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終幕のない殺人 [日本の作家 あ行]


終幕(フィナーレ)のない殺人 (光文社文庫)

終幕(フィナーレ)のない殺人 (光文社文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2010/06/10
  • メディア: 文庫


<裏表紙あらすじ>
浅見光彦は、芸能界の大物・加堂孝次郎が箱根の別荘で毎年開く豪華な晩餐会に招かれていた。そこでは二年連続で不審な死亡事故が起きていた。今年こそ事故を防ぐため呼ばれたのだ。十四人の賓客を迎えてパーティーが始まったが、暴露本を書いた俳優の永井智宏が女優の妻の目前で毒殺された! “密室”と化した豪華別荘で起きる連続殺人の謎に浅見光彦が挑む!


「鐘」 (幻冬舎文庫)(感想ページへのリンクはこちら)に続いて内田康夫の作品の感想です。
内田康夫といえば、やはり旅情ミステリーですが、この「終幕のない殺人」は様子が違います。
なんといっても、屋敷を舞台にした連続殺人もの、だからです。

自作解説によると、
「マニアックなミステリーファンや評論家の中には、かくあらねばミステリーにあらずーーのような思い込みがある。思い込みだけならいいが、他人のその思想を押しつけようとする」
ということを踏まえて、
「本書『終幕のない殺人』を書いた動機は、そういったひとつの『風潮』に対するアンチテーゼのようなものかもしれない。お読みになって、作品全編がパロディになっていることがお分かりいただけると思う。」(303ページ)
と書かれています。
「柄にもない作品を書く」作者なりの言い訳は、
第一の理由:マンネリに対して自ら警鐘を打ち鳴らした意味
第二の理由:こういう作品も書けるということを、いちど示しておかなければならないーーと思った
とも。

「この世のものとは思えない大仕掛けなトリックに象徴されるような、児戯にも似た非現実性、ばかげた動機等々、常識の範疇から逸脱したようなことを書くには、良識と教養が邪魔になっているだけのことだと思うのです。」(305ページ)
というのはかなり強烈な「本格」「新本格」批判です。
ただ、誤解のないように書いておかねばなりませんが、内田康夫は「本格」「新本格」がだめだと言っているわけではなく(「それはそれで尊い」と書いています)、
「思うのは自由で、好みの問題もある。各人各様、いかようにでも思っていいはずである」けれども、「思い込みだけならいいが、他人のその思想を押しつけようとする」のが困る、
という主張ですね。

ということなので、本作はお屋敷もののフォーマットにきわめて忠実なつくりになっています。
内田康夫としては異色作ですね。

出来栄えはというと...
好きこそ物の上手なれ、ということでしょうか。残念ながら「本格」「新本格」作家の作品のほうが、格段に出来はよいようです。
この「終幕のない殺人」は人間配置もトリックも、今一つに感じられました。
「作中の登場人物が、いずれも、どこかで見たり聞いたりしたような人物ばかりなのは、キャラクターや状況設定を理解するという、余計な作業に読者の無駄な労力を浪費させることなく、ただひたすら、謎解きと犯人当てに専念していただきたいがため」(306ページ)
ということらしいですが、タレント、女優、俳優を集めて、簡単にくっついたり別れたりする人たちばかりにしてしまったおかげで、登場人物同士でどういうつながりがあろうとなかろうと、まったく意外感が生まれないということになってしまっており、どんなに意外な(本当はそれほど意外ではありませんが)関係を明かしてみたところで、「あっ、そう」程度で驚きにはつながりません。
毒殺トリックも、密室トリックも、トリックというほどもない。
人物の出し入れ、とかかなり入り組んだかたちに作り上げられているのに、あまり効果が感じられないのが残念です。
内田康夫の本領発揮とはやはり言えない仕上がりではないでしょうか。

それに、浅見光彦じゃなくていいでしょう、これ。
もったいないですよ。
浅見光彦の経歴をこういう作風の作品で汚すのではなく、それこそ奇矯な名探偵みたいなのを出せばよかったのに。
浅見光彦はこういう謎も解ける、ということを示しているといえなくもないですが...
むしろ、こういうものものしい山荘ものではなく、内田康夫的本領を示すような「鐘」 (幻冬舎文庫)の方がミステリ味を感じるのは皮肉な感じがします。

内田康夫はあらかじめプロットを作らないで執筆にかかるタイプの作家、ということですが、この作品は事前にプロットを組み立ててから書かれたんでしょうか?
そこが一番興味があったりして...

さすがは人気作家で、この「終幕のない殺人」には他社文庫版が2つあります。
講談社文庫版は品切れのようですが。
終幕のない殺人 (祥伝社文庫)

終幕のない殺人 (祥伝社文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 文庫

終幕のない殺人 (講談社文庫)

終幕のない殺人 (講談社文庫)

  • 作者: 内田 康夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/07/14
  • メディア: 文庫




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コメント 2

コースケ

31さま、こんばんは。

プロット、どうなんでしょうねえ。
でも最初から、本格パロディを書くことが大前提だったので、
元々考えていた気がします。
個人的にはもう1作くらい読んでみたかったですね。
刊行は1987年(十角館の殺人と同じ)なので、
新本格ムーブメントを受けてから、改めて書いてもらいたい
気持ちもあります。

by コースケ (2018-09-02 23:31) 

31

コースケさん、ありがとうございます。

プロット、さすがに本格ものだと事前に考えておられたんでしょうね...
でも、プロットをあらかじめ立てておかなくても、あれだけのすごい作品を数々書いた内田康夫だったら、本格ものでも同じようにかけちゃったのでは? なんて考えてしまいます。
by 31 (2018-09-05 05:19) 

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