルジャーズ 名探偵三途川理 vs アンフェア女王」 (講談社タイガ)
「バベルノトウ 名探偵三途川理 vs 赤毛そして天使」 (講談社タイガ)
を読んでみないと、考えが当たっているかどうかはわかりませんが、当たっているといいなぁ。


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日曜の午後はミステリ作家とお茶を [海外の作家 ら行]

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

日曜の午後はミステリ作家とお茶を (創元推理文庫)

  • 作者: ロバート・ロプレスティ
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2018/05/11
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
「事件を解決するのは警察だ。ぼくは話をつくるだけ」そう宣言しているミステリ作家のシャンクス。しかし実際は、彼はいくつもの謎や事件に遭遇して、推理を披露し見事解決に導いているのだ。取材を受けているときに犯罪の発生を見抜いたり、逮捕された作家仲間のため真相を探ったり、犯人当てイベントで起きた『マルタの鷹』初版本盗難事件に挑んだり、講演を頼まれた大学で殺人事件に巻き込まれたり……。図書館司書の著者が贈る連作短編集!


「本書はいわゆる“持ち込み”(翻訳者が見つけた原書を出版社に紹介し、邦訳出版を持ち掛けること)が通って出版の決まった本です。
つねづね、重厚な長編のあいまに楽しめるような、あるいは疲れた日の寝るまえに読めるような、軽やかな読み物がもっとあってもいいのにと思っていました。
お楽しみいただけましたら幸いです。」
と帯に訳者あとがきからの引用が書かれています。
出版業界の裏側の一部を見た気分ですが、なるほどねー。

軽やかな読み物、というだけあって、
「シャンクス、昼食につきあう」
「シャンクスはバーにいる」
「シャンクス、ハリウッドに行く」
「シャンクス、強盗にあう」
「シャンクス、物色してまわる」
「シャンクス、殺される」
「シャンクスの手口」
「シャンクスの怪談」
「シャンクスの牝馬」
「シャンクスの記憶」
「シャンクス、スピーチをする」
「シャンクス、タクシーに乗る」
「シャンクスは電話を切らない」
「シャンクス、悪党になる」
のコンパクトな14編を収録した短編集です。

さらっと読める、さくさく読める、という狙い通りの仕上がりになっていますが、個人的な好みからいうとちょっと軽すぎるでしょうか...
日常の謎、というよりはもう一歩ミステリ寄り、というか犯罪を扱ったものが多いのですが、それでもミステリとしての興趣は強くない、という点がちょっと物足りません。
でも、小味なミステリとして(あるいはミステリ風味の短編として)気軽に楽しめるいい作品だと思いました。
各話ごとに「著者よりひとこと」として作者のコメントが出ているのも、アシモフの「黒後家蜘蛛の会」 (創元推理文庫)シリーズみたいで楽しいですね。

主人公シャンクスは、レオポルド・ロングシャンクスという名前のミステリ作家で、長い経歴なんだけど、さほど売れていない。
妻のコーラは、最初はロマンス作家の卵(ひよこくらい?)でしたが、本書が進むにつれてシャンクスより売れているみたいです。
このほのぼの感ただよう夫婦を主人公に据えているのがポイントなので、解説で大矢博子が書いているように
「つまるところ、本書は切れ味やサスペンスやサプライズより、それらをくるんだ上で続いていく日常というものの愛おしさを大切にしていると言えるだろう」
ということかもしれません。

日本語版タイトルは「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」となっていますが、お茶会(?) で事件の話題が出されるわけでも、シャンクスがお茶を飲みながら謎解きをするというわけでもありません。全体の雰囲気をイメージして日本でつけたものと思われますが、読むときには、それこそお茶でも飲みながらリラックスして読むのがよいと思われます。


<蛇足>
最後の「シャンクス、悪党になる」にさび猫の話題が出てくるのですが、さび猫、知りませんでした。


原題:Shanks on Crime
著者:ROBERT LOPRESTI
刊行:2014年
訳者:高山真由美
なお、この「日曜の午後はミステリ作家とお茶を」 (創元推理文庫)は、短編集”Shanks on Crime”に、日本版独自に「シャンクス、悪党になる」を加えたものとなっていまして、奥付でも発表年は2003-2014という記載になっています。
以上では、”Shanks on Crime”のものを記載しています。


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青白く輝く月を見たか? [日本の作家 森博嗣]

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? (講談社タイガ)

青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? (講談社タイガ)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/06/21
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
オーロラ。北極基地に設置され、基地の閉鎖後、忘れさられたスーパ・コンピュータ。彼女は海底五千メートルで稼働し続けた。データを集積し、思考を重ね、そしていまジレンマに陥っていた。
放置しておけば暴走の可能性もあるとして、オーロラの停止を依頼されるハギリだが、オーロラとは接触することも出来ない。
孤独な人工知能が描く夢とは。知性が涵養する萌芽の物語。


Wシリーズの第6作です。
前々作「デボラ、眠っているのか? Deborah, Are You Sleeping?」 (講談社タイガ)(感想ページへのリンクはこちら)と前作「私たちは生きているのか? Are We Under the Biofeedback?」 (講談社タイガ)(感想ページへのリンクはこちら)は日本で読んでいたものをロンドンに来てから再読しましたが、この「青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light?」 (講談社タイガ)から始めて読むことになります。

今回の舞台は北極基地。
北極基地にある、核弾頭を発射できる戦艦を操ることができるポジションにいるコンピュータがオーロラです。
なんと真賀田四季本人が現れ(41ページ~)、オーロラを止めるようハギリに直接依頼します。さらっとチベットのアミラの本名はスカーレットだと(43ページ)というシーンつきで。
いやいや、なんだかすごいことになってきましたよ。
シリーズを通して進んできた思索(?) もかなりの地点に到達しています。
思索と同時に、コンピュータも進化? していることが分かってきています。

たとえばオーロラに対して、ハギリはこういう感想を抱きます。
「その言葉は、信じられない不完全性の表れだった。人工知能が発した言葉とは思えない。なんと、ぼんやりとした思考、行き当たりばったりの行動だろう。その点は、驚愕に値する。
 これは、進化なのか。
 これが、神を目指した知能の先鋭なのか。
 それとも、人工知能も老いるのか。」(241ページ)
これを受けて、いつものテーマが
「つまり、進化も成長も、それはただ老いることなのかもしれない。
 老いなければ、成長できない。
 老いなければ、子供も生まれない。」(241ページ)
というように敷衍されます。

またこのシリーズの世界観の目指すもの、というのか目指す世界観というのかも、示されています。
たとえば
「おそらくそれは、マガタ博士が目指している共通思考だろう。ぼんやりと、そこにしか道はない、という感覚を僕は抱きつつある。すなわち、人間もウォーカロンも人工知能も、すべてを取り込んだ次世代の生命だ。有機も無機もない、生命も非生命もない、現実も仮想もない、すべてが一つになった地球だろう」(266ページ)
ハギリとオーロラの共同研究というのもなかなか興味深いですね(264ページ~)。
「頭脳回路の局所欠損によるニューラルネットの回避応答が、偶発的な思考トリップを起動する。インスピレーションのメカニズムは、これらの転移の連鎖から生じるものであり、人類に特有のものではない、というのが、僕とオーロラが連名で発表した論文の要旨だ。そして、それは同時に、人類と人工思考体の最後のギャップを埋める可能性を秘めた一歩になるはずだ」(267ページ)
というのですから。

シリーズ的には、ラストが衝撃的でした。
だって、ウグイが昇格(!) したとかいって、ハギリの護衛を離れるというのです!!
後任は、あのキガタ・サリノだというから新しい展開にも期待できますが、うーん、ウグイに会えなくなるのは残念ですねぇ...


英語タイトルと章題も記録しておきます。
Did the Moon Shed a Pale Light?
第1章 赤い光 Red Light
第2章 青い光 Blue Light
第3章 白い光 White Light
第4章 黒い光 Black Light
今回引用されているのは、アーサー・C・クラークの「幼年期の終り」 (ハヤカワ文庫 SF)です。


<蛇足1>
「女優というものが人間の職業として今でもあればだが。」(9ページ)
というところで、ちょっと考えてしまいました。
ジェンダーの視点で書かれているわけではないでしょうから、女優というか俳優というものが職業として存在しない世界になっているということかと思います。
どういうことでしょうか?
人が死ななくなった世界、ということで、映画やドラマを人間は観なくなるということでしょうか? 自分の人生に限界がないから、自分でないものの人生を見る(あるいは覗き見る)ことが娯楽にならなくなる、ということ?
あるいは、映画やドラマは人間がやるのではなく、すべてCGというか仮想で構築されるようになっている、ということ?

<蛇足2>
「ピラミッドにもコンピュータがあるのですか?」(23ページ)
というやりとりが出てきます。
「残念ながら、そんな話は聞いたことがなかった。この時点では、ということだが」
と地の文が続くのですが、とするとこのシリーズ、いつかはピラミッドを舞台にするのでしょうか!?




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ドラマ:ミューズ街の殺人 [ドラマ・DVD]

Poirot The Definitive Collection Series1-13 [DVD] [Import]

Poirot The Definitive Collection Series1-13 [DVD] [Import]

  • 出版社/メーカー: ITV Studios
  • 発売日: 2013/11/18
  • メディア: DVD



ドラマ:コックを捜せ(感想ページへのリンクはこちら)から日が経ちましたが、COLLECTION1 のDISC1の2作目、「ミューズ街の殺人」(原題:Murder in the Mews)を見ました。英語字幕付きです。

原作が収録されているのはこちら↓。
死人の鏡 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

死人の鏡 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/05/14
  • メディア: 文庫

原作の方の日本語タイトルは、「厩舎街の殺人」。Mews を訳したんですね。
〇〇 Mews というのは結構あちこちに地名としてあります。

冒頭、ガイ・フォークスデイのシーンから幕開け。
ガイ・フォークスデイというのは一種のお祭りで、花火があがったりもするのですが、この花火がねぇ、日本の花火のように華やかなものではなくて、なんかしょぼいんですよね。映像をご覧いただくとわかりますが。日本の花火は芸術です!

続いて、歯医者に行きたがらないポワロ、というのが笑えます。

ストーリーの方はなぜかぼんやりと覚えていましたので、観るのにあまり苦労はしませんでした。
冒頭にポワロが現場で鼻をくんくんさせる(?) シーンは原作でもとても印象的だったのを思い出しました。
謎解き的には、単純なプロットをすっきりと見せていてよかったな、と思いましたが、右利き、左利きのところは、あんまりうまくいっていないように思いました。原作がどうなっていたか、さっぱり覚えていないんですが。

謎解きとはあまり関係ないのですが、ポワロがゴルフをするシーンがあって、びっくり(笑)。しかも、革靴...普通の革靴に見えましたが...しかも結構なナイスショットを放ったような...
こういうシーンが観られるのも、ドラマの醍醐味でしょうか。楽しいです。

DVDの日本語版はこちら↓
名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

名探偵ポワロ 全巻DVD-SET

  • 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
  • メディア: DVD


このシリーズに関して、とても素晴らしいサイトがありますので、リンクをはっておきます。
「名探偵ポワロ」データベース
本作品のページへのリンクはこちら


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世界が終わる街: 戦力外捜査官 [日本の作家 似鳥鶏]

世界が終わる街:戦力外捜査官 (河出文庫)

世界が終わる街:戦力外捜査官 (河出文庫)

  • 作者: 似鳥鶏
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2017/10/05
  • メディア: 文庫

<裏表紙あらすじ>
無差別テロを起こし、解散へと追い込まれたカルト教団宇宙神瞠会。教団名を変え穏健派に転じたはずが、一部の信者たちは〈エデン〉へ行くための聖戦 = 同時多発テロを計画していた! 何者かによって命を狙われ続け満身創痍の設楽と海月は、テロ計画を未然に防ぐことができるのか!?


似鳥鶏の
「戦力外捜査官 姫デカ・海月千波」 (河出文庫)(感想へのリンクはこちら
「神様の値段: 戦力外捜査官2」 (河出文庫)(感想へのリンクはこちら
「ゼロの日に叫ぶ: 戦力外捜査官」 (河出文庫)(感想へのリンクはこちら
に続く戦力外捜査官シリーズ第4弾です。

さて、設楽&海月コンビは今度はどんな大災害を呼び寄せるのかな、というのが読者の興味なわけですが、そのあたりは文庫版あとがきにも触れてありまして、
「本シリーズには『東京テロ図鑑』とでもいうべき側面があります。ストーリーを考える際には『どうすれば東京でよりたくさんの被害者を出せるか』のアイディアを出す、という部分があり....」
と書かれています。
今度のテロは、表紙でおわかりになるかもしれませんが、電車を利用したものです。

また、主人公が警察側、つまりテロを防ぐ側なので、いかにそのテロを抑え込むかというのがポイントになるわけですが、これがまたとても楽しいです。
海月警部と設楽巡査の主人公コンビの活躍だけではなく、一般人の活躍も描かれるのがこのシリーズの特徴ですが、今回は鉄道が舞台なので、指令室が出てきまして、そのシーン(286ページから、など)は読んでいてぞくぞくしました。

鉄道のテロ、というとどうしてもオウム事件を連想します。
犯人サイドが「神様の値段: 戦力外捜査官2」にも登場したカルト教団宇宙神瞠会の残党というのも手堅い設定ですね。

あと一人、とても重要な人物がいました。
「ゼロの日に叫ぶ: 戦力外捜査官」にも出てきた ”名無し” です。
無敵すぎて怖いですが、かっこいい。
名無しを主人公に据えたスピンオフ書いてくれないものでしょうか? 絶対読みます(いや、似鳥鶏の作品なら名無しが主人公じゃなくても絶対読むんですけどね...)

次はなんだろうな。
続く
「破壊者の翼 戦力外捜査官」(河出書房新社)
にも期待します!


<蛇足>
辻真先の解説が
「ミステリ作家は嘘つきでSF作家は法螺吹きであると、誰かがいったそうです。」
で始まっていて、なるほどなー、と思いました。
蛇足ついでに、
「似鳥鶏と警察小説の間には径庭があると思っていたのに」
とありまして、不勉強で径庭の意味を知らなかったので勉強になりました。
二つのものの間にある隔たり。懸隔。らしいです。

不勉強ついでに書いておきますと(変な書き方ですみません)、
「一週間が経過しても全く軽快しないほど」(287ページ)
というところの、軽快、も知りませんでした。
1 軽々としていて、動きのすばやいこと。また、そのさま。「軽快な身のこなし」
2 軽やかで、気持ちがよいこと。また、そのさま。「軽快なリズム」
3 病気がよくなること。症状が軽くなること。「手術が成功してかなり軽快する」
とのことです。

<蛇足2>
ラストシーンで、小田原線の電車内で文庫本を読む少女というのが登場するのですが(ついでで恐縮ですが、このラストシーンもなかなかいいシーンだと思います)、読んでいるのが津村記久子
どうしてミステリにしなかったんですか? 似鳥さん!!

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砂漠の悪魔 [日本の作家 近藤史恵]


砂漠の悪魔 (講談社文庫)

砂漠の悪魔 (講談社文庫)

  • 作者: 近藤 史恵
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/12/15
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
大学生の広太は、自らの卑劣な行為が原因で、友人を自殺させてしまう。それをきっかけに、普通の学生生活から一転、悪事に荷担せざるを得なくなる。“バイト”として行かされた中国・北京で、広太は留学生の雅之と出会い、彼と共に中国西部に向かう。おもむいた砂漠で、広太は想像を超える事実に直面する。


近藤史恵のノン・シリーズものですが、とびきりの異色作です。サスペンス的であっても、ミステリではありませんね。
友人・榊原を自殺に追い込んでしまった主人公・広太の転落譚、と簡単に言ってしまえばそういう話ですが、一気読みしました。

主人公は、自分勝手で思い上がっているように設定されていますが、程度の差こそあれ若いころは周りなんて見えていないものだし、思い上がってもおかしくないとも言えますので、ちょっと意地が悪く、ちょっと邪悪なことを思いついただけの普通の青年、とも言えなくもないかな、と思いました。殊に、恋愛をめぐっては残酷になれるもの、とも思います。
(とはいえ、広太が榊原に対してやったことは本当に最低で、その手段となった彼女・桂に対しても最低の行為です)

友人が自殺してしまって、その葬式に行って、そこからの展開が、まさに転がるように悪い方へ、悪い方へ、となります。
ヤクザに目をつけられ、中国への運び屋にされ、抜けようとして脅され、抜けられなくなり...
このヤクザに目をつけられるところの枠組みは無理があるなぁ、普通こういう流れにはならないだろうなぁと思えてなりませんが(だって、自殺に追いやったとはいえ実際に殺したわけではないんですから)、それを過ぎていったん巻き込まれてしまえば、あとは落ちるだけです。
普通のストーリー展開だと、この後はヤクザとどう渡り合っていくか、という話だと予想するところですが(自殺した榊原の父親が暴力団対策課の刑事ということもありますし)、近藤史恵はそういう話にはしません。

帯に
「200ページ目で唖然。300ページ目で呆然、」(←句点、読点、このままです)
とありますが、いや、びっくりの展開です。
キーになるのは、中国で出会った留学生・雅之です。
200ページ目のときは、おっ、そう来たか、と思ったりしたのですが、300ページ目では近藤史恵の胆力に感服しました。
「日本では絶対に見られない景色を見せてやるよ」(290ページ)
と雅之に言われて連れていかれるタクラマカン砂漠。タイトルの砂漠が出てきます。
個人的には最近あれ「砂漠の悪魔」のネタバレになりますので読後にリンク先をご確認ください。あれを後から読む分にはネタバレにはなりません)を読んだところだったので、まさかなぁ、と思いながらちょっと予想してしまっていました。しかし、こうやってストーリーに組み込むとは...

「おまえはそんなことをするべきじゃなかった。だが、そいつだって、そんなことで死ぬべきじゃなかったんだ。大事に思ってくれる家族がいるならなおさらだ」(280ページ)
と広太から経緯を聞いた後に雅之が広太に投げる言葉が印象的でした。



タグ:近藤史恵
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アルカディアの魔女 北斗学園七不思議3 [日本の作家 篠田真由美]


アルカディアの魔女 (PHP文芸文庫)

アルカディアの魔女 (PHP文芸文庫)

  • 作者: 篠田 真由美
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/05/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
中等部三年生になるアキ、ハル、タモツは、寮の引っ越しに大忙し。そんな中、森で妖精の宴を目撃したという生徒が現われ、その一方で奇妙な暗号文が発見される。これらは果たして学園の七不思議と関係があるのか。しかし調査にかかる前に、突然タモツが学校を辞めると言いだして……。森に隠された学園創立期に遡る意外な秘密とは。そして三人を襲う最大のピンチ。謎が加速する大人気学園ミステリー第三弾。


「王国は星空の下 北斗学園七不思議1」 (PHP文芸文庫)(感想ページへのリンクはこちら
「闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2」 (PHP文芸文庫)感想ページへのリンクはこちら
い続く北斗学園七不思議シリーズの第3弾です。

理論社のミステリーYA!という叢書でこの「アルカディアの魔女」まで出ていたシリーズで、理論社が倒産して途絶していたのを、PHP文芸文庫で再刊なって再出発ということだったはずですが、2014年5月に「アルカディアの魔女」を復刊したあと再度途絶えています。
売り上げが優れなかったのでしょうか...

悪い点から言っておくと、毎回言っていますが、アキの語り口には違和感が拭えません。中学生の文章とは思えないジジ臭さ。そういう古臭い言葉を使うキャラクター設定にもなっていませんし、謎です。
「えーと。のっけからドタバタやかましくって失礼をば。」(22ページ)
「変に邪推するのだけは勘弁な」(191ページ)
「タイトルは刺激的だけど、中身はすごく真面目でいい本だから、そこんとこよろしくな」(191ページ)
「えいコンチクショウ、タモツの馬鹿」(225ページ)
「そのままおっ死んだ(おっちんだ)とは、誰も思わないだろ」(364ページ)
このあたりも、売れ行きに影響したのではないでしょうか? なんて考えてしまいます。

冒頭、昔のエピソードでスタートするのは、第1作第2作と同じで、かっこいいですね。
タイトルのアルカディアは、「古代ギリシャのペロポネソス半島にあった国」で「古代ローマの詩人ウェルギリウスが、『牧歌』っていう詩集を書いて、その中でアルカディアを理想化したんだ。遥か昔の黄金時代の田園として。だからアルカディアということばには、過去への郷愁や失われたものを嘆く感傷の匂いがまとわりついている」(290ページ)と説明されていまして、温室の名前として使われています。
前作「闇の聖杯、光の剣 北斗学園七不思議2」では人狼が出てきましたが、今回は魔女。
前作同様、古き良き冒険小説を、学園ものの衣を着せて差し出してもらっているようです
温室で魔女で集会ときますから、雰囲気は抜群ですね。猫が活躍するのもポイント高いかも。

ということでシリーズは快調と思われるのに(語り口を除いて)、続巻が出ていないのが残念です。
あとがきで「セイレーンの棲む家」とタイトルまで予告されているというのに...
なんとか続きを出してもらえないものでしょうか?


<蛇足>
「けどさ、それって穴--なんとかいうやつだろ?」
「アナグラム。穴は関係ない。」(120ページ)
これ、会話では成立しないやりとりですよね。文章化されている小説だからこそ、ですね。




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